No.77723

真・恋姫†無双~江東の花嫁~(壱五)

minazukiさん

いよいよ赤壁の戦いに進んでいきます~。
しかしその一方で一刀に何かが起こり始めようとしていました!

2009-06-07 02:04:41 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:28374   閲覧ユーザー数:19393

(壱五)

 

 呉の国が平穏な時を過ごしている間に、曹操は勢力を拡大していった。

 

 揚州での失態を取り戻すようにまずは涼州の馬騰を攻め、次に徐州の劉備を攻撃した。

 

 曹魏軍の大軍の前に成す術のない劉備はあっさりと徐州を放棄した。

 

 そして呉の雪蓮に領内の横断の許可を求めてきたため、雪蓮は同盟強化を提案した。

 

 劉備はそれを承諾したため、また信頼の証として真名を授けた。

 

 雪連も攻撃をしないという誓約の証として真名を劉備に授け、ここに完全な同盟が成立した。

 

 その後、劉備は益州に侵攻してそこを領土とし、蜀の国を成立させた。

 

 そんな慌しく動く世の中で雪蓮と一刀は自分達の理想を成就すために動き始めた。

 

「とりあえずは今のとこは予定通りね」

 

 水軍の訓練を冥琳達に任せて雪蓮は一刀と酒を呑みながら語っていた。

 

「桃香達も予定通り、益州を押さえたからとりあえずは三分にはなったわ」

 

 だが最大の問題である曹操を会談の席に引きずり出すことを考えると決して楽観的ではいられなかった。

 

「明命の持ち帰った情報だと総勢百万の遠征軍が組織されているそうだね」

 

「こっちの連合軍を併せても全軍で七十万。面白いほどの差ね」

 

「だからこそここに誘き寄せるんだよ」

 

 絶対数で劣る呉蜀連合軍は話し合いの結果、魏軍を荊州の赤壁に誘き出すことになった。

 

 陸地での戦いでは不利だが水上戦なら有利に運べる。

 

 その為に今、明命と思春が雪蓮の命を受けて曹魏軍の紛れて工作活動をしていた。

 

「勝って平和な世の中にするためだよ」

 

「そうね」

 

 一刀の想いに頷く雪蓮。

 

 もはや呉にとって欠かせない存在となっている一刀の成長に雪蓮は嬉しさを感じると同時に不安も感じていた。

 

 どこか遠くに行ってしまうようなそんな感覚に時折、襲われていた。

 

 初めは気のせいだと思っていたがこの頃になると一刀の姿を見ないと安心できない日々が続いていた。

 

「雪蓮?」

 

「……どうかしたの?」

 

「珍しいな、雪蓮がボーッてしているの」

 

「昨日の夜が激しかったからまだ疲れが残っているのかしらね」

 

「し、雪蓮さん!?」

 

 いきなり夜のことを言われ顔を赤くする一刀にいたずらっぽく笑みを浮かべる雪蓮。

 

 だがそういった行為ですら彼がここにいることを確認しているなんてことは言えなかった。

 

 自分と繋がり温もりを感じれれば安心できる。

 

 そしてつい激しくなってしまうのだが、それはそれで雪蓮は満足していた。

「平和になったら一刀の子供を産みたいわね」

 

「そういえばそんなことも言っていたね」

 

 自分が種馬だということをすっかり失念していた一刀は思い出したためにため息が漏れる。

 

「今は忙しいからみんなも我慢しているけれど、終わったら間違いなく襲われるわよ」

 

「はははっ……」

 

 冗談でないところがこの国の武将の怖いところだった。

 

「一刀」

 

「な、なに?」

 

「みんなに平等なのはいいけれど、一番は私だってことを忘れないでね?」

 

 近くに誰もいなければ間違いなく雪蓮は一刀を押し倒していただろう。

 

 残念なことに庭で月と詠、それに恋と音々音が落ち葉を集めて焚き火をしていた。

 

「そういえば、少しは慣れたかしら、一刀お兄様?」

 

 ひどくおかしそうに笑いながら一刀の困惑する言葉を言った。

 

「自分で言い出してなんだけど、色んな意味できついよ」

 

 月と詠を義妹としてからというものの、理性が飛びそうになるのを何度も我慢している一刀。

 

「へぅ……お、お義兄さま……」

 

 顔を真っ赤にさせ身体をモジモジさせながら言う月と、

 

「べ、別にアンタを、に、義兄さんだなんて言いたいわけじゃあないんだからね」

 

 と横に向きながらも頬を紅く染めている詠のダブル攻撃に一刀はノックアウト寸前だった。

 

「まぁ自分でいったことなんだから責任持ちなさいね」

 

「雪蓮だって賛成しただろう?」

 

「あら、私はあなたの意見に賛成しただけであって私が言い出したわけではないわよ?」

 

