No.774332

Run! Run! Run! ボカロット猛レース! 第3話 呪われたレース

enarinさん

☆開幕戦前のほんわかムードとは一変して、シリアス推理モノの様相が・・・
☆サクーシャ=作者チームは、早々にリタイアでございます。
☆一体、真犯人は誰なのでしょう?

☆キャラも多めで、一応ロボレース&探偵物ですが、相変わらず色々なテーマを詰め込んでます。

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2015-04-30 11:02:43 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:527   閲覧ユーザー数:527

 開幕戦のレースの“残り周回”も、もう無くなってきていた。

 

 フィーーーーーーン!!!

 

 トップはミクからボカロットでの攻撃を受けたもののホバー走行に大きな問題はなかった“サクーシャカンパニー”のサクーシャだった。勿論、トップスピードは落ちてしまったので、他のボカロットとの歴然とした差はないものの、その類い希な機動性から、スルリと他からの攻撃をかわしていたので、あれからトップを守り抜いていた。安定した走行なのだが、パイロットのサクーシャの心にはあまり“余裕”がなかった。

 

サクーシャ:開幕戦の1位は貰ったと思うが、あのネギ色のツインテールの機体…ミクとかいうパイロットめ、一体俺が何をしたというんだ! 別に攻撃自体はルール内の事だから文句はないが、スタート直後の攻撃とか考えられん! それにあれからの執拗なマークと牽制… こっちのマシン性能が高いから追いつかれての接近戦がないから良いようなものの、あれから、ずっと2位をキープして、様子を伺っているスタンス…。こりゃ、本社に問い合わせて、“ミク”、そのものを調べないといかんな…

 ガシン!ガシン!ガシン!

 

 2位のミクも懸命にボカロットを操縦してサクーシャを追いかけていたが、差は縮まらなかった。

 

ミク:くっ、最大限のチューニングをしてもマシンの基本性能が足りない! それにミサイルの射程外をキープするとは…。この1戦はここまでか…

 

 “攻撃OK”、“邪魔OK”のルールとはいえ、走行競技なのだから、そうそう常に、ドッカンドッカン、戦いがあるわけではない。まして“開幕戦”、他のチームのデータもそう十分にあるわけではない。さらに初参戦2チームがトップ、2位をキープしてしまっている現状では、調査データがさらにないため、攻撃等に充填を置くボカロットには、非常に不利なレースだった。

 

 結局、スタート直後のミクの攻撃で被害を受けた2チームが少し順位を落とすだけで、おおむね、予選順位の順番が、本戦の結果に反映されたのだった。

 

TOP:ゼッケン09(サクーシャカンパニー) 合計ポイント25

2位:ゼッケン01(ナガネギーコーポレーション) 合計ポイント18

3位:ゼッケン06(AHSホールディングス) 合計ポイント15

4位:ゼッケン03(タコルカー鮮魚組合) 合計ポイント12

5位:ゼッケン07(アシュグループ) 合計ポイント10

6位:ゼッケン00(メイコ酒蔵株式会社) 合計ポイント8

7位:ゼッケン04(レーシングチーム・VY) 合計ポイント6

8位:ゼッケン05(印種不動産) 合計ポイント4

9位:ゼッケン02(ジナラシ組) 合計ポイント2

10位:ゼッケン08(フォーリナー) 合計ポイント1

 とりあえず“フォーリナー”チームは、予選のようにリタイアすることはなかったが、本調子が出せず、ビリとなってしまった。また、こんなレース状況になってしまったため、攻撃がメインの印種不動産、ジナラシ組、は、下位に終わってしまった。逆にアシュグループ、メイコ酒蔵株式会社が、ミクの攻撃をもろに受けてしまって順位を落としたため、後続で走っていた、AHSホールディングス、タコルカー鮮魚組合、はそのまま、2個上に順位を上げることが出来たので、ある意味“棚ぼた”だったわけだ。

 

 ミクは開幕戦の表彰台に登った後、レース主催側の関係者に呼ばれ、今後、スタート直後の攻撃、牽制、派手なコース取りをしない誓約書を書かされ、警告を受けてしまった。減点はないのだが、今後のレースで破れば、もっと厳しい“レース参加取り消し”もあり得ることを告げられた。

 

 その割にミクは平然としていた。ミクの頭の中にあるのは、あの“サクーシャチーム”の事や、警告で禁止された方法以外で追いつめる手段を考えることであった。

 

 とりあえず開幕戦が終わり、各チームは次のレースが始まるまで各会社に戻るわけだが、帰社するまでにピットで1日ほど、じっくりとマシンの状態を調べたり、ネット接続されているPCを使って情報を入手したりできる。

