No.773331

アバター戦機-act.1-

流飴さん

男子アバター
藍沢リョウ/アイザワリョウ
容姿・タイプ5 声・タイプ4

女子アバター

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2015-04-25 14:21:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1134   閲覧ユーザー数:1134

 
 

『まもなく神威島に到着致します』

 

そうアナウンスが告げる

船の進行方向を見ると小さな島が見えてきた

 

「あれが神威島・・・学園がある島ね・・・」

 

神威大門統合学園

公式大会で3回以上優勝しないと入学出来ない

LBX界の登竜門

私はその学園に今日から入学する事になっている

 

「さっきの男の子どこに行ったのかな・・・」

 

つい先ほど誤操作のLBXと危うくぶつかりそうになった

その操作をしていた男の子

名前は・・・確か瀬名アラタくん

 

彼もまた今日入学するみたいだ

今日の入学者は4人居るらしい

また着いたら落ち合おうとアラタくんに言われたけど

今見る限りでは彼の姿を見る事は出来なかった

 

あと2人は誰なのだろうか

 

そうぼんやり考えていると

後ろから慌てた声が聞こえてくる

 

「あぁ!!避けて!!」

 

「え?」

 

『アタックファンクション!ソードサイクロン!』

 

聞き覚えのある音声が聞こえたかと思うと

私の足下にはLBX、そして必殺ファンクションが発動し

周りに風が巻き起こる

その風によって私のスカートが思い切り持ち上げられた

 

「あ・・・ピンク」

 

私の下着の色を言ったのだろう

そんな声がぼそりと聞こえた

声からするとさっきの慌てた声の持ち主だろう

 

羞恥心が沸き上がり思わず私はスカートを押さえて

その場に座り込んだ

 

「ごめん!怪我はない?いやぁ新しい必殺ファンクション使いたくなっちゃって・・・」

 

つい数分前似たようなセリフを聞いたばかりだ

 

「立てる?」

 

視界に手が伸びてくる

見上げると青い髪の男の子が手を差し伸べていた

 

「大丈夫です」

 

青い髪の男の子の手を借りて立ち上がる

私が無傷なのを確認してほっとしたようだ

 

「俺の名前は藍沢リョウ!もしかして今日学園に入学する子?よかったら名前教えてよ!」

 

藍沢リョウ君・・・

私が探していた入学する4人の中の1人だった

立て続けに入学する子に遭遇するとは思ってもいなかった

 

「・・・陽月リンネです。私も今日から神威大門に入学する事になっています」

 

「リンネか!よろしくな!4人居るって聞いているけどまさかそのうちの1人が女の子とは思わなかったなぁ」

 

まじまじと私を見ている

女の子のプレイヤーは確かに少ないがそんなに珍しいものでもない

現にプロで古城アスカさんという女性プレイヤーが居る

 

「藍沢君、他の入学する人知らないですか?」

 

「リョウでいいよ!うーん俺が会ったのリンネくらいだけど・・・それっぽい人は見てないな」

 

「そうですか」

 

もう1人の所在がわからないまま私たちは神威島へ到着した

 

「あー長かった!長旅で疲れたよ」

 

隣でリョウ君が背伸びをする

そういえば船を降りてから落ち合おうとアラタ君と約束をしていた

彼は何処にいってしまったのだろうか?

 

「リンネ!」

 

声の聞こえる方を向くと、手を振っているアラタ君が居た

隣でリョウ君が誰!?とか友達!?とか質問責めをしてくる

 

「リンネ!会えないかと思った!よかった!あれ隣は?」

 

「藍沢リョウ君、彼も学園に入学する1人でさっき船の中で偶然会ったんです」

 

「おぉ!同じ転入生かよろしく!俺、瀬名アラタ!アラタって呼んでくれ!」

 

「アラタか!よろしく!俺の事はリョウでいいぜ!」

 

互いに握手をするリョウ君とアラタ君

なんとなくこの2人は雰囲気が似ている気がする・・・

これで3人あと1人は・・・?

 

「ん?あれは?」

 

アラタ君が何かを見つけたようだ

目線の先にはタブレットを持った金髪の男の子が立っていた

 

「きっとアイツも転入生だ!話しかけてみようぜ!」

 

何を根拠にそう思ったのか

アラタ君が金髪の男の子に向かって走って行く

続いてリョウ君と私もアラタ君の後を追った

3人でいきなり押し掛けて行って大丈夫だろうか?

 

「・・・君たちは?」

 

「俺、瀬名アラタ!んでこっちは藍沢リョウと陽月リンネ。君も神威大門統合学園に入るんだろ?よろしくな!」

 

「・・・まぁね、僕は星原ヒカル」

 

星原・・・ヒカル?どこかで聞いた事ある名前

記憶を辿ってみるけど直ぐに答えが出てこなかった

2人を見てみると[どこかで聞いたことある名前]

と同じく思っているようだ

 

「じゃあ急ぐから」

 

そうヒカル君が告げるとすたすたと先に歩いて行ってしまった

アラタ君が制止をするように声を出しても

気にせず町並みの方に行ってしまった

 

「愛想ないなぁせっかく同じ転入生なのに」

 

リョウ君が頬を膨らませて不服そうにしている

いきなり3人で押し掛けたから気分を害したのかもしれない

とりあえず私たちは学園がある方を目指して歩いていった

 

「リンネ、リョウ見てみろよ変わった形の家が多いな」

 

商店街のメインストリートを歩いていると

確かに珍しいというか古めかしい建物がたくさん並んでいる

LBXに関わる学校があるので、近未来的な町並みを想像していたけど、どうやら違ったようだ

 

