No.76998

真・恋姫✝無双 魏ENDアフター 華琳編その弐

kanadeさん

パート2です。
華琳編はこれで完結しますが、お話は続きます。
引き続きキャラくずれなどにご注意ください。
上手くなってるといいなぁ・・・キャラクターの表現

2009-06-03 02:19:54 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:39778   閲覧ユーザー数:29625

_真・恋姫✝無双 魏ENDアフター華琳編その弐_

 

 

 

 

 

 

 「いい加減、受け入れなさい!一刀はもういないのっ」

 精一杯の強がりを込め、声を上た。

 

 

 

 「ふざけるなっ!!」

 声を張り上げたのは楽文謙こと凪だった。

 「隊長が・・・隊長が私たちを置いていくなどと、そのような事信じるものか!!」

 「いいえ、事実よ凪。一刀は私の覇道を成就させるために天が遣わした男。

 ならば、我が覇道が成った以上元いた世界に帰るのは必然なのよ』

 あくまでも冷静に、私は冷たく突き放す。

 その私を睨みつける凪の瞳には溢れんばかりの涙と怒気であふれていた。

 

 ――一刀、貴方はこの子にこんなにも影を落としていたのよ。

 

 「っ!!!!」

 感情が爆発した凪がありったけの氣を拳に乗せ飛びかかってきた。

 

 ――告白するなら、私にはここで凪の拳を受ける覚悟ができていた。

 しかし、凪の拳が私に届くことはなかった。

 「すまん、凪。それを許す訳にはいかぬのだ」

 秋蘭の当身によって意識を刈り取られ床に伏していた。

 「沙和、真桜。すまぬが凪を部屋まで運んでくれぬか?」

 「りょ、了解や。ほな沙和、いくで」

 「わ、わかったの~」

 三人が去った後玉座の間には痛い静けさがあった。

 

 「華琳様」

 「何かしら秋蘭?」

 「凪の処分、如何なされるつもりでしょうか?」

 「そうね・・・秋蘭、貴女はどうするべきだと思っているのかしら?」

 秋蘭が何を言いたいかわかった上で、あくまで私は魏の覇王として尋ねる。

 彼女の発言を皆が固唾をのんで見守っていた。

 

 

 「できるのであれば、不問にはしていただけないでしょうか」

 「理由を聞かせてくれるのかしら?覇王に拳を上げたものを不問とする理由を」

 覇王としての覇気を損なわぬまま、きつく睨みつける。

 しかし、その内心は、笑いたい気持ちでいっぱいだった。

 (ここまで予想通りだとホントに笑ってしまいそうね)

 「凪のしたことは本来は許されざる行為です。しかし、あの時の凪の心情、おそらくは我々と同様だったと思われます。ですから凪の行為は我々全員の気持ちを代弁したものとして、どうか罪を軽くはしてはいただけないかと思った次第です」

 「それはあなたたち全員で処罰を受けるということかしら?」

 「はい」

 「皆も同意見なのかしら?」

 一同を睥睨して尋ねる。

 「それで凪の罪が軽くなるというのであれば、夏侯元譲その罰甘んじてお受けします」

 「うちもそれでええで」

 「ボクも春蘭様と同じです、華琳様」

 「私もその罰を受けます」

 「風もいいですよ~」

 「まぁ、当然ですね」

 「あくまで凪のためだというのであれば私も異存はありません」

 (別にあの変態がいなくなったことなんてわたしにはどうでもいいもの、そうよこれは凪という優秀な武官をなくさないためよ)

 桂花が何かブツブツ言っているようだったけど、私を含めて誰もそれには触れなかった。

 もう少し素直になれないのかしらとも思ったけどこれが桂花の持ち味だものね。

 そう納得させた。

 「それで?貴方たちはどうなのかしら天和、地和、人和」

 何かこそこそと話し合っている張三姉妹に意見を求めると、彼女達にしては意外なことを言った。

 「ライブとかでいっつも守ってもらってるもんね~」

 「罰を受けなきゃいけないなんて、ちぃは納得いかないけどせめてもの恩返しよ」

 「姉さんたちの意見に反対する理由がありません。罰をお与えになるというのらどうぞ」

 「そう・・・ならば処分を言い渡すわ」

 

 全員を見渡して一呼吸間をおいて。

 

 「楽文謙は・・・不問とする」

 

 全員の目が点になった。

 

 

 

