No.767078

アマカノ if ~上林聖甘え度100%非恋人√~ 『守』

DTKさん

DTKです。
普段は恋姫夢想と戦国恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI(仮)という外史を主に紡いでいます。

今回は、恋姫を製作しているBaseSonと同じネクストンブランド、あざらしそふとの作品『アマカノ』の二次創作を投稿します。

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2015-03-26 21:32:23 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:4786   閲覧ユーザー数:4366

 

 

 

 

 

「あなたが、好き」

 

とうとう、言っちゃった……わたしの想い…

彼の反応は…

 

「…………ごめん、聖さん。俺、実は……」

 

 

 

――――――えっ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

 

 

「朝……か」

 

ベッドの上で身をよじると、窓から憎らしいほど明るい日差しが部屋に差し込んできているのが見える。

それを見てようやく、わたしは夜が明けたことを知った。

 

昨日、彼に告白をしてから、わたしの中の時間の流れ方がおかしい。

気が付いたら部屋に戻っていたし、気が付いたら朝になっていた。

いや、日の角度からすると、もうお昼なのかもしれない。

 

「……フラれちゃった、のよね」

 

ボーっと天井を眺めながら、そんな言葉が口をついて出る。

人の気持ちに絶対なんて無いって分かってたつもりだけど、彼もわたしと同じ気持ちなんだと、どこかで思っていた。

きっと、わたしが一歩踏み出せば受け止めてくれると、どこかで思っていた。

 

それが……この結果だ。

 

「…………はぁ」

 

何度目か分からない溜息が漏れる。

 

初めての、恋。

 

彼を想うだけで顔が上気し、心臓が激しく動き、風邪を引いたのではないかと思うほど身体を覆った熱は、引いた。

その代わりに、胸の奥、胃の少し上あたりに、気持ちの悪いヘドロのようなものがドロリと渦巻き、体内を圧迫している。

そのせいか、昨日の夕食も朝食も取ってないけど、おなかが空いたという感覚も無い。

ただただ、告白前より……辛い。

 

何より最悪なのが、彼が同居人だということ。

それは例え、わたしがフラれたとしても変わらない。

もし、彼と恋人同士になれてたのなら、いきなり同棲という素敵な環境だったのに……

 

「…っ!」

 

胸の中の怪物が暴れだす。

胸が……痛い。

そう。もうこれはあり得ない未来。

こんなこと考えたって、もう……

 

 

 

…………

……

 

 

 

考えたって仕方がない。

そう思っても、一度開いた思考の扉は閉じてはくれなかった。

 

 

 

「どうして…どうして、わたしじゃ、ダメなの?」

 

彼が選んだあの娘は、もちろん良い娘だ。

だけど、わたしだって顔は悪くないと思うし、スタイルだってそこそこ良いと思う。

選ばれなかった理由があるとすれば…

 

「目のこと、かな?」

 

片目がほとんど見えないというのは、大きなハンデだろう。

 

「話さない方が、良かったのかな?」

 

でも隠し事はしたくなかったし、彼は目のことは受け入れてくれていた……と思う。

 

なら……

 

「やっぱり、年齢…なのかな?」

 

年上の彼女、というのが色々と面倒だと思われたのかな?

それにもう十二月。

わたしが春から都会の学校に行ってしまうことは、彼も知っている。

例え、わたしと付き合うことになっても、すぐに遠距離恋愛。

その点あの娘となら、少なくともあと一年は一緒にいられる……

 

 

 

…………

……

 

 

 

…………それだけ?

もしかして、たったそれだけの事なの?

 

 

そう思ったら無性に悔しくなり、気付くと視界がぼやけていた。

腕と瞼で視界を覆うと、涙が頬から耳へと伝った。

 

「う、…………あぁ……っ」

 

泣いていると自覚したら、もう涙は止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなに辛いなら、恋なんてしなければよかった…

 

どうして自分は、片目が見えないんだろう?

どうして自分は、あと一年遅く産まれてこなかったのだろう?

どうして彼は、あと一年早く産まれてきてくれなかったのだろう?

 

 

 

 

どうしてわたしは……彼と出会ってしまったのだろう?

 

 

どうしておじいちゃんとおばあちゃんは、彼を呼んだりなんかしたのだろう……?

 

 

 

 

 

どんどんと走り出す思考。

頭のどこかで危ないと思いながらも、自分の中の怪物は止められなかった。

 

 

 

 

 

確かに、雪片付けは大変だろうけど、おじいちゃんはまだまだ元気だし、今すぐに手伝いが必要とは思えない。

それに、わたしも少し不安だったし、若い男女が一つ屋根の下というのは、あまりにも不健全じゃないか?

来年になればわたしも居なくなるんだし、来年の冬か、彼の環境のためにも、四月からでもよかったんじゃないか?

 

 

 

考えれば考えるほど、わたしの中で彼がこの時期にやってくる理由はなくなってきた。

もし…もし彼が、この冬にこの街に来なければ……

 

 

 

 

 

そうすれば、わたしと彼が出会うことはなかった。

そうすれば、わたしが彼を好きになることはなかった!

そうすれば、わたしがこんな思いをすることだってなかった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聖ちゃん?」

「――っ!?」

 

ノックと共に聞こえたのは、おばあちゃんの声。

 

「具合でも悪いのかい?」

 

長い間、部屋を出ないわたしを心配してきてくれたのだろう。

でも、いつもは心地よいこの声も、今は迷惑でしかない…

 

「ごめん……おばあちゃん。わたしは、大丈夫だから…」

 

今は放っておいて…

暴れている心の中の怪物を、何とか鎮める。

お願い、これで帰って…

 

「でも、昨日から何も食べてないんじゃないかい?……」

 

お願い……お願いだから……っ

 

「……具合がよくないなら、なおのさら何か食べないと…」

「お願いだからっ!わたしのことはほっといて!!これ以上わたしに構わないでっ!!!」

「聖…ちゃん……」

「――――っ!」

 

やっちゃった……

今更遅いけど、枕に突っ伏して口を塞ぐ。

最初からこうしておけばよかった…

 

ギッ…ギッとおばあちゃんが部屋から離れていく、どこか寂しげな足音が、わたしの脳裏に突き刺さる。

 

「うぅ…あぁぁぁぁ~~…………っっ」

 

傷つけてしまった。

わたしの大切な人を傷つけてしまった。

 

自責と後悔の念が頭の中を支配する。

それでも、誰かを傷つけたことを喜んでいる私も、胸のどこかにいた。

そんな自分がいることに、怒りも悲しみも沸いてくる。

 

「わたし……どうなっちゃうの…?」

 

自分でも抑えられない感情の先にあったのは、たった一つの感情。

 

 

 

 

 

 

 

恐怖だった。

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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