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真・恋姫†無双 ~孫呉千年の大計~ 第4章 5話

雪月さん

常連の皆様&お初の方もこんばんは いつもお世話になっております

この作品は真・恋姫†無双・恋姫†無双の2次創作となっております
主人公は北郷一刀 メインヒロインは雪蓮と蓮華と仲間達でお送りしております
※猶、一刀君はチート仕様の為、嫌いな方はご注意を! ※オリキャラ紹介は本文下記参照のこと

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2015-04-01 20:10:41 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:6072   閲覧ユーザー数:4068

 

第4章 晋帝国の野望 混沌編 5話 『 河北動乱・第2次界橋中盤戦 命運のカギを握る1日 』 

 

 

 

 

「それで・・・いつまであの魏のアホ共をのさばらせておくつもりなのだ? アヤツは・・・

 俺に手を出すなと言って、何日待たせる気だ?

 ・・・何なら俺直々に、あちらにみえる魏本陣へと出張ってやっても良いのだぞ?」

 

司馬師が着陣してからそう日数は経っていないというのに、イキナリこの剣幕である

 

司馬師がここで指摘するアヤツとは、当然ながら父である司馬懿を指している訳なのだが・・・ 

策の都合上、本陣に全く姿を見せていない為、司馬師のこの愚痴に対して父である司馬懿の回答などある筈もない訳で・・・

 

ぶすっとした表情のまま机上で頬杖をつき、左人指し指をコツコツと忙しなく突いており 

その様子をみるからに、仮に話しかけなどすれば、怒りの矛先へと延々と吐き捨てたことであろう

 

この主の様子を知って尚、近づきたい部下などいないのではないか?とそう思われた

対応次第では、最悪首と胴が永遠におさらば!などという事態すら招きかねないほどの凄みがあった

 

「若、イライラは若禿のもとですぞ?」

 

だが司馬師の傍に控えていたこの男は、主の様子が喜怒哀楽のどれであろうと関係ない、数少ない関係者なのであろう

後ろから覗き込むように、主の右肩越しへと首を伸ばし、そして耳元へとそっと囁いたのである

 

「・・・・・・賈充、それは冗談のつもりか?」

 

司馬師は眉をより深く刻み顰め、追及の鋭き視線を投げかけた

普通の者ならこれだけで己の死を予感させたに違いない

 

「そうですが・・・ 若のお気に召しませんでしたかな?

 そうそう! 司馬懿様の願いにて、明日まで時間を引き延ばすよう仰せつかっておりますれば・・・」

 

賈充と言われたこの男、主に対し本当に冗談を言っていたようだ

空気を読めぬ男なのか? 死にたい願望有り? それとも豪胆、不遜というべき言葉が浮んでくる

それはこの際置いておくとして、そういえば・・・といった感じで

まるで今ふと思い出した!・・・とでもいうように、司馬師が欲しい情報をのうのうと吐いていたのである

 

「そういう大事な事は先に言えっ! このウスラトンカチ!!」

 

司馬師の左手は拳を強く握りこみ、ぷるぷると小刻みに震えている

そんな主の怒りを他所に・・・

 

「やれやれ・・・ 若は少々気が短かすぎませんかな? 

 もう少し気をながぁ~く、ながぁ~く保つことが髪にとっては重要なのですぞ?」

 

主の怒りに動じる所か、まるで世話の焼けるお坊ちゃんだといわんばかりの悪態をついている

 

「それと奥方様からの伝令です 敵右翼軍の撃退には失敗、されど時間稼ぎには成功とのこと 

 よって最低限の仕事はしてのけたので、元姫ちゃん共々褒賞期待してますとのことです」

 

母上は自身の期待に見事応えてくれたと

笑顔で手放しに喜ばしいと部下の前にて喜びを表す司馬師でもなかった

 

その反応もなき様子は、自身の母ならやってのけてさも当然であろう?

・・・という、何とも部下としては仕事のし甲斐も感慨も湧きそうもない、そんな無反応な表情であった

 

それどころか、表情がより険しくみるみる曇りだし、あぁ~ん?と怪訝そうな表情で伝言してきた賈充を睨んでいる

事と次第によっては、後雷雨、暴風雨、吹雪、大時化といった大荒れの展開模様が予想された

 

「元姫にもだと!? それで母上は強引に元姫を連れて行ったのか・・・ ぐぬぬぬ・・・見事にしてやられた

 だから母上に頼み事をするのは嫌だと言ったんだ! この仕儀どう責任とってくれるんだ? 賈充」

 

頼んだのは母である春華にだけなのに、勝手に連れて行った元姫にまで何故褒賞を強請られねばならんのだ?

ブツブツと呟きながら、眉をヒクヒクとさせ、そう非難の視線を賈充へと浴びせている

 

実際の所、母である春華が助け出さねば

元姫は多くの部下と共に、風の部隊へと突撃し亡くなっていたことであろう

 

多くの部下が死に、自身も死を覚悟した元姫にとっては、逆に褒賞が少なすぎるきらいはあるとは思うのだが

元姫自身の判断ミスで起こったことでもあったことから、妥当とでも判断したのだろうか?

 

そんな事情を全く知らない司馬師である為

賈充からの嫌がらせなのか?それともそんな主をからかうのが趣味なのか?と全く判然としないのだが

賈充はそんな事情を加味しつつ、先の戦においての信賞必罰を査定したとでもいうのだろうか?

・・・と思われるほど動揺の濃淡をみせず、それはもう淡々とした口調で主の言に答えていた

 

「どうしてくれる?・・・と今にも腰に佩く剣を抜き放ち、刺し殺す様な視線をこちらに向け愚痴を申されましても・・・

 実に簡単な事です 奥方様が満足するまで、大人しくムギュッっと大きな胸に挟まれ、若が抱かれておられれば良いのですよ

 親子の情愛を確かめ合う良い機会ではございませんか 何でしたら元姫様ごと3人で抱き合ってはいかがですかな?

 一石二鳥で済み実に捗りますな! はっはっは!!」

 

知ってか知らずなのか、のうのうと主である司馬師へ赤面するような褒賞内容を言ってのけた

主の不機嫌さに恐れ、その度に死を感じていては、この命などとうに何度となく失っていると言わんばかりに

賈充はその表情1つ変える事無く、司馬師が絶対採用しないことを判りながら、それでも最後には笑い飛ばしながら答えていた

 

「アホか・・・貴様それでも正気か!? そんな小っ恥ずかしい真似なんて死んでもするかっ!

 俺を一体何歳だと思っているんだ? この馬鹿者め!!」

 

愚痴からついに怒りへ変じる司馬師さすがに腰に佩く剣を抜き放ちはしなかったが

少し赤面気味の司馬師の拳が振り下ろされ、賈充を何度となく襲っていたものの・・・

司馬師も本気ではなかったのだろうが、その攻撃全てを賈充に避けられたようである

 

「明日か、やれやれ・・・ 漸くこんな茶番とオサラバできるか

 それより”例の計画”はちゃんと進めていたのだろうな?」

 

念の為ここで注釈しておくと、司馬師のここでいった”例の計画”とは、司馬懿や鄧艾が関わっている策とは全くの別物である

司馬師は立ち上がると、本陣から”さらに南の方角”をジッと睨み、賈充へとそんな言葉を呟く

 

「そちらは大丈夫でしょう 易京から発したと伝令も届いておりますし・・・

 それよりもこちらの界橋での戦をさっさと終わらせないと、易京から派遣した者達が孤立し策が空振りに終わってしまいますよ?」

 

賈充よ 全て知っておいて尚、おのれはその言葉を吐くか!

今度は司馬師の眉間に、怒りの為か血管が浮き出ている

 

「だから俺が直々に出張ろうか?と言ったんだ 俺の先に言った言葉を覚えておらんのか?