 「聞こえなかったのかしら?凪の罪は問わないと言っているのだけど」

 「華琳様、もしや初めから・・・」

 「フフっ。ええ、秋蘭の言う通りよ。私は最初から凪の行いに対して何を言うつもりもなかったわ。でもそうね、凪はともかく貴方たちには罰を与えましょうね。凪の行いに安堵した者には相応の罰が必要だわ」

 一転して戦々恐々と言った顔になってしまった。

 ちょっとおもしろいわね。

 「貴方たち、後で凪にお礼を言っておきなさい。それがあなたたちに与える罰よ」

 では解散よ。

 そう言って朝の軍議を終えた。

 

 ――その日の夜。

 覇王・曹孟徳を含む魏の武将は、挙って凪の部屋を訪れお詫びと感謝を述べ、えらく凪が困った顔をしたらしいが、そこは御愛嬌である。

 

 

 ――一刀が天に帰って三年が過ぎた。

 魏の主要たる武将たちはようやく以前の活気を取り戻しつつあった。

 一刀という穴はいまだに埋まってはいないけれども、それでも最初のころに比べれば何倍もましといえるでしょう。

 それに一刀がもたらしてくれた平和な世を守り続けることが未来を託された私たちの役目なのだから、いつまでも俯いてはいられない。

 一年前には五胡が大軍を上げて攻めてきたが、三国が手を取り合ってる今、決して恐れる敵ではなかった。

 大敗を喫した五胡は撤退し、再び大陸に平穏が訪れた。

 

 そして今、三国が同盟を結んだ記念すべき日として成都で祭りが執り行われている。

 成都の城内では三国の武将達が立食パーティーを楽しんでいた。

 「華琳さ~んもっと飲みましょうよ~」

 「せっかくだけど桃香、遠慮しておくわ。雪蓮、悪いんだけど彼女をよろしく。私はちょっと夜風に当たってくるから」

 べろんべろんに酔っぱらっている蜀の王・桃香こと劉備玄徳を呉の王・雪蓮こと孫策伯符に押し付け、私は城壁の方に足を運んだ。

 「あら?」

 城壁にたどり着くと、そこには先客がいた。

 「凪・・・」

 そこにいたのは月を見上げる凪の姿があった。

 

 

 「ここにいたの?凪」

 「か、華琳様」

 私が来たのが意外だったのか凪は少しびっくりしたように私に応じた。

 「月を見ながら何を思っていたのかしら?」

 少なからず戸惑っている凪に対し私の方から話しかけてみることにした。

 「隊長がいなくなったと告げられた時のことを思い出していました」

 「そう・・・あれから暫くの間の貴女は見ていられなかったわね」

 ほんの少しからかってみることにした。

 凪はこういうところで未だに初心な反応を見せてくれるので、私にしてはうれしい限り。

 「その節は申し訳ありませんでした。隊長がいない・・・そのことを受け入れるのが恐ろしくて、受け入れてしまったらもう二度と、会うことが出来なくなってしまうような気がして」

 三年前も凪は同じことを言った。

 そうなってしまうのが恐ろしいと。

 他の武将たちももちろん同じ気持ちだったのだけど、凪はそれが人一倍大きかったようだったみたいね。

 その後の落ち込み期間もこの子が一番長かったもの。

 「そう思ったのは貴女だけではないわ。春蘭、秋蘭、季衣、流琉・・・霞、真桜、沙和、風、稟、天和、地和、人和・・・みんなの前でこそ見せなかったけど、桂花だって一刀がいなくなっ

