No.775331

恋姫OROCHI(仮) 参章・弐ノ壱 ~噂の調査~

DTKさん

どうも、DTKです。
お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、51本目です。

明命の過去は少しお休みしまして、今回から三回(予定)は、凪が持ってきた化け物の噂を調査する組のお話です。

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2015-05-04 23:05:02 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:4044   閲覧ユーザー数:3529

 

 

 

洛陽から南西へ下ることしばらく。

俺たちは、ある山裾の集落に来ていた。

 

「隊長、こちらです」

 

凪が先導してくれる。

ここへは、凪が都から洛陽へと向かうとき耳にした、化け物の噂を調査するために来たのだ。

だが……

 

「化け物って、鬼のことだよな?早く殺り合いてぇぜ!」

 

小夜叉は殺る気満々だ。

どうやら春蘭あたりと気が合いそうな戦闘狂らしい。

剣丞が俺の言うことを良く聞くようにと言い含めてくれていたが…

春蘭と似ていることを考えれば、そのあたり怪しいものだ。

 

「もう~小夜叉ちゃん!まずは調査なの!悪くない鬼かもしれないの」

 

鞠ちゃんが、プンプンという効果音が聞こえてきそうな、可愛らしい感じでたしなめる。

今川氏真。

正直ほとんど知識はないけど、剣丞曰く、とても頭が良く腕も立つ娘、らしい。

こんなにちっちゃいのに…

 

「お~う、鞠はちゃ~んとやること分っとるや~ん!可愛いやっちゃの~、うりうり~♪」

 

霞は鞠ちゃんを抱き上げると、頭を撫でながら頬ずりをするという、ハードコンタクトをとる。

 

「や~ん、くすぐったいのー」

「ええがな、ええがな~」

 

まるで初孫を愛でる祖父のようだ。

 

「どや、こやちんも混ざるか?」

 

相変わらず鞠ちゃんに頬ずりしながら、視線を小夜叉の方に向ける。

 

「はぁっ!?誰が混ざるかバカじゃねぇかぁ!?てか、こやちんってオレのことかよ、ナメてんのかあぁん?やってやんよ!」

 

一瞬でぶち切れた小夜叉が槍を構える。

一触即発。

 

「はっはっは!元気があってえぇなぁ!春蘭と鈴々を足して割らんかったみたいや」

 

そんな空気にも全く臆せずに、笑い飛ばす霞。

このあたり、さすがは豪傑・張文遠といったところか。

 

「それにな~、小夜叉、ってちと可愛ないやん?せやから可愛(かい)らしく、こやちん、って呼びたいんやけど、えぇよな?」

「……けっ!勝手にしろや」

 

霞の笑顔に毒気を抜かれたのか、槍を引いてそっぽを向く小夜叉。

案外、この手のタイプが苦手なのかもしれない。

 

「よっしゃ!じゃあ聞き込み行くで~。こやちんも来ぃや~。凪っちもおいで~」

「あ……えっと…」

 

鞠ちゃんを抱えたまま、ズンズンと集落奥へ進んで行く霞と俺とを見比べる凪。

いいよ、と言うと、失礼します、と霞の後をついていった。

何気に小夜叉もちゃんとついていったようだ。

取り残される風と俺。

 

「……お兄さ~ん」

「なに?」

「この面子だと、風が喋る隙がないのですけど~…」

「…濃い面子だからね」

「台詞が無いと、風いないと思われてしまうのですよー」

 

身も蓋もないことを言い出した。

 

「それはさておき、俺たちも聞き込みに行こうか」

「ですね~」

 

こうして俺たちは、手分けをして化け物の噂を調査するのだった。

 

 

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

「ふむ…」

 

昼過ぎに合流した俺たちは、食事処で昼食をとりながら、持ち寄った情報を整理することになった。

 

「凪ちゃんの言ってたとおり、大きく分けて二種類の噂がありましたね~」

 

風が、ふむふむ、と仰々しく頷いてみせる。

 

「化け物は物々しい風体をしており、身の丈十尺、返り血のせいで全身は真っ赤に染まっている、と」

 

これが一つ。

 

「片や、別の異形のものをやっつけてくれる天女。豊かな胸をもち、紅玉のように赤い羽衣と美しい髪をしていた、ってか」

「私が聞いたときと、さほど変化はありませんね」

「う~ん…多分、この赤い化け物ってのは同じ事を言ってるんだろうけど…なんでこんなに違うんだろ?」

「さっぱり分からんわ」

 

俺と霞、そして凪は腕組みをしながら首を捻る。

と、

 

「おい一刀。テメェ馬鹿か?」

「な――」

 

突然の暴言に凪が絶句する。

 

「こ、小夜叉殿!いくらなんでも失礼が過ぎるでしょう!隊長にそのような……」

「馬鹿に馬鹿っつって何が悪ぃんだよ。こんなもん簡単だろうが」

「え――?」

 

小夜叉の予想外の発言に、またしても言葉が詰まる凪。

 

「簡単って、つまりこの噂が示すことが分かるのか?小夜叉」

「さっきからそう言ってんだろうが」

「いや、言うてへんで」

「なぁ、鞠?」

 

霞の突っ込みも完全にスルー。

 

「うん、簡単なの。ねぇ、風ちゃん?」

「はい~、簡単ですね~」

 

小さい組三人が連携して簡単を連呼する。

 

「え、なに?そんなに簡単?」

 

今の俺は、さぞかしアホ面をしていることだろう。

 

「ですね~。今回のように、対立関係にあるわけではない方々に、同一の事象について尋ねた場合に出てくる誤差は、思い込みや噂の尾ひれであることがほとんどです。それらをふるいにかけ、残った事実を取り出してあげると~?」

「正体は分からねぇが、赤くて強い奴がいる、ってことだろうが」

「なのっ!」

「な、なるほど……」

 

三人の説明は単純だが、的を射ている。

噂に惑わされていた俺が恥ずかしい。

風はともかく、小夜叉の直感力と鞠ちゃんの聡明さを、まざまざと認識させられた。

 

「はぁ~、なるほどなぁ…ほなら、目撃された場所はほとんど同じ場所やし、その辺に行ってみよか?」

「そうですね。元より我々はそのために来たのですしね」

「確かその辺りには、古い砦が一つあったはずですから、まずはそこまで行ってみましょうかー」

 

方針は決まった。

今から出れば、日が暮れる前には帰ってこられるだろう。

俺は食後のお茶を流し込むと、気合を入れて立ち上がった。

 

 

 

 


 
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