No.779413 超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス2015-05-24 21:34:26 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:648 閲覧ユーザー数:642 |
日本一、がすと、ワレチューをイストワールが派遣していた医療機関に預け、ネプギア達はイストワールの元に集まっていた。厳格で広い空間の会議室に映し出された巨大なディスプレイには初心者が多少苦戦するレベルで合ったバーチェフォレストの変わり果てた姿があった。
「覚めない悪夢を見ているようだわ」
山のように巨大な樹は年老いた老人のようにやせ細りながらも、生命力が溢れた場所。だが、今は鮮やかな緑は一切なく、常闇を思わせる黒色に染まり、ノイズのような不規則で不安定な刺青に浸食された鳥形【汚染化】モンスター達が周囲を飛び回っている。恐らく樹の中にも想像を絶するほどのモンスターの数が潜伏していることは容易に想像がつき、そこはまるで多くの死者が眠る恐ろしき墓場のように見えた。
誰もがその光景に息を飲み、頭を抱えたアイエフの言葉に全員が頷いた。
「空さん、冥獄化した部分を浄化することは出来ますか?」
イストワールの言葉に全員の視線が空に収束した。ゲイムギョウ界という概念が生まれる前から生きて、数年前まではこの世界の管理者を勤めていた存在、ありとあらゆる始まりと終わりを記録し続けた者は、初めてのこの事態に悩むように声を伸ばしながら
「……出来ない事はないけど、ダメだ」
絞り出すように答えた。
「出来るのにどうしてダメなの!?バーチェフォレストはプラネテューヌに近いのよ!!もしモンスターがこっちに押し寄せてきたら一たまりもないわよ!!」
叩きつける音と共に立ち上がったアイエフは声を上げた。
「---切り捨てるんですか」
烈火の如く怒りを露わにするアイエフとは対照にコンパは静かにされど氷のように冷たい声で空を睨んだ。
「アイエフさん、コンパさん落ち着いて……」
「イストワール様!こいつは血も涙もない殺戮者ですよ!!ネプギアを蘇生したことには感謝してるけど、それは結局未来の為!全部未来の為!それだけであっさりと多くの命を切り捨てるんです!生殺の権利は一人一人にあって当然なことで、お前が定めるのは間違っている!!!」
「……………」
イストワールの静止の言葉を振り切ってアイエフは空に向かって怒号を叫ぶ。それに対して、コンパも誰も見たことがない冷徹な瞳で口を開かず睨んでいるまま。実際空も人の命はシェアエネルギーを生み出す装置で、ゲイムギョウ界のバランスを保つための数式を見ているのと言われても、否定する要素はない。昔の自分を思い出せば、そうだと言っていいぐらいなのだから。
「……アイエフさん、落ち着いてください」
「ネプギア!!貴方もネプ子の妹なら、女神なら分かるでしょ!こいつは女神の価値を見出す為なら他人の生き方なんて簡単に変えるのよ!」
「落ち着いてください!!」
「ッ!!」
温厚なネプギアとは思えない大きな声と共に溢れた圧迫感にアイエフの口が閉じる。
「空さん、貴方がプラネテューヌを切り捨てるとは思えない。そして空さんの実力ならバーチェフォレストをまるまる消滅させることも可能ですよね?」
「……良く分かったね」
「空さんの異次元的な力を見てきましたから」
四女神を相手に大人気なく時に圧倒的な力で、時に翻弄しながら圧倒してきた空の強さを見てきたネプギアは頷く。
「一応言っておくよバーチェフォレストに憑りついた濃密なネガティブエネルギーを完全に浄化するには、大量のシェアクリスタルと女神の力、そして時間が必要だ。油汚れとか簡単に出来るけど、洗い流すのは難しいと同じ。なにより---ダンジョン事態の【汚染化】は世ほどのことがないとならない。それも一気になることはない」
【汚染化】は他人のネガティブエネルギーを吸収し続けて起こる現象。
それはモンスターが出現するダンジョンでも同様の現象が起きた事がある。ただそれは、統治する女神がいない大陸で、女神の加護が無い場所で、しかも自殺スポッドのような負が極度に集まりやすい場所、【汚染化】したモンスターがダンジョンに入りきれず程の数が常に闊歩して、更に長い時間を掛けて大地を浸食していくことで、ダンジョン【汚染化】に繋がっていく。
ゲイムギョウ界の歴史の記録者であるイストワールの力があれば、もし女神が死ねという世界が変革する程の出来事があれば空より早く正確に探知できる。つまりパープルハートが捕まっているこの状態であっても、パープルハートによる女神の加護は、プラネテューヌを守り続けている。とどのつまり、これは誰かが意図的にした現状であることは直ぐに検討がついた。