 貴様という無能のお陰でイライラしておるというのに、お前ときたらあ~だのこうだのと、未だにのうのうと・・・」

 

「ハッハッハ それは面目次第もありませんな 私は無能ゆえ若とは違い気が長いですからな はっはっは

 ”今日1日”次第ですよ若、そうすれば明日、全ての決着に終止符を打てることでしょう それまでは・・・」

 

「わかった、わかった 我慢すればいいのだろう? 上に立つのは性に合わんっ!!」

 

賈充は司馬師のイライラのガス抜きをしていたと言わんばかりに、最後は主に言い聞かすような口ぶりをしてみせた

 

「それでは、今日1日をしのぐ策へと取り掛かろうと思いますので、私は出かけて参ります 

 ・・・若1人で大丈夫ですか?」

 

賈充のその言葉に怒りや反論するような事はなく

司馬師はさっさと行けとばかりに、シッシと手で払いのけるような仕草をしてみせた

 

再び椅子へと深く腰を降ろし腕組みしてしまった司馬師を苦笑をまじえつつ

まるでその振る舞いは駄々をこねた子供のような主だと、去り際感慨深く思う賈充でありました

 

 

 

 

「さてとだ ここに集ってもらった貴様達には、この先に造りあげた簡易砦の死守を命ずる」

 

賈充は集められた者達を先導し、砦へと到着間際に集合させ、真顔でそう告げていた

ざわめき戸惑いつつも、自身の置かれている境遇を把握すべく、周囲をキョロキョロと見渡しだす兵達

 

「魏軍精鋭部隊が貴様達の相手となるだろう 先程死守とは言ったが、気概だけで逃げてもらっては困る

 文字通り、ここに集う約500名ほどだが、お前達全ての者に死んでもらうことになるだろう

 もし敵前逃亡する者あらば、容赦なく即刻首を刎ねるからな? これだけは頭に入れておけ」

 

真顔の表情を全く崩さぬ言い終えた賈充を前にしても尚

何の冗談だ?コイツ頭可笑しいんじゃないのか?そんな兵達の囁きが聞こえてくる

 

兵達の囁きは至極最もなことだろう、晋に絶対の忠誠を誓った訳ではない

 

故郷である易京を抑えられ、そこに大切な家族がいるから仕方なしに従った柵(しがらみ)のある者達の集まり

そう彼らの多くが元白蓮が率いた兵達の生き残りであり

晋が掲げる『選民』主義から漏れた、踏みにじられる側に立つ者達であった

 

だが突然死ねと言われ、誰がそんな命を承服できるというのか? 

戯けた賈充の言など、聞き入れる者などいないと、ざわつく者達も含め周囲に取り巻く兵達の誰もがそう思った

・・・だが、次に述べた賈充の言が、彼らに反論する余地を与えず、想いを無惨にも踏みにじった

 

「お前達の戯言など誰も聞いてはおらん! 私が死ねと言ったら死ね! ゴミ共!! これは”決定”である

 だが死に逝くお前達の願いをなんなりと叶えてやろう まぁ叶えられぬ願いの場合却下だがな

 

 願いと言われても困る者も多かろう? そうだな・・・ ただ例えば・・・だ こんな願いはどうだ? 

 ゴミのようなお前達にも大切な者がおろう? 残された者達が『選民』へと取り立てられるとしたらどうか?」

 

戦っても死、逃げても死が待っている絶望の淵にいる者達に、一縷の望みという慈悲を賈充は遭えて目の前にぶら提げたのだ

絶望の淵に足を竦めている者が、この賈充の例えに縋(すが)らぬ者などいようか?

先程まで文句をいっていた兵達の愚痴や怒りや嘆きといったモノが一斉に閉じられた

周囲に取り巻く兵達の様子を掴み、口角を上げニヤリと微笑む賈充

 

「ただしこの願いが叶うのは、お前達が見事、魏の本陣侵攻を”1日”遅らせられたら

 魏の精鋭部隊から、1日という空白期間を作りだせたらの話だ あくまでもその”成功報酬”だからな?

 

 本日内に本陣へと攻撃され侵入を許し失敗すれば、故郷に残されたお前達の愛すべき者達はゴミのままで

 死したお前達は、まさに犬死、無駄になるから気をつけろよ?」

 

気をつけろと言われた所で、俺達が死んだ後、どうやって家族が『選民』になれるというんだ?

こいつが咄嗟についた嘘に決まっていると、まだ喰ってかかる男達を前に

 

「竹簡にでも名を記し残しておくがいい 易京には公孫賛が残した戸籍が今もある 

 そこまで言えば馬鹿でも判るだろう? 名を記した竹簡は監視役の者へと各自渡しておくがいい」

 

竹簡の隙間という隙間に、この世で最後となる自身の名を1人また1人と群がり記し埋めていく 

文字の書けぬ者達もいた為、書ける者が代筆していた

 

突如死を突きつけられ、その理不尽さに涙を溢し、嗚咽をまじえる者が多数であった

これから死を迎える彼ら達にとって、呪詛のような文字で埋め尽くされた竹簡であった

 

「全員名を記し終えたか? それでは諸君に朗報をもたらすとしよう

 もうすぐ魏の精鋭がこの砦にやってくるという情報が入ってきた 諸君の健闘を祈る クックック」

 

もうお前達には用がないといった感じで、颯爽と踵を返し砦から去っていく賈充

誰が砦を守備するというのか? 指揮は誰が? そんな思いを抱く兵達を置き去りにしたまま・・・

 

 

 

 

「右翼にて晋軍と戦闘に入り、無事退けた模様とのこと そのまま晋本陣に向け進軍するとの由です」

 

(風、ありがとう 私も風の頑張りに負けていられないな)

 

そんな想いを胸に秘めつつ、荒い息を吐き近づいてきた者達へと激励を含めて言葉にする

 

「ご苦労だった うむ、委細承知した 戦果を期待すると伝えてくれ」

「ハッ!! 承知致しました! それではっ!」

 

1つ1つ丁寧に、確認を怠ることなく対処してゆく稟

 

「凪からの連絡はあったのか?」

 

「はい! 左翼軍でも現在敵からの攻撃を受けている模様です

 橋頭堡を築きつつ応戦するとのことです」

 

稟の問いに関し、稟取り巻きの魏将兵からそう返ってきた

 

「委細承知した 凪達にも戦果を期待すると伝えてくれ」

「ハッ!! 承知致しました!」

 

魏将兵は伝令をすぐさま呼び寄せると、稟の言葉を正確に伝え送り出す

右翼と左翼の動向が知れた現在、後は稟達中央の動向を残すのみとなった訳なのだが

馬上にて簡易地図を片手に戦略に思いを巡らし耽っていると

 

「・・・それで稟、どうするのだ?」

 

いつもならそ突撃、やれ突撃と大声を張る春蘭がだ

普段の猪娘に似合わず、軍師である稟に素直に指示を仰いでみせた

 

豪雨が降るのでは?と思い、周囲の天をキョロキョロと仰ぐ稟

まぁなんてことはない 出発前に華琳に稟を困らせ心労を増やすなと

口酸っぱく強く釘をさされたが故なのであるが・・・

 

春蘭が顎をくいっっと突き出してみせる2人の視線の先には

序盤戦では、中央のこんなみるからにという場所に、土塁など築いてはいなかった筈なのである

 

たった1日で土塁を築いた簡易砦の両側には森林が生い茂っており

いかにも本陣への道を封鎖しただけと思われる、何ともお粗末な造りであることが、歴戦の2人には容易に見抜け想像できていた

 

「風に遅れて本陣の突入ともなれば、魏軍主力としての名が廃ろう

 春蘭、ここは力押しで迅速に制圧し、右翼と出来るだけ足並みを揃えれるよう整えようではないか」

 

「そうだな ここいらで手柄を稼ぐとするかっ! そうでもせんと風や秋蘭にばかり御褒美を取られ兼ねん! 

 後方にて指揮する華琳さまにも申し訳がたたぬわ! それでは派手に暴れてくるか!」

 

乱暴ともいえる春蘭の言に、笑顔で微笑み強く頷いてみせる稟

この時の稟や春蘭が抱いた判断が、到底過ちであったとは思えない

 

なぜなら、土塁を築いた簡易砦内には、僅か500にも到底満たない少数の兵数だったからだ

ここまでの情報は得られていないが、対峙する彼らは晋の精鋭という訳でもなかった

 

「援軍はこねぇ!! ・・・だどもおら達がここで魏相手に少しでも死守すれば

 故郷で明日をも知れぬ両親や嫁っこや子供達皆が、無碍に虐げられる『傀儡』から『選民』へとなれるとの誓紙をここに戴いているだ!