「何でこんな古い町並みなんだ?」

 

「この島は1960年代の町並みを再現しているんだ」

 

リョウ君が質問を投げかけると、いつのまにか近くに居たヒカル君が私たちに答えをくれた

話によると高度経済成長期をモデルにしているらしく

当時この時代の人達は向上心が高く困難に立ち向かう闘争心に溢れていて

この環境がLBXプレイヤーの戦闘意欲をかきたてるという理屈らしい

 

「さすが神威大門統合学園!神の門と言われる最高のLBXプレイヤー達が集まる学校!」

 

目をキラキラさせながらアラタ君が豪語し

それに同意するかのようにリョウ君が腕を組んで頷いている

 

「そうそう!俺たちも最高のプレイヤーの仲間入りだな!アラタ!」

 

「それはどうかな?瀬名アラタ、藍沢リョウ君たち2人ともラッキーな勝ち方をして条件を満たしているね。

 実力と言えるのか?」

 

「「なんで知ってるの!?」」

 

2人は同時に声を出した

ヒカル君はタブレットを器用に扱いデータを参照しているようだ

運も実力の内という言葉があるが、果たして2人の腕前はどうなのだろうか

 

 

「公式大会で入賞したプレイヤーは僕のデータベースに入っている。陽月リンネ・・・君の事もね」

 

ヒカル君がちらりと私の方を見る

学園の入学条件とは公式大会で3回以上優勝をする事だ

ラッキーとはいえ3回以上優勝したのなら入学する権利がある

リョウ君がヒカル君に質問をなげる

 

「はいはい、だったらおたくはどうなの?」

 

「僕は優勝は7回去年から条件を満たしていたけど、アルテミスに出場するために入学を遅らせたんだ」

 

アルテミス・・・世界各国の予選を勝ち抜いたLBXプレイヤーが集まる大会、LBX大会で一番大きいものだ

それに出場するとは相当な腕前なのだろう

ふとアルテミス、星原ヒカルというワードを聞いて思い出した・・・彼は・・・

 

「「あぁ!前回のアルテミス優勝プレイヤー!?」」

 

私たち3人は同時に声を上げた

彼らも思い出したようだ

前回のアルテミス圧倒的な強さで優勝したプレイヤー

星原ヒカル君・・・まさか同時期に入学するとは思ってもいなかった

 

「ちなみに瀬名アラタ、藍沢リョウは予選落ち。陽月リンネは登録さえしてないな」

 

「う・・・あははは~早く学園へ行こうぜ!アラタ、リンネ」

 

リョウ君が話を逸らして先に進んでいく

アラタ君が続きヒカル君がやれやれという顔で歩いて行った

 

学園への道中やはり話す事はLBXの事だ

自分が戦って来た対戦相手の話、自慢のLBXの話・・・

 

「俺のLBXはジ・エンペラー!ずっと変えてないんだ!」

 

「へぇーこれがリョウのLBXか、随分旧式なんだな」

 

アラタ君がリョウ君のLBXをまじまじと見ている

オリジナルにジ・エンペラーはブルーに塗装されている

かつてレジェンドプレイヤー海道ジンが最初に使ったLBXと説明してくれた

どうやらリョウ君は海道ジンさんのファンのようだ

 

「リンネのLBXは?」

 

アラタ君が私に話を振ってきた

私はショルダーバッグから箱に入ったLBXを取り出した

 

「お!リュウビじゃん!女の子だからストライダー系の可愛いフレームかと思ったナイトフレームか!」

 

「リンネの塗装もいいセンスしてるな!」

 

リョウ君とアラタ君は私のLBXに興味津々のようだ

私のLBXは白く塗装されたリュウビ

諸処にパステルカラーのグリーンとイエローを入れている

もちろん私が塗装までした

褒められるのはとても嬉しい

 

「アラタ君のLBXは?」

 

アラタ君に話しかけた瞬間

あっ・・・あれ!と声を上げたリョウ君

どうやら私たちは目的の学園前に着いたようだ

 

「・・・こ・・・これが神威大門統合学園・・・!」

 

私たちの前には大きな門がそびえ立っていた

アラタ君とリョウ君の目が輝いている

さっそく近くにい居る警備員に学園に入学する旨を伝えた

 

「照合した。瀬名アラタ、星原ヒカル、藍沢リョウ、陽月リンネだな」

 

「「はい」」

 

「ではLBXそれからCCMや携帯端末はすべてここで預からせてもらう。さあ出して」

 

私たちは面食らった。

今まで共に戦って来たLBXを手放すとは思ってもいなかった、しかも携帯端末まで差し出せと・・・何故なのだろうか

 

「でも学校で使うんじゃ・・・」

 

アラタ君が質問するが、必要なものはすべて学園が支給するようだ。渋々自分の愛機を出す。

きっと卒業するまで返してもらえないだろう

ヒカル君はルシファー、アラタ君はアキレス・ディードを鞄から出した

 

「あら、ユー達が今日から入るという転入生ね?」

 

学園の門の向こう側から中性的な声が聞こえて来た

警備員もその声の方を見ると驚いて敬礼をした

 

「ジョセフィーヌ学園長!わざわざお出でにならなくとも自分達が執り行います故ご安心を!」

 

このなんとも言えない格好で大柄な人が学園長のようだ

器用に化粧までしている

 

「アラたん、ヒー君、リョウちん、リンネちゃん。

 よ・う・こ・そ!神威大門統合学園へ。ミーが学園長のジョセフィーヌよ」

 

私だけ呼び方普通だ。

私たち4人は学園長の言動格好に固まっている

ヒカル君に関しては顔がひきつっていた

 

「ひ・・・ヒー君?」

 

「きっとヒカルの事だよ」

 

「君にヒカルと呼び捨てにされる理由もない!」

 

ヒカル君がアラタ君を怒鳴りつけた

どうやら呼び捨てにされるのが嫌いなようだ

そんなやり取りを見て学園長はにこにこ笑っている

 

「元気ね。気に入ったわぁ。でもこれからアラたんとヒー君は仲間なんだから仲良くしなきゃダメよ?」

 

仲間・・・とはどういう意味なのだろうか?