(レース後 夜 サクーシャカンパニー ピット)

 

 カタカタカタ…

 

 サクーシャは本社に戻る前に、社員パスワードを使って、自社のサイトに入り、“ミク”、の事を調べていた。

 

サクーシャ:…失踪事件…異様なボカロット目撃…一応の解決…犯人未だ見つからず…こ、これは…だから“俺”だと勘違いしたのか…

 

 サクーシャは、なにやら“ミク”に関する情報を入手したようだった。

 

 チッ…チッ…チッ…

 

サクーシャ:冗談じゃない! まだあいつ、ピットにいるはずだな。すぐにこの情報をプリントアウトして、誤解をt

 

 チッ、ドゴオオオオオオオオオン!!!!!!

 

 サクーシャチームのピット内部が“ひしゃげてしまう”程の大爆発が起こり、すぐに消防車、救急車、関係者達が集まり、消火活動が行われた。しかし、爆発の中心にいたサクーシャチームのボカロット“マネキネーコ”は大破し、サクーシャはひどい重傷を負ってしまった。

 

 担架に乗せられたサクーシャの元にミクが駆けつけ、サクーシャの顔をのぞき込んだ。

 

ミク:わ、私じゃないぞ

サクーシャ:わ・・・わかって・・・る。だ・・・が・・・俺も・・・“あの犯人”じゃ・・・ないぞ・・・この参加・・・チームの・・・誰かの・・・はず・・・だ・・・気を・・・つけろ・・・

ミク:・・・わかった。すまなかった…

サクーシャ:ああ・・・俺は・・・戦線・・・離脱だ・・・頑張れ・・・よ・・・

 

 この後、サクーシャは気絶してしまい、担架のまま救急車に乗せられ、コース直属の病院に救急搬送されていった。

 

ミク:犯人はアイツじゃなかった…。誰なんだ、“真犯人”は…

 

 その後、サクーシャチームのピットに治安警察の調査が入ったが、爆心地がボカロット燃料タンク部分だったことや、不審者や目撃者がいないこと、犯人に繋がるような痕跡が無かったことから、結局、『ボカロットの整備不良による、燃料への引火爆発』、と結論づけられてしまった。他のピットには奇跡的に損傷がなかった事から、年間のレーススケジュールに変更はなく、一ヶ月後にちゃんと予定通りの(別の)レース場で、第2戦が行われることになった。

 

 しかし、パイロット兼クルーのサクーシャが重傷を負ってしまった事から、開幕戦なのに、“サクーシャカンパニー”チームは、今年のレースから外されることになってしまった。次は、9チームによる戦いとなったわけだ。

 

ミク:あまり派手に立ち回ると、サクーシャのような被害者が出てしまう…。2戦以降は普通にレースをしながら探すことにせざるを得ないな…

 そして、一ヶ月後…

 

(第2戦 新潟県 ネオ佐渡島キンザンシティレース場)

 

 2戦目は、古来、金山で有名だった島をレース場に改造した場所が舞台だった。全10戦中の2戦目、まだまだ年間レースは序盤だったが、各チームのボルテージは高かった・・・と書きたいのだが、ミク以外のチームは、何か“緊迫した”ムードだった。理由は言わずもがな、“開幕戦のサクーシャの事故”だった。“事故”と警察からは見解があったものの、心からは信じ切れていなかった。サクーシャは“開幕1位”だったのだ。それが狙ったように事故でリタイアでは、“きな臭い”臭いがしても仕方がない。各チーム共に、

 

 『1位は危険だ。巧く1位を“毎回違うチーム”に譲り、自分は2位以下で年間レースを動いていって、トータルポイントで最後に優勝して、警備を最大限にしながら、さっさと自社に逃げる』

 

 作戦に出ているようだった。しかしミクは違っていた。警告を受けている事もあるのだが、各ボカロットとパイロットの挙動を調べるため、各順位を常に移動できるようなマシンチューニングを施して、様子を見る事にした。

 

 そして予選。今回はサクーシャが抜けた“9チーム”で行われた。各チーム、ガチのタイムアタックが出来ず、コースの記録的には宜しくない結果に終わってしまったが、とりあえず以下のような順位に決まった。

 

PP(ポールポジション):ゼッケン01(ナガネギーコーポレーション)

二番手:ゼッケン00(メイコ酒蔵株式会社)

三番手:ゼッケン03(タコルカー鮮魚組合)

四番手:ゼッケン04(レーシングチーム・VY)

五番手:ゼッケン07(アシュグループ)

六番手:ゼッケン06(AHSホールディングス)

七番手:ゼッケン02(ジナラシ組)

八番手:ゼッケン05(印種不動産)