 

 おら達の命で故郷に残した両親を始め、嫁っこや子供達の明るい未来が買えるならば安いもんだ! 

 そうじゃろ? なっ? みんな! 家族みんなきっと明るい未来へと続いてるだっっ!!」

 

砦を指揮する即興将兵の言葉に、少しでもそこに希望を見出そうとする一般兵達

ちなみにこの者は、文字を書けぬ者達の代筆を率先して行っていた男である

 

「オオォォォーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

彼らの本音には、本当は戦争などに従事などしたくはなかったという、悶々とした想いが態度にも言葉にも湧き上がっていた

 

中には白蓮の支配下で、汗水垂らし土と格闘し耕し、実りを収穫を家族と喜び合い生きていく筈だった者達なのだが

いかに主君が立派な民想いの者であっても、敗北し一度領主が代われば、立場も自ずと変わる例がそこにあった

 

残酷なようだが、一度戦争に負ければ、底辺を構成する者達の扱いなど、どうとにでもなるという証左でもあった

白蓮が大いに慈しみ家族とも思った民達の成れの果ての姿がここにあった

 

援軍も来ない、要は晋軍の捨て駒にされ、最初から玉砕覚悟の何ともいえぬ悲壮感漂う立て篭もりであったのだった

無駄死になんかじゃないと念じながら、只管残してきた妻や子のその後の明るい未来を願い想って・・・

 

魏とて、春蘭や秋蘭、桂花を始めとして、稟や風といった多くの者達が華琳の理想に準じ

覇道を掲げ大陸を良くしようと負けられぬ理由があるように・・・

晋側で戦う一般兵ですら、迫り来る死に打ち震えながら、この戦いに少しでも意義を見出そうと必死に生きていた

 

両者の夢の行き着く先は互いに同じ方向である筈なのに・・・

この晋に属する一般兵達の死する覚悟が、大陸を制し安定した平和を目指す華琳の理想を挫く足がかりとなるとは・・・

実に皮肉で儚いモノだと感じざるを得ない

 

 

 

 

「者共、少数とはいえ容赦するな! かかれいっ!」

 

春蘭の号令の激に呼応し一気に押し潰さんと、我も我もと魏兵が大挙として押し寄せ迫り来る

兵数差を鑑みても、敵である魏軍総兵数は1万近くに対して、晋軍は僅か500ばかり

 

大挙として砦へと押し寄せてくる魏軍は、彼らの眼にはもはや絶望しかなく、人、人、人の大津波に見えていた

歯がガチガチと鳴り、たちまち剣や盾、弓を持つ手足を始めとした全身が震え

人に具わる生存本能が、彼らに強く尚一層強く、”逃げろ””逃げろ””逃げろ”と本能へと訴えかけ警鐘を鳴らしてくる

 

先ほど家族の為と強く抱いた決意など、この恐ろしいまでの一瞬の光景で見事に吹っ飛んでいた

 

土塁を易々と乗り越えてきた魏軍兵士達の刃が、こり固まった晋軍兵士へ向けて容赦なく振り下ろされる

味方の者が血飛沫をあげ絶命の叫びをあげる中、無惨にも斬り殺される姿を眼にした途端

大きく眼を見開いたまま、兵達の全身が凍りついたかのように、全く誰もが動けなくなっていた

 

だがそんな兵士達が大勢いる中で

 

「魏兵士の誰でもええ! 1人でも多くおら達の”家族”の未来の為に、死出の旅路に付き合ってもらうべさ」

 

皆へと故郷に残してきた家族の為に戦うのだと必死に声を枯らし叫ぶ

何れは尊敬する白蓮と共に、戦場を駆け死することになるのだろうとあやふやに思っていた

 

故郷を守備する公孫越の部隊に属しながら

同僚の皆が毒に犯され死んでゆく中、どうしても残している家族の為にと晋へと投降した人物でもあった

 

賈充の言に、今回ばかりはどう考えても生き残れないと考え腹が据わった

 

敬愛する白蓮が魏に敗北し、今何処で生きているか定かでないが

死を前にして、名を記せぬ者達の代筆まで快く請け負った 

 

今更偽善か?先に死した者達の幻影に嘲笑されるのを覚悟の上で

勇気を振り絞り、皆へと希望を語りかけていた言葉は、彼自身の本心からの叫びでもあった

 

自身が死した後も、易京へと残してきた大切な家族の事を切に願って・・・

 

対峙する晋将兵達が悲壮感漂い篭っていることなど、魏軍に属する者達の誰もが知りえることなどなかった

例えその絶望に喘ぐ心の内を知った所で、手加減などできよう筈もなかった

 

春蘭の部隊に属する魏軍でも精鋭部隊に属する者達でもある

 

立派で格好の良い言葉とは裏腹に、突撃してくる魏軍兵士に早々に取り囲まれ

砦を指揮する将だった者は誰も殺せぬままに、あっという間に刀や槍で串刺しされ

理不尽にもあるいは切り刻まれ、あっという間に骸と化してしまったのだった

 

晋側砦指揮官のあっけない死に様に対し、晋兵達の闘志が瞬間に凍りついた

隊長となった男さえこうなのだ 防げる筈もない・・・戦うも地獄退くも地獄の絶望感が漂う

 

敵味方、誰もがもはや彼の死は間違いなく、すでに死んだと思ったのだろう

だが彼は魏軍兵士の足へと最後の力を振り絞り噛付いていたのだった

 

「コイツ・・・ このっ! このっ!!」

 

噛み付かれた彼を振りほどこうと、必死に足蹴にし突き放そうとする魏兵士

 

「何をもたもたしているっ! こんなちっぽけな砦の制圧に何をちんたらと・・・制圧を急がせいっ! 華琳さまに勝利を捧げるのだっ!!」

 

噛み付いていた将だった者の首を、楽々と七星餓狼(しちせいがろう)で薙ぎ払い、攻め込む魏軍将兵を鼓舞する春蘭

 

死して尚、噛み付く覚悟ある同士の死に様を、この場で汚し貶(おとし)め失笑する者など

今は晋に属する者達とはいえ、この場にはいなかった

 

「誰でもいいだっ! 1人でも多く道連れに・・・」

 

この光景を目の当たりにした晋軍一般兵達は、凍りついた闘志を割りまるで解き放たれたかのように

その言葉を合言葉のように呪詛を込め呟き、まさに死人と化して一斉に精鋭を誇る魏軍兵士へと次から次へと群がり始めた

 

「なっ!! なんなんだ?こいつらは・・・ 気が触れでもしたのか?」

 

春蘭へと群がってくる晋兵達に遠慮なく肘打ちをし、隙あらばあるいは斬り殺していく

 

だが春蘭ほどに咄嗟に対応できる将が、どれほど魏軍にいるというのだろうか?

魏軍で精鋭と持て囃された者達であっても、晋兵数人がかりで抱きつかれては身動きなど出来よう筈もなく

抱きつかれた魏軍兵士を、順々に手に持った剣や槍で確実に刺し殺していく

あるいは死兵となった者達に抱きつかれ、必死に振りほどこうとしている魏軍兵士ごと刺し貫かれる者

腕を切り落とされても尚、誰かがきっと仕留めてくれると信じ、必死に片手で抱きつき動きを抑えようとする晋兵

 

いつしか砦内外で乱戦となり、魏軍の誇る精兵達が1人また1人と命を散らし死んでゆく

絶滅を免れれぬ晋兵達は、文字通りその命を賭し確実に魏兵を1人1人の命を奪っていった

 

ああ・・・彼らはきっと公孫賛軍に属していた者達なのであろうな

稟は晋兵達の最後まで諦めぬ死に様を見て、漠然とだがそう思い馬上より眺めていた

 

先の戦いである官渡にて、実に粘り強く抵抗してみせた公孫賛軍と戦った光景を重ね合わせていた

稟はこの時そう推測していたのだが、これは実に的を得ていたといえよう

 

半日ほどかけて、必死に抵抗してみせた彼らの想いは、一体どこへと送られ届けられるのだろう?