 

「2人は2年5組に入ってもらうわ」

 

クラス分けのようだアラタ君がヒカル君に話しかけるが無視している。

呼び捨てにされた事で気分を害してしまったようだ

 

「あれ?リョウとリンネは一緒じゃないの?」

 

2人は・・・と言われていたということは

リョウ君と私は別のクラスらしい

 

「リョウちんとリンネちゃんは3組よ。ではそれぞれの教室に向かうように!丁度ホームルームだから急いでね」

 

そう伝えると学園長は去ってしまった

せっかく同時期に入学なのにクラスが分かれてしまうのは残念だ

リョウ君とアラタ君は遊びに行くと互いに約束をして別れを惜しんでいた

ヒカル君は相変わらず不機嫌そうだ

 

2年3組・・・というクラスの札を見つけた、ここが私たちのクラスだ

教室の扉を開けると先生が既にホームルームを始めていた

 

「・・・やっと来たか」

 

先生に入るように言われ私たちはそそくさと教壇の上に立った

 

「私は日暮真尋。このクラスの担任と保健の教科を担当している。

 皆に紹介する。今日からこのクラスに転入する藍沢リョウと陽月リンネだ。仲良くするように」

 

クラスを見渡すとヒソヒソと何かを話している

「2人・・・?」「え・・・何かの間違いじゃ?」「どうするんだろうね?」など・・・

転入生が2人居るのは何か悪いのだろうか?

 

「静かに。学園長からは許可をもらっている。2人は空いている席を使ってくれ。

 クラス全員の名前をいきなり覚えるのは大変だろう。まず席の周りを覚えるといい」

 

席に着こうとすると男の子が話掛けてきた

 

「俺は乾カゲトラ。このクラスの委員長をやっているよろしく」

 

いかにも真面目そうな男の子だリョウ君はにこにこしながらよろしくな!

と言った私もそれに続いて、よろしくお願いしますと言う

次に私の真後ろの席の女の子が話掛けてきた

 

「ウチ金箱スズネ。よろしゅうな、転入生」

 

そういうとウィンクをぱちっとした

深い緑色の髪をポニーテールに結った可愛らしい子だ

最後にリョウ君の隣の席の帽子を被った子が身を乗り出して話しかけてきた

 

「僕は古城タケル、仲良くしてね、リョウ、リンネ」

 

古城・・・そういえばプロプレイヤー古城アスカさんの弟がこの学園に居ると噂があったのだが彼なのだろうか?

 

「さて、では授業をはじめよう」

 

いきなり授業とは・・・机の中に既に入っていた教科書を取り出す。

普通教科からLBXに関する教科書までさまざまだ・・・

途中からの授業でさっぱり分からなかったが、とりあえず一生懸命ノートだけは取った

授業が一通り終わると日暮先生が私たちを呼んだ

 

「リョウ、リンネ。これから学校の規則について説明をする。この後校庭に来い」

 

「「はい」」

 

規則をなぜ校庭で説明するのだろうか・・・きっと行ってみれば分かるだろう

そう思っていると授業が始まる前に話しかけてくれた3人が私たちに声を掛けてきた

 

「今日は転入生達の初陣や!待ってるで転入生たち!」

 

「スズネ、まだ俺たちの隊って決まったわけじゃないぞ」

 

「でも確実に1人は僕たちの隊だよ!」

 

隊?確実に1人は?一体何の事だろう

ここの学園の何かの専門用語なのだろうか

 

「えっと・・・隊?ってどういう事ですか?」

 

「そうそう!あとなんか2人だとまずいみたいじゃん」

 

リョウ君と私が3人に問いかけてみるが

そこは先生が説明してくれるようだ

疑問を抱えたまま私たちは校庭に向かった

 

校庭には日暮先生が既に待ちかまえていた

 

「来たな・・・では説明を始める。少々長くなるので覚悟して聞くように」

 

規則・・・はとても長い説明のようだ

リョウ君はいかにも嫌そうな顔をしている

私は早く先ほどの疑問を解消したく説明をして欲しかった

 

「・・・おや?」

 

「日暮先生、あなたも転入生への説明ですか?」

 

「えぇ、見ての通り」

 

校舎の方からとても美人な先生に連れられて

アラタ君とヒカル君がやってきた

どうやら2人の担任の先生のようだ

 

「おぉ!リョウとリンネも来てたのか!」

 

アラタ君は私たちの所に駆け寄り

リョウ君と拳を合わせる

 

「あら、あなたたち顔見知りなの?」

 

「はいここに来るときにフェリーで会ったんです!」

 

ヒカル君に同意を求めたが無視されている

まだ機嫌が直らないようだ

それともまた気に入らない事をアラタ君に言われたのだろうか

 

「なるほど・・・時に美都先生良い案があるのだが・・・」

 

「何でしょう?」

 

「・・・・・・・・・」

 

5組の担任の先生は美都先生というらしい

日暮先生が無言で美都先生に訴え掛けている

 

