No.772764

九番目の熾天使・外伝 ~vsショッカー残党編~

竜神丸さん

暴れる破壊者

2015-04-22 12:35:51 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2055   閲覧ユーザー数:1071

「ウェェェェェェェイッ!!」

 

「お、おのれ…ごは!?」

 

剣崎一真が変身した仮面ライダーブレイド。彼はブレイラウザーを振るい、まず前方にいたジャガーマンを思いきり斬りつけ、その勢いを利用して後ろ回し蹴りを繰り出す。ジャガーマンが地面を転がる一方で、スイーツ・ドーパントやチャップの集団が支配人とヴァニシュに向かって襲い掛かる。

 

「アンタ達はアタシが頂いてやるよぉっ!!」

 

「「「グェッグェッグェッ!!」」」

 

「むぅ、随分と言葉遣いのなってない娘じゃのう」

 

「風都は本当に悪女が多いぜ……という訳で親父、ちょいと躾してやってくれ」

 

「あい分かった、儂に任せい」

 

「何をごちゃごちゃ言ってるんだい!!」

 

スイーツ・ドーパントが跳躍し、ヴァニシュに向かって飛びかかる。しかしヴァニシュは動じず、一つの手鏡を取り出し…

 

「グォォォォォォッ!!」

 

「んな…ギャッ!?」

 

手鏡からコオロギ型ミラーモンスター“サイコローグ”が飛び出し、スイーツ・ドーパントを殴り飛ばした。殴り飛ばされたスイーツ・ドーパントがチャップ達を巻き込みながら転倒している中で、ヴァニシュは懐から取り出した一枚のカードデッキを右手に持ち、前方に突き出す。すると何処からかベルトが出現し、それがヴァニシュの腰に装着される。

 

「少しばかり、儂が仕置きをしてやるかのう」

 

ヴァニシュはカードデッキを真上に放り投げ、左足を一歩前に出す。

 

「変身!」

 

そして落ちてきたカードデッキを左手でキャッチし、それをベルトに素早く装填する。いくつかの黒い鏡像がヴァニシュの姿に重なり、仮面ライダーではない存在―――疑似ライダー“オルタナティブ”への変身が完了する。

 

「ま、まさかアンタもライダーかい!?」

 

「ライダーはライダーでも、あくまで疑似じゃがな」

 

チャップを裏拳で薙ぎ払ってから、オルタナティブはベルトのカードデッキから一枚のカードを抜き、それを右腕に装着されている召喚機“スラッシュバイザー”にスラッシュする。

 

≪SWORD VENT≫

 

龍騎や他のミラーライダーと違い、音声は女性のボイスが鳴り響く。スラッシュしたカードは青い炎に燃えながら消滅し、代わりにオルタナティブの左手には大型の剣“スラッシュダガー”が出現。オルタナティブはそれを逆手に持ち直して構え出す。

 

「さて、どう来るかのう?」

 

「ッ…チィ!!」

 

スイーツ・ドーパントは口から白くドロドロとしたクリームを放つ。しかしオルタナティブはスラッシュダガーを縦に振るって青い炎を放ち、飛んで来たクリームを焼き払った。

 

「な…!?」

 

「何じゃい、これで終わりじゃあるまい?」

 

「こ、このぉ!!」

 

スイーツ・ドーパントは再びクリームを水鉄砲のように放射するが、オルタナティブは慌てずスラッシュダガーから青い炎を放ち、クリームを焼き払いながら接近していく。

 

「余所見をするな!!」

 

「おっと」

 

一方で、支配人に対してはエキセタムオルフェノクが襲い掛かり、支配人はエキセタムオルフェノクが振るう槍を側転で回避。再び槍が振るわれるが、支配人はそれを右手で掴んでから、予め取り出していたオーガドライバーを腰に装着し、オーガフォンを開いて『0』の数字を三回押す。

 

≪0≫

 

≪0≫

 

≪0≫

 

「おいおい、せっかちさんは嫌われるぜ?」

 

≪Stunding by≫

 

「何…ゴァッ!?」

 

「変身!」

 

≪Complete≫

 

エキセタムオルフェノクを蹴り飛ばし、支配人は閉じたオーガフォンをオーガドライバーにセット。支配人はオーガに変身し、オーガストランザーにミッションメモリーを挿し込む。

 

≪Ready≫

 

「さて親父。どっちが多く倒すか、勝負と行こうぜ」

 

「ふむ、面白そうじゃ。良いじゃろう」

 