漠然と空を見上げ考えに耽る稟に対して

 

「稟、このまま本陣を攻めるのかしら?」

 

春蘭を伴って華琳はそう稟へと問いかける

 

これからだと、晋本陣へと突入するのは夕刻過ぎてからになるだろうが

華琳にはまだ晋への”切り札”を残していること

勝利して勢いもある今の内に晋を襲ってしまうの有りという理由からも、良いのではとも考えていた

 

「いえ・・・ 本日は想定していた以上に、中央はおろか、左翼、右翼共に時間を浪費した挙句に、こちらも多大な被害を被ってしまいました

 なので確実を期し、総攻撃は明日に順延いたしたく・・・」

 

稟の進言にあるように、仕切り直しなおしと言には一理あると思った華琳は、稟に1つ頷いてみせると・・・

 

「この戦いの作戦指揮は、全て稟に任せているのだから好きになさい」

 

・・・と激励の意味を込め、華琳はすれ違いざま稟の肩をかるくポンポンと叩いてみせた

稟はすぐに拱手してみせこれに応えると、去りゆく華琳はこれに満足したのだろう

 

これから兵を見舞うわと言い残し、春蘭を伴い本陣から足早に去って行くのでありました

 

砦の制圧を終えた稟は、華琳へ述べた言葉通り、これ以上進軍させるのを止めさせ

明日確実を期し、3方向から同時に晋本陣へと攻め込む策を右翼・左翼へと伝令する

 

この僅か1日ではあるが、魏と晋の勝敗の明暗をくっきりと二分してしまったのである

 

 

 

 

拱手して頭を垂れる稟に対して、先ほどの別れの際に華琳はこう稟へと声をかけもしていた

 

「稟、この所寝不足なのではなくて? 

 見たところ顔色が優れないようだけれど、身体の調子は本当に大丈夫なの?」

 

やはりさすがは我が主・華琳さまだ・・・ 急遽化粧をし、顔色良く誤魔化してみせたのだがダメだったようだ

 

「ハッ! 華琳さまだけでなく、風にまで多大な御心配をおかけしまして、大変申し訳なく思っております」

 

そう華琳の問いに答え、顔色を誤魔化した稟は、拱手した服の袖で顔を隠してしまうのであった

 

「明日、晋本陣へと総攻撃を開始するのでしょう? 今日はゆっくりと休みなさい いいわね? これは命令よ?」

「はい! 承知致しました 必ずや明日、我ら魏に逆らいし司馬家一族の首級悉くを御前に並べてご覧に入れます」

 

鼻血芸以外では実に真面目な稟の問い返しに苦笑しながらも

 

「意気込むなというのは無理なのだろうけど、あまり無茶が過ぎないように判ったわね? 稟」

「華琳さま・・・ お気遣い重ね重ね痛み入ります」

 

華琳は去り際、もう一度稟へ早く寝るように念をおし、本陣を出て行くのでありました

 

華琳が去った今も尚、頭を垂れ拱手しつつある姿のままで

司馬師達は何故? 何のためにここまで・・・晋は執拗にこの地で時間を経過させることに拘るのか?

時間稼ぎが必要ともなれば、被害の最も少ない堅牢で名高い本拠地でもある易京にでも篭城すれば良いのに?

 

稟の悪い癖が早々に見られ、華琳の心配を他所に

そんな想いで稟の頭の中は満たされ、またもや考えがグルグルと堂々巡りをしていたところ

 

途端に眩暈に襲われ、拱手状態から身体をふらつかせながらも

なんとか少しでも疲れが取れるよう、天を仰ぐように椅子の背に深々とたれかかり瞳を閉じる稟

 

息を深く静かに吐き、自身の胸を打つ早き鼓動を感じつつ安静にしていたかと思いきや

急に吐き気を催した稟は・・・

 

「グボッ・・・ ガハッッ・・・ ゴホッ・・・ゴホッ・・・・・・・」

 

胃から競りあがってきた異物を、寸での所で前傾姿勢に屈んだと同時に

何とも言えぬ嘔吐音を発し、息を詰まらせ咳き込むと同時に

せりあがって来た嘔吐物を大地へと吐き捨てていた

 

(戦場での慣れぬ指揮と緊張と疲れもあって、華琳さまの気遣いが嬉しく、つい気が緩んでしまったのだろうか?

  私はなんと愚かなのだろう? 華琳さまや風に心配をかけてしまうとは・・・

  ハハハ・・・ こんな弱弱しい姿、兵士には到底見せられぬな)

 

そんなことを考えていた稟は、今大地へと吐き捨てた異物が、自身の想像と全く違うことに漸く気づいた

 

「うっ・・・嘘でしょ? 何よこれ・・・」

 

稟の悲痛な絶望を含んだ叫びが、つい口をついて出た言葉でもあった

 

ゆるゆると稟の両の眼に映し出す稟の世界は、手のひらが・・・そして己を着飾る軍師服が・・・そして広大な大地をも・・・

まるで空に染まる夕焼けの如く、赤く赤く真っ赤な鮮血で染め上げていたのだった・・・

 

(私はまだ魏で何も為してはいないというのに・・・)

 

血を大量に失い薄れゆく意識の中で、そんな想いに稟は胸を焦がしながら・・・

闇に抱かれ深々と大地へと、ゆったりと崩れ身体が沈みゆく

 

傍に控えていた兵達も、最初はいつもの鼻血騒動なのだろう? 

戦中だというのに、郭嘉軍師殿はお盛んなことだななどと失笑していたものの・・・

 

いつまで経っても姿勢が戻らぬどころか、一向に姿を見せぬ稟を怪訝に思い

こんな時にいい加減にして欲しいものだ、手の焼ける人だ、やれやれ・・・と少々困惑げな衛兵が

郭嘉様、こんな戦中に戯れはいい加減に止してくださいよ?

軍師に対し、失礼とは思う言葉遣いではあるものの、稟へと近付いていくと・・・

 

そこには普段の鼻からなどではなく、口の周りは愚か衣服や大地までも真っ赤な鮮血の中で身を投じたままの稟が

殺人事件さながらの被疑者のように倒れていた

 

鼻血に埋もれる稟を衛兵も見慣れていたからこそ

いつもと様子が違い、口から血を吐く稟の異変にいち早く気づくことが出来たのであろう

 

「郭嘉様が大量の血を吐血なされている! すぐに華琳様に報告、それと衛生兵をすぐにここへと呼んできてくれ! 大至急だっっ!!」

「何だとぉ!? おっ!? おう!!」

 

動揺する同僚の衛兵がいる方向へと、声のあらん限りに叫び伝えながら

稟の異変に気付いた兵達は大声を張り上げ、稟への応答を確認するも全く返事はなく・・・

口から大量の血を吐き出した故にか顔面蒼白となっており、すでに気息奄奄の状態の稟を勝手に動かしてもよいものか判断も出来ず

衛生兵が来るまでの間、只管見守るしかなかったようである

 

こうして魏本陣が慌しく怒号がひしめきあう中

晋の”1つめ”の魏へ仕掛けた時限爆弾が、この時こうして稟の身に降りかかり炸裂したのであった

 

 

 

 

晋本陣と少し離れた場所にて、祭壇を造り篭っていた筈の司馬懿がその姿を漸く露にしていた

その場に鄧艾を呼び寄せた司馬懿は、少し興奮を交えた口調でおもむろに鄧艾へと語りだした

 

「クックック 我が計ついに成就せり

 正史の時期より若干長く生きていたようだが、それが命取りであったな

 郭嘉の将星が大地へと流れ落ちた今、あやつの命はそう長くは持つまいよ

 

 実に惜しい、もう少し粘れば勝つ目はあったのだがな さぞ無念であろうな、郭嘉」

 

「本日玉砕して時間稼ぎに成功してみせた者達の名が記載された嘆願の書を受け取りました次第

 いかが致しましょうか?」

 

本来なら、彼らと約束をした当人である賈充が受け取り

現・当主である司馬師へと届け出るのが筋の書なのであろう

 

だが何故かその竹簡が、現在では周りに回って、鄧艾直属の斥候手を渡って鄧艾へと達していたのであった

・・・という事は、この死人達の名が記されたこの竹簡全てが、今では成功報酬を貰えぬまま

賈充によって約束を反故され、すでに”ゴミ”ということなのであろう

 