「ま・さ・か。私にこの先の説明をして欲しいという提案ですか?」

 

「さすが、ジェノックの司令官。察しがいいですね」

 

「あれ?リョウとリンネ聞いてないの?」

 

アラタ君にそう言われたが

日暮先生からは、『学校の規則について説明するから校庭に来い』としか言われていない

アラタ君とヒカル君はある程度説明を事前に受けていたようだ

 

「その様子だとハーネスの説明もしていないんですね」

 

「まぁ・・・な」

 

「・・・わかりました。そのままだとその子たちが可哀想です」

 

「感謝する」

 

「それに、初戦でロストされた日には目も当てられませんからね」

 

ジェノック、ハーネス、ロスト・・・専門用語が飛び交う中

私たち2人は困惑していると

美都先生は私たちの方に向き直った

 

「初めまして。私は美都玲奈。ジェノックの司令官よ。日暮先生はハーネスの司令官になります

 もうあまり時間がありませんね。移動しながら説明しましょう。

 それに・・・百聞は一見にしかず・・・といいますしね」

 

美都先生に先導されて校庭の隠し扉を通り私たちは地下室への階段を下って行った

そこに広がる風景は地上とは別物でコンピュータやたくさんのモニタや機器に囲まれていた

アラタ君が美都先生に質問をする

 

「これは!?ここで一体何をやっているのですか?」

 

「戦争よ」

 

「「!?」」

 

美都先生の口から物騒な言葉が吐かれた

戦争・・・この地下室では戦争が行われている・・・

一体何の為に・・・

 

「この学校の生徒が果たさなければならない必須事項、義務・・・それがウォータイムへの参加」

 

「・・・ウォータイム」

 

「この学校に入った生徒は、クラス別に無作為に選ばれた30のグループごとに敵対関係となりLBXバトルを行うの」

 

「グループに分かれて戦うバトル。それがウォータイム」

 

 

ヒカル君がようやく口を開いた

リョウ君とアラタ君はおもしろそうだのすごいだの口にしている

 

「アラタ、ヒカル、あなたたちの所属は先ほど話した通り「ジェノック」よ」

 

「リョウ、リンネ、我々のクラスは「ハーネス」だ」

 

「ここでは仮想国、すなわち架空に設定された国に分かれて戦ってもらう事になるわ」

 

ようやく疑問が解けた。カゲトラ君の言っていた隊とはこの事だったようだ

スズネちゃんの言っていた初陣・・・たぶん今日から私たちも参加するのだろう

 

「リョウ!リンネ!ライバルだけど頑張ろうな」

 

「もし対峙したらその時は手加減なしだからなアラタ!ヒカル!」

 

「・・・」

 

またヒカル君が不機嫌そうな顔になった

ヒカル君は怒鳴るのが面倒になったのか

リョウ君に食ってかかることはなかった

しばらく歩いていると、私たちは巨大な扉の前まで来ると

アラタ君が口を開く

 

「この先にLBXのバトルフィールドがあるんですね。」

 

「えぇ・・・これがあなたたちの戦場・・・セカンドワールドよ」

 

そう美都先生が告げると、巨大な扉が開く

そこにあった光景は私たちの想像を超えていた

 

「全長10kmに及ぶ巨大ジオラマよ」

 

10km・・・一体Dキューブ何個分だろう

こんな巨大なジオラマを見るのは初めてだ

よくみると地球の地形と同じように見える

私は美都先生に質問をしてみる

 

「先生・・・この地形は地球と同じですか?」

 

「気がついたようね。ここの地形は地球上の地形とまったく同じ」

 

「だからセカンドワールド・・・第二の世界」

 

ヒカル君も気がついていたようだ

ここに存在するすべてのオブジェクトが、現実世界と同じような機能を持っていて

天候などすべてコンピュータで管理されているらしい

 

「俺たちこんなすごい所で戦えるのか!わくわくするなリンネ!」

 

「え・・・は・・・はい、そうですね」

 

リョウ君はとても楽しそうだが、私は少し緊張をしている

こんな広大なジオラマ内で戦うのは今まで戦って来たフィールドと勝手が違うだろう

 

「・・・もうすぐ始まるわよ」

 

美都先生がそう言うとアナウンスが流れる

 

“ウォータイム開始まであと20秒。全プレイヤーは戦闘開始に備えて下さい。

 繰り返します全プレイヤーは戦闘の開始に備えて下さい”

 

アナウンスが流れ終わると巨大ジオラマ内にLBXが次々に出てきた

 

“ウォータイム開始”

 

アナウンスの開始の合図と共に戦闘が始まった

やはり選ばれたLBXプレイヤーが操っているだけあり

戦闘はハイレベルなものが多い

でも何故ここまでして地球と同じ形の地形で戦闘をさせられるのだろうか?