たことに悲しんだいたのよ。もちろん私もね」

 「はい」

 「だから、あの時の貴女を罪に問うことなんてできなかったのよ。もし一刀が聞いていたら『頼

む、悪いのは俺なんだ!だから凪を許してやってくれ』って言うに決まっていたもの」

 「そうですね、隊長なら間違いなくそうおっしゃると思います」

 「なにせ、〝魏の種馬〟だものね」

 「悪かったな種馬で」

 「「!!」」

 私と凪がお互いに笑った時だった。

 「無視かよ・・・なら」

 声が聞こえる。

 だが、私も凪も振り向く事が出来なかった。

 振り向いてそこに誰もいなかったら、今度こそ立ち直れなくなる気がしたからだ。

 「これでどうだ」

 ぎゅっと抱きしめられた。

 伝わってくる温もりが現実であることを教えてくれて、自然と肩が震え始めていた。

 「覇王たる私との約束を反故にして戻ってくるなんていい度胸ね」

 「ごめん。だけど、俺はもうどこにも行かないよ。

 だってここが俺の居場所なんだ。華琳や凪達がいるこの世界が、俺の居場所なんだ。だから、俺

 は今、こうしてここにいるんだ」

 「許すのは今回限りよ。次もこんなことをしたらその首を刎ねてあげるわ」

 「約束する。俺はもう、どこにも行かないよ」

 「いいわ。その言葉、今一度信じましょう」

 「ありがとう華琳」

 「いいから、もう一人のほうにも何か言うことがあるんじゃない?その子、貴方がいなくなった

 ことに一番悲しんでいたんだから」

 「ああ、そうだな」

 振り向いた視線が私のことをまっすぐに見つめ、私の方はというと凪の方を視線を移し、一刀に凪の方に行くよう促した。

 それに気づいた一刀は頷いて凪と向き合った。

 「ただいま、凪。遅くなってごめん・・・だけど俺はもういなくなったりしないよ。だからそん

 な悲しい顔をしないで。凪は、笑っている方がずっと可愛いよ」

 そう言って凪をもう一度抱きしめた。

 「うう、うわああああああああああああああん」

 私の目の前で抱きしめられた凪の想いが溢れた。

 

 「おかえりなさい、隊長!」

 凪の中のいろんな思いが集まってその言葉を紡ぎだした。

 (よかったわね、凪)

 二人に微笑みかけ、声にすることなく私はそう思った。

 

 

 ほどなくして、凪を慰めた後一刀が私の方へと歩を進めてきた。

 「ただいま、華琳・・・随分と待たせちゃったみたいだね。少し見ない内に綺麗になった」

 「いきなりそれ?ホントにあなたは種馬なのね」

 何を言うかと期待に胸を躍らせていたら、出てきた言葉は口説く気満々のセリフとくれば関心を通り越して呆れてしまうというもの。

 現に凪でさえ苦笑している。

 「しょうがないだろ。ほんとにそう思ったんだから。二人ともこんなに綺麗になってたなんて思いもしなかったんだからさ。この分じゃ他のみんなもすごく綺麗なんだろうな」

 種馬発言全開。

 去勢でも考えようかしら本格的に。

 そうするとちょっと邪な気持ちが浮かんで唇の端がつり上がってしまう。

 「なんかロクでもないこと考えてるだろ華琳」

 相変わらず勘がいいわね。

 仕方ない、去勢は諦めましょう。

 「一刀、貴方は私たち魏の物よ。分かっているわね?」

 「ああ」

 「では改めて誓いなさい。この大陸の覇王に、そして貴方が愛した者たちに」

 「者たち?」

 「ええ、だってみんな来ているもの。気付かなかったの?」

 そういって一刀に周りを見渡すように仕向けると、一刀は。

 「気付かなかった。おかしいなぁ・・・じいちゃんに鍛えられて少しはみんなに近づいたと思ってたんだけど、まだまだだなぁ」

 はははと苦笑する一刀に今一度誓いをたてなさいと言うと、力強く頷いて腰に下げていた初めて見る剣を抜き、天に振りかざし高らかと誓いを立てた。

 

 「天の御遣い、北郷 一刀がここに誓う!我は二度と、愛する者たちを置き去りにはしないと。そして、必ずみんなを幸せにすると!!」

 

 これでいいか?視線で尋ねてきたのを私は首肯でこたえる。

 「結構よ。では私たちみんなからあなたに言葉を贈るわ」

 「言葉?」

 「そうよ。じゃあ皆、いいわね?」

 「「「「「御意っ!!」」」」」

 「それじゃあいくわよ。せ~の!」

 

 「「「「「おかえりなさい、一刀(((隊長)))(兄ちゃん)(兄様)(お兄さん)(一刀殿)(馬鹿北郷)!!!!」」」」」

 

 

 ――天の御遣いは再び愛する者たちのもとへと帰った。

 ――新たな外史がこれよりはじまる。

 

いかがだったでしょうか?

華琳編その弐

自分なりに頑張ってみました。

しかしまだ、アフターシリーズを書こうと思っております。

なぜなら他の魏の武将達も好きだからです。

でも次に誰を書こうかは決まっておりません。

もしかしたら呉の誰かかもしれませんし、蜀の誰かかもしれません。

ひょっとしたらアフターシリーズではなく、完全なオリジナル作品となる可能性だってあります。

ともかく、次の作品を楽しみにしてくださるとうれしい限りです。

例によって感想をお待ちしております。

それでは次の作品でお会いしましょう。

kanadeでした。


 
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