「な、嘗めるんじゃないよ!!」

 

スイーツ・ドーパントは周囲のあちこちにクリームを撒き散らし、二人の動きを封じようとする。しかしオルタナティブは距離を離してから、周囲に撒かれたクリームをスラッシュダガーで片っ端から焼き払っていく。その間にオーガがスイーツ・ドーパントに接近し、そのボディをオーガストランザーで斬り裂く。

 

「グェッ!?」

 

「まずはその下品な口調から直そうぜ、甘党さんよ!!」

 

「それはお前が言える事じゃろうか?」

 

「ぐ、この……ぐふ、のがぁ!?」

 

オルタナティブのそんな突っ込みもスルーし、オーガはスイーツ・ドーパントを連続で斬りつける。流石にこれは堪らんと思ったのか、スイーツ・ドーパントは跳躍して逃げ出そうとしたが、オルタナティブのスラッシュダガーから放たれた青い炎で撃墜され、逃亡も失敗に終わってしまう。

 

「キシシシシシ…!!」

 

「うぉっと…!」

 

そこに複数のアントロードも乱入し、スイーツ・ドーパントを守ろうとする。しかし…

 

「邪魔臭いのぉ、雑魚の分際で…!!」

 

「キシ!?」

 

「そぉいっ!!」

 

「キシャアッ!?」

 

アンノウンとの交戦経験が何度もある二人からすれば、アントロードなど大した脅威ではなかった。オルタナティブとオーガは大して苦労する事もなく、周囲のアントロードを次々と斬り裂いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、おのれぇ…!!」

 

何度も斬りつけられて膝を突いたジャガーマンの前で、ブレイドは突進して来たワイルドボーダーを足に引っ掛けて転倒させてから、一枚のラウズカードをブレイラウザーに読み込ませる。

 

≪SLASH≫

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ…」

 

ブレイラウザーにエネルギーが充填し、ブレイドが姿勢を低くして構える。そこにウワンとムースファンガイアが走り、ブレイドに襲い掛かろうとするが…

 

「ウェェェェェェェェイッ!!」

 

「「ガァァァァァァァァァァッ!?」」

 

「な…ギャァァァァァァァァァァァァァッ!!?」

 

ウワン達の攻撃が届くよりも先に、ブレイドは素早く駆け出した。まずは一番目の前にいたウワンを擦れ違い様に一閃し、その後ろにいたムースファンガイアを斜めに一閃。そして大きく跳び上がったブレイドはブレイラウザーを高く振り上げ、ジャガーマンを真っ二つに一閃。斬られた三体の怪人が爆発するが、まだ終わりじゃない。

 

≪KICK≫

 

≪THUNDER≫

 

≪MACH≫

 

≪LIGHTNING SONIC≫

 

更に三枚のラウズカードを読み込ませ、ブレイラウザーを地面に突き刺すブレイド。電撃エネルギーがブレイドの右足に纏われ、ブレイドは目に見えないようなスピードでワイルドボーダー目掛けてジャンプ。電流の流れる右足を、前方に向かって突き出す。

 

「ウェェェェェェェェェェェェェェェイッ!!!」

 

「グォォォォォォォォォォォォッ!?」

 

ワイルドボーダーが胸部の砲台から気孔弾を放つも、無駄な足掻きだった。必殺技“ライトニングソニック”はその気孔弾をいとも簡単に打ち消し、そのままワイルドボーダーのボディを粉々に粉砕。爆炎が舞う中、ブレイドは華麗に地面に着地してみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪Exceed Charge≫

 

オーガフォンのエンターキーが押され、オーガストランザーから巨大な刃状フォトンブラッドが伸びていく。オーガはそれを片手で振り回す。

 

「さぁ、灰燼に帰せ……はぁっ!!」

 

「「「ギャァァァァァァァァァァァァァッ!!?」」」

 

「ふんっ!!」

 

「あがぁ!? ぐ…ま、待っておくれ…!!」

 

必殺技オーガストラッシュで斬り裂かれ、エキセタムオルフェノクとアントロードが纏めて灰と化した。その近くではオルタナティブがスイーツ・ドーパントを蹴り倒し、そのままスラッシュダガーを高く振り上げてトドメを刺そうとする。

 

「ア、アタシが悪かったよ…!! もう、こんな事はしない…だから見逃しておくれぇ…!!」

 

「ほぉ、儂が見逃すとでも思うとるんか?」

 