 

「何故って顔しているわね」

 

美都先生に顔色で察せられてしまったが、実際疑問を持ったのは事実だ

美都先生いわく、これは世界戦争のシミュレーションだそうだ

現実世界の軍事力をLBXの数と性能に置き換えて

戦闘シミュレーションを行っている一種の疑似戦争

世界で戦争が起こったらどうなるのか、それを知るために行われている

 

「でもこのプロジェクトにはもう1つ大きな役割があるそれは・・・世界平和の維持よ」

 

戦争をさせて世界平和の維持とは一体どういう事なのだろう

私たちは神妙な顔をしながら美都先生の話を聞いた

 

「セカンドワールドによって先に戦争の結果を知ることができれば戦争の防止につながる。

 それが連合統合政府が推進する「エクスペリエント・リアリズム・プロジェクト」「ERP」と呼ばれる計画よ」

 

この計画・・・コンピュータのシミュレートで済まさずなぜ私たち人間が関わらなくてはいけないのか

私たちにしか持っていないもの・・・

 

「この計画・・・何故コンピュータのシミュレートだけでは済まされないのか・・・

 それは人間の感情が戦争に大きな影響を与えるからよ。そこまでシミュレートしないと世界平和は維持出来ない」

 

まさかこの学園が政府に関わる事に携わっているとは

入学の条件か厳しいのも納得がいく

 

「次はこっちよ」

 

私たちは未だに戦闘が行われているセカンドワールドを後にして次の場所へと向かった

次の扉をくぐると無数のコントロールポッドが設置してある部屋に到着した

 

「これは・・・すごい数だな・・・」

 

アラタ君が自然と言葉を発した

目の前には100は越えるであろうコントロールポッドが設置してある

 

 

「今からあなたたちはここに置いてあるコントロールポッドに乗り込んでセカンドワールド上でLBXを動かすの。

 だけど・・・その前に・・・」

 

美都先生が言葉を区切ると、私たちの後ろから付いて来ていた日暮先生に目線を向ける

 

「日暮先生。いつまで私に説明させる気ですか?ここから先はジェノックの機密に関わります」

 

「・・・わかりました。この借りはいつか」

 

「そう言って返した事はないですよね?」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

2人の間に沈黙が流れる日暮先生は「失礼する」と一言発すると翻して、そそくさと奥の扉に歩いて行ってしまった

リョウ君と私は慌てて日暮先生の後を追う

 

「リョウ!リンネ!また後でな~!」

 

「おう!終わったら会おうぜ~!」

 

リョウ君とアラタ君が約束を交わし、それぞれの場所へと移動していった

日暮先生の後に続いて連れて来られたのは一つの部屋・・・

私たちの国ハーネスがウォータイム前にブリーフィングをする場所、司令室と呼ばれる部屋

部屋に着くと先生がようやく口を開いた

 

「・・・さて、先ほど美都先生の説明で理解できたと思うが、

 この神威大門統合学園に入ったからにはウォータイムへの参加は必須だ。

 リョウとリンネにもハーネスの一兵士として参戦してもらう。覚悟してのぞめ」

 

「「はい」」

 

「日暮司令。お待ちしました」

 

部屋の奥から若い男性の声が聞こえてくる

こちらに向かってくる足音

 

「ご苦労。副司令」

 

姿を表したのはあのレジェンドプレイヤーの海道ジン

A国に留学していたはずなのだが何故ここに?

 

「あっ・・・貴方は海道ジンさん!?」

 

リョウ君がかなり驚いている・・・自分の憧れているプレイヤーが目の前に居るのだ無理もない

私も実際に驚いている

 

「リョウ、リンネこれが君たちのLBXとCCMだ」

 

ジンさんから直々にLBXとCCMが手渡される

リョウ君のLBXはDCシリーズの汎用型ブロウラーフレーム

私のLBXはセイレーンと呼ばれるストライダーフレームだ

お互いに使い慣れていないタイプのLBXを使う事になった

武器はナックルと単発銃だ

 

「君たちの実力はこの作戦で見極めさせてもらう。気を引き締めてのぞんでくれ」

 

「「はい」」

 

日暮先生にコントロールポッドに向かうよう指示をされ

急いで向かう。既にウォータイムは始まっているのだ

 

「なぁなぁ!リンネ!ジンさんだよ!ジンさん!俺たちの副司令官だって!すっげーよ!俄然やる気出た!」

 

「はい・・・でもどうしてジンさんがいるんですかね?」

 

「わからないけど・・・ジンさんの指揮下とかアラタやヒカルに言ったらびびるぜ!」

 

そんな会話をしつつ私たちは空いているコントロールポッドに乗り込む準備が終わると日暮先生から通信が入った

 

「リョウ、リンネ聞こえるか?ここからは通信で指示をする。

 現在、ハーネスはアラビスタ同盟の保有する「オアシス8」を奪還するための作戦行動中だ。

 既に、カゲトラとスズネが先行している。速やかに合流するんだ」

 

「「了解!」」

 

カゲトラ君とスズネちゃん規則の説明前に話しかけてきてくれた人たちだ、顔見知りの人たちと一緒に戦うのは心強い

指示された「オアシス8」に向かう途中にジンさんから通信が入る

 

「オープニング・ブレイク。これで、君たちの本当の学園生活がスタートした。

 君たちは、どこか僕の昔の仲間たちと似ている。期待しているよ」

 

「オアシス8」周辺に着くと2体のLBXが待ちかまえていたカゲトラ君とスズネちゃんのLBXだ

どうやら男子はDCシリーズ、女子はセイレーンを操作するようだ

一気に通信網が開き賑やかになる

 

「お、来たか」

 

「遅いっ!真尋ちゃん、どんだけ説明に時間かかっとんの?ウチは待ちくたびれたで!」

 

「それは悪かったな・・・。リョウ、リンネ。本作戦に関しては隊長はカゲトラになる。

 作戦行動中は、指示に従うように」

 

「もしかして俺たちの隊は5人ですか?」

 

1隊の人数制限があるのだろうか?