最後尾:ゼッケン08(フォーリナー)

 今回も7位以下のチームが同じになってしまったのは、まさにあの事故への対応だった。ジナラシ組については、攻撃型故にボカロットの火器類にセーフティ装置を多めに積んでしまっていたこと。印種不動産は、パイロットのリュウトがかなり怖がってしまって、ビビットな走りが出来なかったこと。フォーリナーは、ボカロットの挑戦的なパーツを排除したため、バランスが崩れたことだった。

 

 対してミクのチームは、“相手をおびき出す”事も含めて、タイムは出来るだけ良いモノにしていた。“様子は見るが、食いつけばいいのだが”、それがミクの狙いだった。

 

 いずれにしても、主催者側もチーム側も、慎重な進行を心がけ、本戦がスタートした。

(本戦)

 

 START!

 

 ミクはとにかく危険のないコース取りで、2位を少し離しにかかった。

 

ミク:とりあえず団子状態では危険だ。少し離れて様子を見よう

 

 特に主催側からミクのマシンの無線に警告などは入らなかった。まずは順当な滑り出しだった。2位~6位までのチームは、予選タイムが似ていたこともあり、少し団子状態だった。しかし、あるチームが口火を切った。

 

 『レーシングチーム・VY』

 

 である。“2つのホバー車が合体するタイプ”の特殊なボカロットを生かし、前走のマシンの後ろに付けて、分離、追い越し、合体を繰り返して、次々抜かしていき、見る見るうちにミクの後ろまで上り付けていった。

 

ミズキ:やった! マシンの調査やっていてよかったね! アリヤ!

アリヤ:…ああ、だが、まだ“2位”だ。あのネギ色のボカロットの前に立ってから、勝ち鬨(かちどき)を上げて欲しい

ミズキ:ご、ごめん

アリヤ:では、行くぞ!

 

 1位を守っていたミクはバックモニターを観ながら、呟いた。

 

ミク:かかったの…か?

 ミクのボカロットにスリップストリームをかけたミズキ達のボカロットは、すぐさま分離し、追い越しにかかった。ミクのボカロットにパイロット無線が入る!

 

無線のミズキの声:貰ったよ!

ミク:甘い

 

 ブン!!!!!

 

 ミクは何を思ったのか、両サイドにぴったり張り付いたミズキとアリヤのボカロットの側面に、ツインテールを1本ずつ突き刺し、3車両が川の字になったように、走行を続けていた。

 

ミズキ:ちょ!!!!

アリヤ:くぅ!!!!

 

ミク:アンカー付きのツインテールだ。こちらで操作しないと絶対にはずれない。分離しているからそちらからの近接攻撃はできず、飛び道具はこの距離では出来ない。更に、このレースでは合体した状態でゴールしないと無効と見なされる。

 

無線のアリヤの声:くぅぅ・・・な、なにが目的だ

ミク:ここからはパイロットオンリー無線に切り替えろ

無線のミズキの声:わかった

 

 二人は危険行為などをパイロットに直接伝えるために使われる“パイロットオンリー無線”に切り替えた。ミクは既に切り替えてあった。(以降、“無線の”部分は割愛します)

 

ミク:端的に言う。お前がサクーシャのピットに仕掛けたのか?

ミズキ:はぁ!? あれは事故だったんでしょ?

 

 チャキ!

 

 

 ミクのボカロットはブレードをミズキのエンジン部分に見えないように突き立てた。

 

ミズキ:ちょ!!!

アリヤ:…“仕掛けた”と言ったら、俺達をどうするつもりだ?

ミク:そうなれば、その犯人は“私が探している犯人”と同一人物のはず。聞き出さないと行けない用件があるから、このままの状態で併走して、全てを語って貰う。しかし、サクーシャの件で“ブラフ”をふけば、お前の安全が脅かされる可能性が高くなる故、お薦めできない。まずはサクーシャの件、正直に答えて貰う

 

アリヤ:…そんな損な役回りを演じてまで話を聞き出すのはごめんだね。真実を言う。サクーシャには仕掛けてない。あの夜は、ミズキと一緒にバーで飲んでいた。それにサクーシャのピットには全く出入りしてない。というかあのピットの詳細は全くしらん。なぁミズキ?

ミズキ:そうです! 無関係です!

 

ミク:…嘘ではないようだな。わかった

 

 カチャ カチャ

 

 ミクはブレードを鞘にしまい、ツインテールのアンカーを収納してツインテールを外してしまった。

 

ミク:二人ともすまなかった。ツインテールの穴はレースで受ける最小ダメージにしておいたので、このまま問題無くレースを続行できる。お詫びだ。レースのトップは譲ることにする。頑張ってくれ

 

アリヤ:話がわかるじゃないか。良い心がけだ。じゃあ、追い越して合体する。ミズキ、行くぞ!

