No.776718 九番目の熾天使・外伝~マーセナリーズ・クリード~番外編 サイドアームズokakaさん 2015-05-11 21:20:15 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:517 閲覧ユーザー数:472 |
番外編【サイドアームズ】1 ~獅子と聖剣~ 後編4
――――――――完全に動きを止めた大型グラディエーター、そこから銃剣を引き抜いたokakaはデュランダルをガウォーク形態に変形させるとディアとの通信回線を開いた。
『おい、聞こえてるか馬鹿野郎。生きてんなら返事しろ。お前にはたっぷり説教・・・』
そこまでいうとokakaは言葉が続かなくなってしまった。通信機から漏れ出る微かな嗚咽に気付いたからだ。
『ごめん・・・ごめんね皆・・・助けるって・・・約束したのに・・・』
ディアの自責の念が嗚咽に混じって聞こえてくる。理由は容易に把握できた。
YF-29はフォールドクォーツを大量に使用し、その効果を最大限に発揮するために作られた機体だ。okakaはここにたどり着く前に混信してきたフォールド波通信で大体の事情を理解していた。そして、涙の理由をも――――――――――――――――
『一人も助けられなかった・・・ただの一人も救ってあげられなかった!』
今この場にある生体反応、そしてフォールド波の静寂は今ここにいる生存者がokakaとディアの二人だけであると無情に告げていた。
元々のリミッター解除による負荷、そしてディアを助けるために無数の砲弾と矢、大型グラディエーターの打撃を浴び続けていたのだ。無事でいられることはありえなかった。
『ごめんね・・・ごめんね・・・』
ディアは、この優しい少年は【自身の助けられなかった悔しさ、死んでしまった子供達に何もしてやれなかった己の無力さに泣いているのだ】と。
だからこそ、okakaはそんなディアに腹を立てた。ふざけるな、本当に何もできなかったとでも思っているのか。そんなことを思いながらokakaはコックピットハッチを開き、黄色と黒の縞模様に塗られた離脱用のレバーを引いた。
それと同時にコックピット内の操縦桿、スロットルレバー、シート上部、ペダルが共に空中に放り出され、okakaの体に装甲を伴って装着され、飛行翼が広がり、背面の小型エンジンが点火した。
okakaはコックピット兼用のパワードスーツ【EX-ギア】でそのままレオの後部に回りこむと緊急時用の外部パネルを操作しレオのコックピットハッチを強制的に開放した。
「おいコラ馬鹿、聞こえてるかって言ってんだ返事ぐらいしやがれ!」
ハッチから内部を覗きこんだokakaはディアの肩を掴んで無理矢理振り向かせた。
「okaka・・・さん・・・僕は・・・僕は!」
涙を溜めた目をokakaに向けた瞬間、ディアの頬に紫色のヒビが入った。そして、そのヒビは少しずつ広がっていく。
「【絶望】か・・・」
自身にファントムを宿しているディアは絶望すると全身が砕け散り、内部のファントムが飛び出してきてしまう。つまり死んでしまうのだ。絶望してしまったディアは今まさに死の淵に晒されていた。
「・・けんな・・・ふざけんな馬鹿野郎!」
絶望したディアをokakaは力任せにシートから引き剥がすとレオのコックピットから放り出した。突然の出来事にディアは対応出来ず、地面に叩き付けられる。そこからまた全身にヒビが広がった。
「okakaさん・・・?」
「歯ぁ食い縛れぇっ!」
あっけにとられたディアの胸ぐらを掴みあげたokakaはそのままEX-ギアの右手部分を外し、思いっきり顔面に拳を叩きつけた。ディアのヘルメットが外れるほどの勢いで、そこからまた大きなヒビが入るのもお構いなしに。
「ぐうっ!一体何を・・・「いいかよく聞け!」!?」
ディアの抗議の声を遮り、okakaは再び胸ぐらを掴みあげ、強引に立たせた。
「お前の単純な思考なんざ丸わかりだ!どうせ自分の力不足だの助けられなかっただのウジウジ悩んで絶望してんだろ!違うか!?ああ!?」