カゲトラ君が日暮先生に質問をする

 

「本来ならプレイヤー3人のメカニック1人で1小隊なのだが、

 今回は学園の不手際でハーネスに1人多く入れてしまったようだ・・・第1小隊は5人という異例の編成になる。

 タケルには4人分の調整が負担になってしまうが頼む」

 

「大丈夫です!任せて下さい!」

 

どうやらリョウ君か私はハーネスに所属するのではなく別の国に所属の予定だったようだ

不手際でも同じ転入生のリョウ君が居るのは心強かった

ここに居ないタケル君はメカニック担当なのだろう

 

「人数多い方が楽しめそうや!暴れたるで!」

 

「スズネ!戦闘は連携が大切なんだからね!」

 

スズネちゃんがタケル君から注意を受ける

 

「わかってるわ!」

 

「よし今回の作戦を説明する」

 

カゲトラ君から作戦の指示が出される

今回の作戦はカゲトラ君とリョウ君が陽動し

敵を引きつけたところでスズネちゃんと私で挟み撃ちにする作戦だ

 

「では作戦を開始する各自散開!」

 

「「了解」」

 

カゲトラ君とリョウ君は陽動に走り、スズネちゃんと私は障害物の陰に隠れて指示を待っていた

スズネちゃんから通信が入る

 

「すまんな名前忘れてしもうた!もう1回教えてくれへん?」

 

「陽月リンネです。あと藍沢リョウ君」

 

「リンネか!よろしゅうな!女子が同じ隊でほんまうれしいわ!しかも可愛いし!」

 

「スズネちゃんの方が可愛いですよ」

 

「お世辞はええで!あとでハーネスの女子集めて話しようや!」

 

「はい!ありがとうございますスズネちゃん」

 

そんな他愛もない話をしていると自分が戦場に居ることを忘れてしまいそうになる

 

「スズネ!リンネ!まもなくA地点に到着する作戦の準備をしてくれ」

 

「「了解」」

 

カゲトラ君から通信が入り緊張が走る

この学園にいるという事は相手もかなりの腕のプレイヤーだ。気は抜けない

 

「ほらほらー!ここまでおいでー!」

 

リョウ君が敵を煽っている

敵に引きつけているのがバレないか心配だ

 

「くおおおら!リョウ!調子に乗るんじゃないで!!」

 

スズネちゃんがリョウ君の通信に割り込み怒鳴ると、タケル君が通信に割って入ってくる

 

「いつも調子に乗っているスズネに言われても説得力ないな」

 

タケル君がスズネちゃんにそういうと

一応先輩として注意したんだと言い返した

 

「よっしゃA地点通過確認!いくでリンネ!」

 

「了解です!」

 

敵が目的の場所を通過したのを見計らって背後からスズネちゃんと私で攻撃を仕掛ける

スズネちゃんは敵を翻弄して打撃を何度も打ち込み、あっという間にブレイクオーバーさせてしまった

私も負けてはいられない

少しよそ見をしていたら敵の銃弾が飛んできた

2、3発受けるとLP表示が半分以下になっている

早さが売りのストライダーフレームだ

防御力がないのは分かっていたがこれほど致命傷になるとは思っていなかった

 

「リンネ大丈夫か?!」

 

カゲトラ君から通信が入る

 

「大丈夫です!」

 

「もしかして今まではストライダー以外使っていたな?

 戦い方が慣れないかもしれないがやれるところまでやってみてくれ」

 

「はい!」

 

少し見ただけで慣れていないのが分かってしまうとは・・・

でも私はLBX初心者ではない、すぐに戦闘スタイルを切り替える

ナイトフレームのリュウビでは少しの無茶くらいなら耐えられたが、

ストライダーフレームのセイレーンではそうにもいかない

防御するのではなく避けるが主体となる。そしてスピードを生かしての戦闘

 

「やぁっ!」

 

素早く敵との距離を縮め武器の切り替えを阻止し

打撃を繰り返す

素早い動きで翻弄し敵は何も出来ないままブレイクオーバーした

 

「リンネ!よくやったで!」

 

「ありがとうございます!スズネちゃん」

 

スズネちゃんが祝福してくれた

カゲトラ君とリョウ君も粗方敵を蹴散らしたようだ

みんなと合流した頃にアナウンスが流れる

 

“「オアシス8」の所有権は、アラビスタ同盟からハーネスに移ります。基地内戦闘は直ちに終了して下さい”

 

「やったーウチらの勝ちや!ええ気味や!スカッとしたわ!

 リョウとリンネの初陣も勝利で飾れてホンマ、万々歳やな!」

 

「リョウ、リンネよくやってくれた!これからもよろしく」

 

スズネちゃんとカゲトラ君から祝福され初陣は勝利で飾る事が出来たがリョウ君が浮かない声を出した

 

「うぅ・・・ちょっと右肩にヒビ入ったかもしれない・・・」

 

「戦闘で破損するのは仕方ないよ。後で僕が見ておくね」

 

「サンキュー!タケル!」

 

リョウ君が攻撃受けたところを気にしていたようだ

メカニックのタケル君は私たちのLBXの調整をしてくれるみたいだ

勝利を喜んでいるところまたアナウンスが流れる

 

“「オアシス3」の所有権は、ロシウス連合よりジェノックに移ります。基地内戦闘は直ちに終了してください”

 

「おっ!ジェノックがロシウスに健闘したか。あそこも俺たちと同じくらい小国なのにな」

 

ジェノックといえばアラタ君とヒカル君が配属された国だ

2人も初陣は勝利で納めたようだ

 

“終了時間となりました。本日のウォータイム、終了します”

 

「時間だ。みんな司令室に戻ってこい」

 

日暮先生からそう通信が入るとオアシス8に向かう時に運んでもらった

クラフトキャリアというものに乗って基地へとLBXを乗せて帰っていった

コントロールポッドから出て5人で司令室へと向かう

 