「た、頼むって!! アンタ凄いダンディでイケてるじゃん!? だからさぁ、頼むよ―――」

 

スイーツ・ドーパントは土下座までしながら、必死に命乞いをし続ける。そこには先程までのような威勢はまるで消え失せており、オルタナティブからすれば彼女の行動は見苦しい以外の何物でもなく、そもそも命乞いをされて見逃してあげるような性分は彼の中にはない。そんな事も知らず、スイーツ・ドーパントは必死に頭を地面にぶつけて謝り続けるが…

 

「時間の無駄、早く終わらせて」

 

「ミギャアッ!?」

 

パラドキサアンデッドがサヴェッジとワイルダーを振るい、斬撃を放ちスイーツ・ドーパントを攻撃。そこに更にスラッシュダガーの攻撃も命中し、スイーツ・ドーパントを容赦なく吹き飛ばす。

 

「ガ、ァ…何でぇ…!?」

 

「すまんが、お前さんの命乞いは胡散臭くて信用ならん……レイ、合わせられるかの?」

 

「合わせてみせるさ」

 

≪FINAL VENT≫

 

≪Exceed Charge≫

 

「ギギギギギギ…!!」

 

オルタナティブとオーガは同時に必殺技を発動。まず走り出したサイコローグが変形し、バイク形態“サイコローダー”に変化。オルタナティブはそのサイコローダーに飛び乗った後、スイーツ・ドーパントの周囲を猛スピードで走り続け、そこにオーガが飛び込んでサイコローダーを蹴って跳ね返る。

 

「ふっ!!」

 

「グァッ!?」

 

跳ね返ったオーガのキックは、スイーツ・ドーパントの顔面に命中する。これまでか、と思い込んだスイーツ・ドーパントだったが……その一撃だけでは終わらなかった。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「んな…アガッ!? オブッ!? ノゴォ!? ホガァッ!?」

 

メリーゴーランドのように、スイーツ・ドーパントの周囲を高速で走り続けるサイコローダー。オーガは何と、その中で何度も跳ね返る事でスイーツ・ドーパントに連続でキックを繰り返し始めたのだ。スイーツ・ドーパントのボディ全体にオーガのキックが次々と命中していく。

 

「うわぁ、えげつない…」

 

「…鬼畜」

 

ブレイドが仮面の下で苦笑し、パラドキサアンデッドが呟く中、二人の合体技は未だ続いて行く。既にボロボロであるスイーツ・ドーパントは降参しようとするが、何度も蹴られ続けている所為でまともに喋る事も出来ず、ただ一方的にキックを喰らい続ける。

 

「うぉりゃあっ!!!」

 

「グ、ギャァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」

 

そして最後にオーガの一撃がスイーツ・ドーパントのボディを貫き、そのまま地面に着地。サイコローダーもようやく止まり、スイーツ・ドーパントは高い断末魔を上げると同時に大爆発。爆風が収まった後、そこには変身が解けて倒れている女性と、地面には砕け散ったスイーツメモリの残骸が落ちていた。

 

「ん、終わったか。親父、数は?」

 

「意外と少なかったのう……儂は15体、レイはどうじゃ?」

 

「俺は12体…………く、俺の負けか…」

 

「帰ったら稽古じゃな」

 

「うへぇ…」

 

オルタナティブは楽しそうに語りながら、オーガは面倒臭そうな口調で呟きながら、スイーツ・ドーパントの変身が解けた女性の下まで歩み寄る。そこで倒れていた女性はハッと起き上がり、周囲を見渡してから少しずつ顔が青ざめ、その場から逃げ出そうとするが…

 

「痛だだだだだ!?」

 

「…捕まえた」

 

「「早いな!?」」

 

「ほぉ、早いものじゃな」

 

いつの間にか人間態に戻っていた枯葉が、何処からか取り出したロープで女性を縛り上げてしまった。しかも結構キツく縛っているらしく、女性は悲鳴を上げており、オーガとブレイドは枯葉が女性を縛り上げる速さに突っ込みを入れ、オルタナティブは枯葉の手際の良さに感心する始末である。

 

「さて、情報を吐いて貰おうか。お前はショッカーに関して何処まで知ってる? 素直に吐かないと、色々と大変な目に遭うぞ?」

 

「はん、一体どんな目に遭うってんだい……痛だだだだだだだギブギブギブギブ!?」

 

「…こうなる」

 

「お前さん、実は楽しんどらんか?」

 

「気の所為」

 

「よしよし、よくやった。そのまま縛っていてくれ」

 

「…褒められた」

 

(あれ、ちょっと嬉しそう…?)