だが鄧艾は、そんな仕打ちをした賈充への非難の言など一切言わず

ただただ司馬懿へと、名を記された竹簡の束を静々と差し出したのだった

 

「・・・ふむ? 名が記載されているようだが・・・ 

 鄧艾の良き様に処するがよかろう、これでよいか?」

 

竹簡の束を差し出され困惑顔の司馬懿の出した答えに

少し嬉しそうな表情をみせ、軽く1つ頷くと恭しく控える鄧艾

 

この外史世界にて、無数の名を残せぬ晋に属する礎となりし500余名の者達が

自身の命を賭して戦って得たのが、この僅かばかりの”1日”という時間なのだとしても・・・

 

自身の境遇を重ねた故にか、鄧艾にはどうしても彼らの嘆願の書を無碍に捨て去ることが出来なかった

其れゆえに取った一時の気まぐれの行動といえた

 

仮に主である司馬懿が、ダメと一言でも言ったならば、鄧艾はこの嘆願書を即捨て去ったことだろう

十常侍の者達の意に逆らい、鄧艾の一族に属する者悉くが、その際の断罪によって皆命を散らした

鄧艾とて、司馬懿が独自の斥候欲しさに十常侍へ幼き鄧艾を赦すよう嘆願し、それが許されたからだった

 

それが例え、司馬懿の一時の気まぐれという些細なことであろうともだ

今の鄧艾があるのは、司馬懿の嘆願あってのことなのである

 

その折に救ってもらったという恩義が根底にあり、司馬懿の為に晋の大義が為にその腕を振るっていた

鄧艾にとっては、司馬懿は全てであり、司馬懿の命(めい)は自身の命(いのち)より重かったのである

 

司馬懿にとっても、また鄧艾にとっても、彼ら一般兵の非業の死など、所詮他人事で些事であるが・・・

それが例え一時の気まぐれであったとしても、死した者達にとっては唯一の光といえた

晋という国が後々無くなることになろうとも・・・だ

 

鄧艾はこの後、書に記載された者達の家族悉くを、嘆願書に有る通り『選民』へと格上げさせたそうである

 

晋が存在している間は、『選民』へと格上げされた彼らの家族が、飢餓に苦しみ死ぬことだけはなくなった

これが幸福なのか? それとも不幸なことなのか? 

それは後に残された家族の者達が感じる痛み次第でなのであろう

 

「さて・・・とだ 仕上げとなる”新月”の日はいよいよ明日に迫った 

 この戦の総仕上げの時だ! 鄧艾、もう何をすべきか判っておろうな?」

 

鄧艾を見下ろす司馬懿の視線が大きく開き、空に輝く星の如き輝きを放つ 

 

「ハッ! 混乱に拍車をかける魏軍左翼を誘引し”楽進”を御前へと導けばよろしいのでしょう?」

「うむ! 鄧艾、よろしく頼むぞ?」

「ハッ! 司馬懿様の御期待に副えますよう務めます」

 

この鄧艾の応えに満足し1つ頷くと口角をあげニヤリと微笑む司馬懿

 

これまで圧倒的と形容するに相応しい戦局に彩られた白一色に近かった魏の盤面を

一瞬にて黒一色に染め上げ戦局を覆し、盤上を塗り替え晋勝利へと引っくり返す

これほど愉悦で愉快な事が他にあろうか

 

「勝利への布石は全て揃った! 

 待っていろ 曹操、・・・その次血祭りにあげるのは北郷一刀、貴様の番だ クックック アハハハハハ」

 

息を潜め気配を押し殺していた司馬懿の姦計が

ついに魏へと牙を剥き、無情にも無惨に切り裂いたのでありました

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・・・・ それで倒れた稟ちゃんの容態は?」

 

馬に乗ってきた筈の風だが、馬から飛び降り吐く息は荒々しく

同様とは無縁の筈の風の表情には、血の気がすっかり失せ疲れを色濃くみせていた

 

普段なら動揺などみせない風であったものの、さすがに華琳からみてもすぐ解るほどの蒼白な顔色であったことからも

稟が倒れたとの報による魏軍内での動揺と衝撃度は、やはり計りきれないものがあったとみてよかった

 

それに魏軍に属する前から、風と稟の2人は共に各地を転々と主を求め旅して回った親しき間柄

親友である稟が倒れたとの報を受け取り、動揺がない、みせないことの方が人として異様ともいえよう

 

「風、すこし落ち着きなさい これから担当の者にその後の容態を聞くつもりだから、一緒に着いて来なさい」

 

華琳の言葉に1つ頷くと、そのまま風を伴い、戦場に設置している簡易診療所へと足を踏み入れる2人

 

人として当たり前である動揺が、この時ばかりは軍部内に波及し、更なる悪化を招く場合でもあっただけに

稟を心配するのは華琳としても同様であったものの、そこは軍を束ね率いるTOPとしての立場が

今にも絶望で崩れ落ちそうになる理性をなんとか押し留め保てていた

 

稟が倒れた今でも、こうして冷静に対処してみせる華琳は

兵達にはまるで氷のような冷徹で鋭利な研ぎ澄まされた刃を想像させた

 

だが裏を返せば、脆く今にも刃毀れし折れてしまいそうな心を、必死に押し留めていたに過ぎない

より明確な言葉で言い表すならば、珍しく動揺を表に出した風と動揺を隠してみせた華琳とのほんの僅かな違いに過ぎない

 

「・・・それで稟の容態はどうなのかしら?」

 

華琳は稟に処置を施した主任衛生兵へと問いただすと

 

「随分落ち着きはしましたものの・・・」

 

主任衛生兵はそれ以上発することを躊躇い言葉を濁した

幸い一命を取り留める事は出来たが、予断を許さぬ状況という事なのだろう

ましてや全軍の指揮などもっての他ということであろう

 

主任衛生兵の言葉を察し終えた華琳は、1つ深く長い溜息をつくと、隣に控える風へと視線を移し

 

「そう・・・判ったわ 以後は右翼は秋蘭に任せ

 風、貴方が稟に代わり、全軍の指揮を執りなさい いいわね?」

 

華琳は無理やりそう語気を強め、風へと命を下したのである

 

「華琳さま、それは構いませんが・・・ 風はこのまま軍を退いた方が良いと思うのです」

 

てっきり風から稟の意志を継ぐとの言葉を期待していた節があったのだが

この助言で肩透かしを食らった格好である

 

「・・・・・・風、それはどういうことなの?」

 

現状退く理由が見当たらないというのが、華琳の荒げた言葉に現れていた

稟が倒れて晋を攻略することに臆したとでもいうのかしら?

そんな感情的で扇情的な想いにかられ、発する言葉に棘がみえた華琳

 

華琳とて稟が大切なのには変わりないが、風の仕切りなおせと含んだ言葉の意味を知りたかったからだ

 

「勝っている今だからこその英断です」

 

華琳の問いに対し、風は珍しく寝たり宝譿を使い茶化す事無く、そう面と向かって答えていた

先程までの動揺を押し隠している風の言でもあった為、華琳はこれ以上風を責めるような言はさすがに控えざるを得なかった

 

逆に稟が倒れ現状に逆上していたのは自分ではないのか?と風の進言は見直す良い切欠ともなっていた

また風の言を言い換えれば、仮に劣勢になった場合、兵は離散し退くに退けない状況へと陥る可能性が高いという風の警告でもあった

 

この界橋で魏と晋が雌雄を決する最大の運命の分かれ目、ターニングポイントだといえた

 

風の進言を聞き入れ、界橋の地より撤退するのか?

それともこのまま戦を継続するのか?