「初陣お疲れさま。いい戦いだった」

 

司令室で日暮先生とジンさんが出迎えてくれた

 

「いやー。ホンマに2人ともお見事やったで!」

 

「あぁ、リョウもリンネも筋がいい。いい連携が取れそうだ」

 

みんなが絶賛をしてくれて照れくさい

リョウ君はどんどん俺に任せろ!と強気だ

 

「それは良いことだ。カゲトラ、この後は・・・・・・」

 

「はい。リョウとリンネをダック荘へ案内します」

 

「ダック荘ちゅうのは、ウチらが生活しとる寮や」

 

「うむ。では頼む。本日は解散」

 

「「はい!」」

 

これから寮に案内されるようだ

カゲトラ君は報告書の提出があるらしく、私たち4人は校門の前で待っている事になった

カゲトラ君は隊長なだけあって、いろいろしなくてはならない事がたくさんあるのだろう

校門の前でおしゃべりをしながら待っていると

校舎から聞き慣れた声が私たちを呼んだ

 

「リョウー!リンネー!」

 

「アラタ!」

 

「アラタ君!」

 

アラタ君が興奮した様子で私たちに駆け寄りリョウ君と拳を合わせる。どうやら2人の挨拶になったようだ

 

「セカンドワールド!すごかったよな!2人も出撃したんだろ?俺超興奮したぜ!」

 

「あぁ!さすが神威大門やることのスケールが違うよな!」

 

「仮想国に分かれての戦闘活動なんてさ!設定も熱いよな!」

 

2人が初陣について目を輝かせながら熱く語っている

 

 

「そうそう!アラタ!聞いて驚くなよ!なんと俺らの副司令官が・・・」

 

そこまで言うとタケル君とスズネちゃんがリョウ君の口を押さえ込む

 

「あっははは何でもないんやー!」

 

「え?何だよ教えろよリョウ!」

 

どうやら副司令官のジンさんの事は公表するのはまずいようだ。

教えて欲しくてアラタ君が問いつめていると女の子が怒鳴ってきた

 

「こら!瀬名アラタ!他の仮想国の生徒と戦闘活動に関する事をおいそれとしてはいけません!

 情報漏洩で処罰されちゃうよ?」

 

髪を両サイドで丸く結った女の子が歩いてきた

アラタ君と同じ仮想国の生徒だろう

 

「お前は確か同じクラスの・・・」

 

「私は鹿島ユノ。よろしくね。えっと・・・」

 

「俺、藍沢リョウ」

 

「陽月リンネです」

 

「リョウにリンネね」

 

ユノちゃんはにこりと私たちに向かって笑ってみせた

 

「俺とヒカルと一緒に今日から転校してきたんだ!ハーネスの所属って設定で・・・」

 

「設定・・・はぁ・・・やれやれ、分かってないな

 まぁいいわ。副委員長としてあなたを案内するように言われてるの。行くわよアラタ」

 

「あぁわかったよ。リョウ、リンネまたなー!」

 

そういうと2人は立ち去って行った

そういえばユノちゃんとスズネちゃんの制服違ったけどもしかして・・・

 

「なんや、えらい賑やかなやっちゃなー」

 

「知り合いなの?やたら大きい声で呼ばれていたけど」

 

「あいつは瀬名アラタ。俺とリンネと一緒に今日来た同じ転入生なんだ!」

 

「・・・なるほど瀬名アラタ君か。ジェノックの新人なんだね」

 

「あれ?タケルなんでアラタがジェノック所属ってわかるの?」

 

不思議そうにリョウ君が質問をする

周りを見ればなんとなく分かると思うけど・・・

 

「制服の色だ」

 

いつのまにかカゲトラ君が合流していた

 

「この学園の生徒は所属する仮想国ごとに制服の色が決められているのさ。

 俺たちハーネスは紫。先ほどのジェノックは青。最大勢力のロシウス連合はグレー。

 今日戦ったアラビスタ同盟はカーキー。まぁそんな感じだ」

 

そういえばアラタ君たちジェノックは先ほどのウォータイムでロシウス連合に勝利していた。

最大勢力に勝つとはいったいどんな戦い方をしたのだろうか、

いずれ私たちも戦う時が来るだろう

 

「カゲトラ、そんなかったるい説明は抜きにして、はやく帰ろうや!ウチ、腹が減って死にそうや~」

 

「俺も腹減ったー」

 

「そうだな。ではダック荘に帰ろう」

 

帰りの道中いろいろなお店も説明してもらった

本屋、雑貨屋、そしてこの島の名物純喫茶スワロー

今日はもう遅いので後ほど案内してくれるそうだ

 

「さっきの瀬名アラタ君って面白そうな人だね」

 

タケル君がアラタ君の話を振ってきた

 

「そうなんだよー!あいつ面白いやつでさ!」

 

「でも、彼とウォータイムの話をするのは控えた方がいい。暗黙のルールってやつさ」

 

怪しい行動をすると責任を問われたりするので

なるべくなら他国生徒と学園内では接触を避けた方がいいそうだ

仮想国ではあるけどリアルに戦争をしている感じだ・・・

 

そんな話をしながら歩いていると、いかにも寮らしい大きな木造の建物の前に着いた

 

「今日からリョウとリンネは俺たちと共に、ここに住む事になる。

 ここは他にもジェノックとポルトンの生徒が生活しているんだ」

 

「おっ!じゃあアラタとヒカルも居るんだな!あとで遊びに行こう!」

 

ダック荘に入るとカゲトラくんが小窓に向かって話しかけた

 

「寮長!新人2名、連行致しました!」

 

すると近くの扉からか可愛らしいおばあちゃんが姿を現したどうやらこの人が寮長のようだ

 

「ご苦労様。この2人が新人さんだね。さっきのジェノックの2人といいなかなかいい面構えじゃないか!