 雪蓮の意地の悪い笑みに何もいえなくなる一刀。

 

 言い合いになるとまず負ける一刀は諦めるしかなかった。

 

「でもあれなのよね」

 

「なんだよ?」

 

「もし私が一刀と夫婦になればあの二人にとって私も義理の姉になるわけよね」

 

 それは当たり前だが二人にとって義妹が増えるということになる。

 

 蓮華に小蓮、月に詠。

 

 そう考えると一刀は底知れぬ悪寒を感じる。

 

「まぁがんばりなさい、おにいさん♪」

 

「それはお互い様だよ、おねえさん」

 

「あ、それいいかも」

 

「……勘弁してくれ」

 

 雪蓮の笑みに一刀はますます落ち込むばかりだった。

 数日後。

 

 雪蓮と一刀は赤壁に向かって出陣をした。

 

 先に行って準備を進めている冥琳から桃香達、蜀軍がやってきたとの情報がはいったからだった。

 

 そして出陣の日。

 

 城には小蓮と月、詠に音々音と華雄が残ることになった。

 

「恋さん、お義兄さまのことをお願いします」

 

「コクッ」

 

「私達を義妹にしたんだから勝手にやられないでよね」

 

「気をつけるよ」

 

「……ふんっ」

 

 文句を言いながらも詠は一刀が無事に帰ってくることを願った。

 

「華雄、今回は留守番頼むよ」

 

 本当ならばついていきたかった華雄だが、安全とはいえ月達を守る者がいなければならなかった。

 

「一刀様の命ならば仕方ない。呂布、私の分も一刀様を守ってくれよ」

 

「コクッ」

 

 恋は静かに華雄の願いを受けた。

 

「お義兄さま……」

 

 月は不安な表情を浮かべながら一刀の前に歩み寄る。

 

「どうか……どうかご無事でお戻りください……」

 

 月にとってもう二度と一刀が傷つき苦しむ姿を見たくなかった。

 

 あの時も天に祈り続けたことは隣にいた詠が一番よく知っていた。

 

 その詠も一刀の前にやって来た。

 

「月が悲しむから無事に帰ってきなさいよ。いいわね」

 

「うん。わかった」

 

 一刀は頷き、そして二人を抱きしめた。

 

「ち、ちょっと……!?」

 

「……へぅ!?」

 

 恥ずかしがる二人の耳元で一刀は囁いた。

 

「必ず戻ってくるよ。だから安心してくれ」

 

 その言葉を聞いて月と詠は自然に一刀の背中に手を回し抱きしめ返す。

 

「はい……お義兄さま……」

 

「本当に戻ってきなさいよ。…………さん」

 

「うん」

 

 そう答えて一刀は二人を離して馬に乗る。

 

「それじゃあ行くわよ」

 

 雪蓮の合図で馬を進めていく。

 

 それを見送る月達。

 

 両手を合わせて目を閉じ、無事を祈る月。

 

 その姿を見て詠も同じように祈った。

 決戦場となる赤壁。

 

 そこにはすでに呉蜀の連合軍が揃っていた。

 

 蜀からは主君である劉備こと桃香をはじめ、関羽、張飛、趙雲、黄忠、馬超、それに軍師の諸葛亮と鳳統といった顔ぶれが揃っていた。

 

「ようやく落ち着いて会えたわね、桃香」

 

「はい、お久しぶりです雪蓮さん」

 

 徐州からの敗走途中で出会って以来の再会に喜ぶ二人。

 

「あ、あの、天の御遣い様ですか?」

 

 雪蓮のそばに控えていた一刀に気づいた桃香。

 

「初めまして……ではないよね、劉備さん」

 

 反董卓連合の時に出会っただけだが何となく頭の隅に記憶していた一刀に桃香は嬉しそうに頷く。

 

「あの時はいろいろ変なこといってごめんな」

 

「変なこと?」

 

 覚えていないのか桃香は不思議そうな顔をする。

 

「ほら、華雄のことや董卓達のことだよ」

 

「ああ~、あれですね。いいえ、ぜんぜん大丈夫でしたよ♪」

 

 どこかあっけらかんとした感じで答える桃香に一刀は苦笑する。

 

「一刀~。そろそろ本題に入っていいかしら?」

 

 なぜか不機嫌そうに言う雪蓮。

 

「え?あ、ああ、いいよ」

 

 桃香に一礼をして後ろに下がる。

 

 そこへ冥琳が耳打ちをしてきた。

 

「北郷殿、あまり他所の女性を口説くと後が怖いぞ」

 

「……口説かないって」

 

 そう答えて雪蓮と話をする桃香を見るとそこにある笑顔に思わず見とれてしまった。

 

「言っているそばから……」

 

 ため息混じりに冥琳は一刀の腕をつねった。

 

「痛いって……」

 

「そこ、静かにしなさい」

 

