No.779267

恋姫英雄譚 Neptune Spiear

志願者選抜試験中に元董卓軍最強の武人が現れる。

2015-05-24 07:18:20 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:644   閲覧ユーザー数:594

 

Mission08: Former Dong Zhuo Army of the strongest warrior

 

 

 

志願兵募集選抜試験開始から3日。ある程度の数を振るいに掛けることが出来た。残った人数は3,000人中1,000人まで少なくなり、既に2,000人が脱落。

 

足取りが重く帰路につく受験者達だが、ここで俺は2枚目のカードを使う。

 

俺が求める兵士には無理だが董卓軍兵士としては十分に魅力的だ。

 

だから董卓軍兵士として兵役に就く選択肢と国益の一角を担うことになる国直轄の農業要員に予備役の募集。

 

更には兵器開発部門や新設される独立警邏部隊入隊、軍直轄警邏専門傭兵部隊入隊の選択肢を用意したのだ。もちろん諦めて帰る人間には帰るまでの資金を用意しているのでどの選択肢を選んでも損はない。

 

漢王朝の腐敗で職に困っているんだ。だったらこっちはそれを逆に利用して徹底的に富国強兵にあてるということを月と詠達に話した。

 

それを聞いた保守派の文官達は積極的に内政に関わる俺を非難したが、詠はそれ等を一蹴し、選抜試験終了後に内容を記した書類を提出するようにと言ってきた。

 

ここまで来れば徹底的にやってやる。そう思いながら俺はその日の最後の面接者と面接を実施しようとしていた。

 

 

 

 

「ふぅ………ようやく次が最後の面接組か……」

 

「そうですね。ずっと面接続きでやはり疲れました」

 

 

俺の隣で同じように面接資料に目を通す黒髪のタレ目で、頭にピンク色の猫の髪飾りを身に付けている少女。

 

彼女の名前は法恵 文初で真名は小宵。

 

董卓軍にて内政を担当している文官であり、月殿とは大の仲良しとされている少女だ。

彼女は俺が提示した農業の構成に賛同してくれた1人であり、今は俺の補佐をしてくれている。

 

 

「本当に助かる今宵。俺1人では流石に捌き切れなかっただろうからな」

 

「いえいえ、気になさらないで下さいリアン様。それより次の面接組なのですが………」

 

「どうかしたか?」

 

「はい……一応は武官希望の方々のようですが、どうやら外国人の方々のようです」

 

「外国人?」

 

「はい、私達が五胡と戦っているというのはご存知でしょうか?」

 

 

俺は彼女から渡された資料に目を通す。五胡とは魏晋南北朝時代に中国へ侵入した匈奴・鮮卑・羯・氐・羌の5つの非漢民族‘‘胡人”の総称で、この付近ならば鮮卑の民族……つまりはモンゴル民族となる。

 

 

「この資料によれば次の面接組は鮮卑から来た方々のようです。賊とは違ってまだ纏まりはありますが、鮮卑には血気盛んな方々が多いですのでお気を付け下さい」

 

「分かった。だが少し楽しみ「あぁ‼︎ようやく見つけた‼︎」詠?」

 

 

今宵と歩いていると後ろから詠が血相をかいて駆け寄って来た。

 

 

「どうかしたか詠?まだ次の面接時間ではないぞ。デートの誘いもだ」

 

「そんなの一旦中断よ‼︎それよりあんたもさっさとボクに付いて来て‼︎あと逢引じゃないわよ‼︎馬鹿‼︎」

 

「なにかあったのか?」

 

「説明は後‼︎ほら‼︎早く‼︎」

 

 

そう言われながら詠は俺の袖を掴んでそのまま連行していき、今宵も急ぎ足で後に続く。

 

そして詠に連れて来られた志願者が集まる広場にてなんだか人だかりが出来ていた。

集まっている他の受験者達を掻き分けて進むと、抜けたと同時に広がった光景に唖然とした。

 