 

冷徹で鋭利な研ぎ澄まされた刃のようであった華琳の表情がみるみる曇りをみせ、時に似合わぬ苦悶に歪んでさえみせた

これこそがきっと・・・覇道をゆく者が背負わねばならぬ孤独なのだろう

 

大陸北部を確実に手中にすべく呉蜀と同盟を結んだ事が

荊州全土と豫州併呑という孫呉の急激な領土拡張を招いてしまっていた

ある程度予想はしていた範疇ではあったものの、その侵略速度は魏TOPの誤算であった

 

だが最大の誤算は、公孫賛を排し河北を制したかに思えた所に、身内である司馬懿が独立し晋を建国したことであろう

その最大の誤算が尾を引き、稟が病魔に冒され倒れ、魏に暗い影を落す

 

それでも尚、中原から以北を魏が押さえていたならば、そんなに問題はなかった

華琳や軍師である桂花、稟、風を始めとした軍師達は、同盟当初そう描いていたに違いない

 

だが現在の状況は、お世辞にも魏に味方しているとは言えなかった

 

晋が河北に建国してからの状況は、刻一刻と悪化を辿っていたといえ

この状況下において、仮にここで界橋より撤退したならば・・・

魏は大陸の覇権の主導的立場から一気に滑り落ち、大陸覇権は孫呉と大きく傾くこととなるだろう

 

話をもっと飛躍させると、現状呉蜀と同盟を結べてはいるが、最悪同盟が破棄され、仮に晋と結ばれるようなことにでも陥れば

魏は最悪、孫呉、馬、晋という3方の勢力から同時に攻められる恐れも捨てきれなくなってくるのだが・・・

 

稟が倒れたという不安要素と、もしかしすれば晋に敗北という目が突如として浮上してしまった以上

そもそもこの界橋の戦で負けてしまえば、今迄築き上げてきた全てを失いかねないというが風の考えなのであろう

風の撤退進言も、こうして冷静に考えれば解ることであった

 

だが華琳とて、そんなことは頭では解っていても、風の進言を唯々諾々に飲み込めるものではなかった

 

大陸の覇道を掲げ動き出した華琳が、天の御遣いである北郷一刀を擁した孫呉の風下に魏が回り

孫呉の天下に組み込まれるなんて姿を想像だにしたくなかった

 

それならばいっそ・・・そんな破壊的衝動に突き動かされる己がいることも否定できない

 

そんな所に、ひょっこりと伝令に来て現れた者が、思わず華琳の表情を見てヒッ!と驚きの声を出すほど

華琳が苦しい現状へと追いやられていることを物語っていた

 

こんな忙しい時に何!? 華琳が向けてきた険しい表情と視線を前にしてガクガクと震えながらも

 

「じじじつはその~ あの~曹操様、すこし珍妙な”3人組”の者達が現れまして・・・

 

 その者達の主張が曹操様に会わせ話をさせろの一点張りでして

 実に怪しい3人組でしたので何度となく追い返そうと努力はしてみたものの・・・

 皆見事に返り討ちに遭いましたそうで・・・ その対処に苦慮しておりました所

 

 その者達はなんと医者と名乗り、呉の周瑜殿からの書状も持参しておるとのことでしたので

 こうして慌しい中、曹操様のお耳に入れるかどうか悩みましたが・・・」

 

本来なら、風から助言もあった撤退するかどうかの結論を急がせる必要もあったのだろうが

伝令が話したい事情は即判別できたので、それ以上の伝令の会話を華琳は途中で打ち切ると

 

「・・・呉の周瑜から? それでその医者と名乗る者達の名は?」

 

伝令にそう矢継ぎ早に華琳は問いかけながら

 

「”華佗”と名乗る医者?の一行だということです いかが致しましょう?」

 

「我々の非礼をきちんとお詫びして、3名をここへと丁重に通しなさい い・い・わ・ね?」

 

主の念をおした命に、伝令兵は気圧されながらも

 

「へっ? ハッ? ハッ! そっそれでは!」

 

なんとかその場を取り繕い、這う這うの体を無様に晒し駆け去っていく

 

「戦場にいるというのに、なんと都合良く大陸随一と噂される華佗ほどの名医を寄越す手際の良さ

 周瑜・・・ 離れた呉にいるというのに、この戦を何処まで見通せているというの・・・ 

 その正確性、そら恐ろしくなるわね・・・」

 

苦境に立たされていた華琳は未練がましくも、周瑜が私の幕下にいたならばと、思わず呟いてしまわずにはいられなかった

それほどに惚れ惚れするほど見事な周瑜の差配であった

 

この時華琳の胸に去来した思いは、風の助言してくれた撤退ではなく、晋と決着をつけるという思いが勝った

そう、その先に見据える大陸覇権を賭けた”孫呉”との決着を夢みて・・・

 

「華琳さま、この戦に勝利すれば、その相手と真正面から戦わねばいけないのです」

 

風も冥琳の差配に感動しながらも、それらを無理やりに押し殺し

やれやれといった溜息をつきつつ、倒れた稟意志を継ぐべく代わりの軍師としての務めを果たそうとしていた

 

「判っているわ、風 だからこそ、今この界橋にて晋と戦っているんじゃない!

 明日の晋本陣への総攻撃決戦を前にして、今更退くわけなどいかないわっ!!」

 

脆くも崩れ去りそうになりかけていた、華琳の打倒・呉の決意に煌々と火をつけてしまった以上

先に提案した風の撤退の助言など、もはや風前の灯といえた

 

「急ぎ伝令をこれへ!」

 

そう華琳が叫ぶや、診療所は突如として右往左往の慌しさとなった

 

「右翼秋蘭、並びに左翼の凪の軍へ急ぎ通達せよ! 明朝より晋本陣へ向け進軍を開始せよとっ!」

「ハハッ!!」

 

華琳の命を受け取った伝令達は、華琳に深々と一礼するや、次々と足早に軍外に広がる闇へと姿を消し去っていった

 

「病人や怪我人もいるんだ ・・・診療所では静かにな」

「そう・・・だったわね・・・ 私としたことが、基本的な事をすっかり失念していたわね・・・」

 

宝譿のそんな突っ込みが入る中、違いないわね・・・と少し苦笑をまじえ反省する華琳でありました

 

             ・

             ・

             ・

 

「軍師殿が倒れられた!? して容態の方は? 明日の作戦は?」

 

不安、焦り様々な要素がごっちゃ混ぜになった頭で、凪は浮んだ疑問を矢継ぎ早に伝令へと囃し立てた

 

「それが・・・ 総指揮を執られる軍師様は程昱様になられるとのことだけで・・・それ以外の事まではまだ・・・であります」

 

気づけば凪は、伝令と近付き、彼の肩を強く握り締めていたようで

急いで手を離し自身の席へと戻り呼吸を整えると

 

「そっ? そうか・・・ それはそうか 無様に取り乱して迷惑をかけてしまったようだ 

 すまなかった この事は他言無用に願いたい 下がってよいぞ」

 

苦笑いでそう伝令に声をかけるのが精一杯の凪であった

 

「ハッ! それでは失礼いたします」

 

凪の一連の行動に対して、伝令も何事もなかったように走り去っていった

 

「このまま退くんやろか?」

「そうなったらいいよね 凪ちゃんの”例の勘”の件もあるし・・・」

 

真桜と沙和の2人は、凪に問いかけるという風ではなく

凪の周囲で自身の思い思いに浮かんだ事を、単に述べているといった感じであった

 

現時点において、明日の作戦行動が不明ではあるが

ただ凪の”武人としての勘”が、明日の作戦は執り行うなと、そう強く警鐘を鳴らしていた 

 

 

何かある・・・ 晋は”何か”狙っていると・・・ 

 

 

凪は軍を指揮する合間に、否応なく何度となく感じたことでもあった

 

晋の軍勢を追い散らしてみせた晋本陣へと続く森林の闇が、まるで地獄への深遠への入り口に思え

自身のうなじがチリチリと総毛立ち、全身がそら寒く感じた凪であった

 

この事が仮に兵達の耳に入りでもすれば

楽進将軍は臆病風にでも吹かれたのではないか? 臆したのか?

などと、押している現在において、嘲笑され揶揄されることは眼にみえていた

 

だが稟が倒れた現在となってしまっては、作戦遂行がままならない以上

大方このまま中止せざるを得ないことになると予想され

自身の心配が杞憂に終わり、安堵の溜息をつく凪の前に、新たな指令を携えた伝令が飛び込んできた

 

「華琳様のからの命を急ぎお伝えしに参りましたっ!!