 

枯葉は女性の背中を踏みつけながらロープを引っ張り、その所為で更に縛り上げられた女性は悲鳴を上げる。ヴァニシュに指摘されても無表情のまま女性を縛り上げる枯葉だったが、支配人に褒められてほんの僅かに嬉しそうな反応を見せたのを剣崎は見逃さなかった。

 

「ま、そういう訳だ。早いところ話さないと…」

 

戦闘中に地面が抉られて出来たであろう瓦礫。それを拾い上げたオーガは、片手で思いきりグシャッと握り砕いてみせる。

 

「もっと酷い目に遭うかも知れんからな」

 

「…はぁ、分かったよ」

 

堪忍したのか、女性は諦めた様子で溜め息をつく。

 

「アタシはただ、そのメモリを使って一暴れしてくれって頼まれただけさ。彼氏と一緒に、変な奴にメモリを渡されてさ」

 

「変な奴ねぇ……ん? 彼氏だって?」

 

「あぁそうだよ、私にだって彼氏の一人くらいはいるさ。でもアイツは断ったんだ。こんな物を使って人を傷つけたくはないってね……そう言った瞬間、即座に殺されちゃったよ」

 

「「「「…!」」」」

 

「アイツが殺された後、今度は私の方に頼んで来たんだ…『この力を使って暴れて欲しい』…ってさ。断った瞬間に殺されるのが目に見えてるんだ…………だったら引き受けるしかないだろう…? メモリ使って暴れまわるしか他に無いだろう…? アタシには他に戦う手段なんて無いんだ、仕方が無いじゃないか…」

 

「お、おい…?」

 

ブレイドは話を聞いている内に、女性の声色が少しずつ変わっていくのに気付く。

 

「あぁそうさ、その所為でアイツは…敏樹は殺されたんだ……もう何もかもがどうでも良くなっちまったのさ……この街の全部が壊れちまえば良いんだってさぁ!! アタシだけじゃない、どいつもこいつも道連れになっちまえば良いんだって考えた!! そうしたら気が楽になってきたもんさ!! だからどいつもこいつもスイーツにして固めてやったのさ!!」

 

「ッ……おい、落ち着け!!」

 

「そうさ!! 皆死んじまえば良いんだ!! そうすりゃ誰も寂しくなんかない!! 先に死んだ敏樹だって寂しい思いはしないさ!! アヒャ、アハハ、ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

 

突如、狂ったかのように笑い始めた女性。オーガとブレイドが呼びかけても彼女が笑いを止まる事は無く、今の彼女は完全に精神が壊れてしまっていた(・・・・・・・・・・・・)。これはもうどれだけ呼びかけても無駄だろうとオーガは悟る。

 

「チッ……駄目だ、完全に心がイカれちまってる」

 

「しかし、同情は出来んぞ。今の話が真実なら、この娘は既に何人も殺しとる。事態が収まった後、風都警察に突き出した方が良かろう」

 

その時…

 

 

 

 

-ドゴォォォォォォォォンッ!!-

 

 

 

 

「「「「!?」」」」

 

「ズゥゥゥカァァァァァァァッ!!」

 

離れた位置から、タートルバズーカが何発もの砲撃を放って来た。オルタナティブは砲撃が飛んで来る前に枯葉と女性を抱きかかえて回避し、オーガとブレイドはそれぞれの武器で砲弾を叩き斬り、二人の後方で斬られた砲弾が爆発する。

 

「くそ、またアイツか!!」

 

「ヒャハハハハハハハハハハハハハハハ!! 死ね、死ね、全員死んじまえっ!! アヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

「むぅ、こりゃ完全に駄目そうじゃのう」

 

「…精神崩壊」

 

抱きかかえられながらも女性は笑い続けており、オルタナティブは「あぁもう駄目だコイツ」と思い、枯葉は今の女性の状態を四文字で簡潔に語る。その時…

 

「フンッ!!」

 

「ぬぅ!?」

 

「あ…」

 

一体何処から現れたのか。そういう考えをさせる間も無く、現れたリュウガとダークキバがオルタナティブの背中を蹴り飛ばし、その拍子にオルタナティブの両腕から枯葉と女性が落ちる。枯葉は問題なく着地したが、女性は落ちた後も未だ笑い声を上げ続ける。

 

「親父!!」

 

「ゼァッ!!」

 