ミズキ:はい!

 

 ブォオオ!! ガシン!

 

 ミズキとアリヤのボカロットはミクを追い越した先で合体し、フルスロットでミクとの距離を離そうとした。

 

アリヤ:これで1位だ!

 

 ドゴン!!!!!

 

ミズキ:!!! ね、燃料コンテナで、ば、爆発d

 

 ボゴーーーーーーーン!!!!!!

 

ミク:!!!!! ミズキ! アリヤ!

 

 アリヤとミズキのボカロットは、燃料コンテナからの出火がエンジン部分に周り、爆発を起こして、カーブの先のエリアまで火だるまで突っ込み、ようやっと停止できた。ミクはその傍まで来てボカロットを停止させ、コクピットから降りて、衝突前に緊急脱出していたミズキとアリヤに近寄った。

 

ミク:大丈夫か!!

アリヤ:お・・・・おめぇじゃ・・・ないな・・・・これ・・・

ミズキ:1位を・・・素直に・・・譲ったのに・・・こんな事・・・するはず・・・ないもんね・・・

ミク:喋るな! すぐに救急車が来る!

アリヤ:・・・マシンは・・・慎重に検査したんだ・・・なのに燃料タンクから・・・出火した・・・

ミズキ:なんで・・・今度は・・・私たち・・・なの・・・

 

 二人は駆けつけた救急隊員の担架に乗せられ、そのまま救急車でサクーシャと同じ病院に搬送されていった。しかし、今回はそれだけではなかった。状況的に当然なのだが、警察と主催者側の関係者数名により、ミクは主催者側の詰問室に連れて行かれてしまった。

 レースは結局、“レーシングチーム・VY”のマシン破損とパイロット負傷による棄権、ミクの疑惑による“ナガネギーコーポレーション”の棄権以外は、そのまま続行され、以下の順位で終わった。

 

TOP:ゼッケン00(メイコ酒蔵株式会社) 合計ポイント33

2位:ゼッケン03(タコルカー鮮魚組合) 合計ポイント30

3位:ゼッケン07(アシュグループ) 合計ポイント25

4位:ゼッケン06(AHSホールディングス) 合計ポイント27

5位:ゼッケン02(ジナラシ組) 合計ポイント12

6位:ゼッケン05(印種不動産) 合計ポイント12

7位:ゼッケン08(フォーリナー) 合計ポイント7

棄権:ゼッケン01(ナガネギーコーポレーション) 合計ポイント変化無し18

棄権:ゼッケン04(レーシングチーム・VY) 合計ポイント変化無し6

 

 レース後のミーティングが行われていた、どのチームのピットも、どよめき合っていた。2連続の事故。

 

 『このレースは呪われている』

 

 そう呟くクルーもいたようだ。そして、ミクとチームのメカニックは警察とレース関係者数名による、“詰問”、を受けることになった。

 

(続く)

 

CAST

 

ゼッケン00)メイコ酒蔵株式会社

メカニックのアカイト:アカイト

パイロットの咲音ちゃん(18歳):咲音メイコ(メイコとは同名だが別人)

 

ゼッケン01)ナガネギーコーポレーション

メカニックのミクオ:ミクオ

パイロットの初音ミク:初音ミク

 

ゼッケン02)ジナラシ組

パイロットの鏡音リン:鏡音リン

パイロットの鏡音レン:鏡音レン

 

ゼッケン03)タコルカー鮮魚組合

メカニックのトエト:トエト

パイロットの巡音ルカ:巡音ルカ

 

ゼッケン04)レーシングチーム・VY(ヴィーワイ)

パイロットのミズキ:VY1

パイロットのアリヤ:VY2

 

ゼッケン05)印種(インタネ)不動産

メカニックの勇気めぐみ:GUMI

パイロットのリュウト:リュウト(ガチャッポイド)

 

ゼッケン06)AHSホールディングス

専属メカニックのいろはさん:猫村いろは

パイロットのミキ:miki

 

ゼッケン07)アシュグループ

パイロットの弱音ハク:弱音ハク

パイロットのネル:亞北ネル

パイロットのテト:重音テト

 

ゼッケン08)海外用品卸商・フォーリナー

メカニックのトニオ:Tonio

メカニックのミリアム:MIRIAM

パイロットのプリマ:Prima

他の開発チーム:海外ボカロ

 

ゼッケン9)サクーシャカンパニー

パイロットのサクーシャ=チャン:作者

 

ヒーゲ:ヒゲのあの方

 

その他:エキストラの皆さん


 
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