~鞘華視点~
目が覚めると、天幕の中だった
「目が覚めましたか?」
傍に静里が居て、声を掛けて来た
「うん」
そう答えて、記憶を辿る
そして、思い出す あの事を・・・
「静里、確認させて欲しいんだけど・・・」
「はい」
「赤壁での戦いが有ったのよね」
「はい」
「その戦いで、一君が曹操に偽りの投降をした」
「はい」
「私は火計の際、一君の救出に向かった」
「はい」
「でも、助けられなかった・・・」
「・・・はい」
思い出した事は全て事実だった
夢だと思いたかった 単なる悪夢だと
目が覚めたから、悪夢から覚めるんだと そう思いたかった 信じたかった
悪夢が事実になった いや事実を悪夢に出来なかった
最悪の現実を確認した私は泣いた
涙が枯れるまで・・・
「曹操に斬りかかった事は覚えていますか?」
私が幾分落ち着いたのを見計らって静里が訊いて来た
「うん、おぼろげだけどね
あとで雪蓮に謝らないと
いや、処罰されるかな?」
華琳、いや曹操に斬りかかった事も思い出した
考えてみれば、私も多くの人を斬っている
私に斬られた人にも、当然親しい人はいる筈だ
そのくせ、一君が斬られた時には激情のままに行動する
曹操にしても、自軍に火計を仕掛けた敵を斬るのは当然
身勝手極まりない そう言われても仕方が無い
でも、それでも私は曹操を許せないだろうね・・・
~雪蓮視点~
「司隷を傘下にして許昌に攻め入るか
ならば次は、徐州が危ないのだがそんな愚策を使うか?」
冥琳が独り言のように呟く
「ちょっと~、一人でぶつくさ言ってないで説明してよ~」
私の言葉に我に返った様で、説明を始める
「ああ、済まなかったな
まず司馬懿は赤壁で曹操が勝つと予想していたのは間違いない
だから曹操の天下が盤石になる前、そして本拠地ががら空きになった今、謀反をおこした
許昌を落した後、徐州を攻めるつもりだったのだろう
そうすれば曹操が我等に勝っても、南北に分断される
その後、分断された北方 河北四州らの太守を外交で傘下に治める
曹操はそれを知っても、孫呉の統治の為に北方に手が回らなくなるからな
軍の一部を送るにも我等との合戦の直後で疲弊している
これが当初の計画だったのだろう
だが、曹操が我等に負けた それも徐州に攻め入る前にだ
だから徐州に攻め入るような愚を犯すだろうか・・
そう考えていたんだ」
冥琳の説明には納得したが、
「で、私達の行動は?」
「取り敢えず粋怜殿を徐州防衛に配置しよう
あと荊州に蓮華様
北方の州にも文官や呉の豪族の次女らを送り治めさせよう
豪族達も自分の一族が生国では無いと言え領主になれるんだ 文句は言うまい
曹操軍の武将、軍師もそれぞれ配置しよう」
「裏切らないかな?」
「曹操を建業に置いておけば大丈夫だろう」
「そうね、私の勘もそう言ってる」
「勘以外で物事を判断してくれ」
「無理」
頭を抱える冥琳は置いておくとして、皆に指示を出す
ただ気がかりなのは鞘華よね
早く立ち直りなさい 一刀に再開した時の為に
確証が無いから言えないけど、一刀は生きている 根拠は勘
私の勘は当てになるわよ
~司馬懿視点~
「まさかこんなに早く、曹操が負けるとは
あのチンクシャ覇王様は・・・
もう少しは持つ と思っていたのに」
「あら、葵 曹操が負けると分かってたの?」
姉様が驚いたような声を出す
「分かってたんじゃなくて、可能性は有る そう思っていたんです」
姉様は武の腕は立つのだがちょっと智が・・・
まあそこは私が補えば済むか
「ただ、こうなったら北方の州を我等に就かせるのは無理です
許昌を放棄した方が賢明ですね」
そこに
「司馬敏様が帰還されました
ただ、「土産」と仰って、妙な二人の男を連れております」
「妙な二人の男?
まあ良い 直ぐに通しなさい」
~桃香視点~
「愛紗ちゃん、雛里ちゃん、無事でよかったよ~」
泣きながら抱き付くと
「桃香様、大袈裟です」
大袈裟でも無いと思うんだけどな
「しかし、良く無事解放されたな」
星ちゃんが訊くと、愛紗ちゃんが説明してくれた
囚われてから勧誘された事、曹操さんが攻めて来たので解放された事、この機に乗じてとの行動はしないでくれると嬉しいと言われた事
「むう、分からん御仁だな その北郷殿は」
「全くだ
器の底が見えないのか、底が抜けているのか
武が優れていること以外は、読めなかった」
あれ?愛紗ちゃん、なんか嬉しそう?
「ほう?何を嬉しそうにしておる?
そうか、愛紗 北郷殿に惚れたか?」
「なんでそうなるのだ!」
「でも、可愛いって言われましたよね」
「雛里も余計な事を言うな~!」
大騒ぎになったけど、愛紗ちゃんと雛里ちゃんが戻って来たから良いか
でも北郷さん 一度会ってお話ししたいな
~あとがき~
各陣営の様子です
司馬姉妹の能力ですが長女、三女、五女、七女が武に優れ、次女、四女、六女、八女が智に優れている
と云う感じです
奇数が武、偶数が智です 安直ですいません
司馬懿陣営にも武官が居ないと話になりませんから
この外史ではと了承してください
更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです
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各陣営の様子