ヘルメットがぶつかるほどの至近距離で罵声を浴びせられる。そして自分の思考を当てられ、それをなじられた。そのことにディアの頭にも血が上る。
「それの・・・それの何がいけないんですか!絶対に助けるって約束したんです!そのための力だったんです!でも敵わなかった!逆に助けられた!そのせいで皆死んでしまったんですよ!?絶望しないほうがどうかしてる!狂ってますよ!」
okakaの胸ぐらを掴み返し、逆に怒鳴り返す。
「死にたくないって言ってたんです・・・苦しんでたんです・・・兵器なんかじゃなくて、人間に戻してあげられるはずだったんです!」
「・・・」
「それがこのザマですよ!誰一人として人間には戻れなかった!兵器のまま死んでしまったんです!」
「・・・?まてディア、お前まさか聞こえてなかったのか?」
ディアの慟哭に耳を傾けていたokakaは疑問を感じた。どこかで自分たちの認識がズレている。ボタンの掛け違いをしているような感覚が口をついて出た。
「聞こえてましたよ・・・死にたくないって声が、あいつをやっつけてって声が・・・だから僕は!」
ディアはそう言うと俯いてしまった。その言葉を聞いて認識の齟齬を確信したokakaは溜息と共に掴みあげていたディアを下ろした。
「やっぱり聞こえてなかったのか、あの子達の最後の声が」
「最後の・・・声?」
okakaの指摘に俯いていたディアは顔を上げた。
「おそらく俺のほうがフォールド波を拾いやすかったからだろう、あの子達は死ぬ瞬間、一言だけ遺して逝ったよ。『ありがとう』ってな」
ありがとう、自分には聞こえてなかったその言葉にディアは肩を震わせた。助けてあげられなかったはずなのに、死んでしまったのになぜ、ありがとうなんて言い遺したのだろう。ディアはわからなかった。
「そんな・・・」
「急ごしらえの通信機には微弱すぎて聞こえなかったんだろうな。だがこれで解ったろ?お前は立派にあの子達を救ってやれてたんだ。あの子達は【人間として死んだ】自分達の意志でカレラに立ち向かって、自分達の意志でお前を守った。命は救ってやれなかったかもしれんが、お前はあの子達の【魂】を救ってやれたんだ」
「魂・・・」
「解ったか?解ったら胸を張れ!前を向け!お前はあの子達を救った英雄をここで死なせるのか!?お前を想う人やこれから救うかもしれない誰かや何かを見捨てるのか!?戦うことを選んだ以上、立ち止まることなんか許されてねぇんだ!」
okakaの叱責にディアは自身の心に再び火が灯るのを感じた。そうだ、自分はこんなところで死んではいけない。守るために戦う以上、立ち止まってなんかいられらない。ディアの心に再び希望が芽生えた。
「そう・・・ですね・・・僕はこんなところじゃ終われない!あの子達のためにも、終わっちゃいけないんだ!」
ディアの叫びとともに全身のヒビから暖かい光が溢れだすと同時にふさがっていく。再び希望を取り戻したことで自身のファントムを押さえ込んだのだ。
「ったく・・・一々手間掛けさせんな馬鹿野郎」
「すみません、でももう大丈夫です。もう簡単には折れたりしませんから」
自力で立ち上がったディアを見て、大丈夫そうだと判断したokakaは損傷の激しいレオに視線を向けた。
「さて・・・あとはこいつをどうやって持って帰るかだな・・・またデュランダルに吊るすか?」
「もう超音速ジェットコースターは嫌ですよ!」
「じゃどうするんだ?魔力だけで帰れるのか?」
「うっ・・・」
反論できず、言葉に詰まったディアを尻目に、さっさと運んでしまおうと思ったokakaがデュランダルのコックピットに戻ろうとしたその時だった。
ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン――――――――――――――――
「!?なんだ!?」
「解りません!いきなり地面が揺れて・・・」
突然の揺れと共に周囲から鳴り響くアラート、何が起きているのかと二人があたりを見回した時だった。
『おのれぇ・・・貴様ら、よくもワシの研キュうを・・・許サん・・・ユルサンゾォォォォォォォォォ!!』
「!?今のは・・・なっ!?」
「嘘だろおい!?」