「チィ、ダークライダーも一緒か…!!」

 

オーガとブレイドの前には、ネガ電王と鎧武・闇の二人が姿を現し襲い掛かって来た。オーガは振り下ろされて来たネガデンガッシャーをオーガストランザーで防御し、ブレイドはブレイラウザーで無双セイバーを受け止めたまま鎧武・闇と鍔迫り合いになる。

 

「クヒャハハハハハハハハハハハハ!! 死ね!! 死ね!! 死ね!! 死ね!! 死んじまえ―――」

 

「フンッ」

 

 

 

 

-ズシャアッ!!!-

 

 

 

 

女性の笑い声が途切れた。ダークキバの振り下ろしたザンバットソードが、女性を縦に一閃したからだ。女性の身体は頭から股まで真っ二つに斬り裂かれ、赤い血液が噴水のようにブシャアと噴き上がり、二つに分かれた女性だった物(・・・・・・)は左右にドチャリと音を立てて倒れ伏す。

 

「!? …貴様ぁ!! 貴様よくもぉ!!」

 

「グゥッ!?」

 

女性が殺害されるのを見たブレイドは、怒りのままに鎧武・闇を斬りつけ、怯んだところにブレイラウザーを突き立てて吹き飛ばす。そのままダークキバの下まで駈け出そうとするブレイドだったが、タートルバズーカが繰り出す砲撃で上手く身動きが取れない。

 

「くそ、邪魔だ…!!」

 

「ズカァーッ!!」

 

タートルバズーカはお構いなしに砲撃を繰り返す。すると…

 

-ドガガガガガガガ!!-

 

「ズカァ!?」

 

何発もの銃撃が、タートルバズーカの足元に降り注ぐ。突然の銃撃に怯んだタートルバズーカが転倒し、ネガ電王から距離を取ったオーガの隣に、一人のライダーが着地する。

 

「ユイ!」

 

「お待たせ」

 

それは、ユイが変身したサイガだった。サイガはフライングアタッカーから何発もの銃撃を放ち、全弾ネガ電王に命中させる。

 

-ポォォォォォォォォォ!!-

 

「「「「「ガァァァァァァァッ!?」」」」」

 

更に別方向からは、オーライナーが猛スピードで走って来た。オーライナーはダークライダー達を纏めて撥ね飛ばしてから、オーガ達の目の前で停車する。

 

「レイ、ユイ、ヴァニシュ殿!! 全員早く乗れ!!」

 

「お、ジンバか。ナイスタイミングだ……剣崎、一旦引くぞ!!」

 

「!? けど!!」

 

「このままじゃ不利だ、まずは体勢を立て直す!!」

 

「…くっ!!」

 

オーガに撤退するよう呼びかけられ、ブレイドは仮面の下で悔しげに歯軋りしつつも素直にそれに応じ、オーガと共にオーライナーに飛び乗る。オルタナティブ、サイガ、そしてさり気なく枯葉も飛び乗り、オーライナーは素早く発車する。

 

「ズゥーカァーーーーーーーッ!!!」

 

タートルバズーカが連続で砲撃を放つ中、オーライナーはそれでも止まらず、何度も起こる爆発の中を猛スピードで走り、あっという間にダークライダー達の下から逃げ去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、工場跡地…

 

 

 

 

 

 

 

「グォォォォォォッ!?」

 

「く、まだ止まらねぇか…!!」

 

ダスタードを斬り伏せながら、プロトディケイドは今も暴走を続けていた。向かって来る戦闘員達を次々と薙ぎ倒していっているものの、既にプロトディケイドのコントロールはokakaでも取れない状況だった。プロトディケイドのライダーシステムには元から暴走の危険性を兼ね備えてはいたが、ネオと対峙していた時とは違い、今度は普通に意識がある状態のまま暴走している。

 

(駄目だ、全然コントロール出来そうにねぇ……どうすりゃ止まるんだ…!!)