そこには筋肉が引き締まった男達12人が地面に倒れていて、その中央に長身かつ髪を馬尾に纏めていて、容姿はどちらかというと東洋の和服に近い服装で両耳に太陽の形を模した耳飾りを付けている霞と瓜二つの女性が肩に大薙刀を背負って立っていた。

 

 

 

 

「ぐっ……ぐそぅ……」

 

「なんであんた等が儂に負けたんか分かるか?」

 

「な……なんだと?」

 

「あんたらが儂に勝てんのはな……遅過ぎるからや。そんな鈍間で儂に喧嘩仕掛けて来よったんが間違いや」

 

 

倒れた男達を見下ろしながら口にする女性。状況からすれば倒れている連中が彼女に喧嘩を吹っかけて返り討ちにされたらしい。

すると詠が何やら怒気を込めながら叫んだ。

 

 

「ちょっとあんた‼︎」

 

「ん?……おぅ詠やないか?」

 

「あんたねぇ‼︎なんでここにあんたがいるのよ⁉︎」

 

「うちかて戻って来たくなかったわいな。せやけど天界の戦士にちょっと興味があったさかいな……隣におる兄ちゃんが噂の戦士かいな?」

 

「詠、こいつは?」

 

「こいつは「霰(しあん)姉ェ⁉︎」」

 

 

詠が話そうとしているとそれぞれ得物を手にした霞、嵐、迅、雷が駆け寄って来た。

 

 

「お〜お〜、元気そうやなぃか小童共」

 

「やかましぃわ‼︎今さら何しに来よってん⁉︎」

 

「霞……なんだか君に似ているが……」

 

「リアン、こいつはなぁ………一言で言うたらうちの姉や」

 

「あ……姉だと?」

 

「せや。儂はそこにおる霞の姉で張麗 公越や。宜しゅうな」

 

 

だから姿が瓜二つなのか……。

 

しかし実際の張遼に兄である張汎という人物がいるというのは知っているが、張麗という武将は聞いたことがない。

それに何やら唯ならぬ雰囲気を醸し出している。

 

 

「………張麗殿が霞殿の姉だということは分かった……だかこの雰囲気はどうしたんだ?」

 

「正直言うたらウチ等、本気で怒ってるねん……この馬鹿姉は元々はウチ等の仲間やったんやけどな……」

 

「ある日、董卓様に暴言を吐いて一方的に当時の副師団長だった張遼に全てを押し付けて軍を抜けたのだ」

 

「……………」

 

「当たり前や。あんな甘っちょろい考えしか持たん嬢ちゃんに儂が武を振るうに値せえへんねん」

 

「うるさいわ‼︎私達が命を預けると考えてる月に侮辱するなんて許せないわよ‼︎」

 

「確かに安牌なのはいいことですがねぇ……あんたの場合は勝手が過ぎるんですよ」

 

「……私も皆と同意見です張麗様。あなたは最早ここにいる資格などありはしないです」

 

「相変わらず口だけは一丁前やなぁ……阿呆らしぃて欠伸が出よるわ」

 

 

 

 

………何だか腹が立って来た。

 

 

「なんやと……ウチ等のこと舐めくさりよんのか馬鹿姉‼︎」

 

「やかましいわぃ。んな口叩くんやったら儂に一回でも勝ってみんかい阿呆共「おい」なんや?」

 

「その辺にしておいたらどうだ?」

 

「あん?」

 

 

俺は装具を全て取り外し、忍者のみを携行して怒気を込めながら前に出る。

 

 

「あんたがあの子をどう思うかなんて勝手だ。人の考えは様々だからお前が月に従わないのも自由だ」

 

「……何が言いたいねん?」

 

「だがな……だからといって人の大事なものを土足で踏みにじっていいもんじゃない……それにあんたは俺に用があるんだろ?」

 

「話が早くて助かるわぁ……兄ちゃん。儂と勝負せぃ」

 

 

そういうと張麗は大薙刀を構え直し、鋒を俺に向けて来た。

 

 

「儂は儂の武を振るうに値する君主を探してんねん。兄ちゃんが主に相応しいかどうか見せんかい」

 

「………いいだろう。その無駄に高い自信……」

 

 