突然響き渡る声、声のする方を向いた二人は思わず息を呑んだ。
『ユルサン・・・キサマラ・・・ミナゴロシジャァァァァァァァァァァ!!』
二人の視線の先、そこには撃破したはずの大型グラディエーターが立ち上がり周囲に向けて触手のような金属塊を走らせていた。
通常とは明らかに違う異様な光景、その中央にいる大型グラディエーターのハッチが開き、カレラ・セトメが姿を現した。
『ユルサン・・・ユルサン・・・ユルサンンンンンンン!!!!!!!!!!!くぁwせdrftgyふじこlp;@:!”#$%&’()=~|』
全身を金属に飲み込まれたカレラだったものは怨嗟の声と共に姿を変えていく。そして、その金属塊は30m程に膨れ上がると、天井を突き破り、地上へと飛び上がっていった。
「マズい、あんなものが地上にでたら何が起きるかわからんぞ!」
「急いで追いかけましょう!こうなったらもう一度ブルライドくらい・・・」
okakaがデュランダルのコックピットに飛び乗り、ディアが覚悟を決めた瞬間、通常回線で通信が入った。
『おいおい何だこりゃ!?なにが起きてるんだ!?』
その直後、XL-2【緊急展開ブースター】を切り離したM9【ガーンズバック】が二人の間に滑りこんできた。
『なんだかわからんが一応予備のエナジーフィラー持ってきたぞ?要るか?』
そう言いながら声の主、M9のオペレーター、ロキはM9の抱えていたKMFの動力源、ユグドラシルドライブの触媒【エナジーフィラー】を掲げてみせた。
『『後で説明するから、今すぐそれをよこせ(ください)!!』』
『お、おう・・・』
鬼気迫る二人の反応に驚きながらもロキはフィラーカバーを開けたレオの背後に回ると交換作業を開始した。――――――――――――
―――――――――――――その頃、地上では―――――――――――――
「なんだ!?」
制圧が終わり、okakaの鹵獲した機体と自分達の撃破した機体などの残骸回収を手伝っていた支配人は地面に強烈な揺れを感知し、SC2を空中へ避難させた。
『地中より高熱源反応、来ます』
桃花の通信と同時に地下から巨大な金属塊が地表を突き破り飛び出してきた。そしてそれは、空中にとどまると無数の触手を伸ばし、手当たり次第にあらゆるものを飲み込んでいった。
「手当たり次第に機械を食ってやがるのか・・・」
支配人はマクロスクォーターの甲板に着艦すると、PT用の狙撃砲【ブーステッドライフル】を構え、金属塊に向けた。
しかし、いざ発砲しようとしたその時、金属塊が大きく歪み、5つに分裂した。そして、中央の巨大な塊を中心として、それぞれが有機的に蠢き、人型を形成していく。その形に支配人は見覚えがあった。
「まさかアレは・・・マシンセル・・・なのか・・・?」
【マシンセル】自己増殖、自己再生、そして自己進化の概念を持った金属細胞。その危険さを知る支配人は戦慄した。自身の知るマシンセルとは何かが違う、おそらく進化しているのだろう。だが、それらの成した形には見覚えがあった。
『『『『『グオォォォォォォォォォォッ!!!!!!!!!』』』』』
周囲の4つの塊は変異型PT【ベルゲルミル】に、そして中央の巨大な塊は変異型特機【スレードゲルミル】へと姿を変えたのだ。
「くっ・・・よりにもよってこいつらか!」
支配人が悪態をついたその時、スレードゲルミルが横から殴りつけられた用に爆発した。
「今度はなんだ!?『私だ』!?」
二転三転する状況に支配人がうんざりした叫びを上げた瞬間、通信に割り込んできたのは聞き慣れた声だった。
『団長に無理を言って出てきたが・・・セトメが相手なら私も戦列に加わらせてもらう!』
突然の乱入者、【OTAKU旅団No.2 Unknown】の宣言と共に乗艦であり、大ガラミス艦隊総旗艦【宇宙戦艦ヤマト】の主砲、【48サンチ三連装陽電子衝撃砲塔】が火を吹いた――――――――――――――――――――――
あとがき
ついにアン娘乱入!波動砲はまだ撃たせないからな!次回で決着・・・付けばいいなぁ・・・orz
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後編その4です