 明日の作戦に関し、以前の作戦通りに明朝そのまま晋本陣へと侵攻せよとのことです」

 

隣に控える真桜と沙和の表情がみるみる曇ってゆくのが判った

凪は親友である2人にだけは、それとなく自身の心情を吐露していたのだった

 

「凪・・・」

「凪ちゃん・・・」

 

心配そうに見つめる親友2人の眼差しをひしひしと感じつつも・・・

 

「・・・そうか、作戦の命承ったと、そうお伝え願いたい」

「ハッ! それではっ!」

 

走り去る伝令の後姿を見守りつつも、一軍を率いる将としての顔を覗かせ対応してみせた凪であった

 

(仕方あるまい 押している今の戦況において、このまま退く理由など何処にもないからな・・・

  ましてや、私の武人としての勘だけで、このまま退くという理由になる訳もない・・・か・・・

  全て私の杞憂に終われば良いのだが・・・)

 

凪は風と同じく撤退を持論としていたようであったが

そう考え感じた理由の方向性は全く違ったモノであった

 

「真桜、沙和ありがとう 心配をかけてすまないな

 だが私の直感という理由だけで、このまま軍を退かせるという訳にもいかないだろう?」

 

「そうなんやけど・・・」

「そうなんだけど・・・」

 

そんな事は真桜や沙和とて一軍を率いる将なのだ 

魏軍へと身を投じた当初から、すべて承知の上でいることだったろう

だが3人は昔馴染みだからこそ、凪のこの類の直感が、実に鋭いことも2人は承知している

 

黄巾の乱にて周囲の村々が壊滅に追い込まれた中

3人の村が魏軍に護られ無事であった事は、この凪の危機を悟る直感が幸いしたからに他ならない

 

優先すべきは華琳からきた命なのか? それとも凪の直感なのか? 

真桜と沙和の2人が言葉を濁したという事実が、判断の困難さを物語っていた

 

この先、魏の辿る運命は如何に!?

魏と晋、運命を分ける一戦が明日幕を明けようとしていた

 

 

 

 

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●『真・恋姫†無双 - 真月譚・魏志倭人伝 -』を執筆中

 

※本作品は【お気に入り登録者様限定】【きまぐれ更新】となっておりますので、ご注意を

人物設定などのサンプル、詳細を http://www.tinami.com/view/604916 にて用意致しております

 

上記を御参照になられ御納得された上で、右上部にありますお気に入り追加ボタンを押し、御登録のお手続きを完了してくださいませ

お手数をおかけ致しまして申し訳ありませんが、ご理解とご了承くださいますよう、何卒よろしくお願いいたします<(_ _)>

 

■■■【オリジナル人物紹介】■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 ○孫堅 文台 真名は緋蓮(ヒレン) 

 

  春秋時代の兵家・孫武の子孫を称し、各地で起こった主導権争いに介入し

  『江東の虎』の異名で各地の豪族を震撼させた

  優秀な人材を率い転戦、やがて軍閥化し孫家の基礎を築いた

 

  容姿:髪は桃色で、孫家独特の狂戦士(バーサーカーモード)になると、右目が赤色に変化するのが特徴で、平時は量目とも碧眼である

  祭と同じく胸が豊満で背は祭より高い 体格は祭よりすこし大きい 顔立ちは蓮華というより雪蓮に似ているだろうか

 

 ○張紘 子綱 真名は紅(コウ) 

 

  呉国の軍師の一人で主に外交を担当。 魏の程昱(風)の呉版と考えていただけると理解しやすいだろう

   『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、姉の張昭と共に臣に迎え入れられる

  張昭と共に『江東の二張』と称される賢人

 

  ※史実では、呉郡の四性でも張昭と兄弟でもありませんのでお間違い無きように。。。 

   呉郡の四性の中で張温しか見当たらなかった為、雪月の”脳内設定”です

 

  容姿は青眼で背丈は冥琳より少し低い 顔は姉の王林とは似ておらず童顔で人に安心感を与える顔立ちである

  髪は腰にまで届こうかという長く艶やかに保った黒髪を束ね、ポニーテールと呼ばれる髪型にしている事が多いが

  その日の気分により、長髪を肩辺りで束ね胸の前に垂らしている場合もあるようである

  服装は藍色を基調とした西洋風ドレスを身を纏っている

 

 ○魯粛 子敬 真名は琥珀(コハク)

 

  普段は思慮深く人当りも良い娘で、政略的思考を得意とし、商人ネットワークを駆使し情報収集・謀略を行う

  発明に携わる時、人格と言葉遣いが変化し、人格は燃える闘魂?状態、言葉遣いは関西弁?風の暑苦しい人に変化する

  このことから「魯家の狂娘・後に発明の鬼娘」と噂される

 

  ※穏(陸遜)は本をトリガーとして発情しちゃいますが、、琥珀(魯粛)は発明に燃えると・・・燃える闘魂に変身って感じです

 

  容姿は真名と同じく琥珀色の瞳をもち、髪は黒で肌は褐色がかっており月氏の特徴に似通っている

  背は明命と同じくらいで、服装は赤を基調としたチャイナドレスを身に纏っている

 

 ○張昭 子布 真名は王林(オウリン) 

 

  呉国の軍師の一人で主に内政を担当。 冥琳とはライバル同士で互いに意識する間柄である

   『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、妹の紅(張紘)と共に臣に迎え入れられる

  張紘と共に『江東の二張』と称される賢人

 

  妹の紅は「人情の機微を捉える」に対して「政(まつりごと)の機微を捉える」という感じでしょうか

 

  容姿は冥琳より少し高めで、紅と姉妹でありながら顔立ちが似ておらず、冥琳と姉妹と言われた方がピッタリの美人系の顔立ちである

  眼鏡は使用しておらず、服装は文官服やチャイナドレスを着用せず、珍しい”青眼”でこの眼が妹の紅と同じな事から

  姉妹と認識されている節もある 紫色を基調とした妹の紅と同じ西洋風のドレスを身を纏っている

 

 ○程普 徳謀 真名は楓(カエデ)

 

  緋蓮旗揚げ時よりの古参武将であり、祭と並ぶ呉の柱石の一人 「鉄脊蛇矛」を愛用武器に戦場を駆け抜ける猛将としても有名

  祭ほどの華々しい戦果はないが、”いぶし銀”と評するに値する数々の孫呉の窮地を救う働きをする

  部下達からは”程公”ならぬ『程嬢』と呼ばれる愛称で皆から慕われている

 

  真名は・・・素案を考えていた時に見ていた、某アニメの魅力的な師匠から一字拝借致しました・・・

 

  容姿は祭と同じくらいの背丈で、端正な顔立ちと豊かな青髪をうなじ辺りでリボンで括っている

  均整のとれた体格であるが胸は祭とは違いそこそこ・・・ちょっと惜しい残念さんである

 

 ○凌統 公績 真名は瑠璃(ルリ) 

 

  荊州での孫呉崩壊時(※外伝『砂上の楼閣』)に親衛隊・副長であった父・凌操を亡くし、贈った鈴をもった仇がいると

  知った凌統は、甘寧に対して仇討ちを試みるものの・・・敵わず返り討ちにあう間際に、一刀に救われ拾われることとなる

  以来、父の面影をもった一刀と母に対してだけは心を許すものの・・・未だ、父の死の傷を心に負ったまま

  呉の三羽烏の一人として日々を暮らしている

 

  容姿はポニーテールに短く纏めた栗色の髪を靡かせて、山吹色を基調とした服に身を包んでいる小柄な少女

  (背丈は朱里や雛里と同じくらい)武器は不撓不屈(直刀)真名の由来で目が瑠璃色という裏設定もございます

 

  ○朱桓 休穆 真名は珊瑚(サンゴ)

 

  『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の朱氏の一族

  槍術の腕を買われ、楓の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人

  部隊内では『忠犬・珊瑚』の異名がある程、一刀の命令には”絶対”で元気に明るく忠実に仕事をこなす

 

  容姿:亞莎と同じくらいの背丈で、黒褐色の瞳に端正な顔立ちであり黒髪のセミロング 人懐っこい柴犬を思わせる雰囲気をもつ  

  胸に関しては豊満で、体格が似ている為よく明命から胸の事で敵視されている  

 

  ○徐盛 文嚮 真名は子虎(コトラ)

 

  弓術の腕を買われ、祭の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人

  『人生気楽・極楽』をモットーにする適当な性格であったが

  一刀と他隊長である珊瑚と瑠璃・隊長としての責に接していく上で徐々に頭角を現し

  後に部隊内では『猛虎』と異名される美丈夫に成長を遂げていくこととなる 

 