そういいながら俺は忍者の柄を掴み、鞘から一気に抜き取るとアイスピックのように持って構える。

 

 

「………完膚無きまでに砕いてやる」

 

「面白い………元董卓軍最強とゆわれた張 公越の刺突……受けれるもんなら受けてみろやぁああ‼︎‼︎」

 

 

そう叫ぶと張麗は目にも止まらぬ速さで俺に刺突を繰り出す。

素早く横に飛ぶと間髪入れずに張麗は大薙刀を振り上げ、一回転しながら左に薙ぎ払い、そのまま右に薙ぎ払いつつまた一回転しながらなぎ払う。

 

口でいう程の確かに素早い攻撃だ。それに太刀筋は確かに強者にしか身につかない確実かつ強力な一撃で的確に理想的な攻撃を見極めて仕掛けて来ている。

俺も忍者で攻撃を受け止めると弾き返して逆手で薙ぎ払い、勢いを利用して回し蹴りを見舞う。

 

張麗は身を低くして回避するが一回転しながら一気に忍者を振り下ろす。だが張麗も後方に飛んで回避すると着地と同時に斬り掛かって来た。

だが俺も振り上げる形で受け止めて力比べに発展した。

 

 

「やるやないか‼︎儂にここまで保たせたんは1人だけやで‼︎」

 

「なるほど……豪語するだけのことはある。力も技術も一流……何よりも素早い動きだ」

 

「当たり前や‼︎儂が最強なんやからな‼︎」

 

「だが力だけでは俺には勝てん‼︎」

 

 

 

 

そういうと俺は身体を横にずらして忍者を一気に手放す。対して張麗はいきなりの展開でバランスを崩し、倒れそうになった。

 

 

「なっ⁉︎」

 

 

そのまま彼女の懐に飛び込み、右手を摑むと引っ張りつつ、顎を押し上げて姿勢を崩す。

その間に彼女の足を引っ掛けて押し倒し、倒れた彼女の右腕を足で押さえ付け、素早く俺の足首からサバイバルナイフを抜き取って彼女に突き付けた。

 

この動きと技は首返し。武器を持った相手を封じ込む際に利用される拘束技だ。

 

俗にCQC(Close Quarters Combat/近接格闘)と呼ばれている。

 

張麗を取り押さえた俺に皆は唖然とするが、気にしないで俺は彼女を睨み付けながら刃をずらす。

 

 

「……………」

 

「これが差だ。分かったか?小童」

 

「………ちぃ……儂の負けや。好きにせぇ」

 

「………なら皆に謝れ。それで許してやる」

 

「あんたが望むんやったらな……勝ったもんに負けた奴は従うもんや」

 

「いい心掛けだ。しかし刺突の速さは見事だ。いいセンスだ」

 

「せんす……なんや分からんけど一個だけええか?」

 

「なんだ?」

 

「いつまで儂の乳を掴んどるねん?」

 

 

そう言われて俺は自身の左手の位置を確認する。

 

張麗の右腕を抑える為に体重が載せやすいように左足で押さえ付け、更に左手で身体を押さえ付けることで、より身動きを封じているのだが、よく見ると彼女の右胸を摑む形で押さえ付けていた。

 

そして暫く沈黙が続き、それにようやく理解した俺は顔を真っ赤にしながら慌てて離れた。

 

 

「あっ⁉︎いや⁉︎そっ⁉︎えっ⁉︎あっ⁉︎」

 

「女を泣かすんやったら閨の時だけにしときや。助平」

 

「がっ⁉︎が⁉︎あ⁉︎いや⁉︎ぶ⁉︎ぶはぁあああっ⁉︎」

 

 

………最後の一言で俺は慌てて、恥ずかしい余りやがて身体中から蒸気を出すかの如くの勢いで倒れた。

 

 

「おっ?なんや?渋い顔して偉い可愛らしいとこもあるみたいやな?」

 

「なに感心しとんねん馬鹿姉‼︎」

 

 

………なにやら話し声が聞こえるが、俺の意識は闇に消えていった……………。

 

 

 


 
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