 前からは雪蓮が少し怒った口調で注意してくる。

 

「す、すいません」

 

 一刀はとりあえず頭を下げて謝った。

 それなりの緊張感がある作戦会議の中で一刀は思った。

 

 主だった武将がこの赤壁に集まることになる。

 

 その中で自分が混ざっていることが不思議だった。

 

 お互いの軍師の白熱した意見交換に武将同士の会話。

 

 まるでそこには自分がいなくても問題ないのではないかと思うほど自然な感じがしていた。

 

 すると、妙な感覚が一刀を襲った。

 

 それは眩暈のようなただの頭痛のようなものだった。

 

 そして力なく椅子に座り込んでしまった。

 

「一刀?」

 

 それに気づいたのは蓮華だった。

 

「どうかしたの?」

 

 心配そうに一刀に言う蓮華の声に他の武将達も話をやめて彼を見る。

 

「だ、大丈夫。少しだけ眩暈がしただけだから」

 

「一刀」

 

 雪蓮が近寄ってきた。

 

「城からここまできてまだ休息もとらないで軍議をしちゃったから疲れが出たのかもしれないわ。桃香、少し休息しないかしら?」

 

「あ、はい。少し休みましょう」

 

 桃香の言葉に天幕の中の空気が緩んだ。

 

「一刀、大丈夫?」

 

「ああ、大丈夫。少し休んだら元気になるさ」

 

 自分でもただの疲れが溜まっただけだと思っていた。

 

 顔色も少しだけ優れない。

 

「少し横になって休みなさい」

 

「ごめん……。そうさせてもらうよ」

 

「私が連れて行ってあげるから。蓮華、私の代わりに桃香達に何か用意してあげて」

 

「は、はい」

 

 一刀を支えながら雪蓮は天幕を出た。

 

 その後姿を不安そうに見守る冥琳達だったが雪蓮に任せるしかないと思い、劉備軍の武将達と再び話を始めた。

 一刀の与えられた天幕に入り、一刀を寝台に寝かしつけて雪蓮は近くにあった椅子に座った。

 

「少し眠れば大丈夫だから」

 

 心配をかけまいとそう言うが逆に雪蓮を不安にさせる。

 

「何か私にできることがあれば言いなさいよ。何でもしてあげるから」

 

「ありがとう。でも今は戦いの準備をしておかないと」

 

 自分よりも戦いを優先させようとする一刀に雪蓮は表情を曇らせる。

 

 それは明らかに一人の女性としての表情だった。

 

「今は一刀の体調のほうが気になるわ」

 

「でも……」

 

「まだ曹操は来ていないわ。だから今日ぐらい休んでも誰も文句は言わないわ」

 

 ここに来る間にも一刀は雪蓮と戦いとその後に待っている問題などを連日のように話をしていた。

 

 それはまるで生き急いでいるかのように思われた。

 

「大丈夫だから。だから何でも言いなさい」

 

 雪蓮はそんな不安を打ち消すように一刀の額に手を当てる。

 

「それじゃあ……手を握っていてほしい」

 

「手を?いいわよ」

 

 一刀の差し出された手を両手でしっかりと優しく包む。

 

「これが終われば平和がくるわ。でも、その前にあなたが倒れたら何の意味もないんだから、気をつけなさいね」

 

「そうだね。雪蓮との約束もあるしね」

 

 平和な時代になれば二人で旅をするという約束。

 

「その為にも今日だけはゆっくりと休みなさい」

 

「雪蓮」

 

「なに?」

 

「ずっと傍にいてほしい」

 

「……一刀」

 

 一刀はゆっくりと目を閉じて眠った。

 

 その姿を見て雪蓮は椅子から離れて寝台に膝をついて、一刀の顔に自分の顔を近づけた。

 

「私だって傍にいてほしいわよ」

 

 ゆっくりと眠る一刀の唇に自分の唇を重ねた。

 

 風は西北。

 

 曹操率いる曹魏軍との激突まであと少しだった。

(座談)

水無月:さて、いよいよ赤壁編に突入です。

 

冥琳 :運命の戦いというわけね。

 

水無月:この物語の前半戦最後の戦いになりますがどうなることやら。

 

冥琳 :ところで、聞いた話だけどこの赤壁編も少し長いのよね?

 

水無月:そうですよ~。さすがにこれも避けて通れないのでじっくりと書ければいいかなと。

 

冥琳 :映画のように長くなれば大変よ?

 

水無月:まぁその辺はこれから考えます。ところで雪蓮さんは?

 

冥琳 :今日は先に寝るって言ってたわ。

 

水無月:そうですか~。まぁこれから大変ですからね~。

 

冥琳 :そういうわけで次回は赤壁編第二話ね。

 

水無月;そうです~。何話になるかわかりませんが、とりあえずがんばっていきますのでよろしくお願いいたします。(ペコ)


 
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