 

初級インベスにライドブッカーを突き刺し、そのまま横に斬り裂く事で緑色の血飛沫が舞い上がる。その返り血を浴びながらも敵を殲滅するその様は、本物の“悪魔”のようだった。

 

「キシャシャシャシャシャシャシャ!!」

 

「グゥゥゥゥゥゥゥゥ…!!」

 

「クカカカカカ…」

 

「グルァァァァァァァァァァッ!!」

 

「!?」

 

その時、戦闘員達の後方からウツボカズラ怪人、トライアルD、ヒトツミ、アリゲーターイマジンなどの怪人達が出現。それらが一斉に、プロトディケイドに襲い掛かる。

 

「くそ、こんな時に…!!」

 

暴走している今では、まともに戦う事すらままならないプロトディケイド。アリゲーターイマジンの振り下ろした大剣で肩から思いきり斬りつけられ、腹部にはトライアルDのパンチが叩き込まれ、背中にはヒトツミの杖による攻撃が炸裂。更にはウツボカズラ怪人の鉤爪がプロトディケイドを弾き飛ばし、プロトディケイドのボディがドラム缶の山の中に頭から突っ込んでしまう。

 

「頼む、止まれ…!!」

 

okakaの抵抗も空しく、プロトディケイドはドラム缶を無理やり退かしてからトライアルDに斬りかかる。しかしトライアルDはボディを液状化させる事で攻撃を無効化してしまい、アリゲーターイマジンに後ろから首元を掴まれたプロトディケイドはそのまま投げ飛ばされ、壁に叩きつけられてしまう。

 

「くそ……何でだ…どうして止まらない…!?」

 

「アパパパパパァッ!!」

 

「!? マズ―――」

 

ウツボカズラ怪人はプロトディケイドの目の前に立ち、胸部の口と思われる部分をカパッと開く。それを見たプロトディケイドは嫌な予感を察知したが、暴走している状態では逃げられる筈も無く…

 

「ぐ…うぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――」

 

プロトディケイドの身体が粒子化し、そのままウツボカズラ怪人の体内に吸収されてしまうのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――はっ!?」

 

ウツボカズラ怪人の体内。そこで意識を取り戻したokakaはガバッと起き上がり、周囲を見渡す。足場は濁った液体に浸かっており、壁はまるで肉壁のよう。液体の水面には…

 

「…あれ、ヤバくねコレ?」

 

プカリと浮かんでいる、人間の頭蓋骨が複数。それを見たokakaは液体の正体が消化液であると分かり、冷や汗を掻きながらも冷静に状況を分析する。

 

(俺を吸い込んだのは、あのウツボカズラ野郎。つまりここは奴の体内で、早く脱出しないと俺も消化液で溶かされてしまう……しかしプロトディケイドになるとまた暴走する危険性が…)

 

「…そういえば変身が解けてるな」

 

いつの間にか変身が解けている事に気付いたokakaは、このまま何もしないよりは良いだろうと思い、プロトディケイドライバーにカードを差し込む。しかし…

 

「…あれ?」

 

カードを差し込んだにも関わらず、音声が鳴らない。そのままバックルを閉じても反応が無く、プロトディケイドに変身もしない。これにはokakaも疑問を感じずにはいられない。

 

(どういう事だ? 何故変身が出来ない…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まだだ、まだ足りない…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 

okakaの脳内に響き渡る、謎の男性の声。okakaは周囲を見渡すが、周囲には自分以外に生きた人間はいない。不思議に思うokakaだったが、その直後…

 

「!? うぉっと…」

 

okakaの腰に装着されていたプロトディケイドライバーが、okakaの意志に関係なく勝手に動き出し、宙にフワリと浮かび上がった。okakaは思わず目を見開く。

 

「何だ…!?」

 

『何故だ……私は、こんな不安定な世界すらも破壊出来ないのか…?』

 

「…!」

 

okakaは理解した。脳内に聞こえて来る、男性の声の正体に。

 

何故分かったのか?

 

答えは至って単純。声が聞こえるたびに、宙に浮かび上がっているプロトディケイドライバー……そのバックルの中央部分が、赤く点滅していたからだ。

 

『岡島一城、何故この私を……破壊を拒む? これは、その為に作られた存在である筈なのに…』

 

「…まさか、お前なのか? プロトディケイドライバー」

 

『あぁそうだ。私はプロトディケイドライバー。正確にはそのバックルの中心核…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トリックスターの意志(・・・・・・・・・・)、と言うべきだろうか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何故だ」

 

路地裏にて、また一人「美しい心」の持ち主である男性を襲っていたレギオン―――内藤。しかし、「美しい心」を破壊してやったにも関わらず、彼は快楽に満たされずにいた。

 

「何故、俺は満たされない…? 何故だ、何故…」

 

ブツブツと不気味に呟く内藤だったが……数秒後、答えに辿り着いた。

 

「…あの少年の心、壊し損ねたか」

 

内藤―――レギオンはハルメギドを構え、その場から大きく跳び上がり姿を消すのだった。

 


 
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