「……犯人はお兄ちゃんですか」
「それ以外に考えられないんだけど……ブラッディハードとしてのレベルを考えるとここまでの【汚染化】は時間がかかる。それにあいつはブラッディハードで初めて善意による女神の為に必要悪存在になったんだよ。女神が守ろうとする大地を、こんなに穢す行動は性格上おかしい」
そうですか、と頭を下げるネプギアに対して空は再び口を開く。
「---紅夜は乗っ取られているね。それも前代のブラッディハードに」
「空さん、それは……!!」
「
ネクストフォームという単語に全員が頭を傾げる。それに対してイストワールが説明をいれようかと空をちらりと目で見るが首を横に振った。
「アブネスなら一気に殲滅しにくるだろうし、キセイジョウ・レイは目立ちたがりだからそこらへんで暴れまくるだろうし、うずめならもっと派手に欲求を満たす為に遊ぶだろうし、ニーヴァならまず僕を狙ってくるだろうし---アイン・アルだな」
「……分かるんです?」
「女神を要求する未来ゲハバーンについてよく知識があって、こんな戦う場所を作っている事を考えて逆算した結果だよ。中二病で、王道的な展開が好みだからね。紅夜と相性は抜群だね」
そういって、空は立ち上がった。会議の必要はもうないと言わんばかりに。同じタイミングでネプギアも立ち上がる。どうやら付いてくる様だ。
「バーチェフォレストを抹消する。それが僕が提唱する最も犠牲が少ない選択だ」
「「…………」」
アイエフとコンパも目を合わせて頷き、立ち上がった。
「……アイエフさんとコンパさんはもしもの時の為に住民の避難誘導をお願いします」
「えっ……ギアちゃん…?」
自分の知っているネプギアじゃない。コンパは今まさに槍衾の戦場に向かう死を覚悟した兵士のような暗い瞳をしたネプギアに驚きを隠せない。それは隣に座っていたアイエフも同じだった。
「わ、私達、仲間でしょ?どこに行くとしても……」
「仲間……ですか。それじゃ尚更です。来ないでください」
はっきりとした拒絶の言葉に二人の思考が追いつかない。そんな二人を無視して部屋から出ようとする空についていく。
「今の僕じゃ内部崩壊させるほどの破壊力しかない。だからバーチェフォレストの中央区に行く必要がある。……ギョウカイ墓場のように女神の力が十全に発揮できない場所に行くんだよ?」
「覚悟の上です。
例え空がここで気絶させようとさせても、彼女は避けるだろう。そして空の行く場所に付いて行くだろう。この世界の女神として、可憐な少女とは思えない覚悟をした瞳に空は複雑な顔で嫌味を言うように呟く。
「………今の君は神様らしいよ」
「お嫌いですか?」
「うん、嫌い」
そうですか、と含み笑いをしながらネプギアは扉を閉めた。
死に場所を赴く二人に、アイエフ達は呆然と見つめ、イストワールは秘かに調べた判明した女神を要求する未来ゲハバーンの一部の情報を思い出しながら
「人の業を冥獄神が背負い、人の願いを女神が背負い……人間は何を背負って生きているんでしょうね」
と、悲しげにつぶやいた。
◇
【汚染化】バーチェフォレスト。ネガティブエネルギーがゲイムギョウ界中に付与されている女神の加護を無効にさせるほどの濃密なエネルギー。故にそこに出現するのは、剥き出した負によって闇の欲望に魂すらも浸食された地獄の悪魔達。
プラネテューヌ教会から発令された非常事態警報によって、バーチェフォレストの近くには軍が防衛ラインを作り出している。他国に比べてシェアの減少率が一番少なく、教会のトップが優秀でありその指示もあって短時間で必要最低限の事は出来ている。
「…………」
「驚いた?中はもっと凄い事になっているよ」
そんな場所に二人だけ入口に立っていた。
一人はこの国の女神候補生ネプギア、もう一人は元ゲイムギョウ界の管理者である夜天 空。
一歩踏み出すごとに数えるのがバカらしくなるほどの蟻が大軍を思わせる程の気配が、近づく程に肌を刺すネガティブエネルギーが乗った黒い風が吹いてくる。
数日前にゲイムキャラを探しに来た時は、まだ光が差し込み自然な美しさがあったが、今は光を通さない漆黒の闇がダンジョンを飲み込んでいた。
「最終確認だ。本当に来る?死ぬ確率の方が高いよ」
「……空さんこそ、怖くないんですか?」
「僕ほど命が軽い奴はいないんだよ。……っで、どう?なんとか出来ても手柄は全部君に--」
全てを言い終える前にネプギアに淡い光が包み込まれ姿が見えなくなる。