 あたしゃ、トメ。このダック荘の寮長だ。よろしくね」

 

「「よろしくお願いします」」

 

「いい返事だね!はいこれがアンタたちの部屋の鍵。無くすんじゃないよ」

 

私たちは互いに1個づつ鍵を渡された

 

「カゲトラ、寮の案内は任せていいかい?」

 

「はい。わかりました」

 

「では頼んだよ。リョウ、リンネ困った事があったらあたしに言っておいで」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「トメさんありがとう!」

 

「じゃあリンネはウチが案内するからまた夕飯でなー!」

 

そういうとカゲトラ君たちとは真逆の扉に入った

スズネちゃんに連れられて特に利用する事が多い場所を案内された

 

「風呂は食堂行くついでに案内するで!で・・・ここがリンネの部屋や!」

 

1つの個室の前に案内された今日から私はここで生活をする・・・

 

「そんでなーウチとは別の部屋なんやー!

 普通は2人で1室使っているんやけど相部屋出来る子がおらへんから、この部屋リンネ1人でつこうてな!

 でも遊びに行くから安心しとき!また夕飯の時間になったら声掛けるからそれまで待っててな」

 

「はい!ありがとうございますスズネちゃん」

 

そういうと2個先の個室にスズネちゃんは入って行った

私も鍵を開けて入ろうとしたのだけど

なんとなく誰もいないはずの部屋から人の気配がする・・・

扉を開けるとその先には

 

「よう!リンネ!」

 

「り・・・リョウくん!?なんでここに居るんですか!?」

 

よく見ると窓が開いている窓から侵入したようだ

勝手にベッドに座りくつろいでいる

 

「粗方説明終わったんだけどさー夕飯まで時間あるし、暇だったからリンネに会いに来た!

 あれ?リンネも一人部屋?俺もなんだけど」

 

リョウ君勝手に女子部屋に入るとは・・・

一応異性なのだから少しは考えて欲しい

しかもこの部屋は2階だどうやって上って来たのだろう

 

「よく私の部屋だってわかりましたね」

 

「さっき渡された鍵に番号書いてあったから。

 リンネ!ウォータイム楽しかったなぁー!

 毎日授業終わったあとあるらしいから俺超楽しみで!しかもジンさんの指揮下!」

 

「そうですね・・・でも・・・」

 

私は少し気になる事があった

みんなもう当たり前のように過ごしているけど

まだ来たばかりの私はそうではなかった

 

「私たちの持ってきたLBXが没収されるとは思っていませんでした」

 

「それはなぁ・・・せっかく長年使ってた愛機なのになぁ」

 

「LBXの没収は理解出来ます・・・多分カスタムの個人差が出ないように・・・おかしいのは携帯端末の没収です」

 

「機密情報保持のためじゃないか?」

 

「それなら前もって知らせるはずですよ・・・CCMもネット機能が制限されていますし、

 CCMを持っていればこの島での連絡は事足りますが・・・。この学園何かあると思うんです・・・」

 

「リンネ・・・?」

 

つい疑問に思っている事を口に出してしまった

リョウ君は不思議そうに私を見つめている

 

「す・・・すみません。せっかく憧れの学園に転入したのに水を差すような事言ってしまって・・・」

 

「いや・・・やっぱり徹底してるからさ!疑問に思う事だってあるよ。

 でも考えても仕方ないし学園生活を楽しもうぜ!俺たちハーネス第1小隊を学園で一番の隊にしよう!」

 

「ふふ・・・そうですね」

 

リョウ君の言う通りだ。今考えているのは憶測に過ぎないし

せっかく憧れの学園に転入したのだ精一杯学園生活をたのしもう

 

「リンネ!そろそろ夕飯やでー!」

 

突然ノックもせずにスズネちゃんが入ってきた

今この状況はさすがにまずい

 

「うおっ!リョウ何でリンネの部屋おるん!?

 ははーんお二人さんそういう関係だったとは!でも女子部屋に男子が来たらあかんで!」

 

「す・・・スズネちゃん誤解です!私が部屋に入ったらリョウ君が居て・・・」

 

「あははは・・・やっぱり女子部屋行くのはまずかったか。俺はリンネと話しに来ただけだからそんなやましい事は・・・」

 

一応女子部屋に入る罪悪感はあったんですねリョウ君・・・

スズネちゃんに指摘されて顔が真っ赤になっている

 

「まぁ今回は見逃したるわ!カゲトラにも内緒にしておくから安心しとき!それより夕飯や!はよ行こう」

 

「・・・はい」

 

「俺すっげーお腹空いたー!夕飯なんだろうなー!」

 

私とスズネちゃんとリョウ君は部屋を後にしようとすると、スズネちゃんはリョウ君を部屋の中に突き飛ばした

 

「このド阿呆!他の女子に見つかったらどうすんねん!来たルートで降りんか!」

 

「えぇ!俺窓から・・・」

 

「リョウ君気をつけてくださいね」

 

私は彼が窓から部屋の外に出るのを見送った

 

こうして私の学園生活初日の長い一日が終わった

これからどんな人と出会い、どんなLBXバトルをするのだろうか

大きな期待と少しの不安を抱えながら

 
 

 
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