  容姿:思春と同じくらいの背丈で黒髪のショートヘア 体格も思春とほぼ同じく、遠めからでは瓜二つである 

  二人の区別の仕方は髪の色である(所属部隊兵談) またしなやかな動きを得意としている為、思春の弓バージョンと言える 

 

  ○諸葛瑾 子瑜 真名は藍里(アイリ)

 

  朱里の姉 実力にバラツキがあった為、水鏡から”猫”と称される

  その後、水鏡と再会時に”猫”が変じて”獅子”になりましたわねと再評価される

  天の御遣いの噂を聞きつけた藍里が冥琳の元を訪れ、内政・軍事・外交とそつなくこなす為

  未熟であった一刀の補佐にと転属させられる 

 

  初期には転属させられた事に不満であったが、一刀に触れ与えられる仕事をこなす内に(わだかま)りも消え

  一刀に絶大な信頼を寄せるようになる

  後に亞莎が専属軍師につくと、藍里の内政面への寄与が重要視される中で、藍里の器用な才を愛し、軍師としても積極的に起用している

 

  容姿は朱里より頭一つ高いくらい 茶髪で腰まであるツインドテール 朱里とよく似た童顔でありながらおっとりした感じである

  服装に関しては赤の文官服を着用しており、胸は朱里と違い出ている為、朱里とは違うのだよ 朱里とは・・・

  と言われているようで切なくなるようである(妹・朱里談)  

 

  ○太史慈 子義 真名を桜(サクラ)

 

  能力を開放しない雪蓮と一騎打ちで互角に闘った猛者  桜の加入により瑠璃が一刀専属の斥候隊長に昇格し

  騎馬弓隊を任されることとなった(弩弓隊・隊長 瑠璃→子虎、騎馬弓隊・隊長 子虎→桜に変更)

  本来の得物は弓で、腕前は祭を凌ぎ、一矢放てば蜀の紫苑と互角、多矢を同時に放てば秋蘭と互角という

  両者の良い処をとった万能型である

 

  武器:弓 不惜身命

  特に母孝行は故郷青州でも有名であり、建業の役人街が完成した際に一刀の薦めもあって一緒に迎えに行く

  隊長として挨拶した一刀であったが、桜の母はその際に一刀をいたく気に入り、是非、桜の婿にと頼み込む程であった

   

  容姿はぼん・きゅ・ぼんと世の女性がうらやむような理想の体型でありながら身長が瑠璃ぐらいという美少女系女子

  眼はブラウン(濃褐色)であり、肩下までの黒髪 気合を入れる時には、白い帯でポニーテールに纏める

  一刀の上下を気に入り、自身用に裁縫し作ってしまう程の手先の器用さもみせる

 

  真剣に話している時にはござる口調であるが、時折噛んだりして、ごじゃる口調が混ざるようである

  一時期噛む頻度が多く、話すのを控えてしまったのを不憫に思った為

  仲間内で口調を指摘したり笑ったりする者は、自然といなくなったようである

 

 ○高順

 

  「陥陣営」の異名をもつ無口で実直、百戦錬磨の青年 

  以前は恋の副将であったのだが、恋の虎牢関撤退の折、霞との友誼、命を慮って副将の高順を霞に付けた

  高順は恋の言いつけを堅く守り続け、以後昇進の話も全て断り、その生涯を通し霞の副将格に拘り続けた

 

 ○馬騰 寿成 真名を翡翠(ヒスイ)

 

  緋蓮と因縁浅からぬ仲 それもその筈で過去に韓遂の乱で応援に駆けつけた呉公に一目惚れし

  緋蓮から奪おうと迫り殺りあった経緯がある

 

  この時、緋蓮は韓遂の傭兵だった華雄にも、何度と絡まれる因縁もオマケで洩れなくついて回ることとなるのだが・・・  

  正直な処、緋蓮としては馬騰との事が気がかりで、ムシャクシャした気持ちを華雄を散々に打ちのめして

  気分を晴らしていた経緯もあったのだが・・・当の本人は、当時の気持ちをすっかり忘れてしまっているが

 

  この事情を孫呉の皆が仮に知っていたのならば、きっと華雄に絡まれる緋蓮の事を自業自得と言いきったことだろう・・・

 

 ○孫紹 伯畿 真名を偲蓮(しれん)

 

  一刀と雪蓮の間に生まれた長女で、真名の由来は、心を強く持つ=折れない心という意味あいを持つ『偲』

  ”人”を”思”いやる心を常に持ち続けて欲しい、持つ大人へと成長して欲しいと2人が強く願い名付けられた

  また、偲という漢字には、1に倦まず休まず努力すること、2に賢い、思慮深い、才知があるという意味もある

 

  緋蓮、珊瑚、狼をお供に従え?呉中を旅した各地で、大陸版・水戸黄門ならぬ

  ”偲”が変じて”江東の獅子姫様”と呼ばれる

 

 ○孫登 子高 真名を桜華(おうか)

 

  一刀と蓮華の間に生まれた次女で、子供の扱いが分らぬ蓮華の犠牲者1号となり

  早々に侍従長の咲と思春の手により育てられることとなる

 

  そんなエピソードがあるのにも関わらず、聡明な娘で人望も厚く育ち、王となってからは自身の才能をいかんなく発揮させる

  一刀や蓮華に似ているというより、姉である雪蓮に似ているとの蓮華談有り

  後年孫呉の王として、天皇となりし姉・偲蓮を支えることとなる

 

 ●その他武将

 

  蒋欽ー祭の副将、董襲ー楓の副将

  歩シツー珊瑚の副将、朱然ー昔は瑠璃、現在子虎の副将、丁奉ー昔は子虎、現在は桜の副将 周魴ー瑠璃の副将

 

 ○咲

  母娘共に侍従長として、長きに渡り孫呉に仕える 月、詠の上司に当る

  主な著作に侍従長はみたシリーズがある

 

 ○青(アオ)

  白蓮から譲り受けた青鹿毛の牝馬の名前 

 

  白蓮から譲られる前から非常に気位が高いので、一刀以外の騎乗を誰1人として認めない 

  他人が乗ろうとしたりすれば、容赦なく暴れ振り落とすし蹴飛ばす、手綱を引っ張ろうとも梃子でも動かない

  食事ですら・・・一刀が用意したモノでないと、いつまで経っても食事をしようとすらしないほどの一刀好き

 

  雪蓮とは馬と人という種族を超え、一刀を巡るライバル同士の関係にある模様

 

 ○狼(ラン)

  珊瑚の相棒の狼 銀色の毛並みと狼と思えぬ大きな体躯であるが

  子供が大好きでお腹を見せたり乗せたりする狼犬と化す

 

 

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【あとがき】

 

常連の読者の皆様、お初の皆様 こんばんは 雪月でございます

 

この度の更新は1週間とちょっとぶりです 文章が長くなりましたが、少しがんばってみました。。。

不定期で大変申し訳ありませんが、次回更新も不定期となりそうです(ぉぃ

 

話は物語へと移りまして、第2次界橋の戦いの転換点までを描きました次第ですが

これ以上ひっくり返しようのない、覇道による大陸制覇を唱える魏にとって、酷い展開で悪夢となっております

あとは一直線に転がるばかりなのを、そっと見守るしかない訳なのですががが

 

呉の物語であるのに、章が新しくなっても中々彼女達の出番はありません

本当に何の物語なんじゃ!と突っ込まれそうなガクブル状態なのですけれど・・・

 

もう少々ですが、魏と晋の戦いの行く末を描いて参りたいと思っておりますので

この戦いの終点へと至るその日まで、どうぞ共にお付き合いくださいませ

 

これからも皆様の忌憚のない御意見・御感想、ご要望、なんでしたらご批判でも!と何でも結構です

今後の制作の糧にすべく、コメント等で皆様のご意見を是非ともお聞かせ下さいませ 

 

今年一年どうぞよろしく御願い致します まだまだ寒い日が続いております 皆様御自愛くださいませ 

それでは完結の日を目指し次回更新まで(´;ω;`)ノシ マタネ~♪

 

 
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