光が晴れると、そこには深い紫色のプロセッサユニットを纏ったパープルシスターの姿があった。空は驚いたように目を開き、女神化したネプギアの戦意ある答えに視線を魑魅魍魎が集結しているだろうダンジョンの入り口に視線を変えた。その手には二つの魔銃を握りしめて。
「それじゃいく『黄昏の時間は終わったか』!?」
突入する為に構えた瞬間、ダンジョンの奥深くから切り裂くような声に二人の動きが止まった。
「……貴方が、アイン・アルですか」
『ああ、そして我が手中には女神喰らいの魔剣がある』
「それを聞いて安心した。本当なら色々問いただしたいんだけどは、君を討たせてもらうよ」
『それは、楽しみだ。だが---私は黒き女神以外に殺されるつもりは一切ない。来い我が深淵にて相手をしてやる。貴様たちは大事な世界救済為の生贄だ。私が直々に勝負しよう』
アイン・アルの言葉にネプギアは直ぐに理解した。
このブラッディハードは黒き女神にブラックハート---ノワールに殺されたんだろう。それは誰よりもゲイムギョウ界を治めれると信じていたから。ブラッディハードは少しずつ歪んでいく人の心を絶望によって一度破壊尽くし、女神に討たれることで人の心を再構成する為の必要悪。
そして、ブラックハート以外の女神を女神を要求する未来ゲハバーンで殺して、世界の意志は残された希望の女神ブラックハートに集中し、自身が討たれる事でゲイムギョウ界を唯一の女神が支配する悲劇ながら希望が残された物語を作り出す。それがアイン・アルの目的。
「………ふざけないで、ください…………ッ」
「ネプギア!!」
「何のために四人も女神がいると思っているんですかッ。人が一人で生きていけないように、女神も一つじゃ……存在する意味がなくなるんですよッ堕落していくんですよッ」
ギリギリと嫌な音を立てながら握りしめられる拳。嘔吐感を必死で止める絞り出す声。
その瞬間には地面を蹴り、バックプロセッサから吹き出す光の推進剤によって迷いなくダンジョンの中に突撃する。少し遅れて空も急ぎで躊躇なく闇が支配する空間に飛び込む。
二人ともどこにアイン・アルが居るかは想像が出来た。否誘導されている事が。
ここは元々木の中のダンジョンだった。故に広大な空間が広がっている勿論それは【汚染化】により、星が輝かない闇夜へとなっていたが、底なしの殺意と餓えを見せる鈍い紅い瞳達が蟻の大軍のように蠢く、それを見れば先の道は自ずと分かった。
「来たか、我らの天敵」
モンスターに一度も襲われずに二人は、数分でアイン・アルの居る空間に到達した。そこは少し前にゲイムキャラが居た場所、バーチェフォレストの中央に近い場所であり同時に天上に近い場所でもあった。
「……お兄ちゃんッ!」
「紅夜!デペア!!返事しろ」
「無駄だ。既に我が深淵の中に声を届かせる為には、まず我を倒すことだな」
微かに光が差し込む空間の中で異なる色をした双眸が薄暗い闇の中で微かに見えたのは間違いなく、ブラッディハードの姿をした零崎 紅夜の姿。
「人の心に永遠に刻まれる温かな希望の為に、まずは全ての人類を絶望の坩堝に叩き落とす」
「女神は……女神は複数いて意味を成すんですッ!」
「ネプギア、こいつに言葉は通じないよ。あいつに届くのはブラックハートを賛歌する人々の声だけだ!」
同僚を殺し、女神を殺し、最後に女神に殺された世界を一つにしたブラッディハード。
全ての悪行を背負うことで、全ての絶望を生み出すことで、作り出された光の唯一神。
果たして、その先の未来が幸福が続いたのか、如何なる終末を迎えたのか、それは歴史の闇に葬られた。
しかし、目の前にいるブラッディハードは間違いなく、それを正しいと信じている。絶対に折れぬ確固たる自我はネガティブエネルギーを取り込み続け、負の意志によって左右されモンスター化するのではなく、逆に自身で生み出したネガティブエネルギーでモンスターを乗っ取り、世界終末を謳う大軍を作り出した女神すら絶望させた最悪の悪獣を総べる神へと至った。
「さぁ、今こそ世界終末の時計を鳴らそう---」
紅夜の体に憑依したアイン・アルが獲物を空に掲げた。
足元から溢れる極限量のネガティブエネルギー、咄嗟に二人の銃口が火を噴いたが、弾丸は漆黒の暴風によって全く別の場所に逸らされ、二人も鉄のような重たい暴風に体を吹き飛ばさ壁に叩きつけられる。
「狂気覚醒---ネクストフォームッ!!!」
極上の獲物に狙いを定めた獣の如き笑みを浮かべ、発せられた呪祖に世界は悲鳴を上げた。
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