No.766127 英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~soranoさん 2015-03-22 00:03:49 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:2161 閲覧ユーザー数:1969 |
~エルベ離宮・紋章の間~
「なっ!?救済条約によってアルフィン殿下がそちらにいる彼――――リィン・シュバルツァーと結ばれる事でメンフィルとクロスベルの両皇家とも親類関係になるとはどういう事なのですか?」
オリヴァルト皇子の答えを聞き、唯一事情を知らないアルバート大公は信じられない表情でオリヴァルト皇子達を見つめて問いかけた。
「言葉通りの意味ですわ。我が夫であるリィンさんは他にも多くの女性達と婚約していまして。その中にメンフィル皇家である”マーシルン家”と親類関係である”蒼黒の薔薇”と名高いプリネ皇女殿下の親衛隊長にして専属侍女長――――ツーヤ・ルクセンベール卿の双子の妹であるセレーネ嬢とクロスベル皇帝の一人であるヴァイスハイト陛下のご息女に当たるメサイア皇女殿下がいるのですわ。」
「なお、リィンさん達の婚約の件はメンフィル、クロスベルの両皇家からもそれぞれ正式に許可を頂いております。」
「なっ!?リウイ陛下、ヴァイスハイト陛下。今の話は真実なのでしょうか?」
アルフィンとクレア大尉の説明に驚いたアルバート大公はメンフィルとクロスベルのVIP達を見回して尋ねた。
「―――事実だ。リィン・シュバルツァーとセレーネ・アルフヘイム・ルクセンベールの婚約はメンフィル皇家も正式に認めている。無論、セレーネの婚約者であるリィン・シュバルツァーに他に婚約者がいても特に問題とするつもりはない。貴族の当主になる者が跡継ぎを多く残す為に多くの女性を娶る事等一般的によく聞く話の上、平民も重婚が禁じられている訳ではないしな。」
「クロスベル皇家もメンフィル同様我が娘メサイアとリィン・シュバルツァーの婚約を正式に認めている。……だが、アルフィン皇女。一つだけ質問をしても構わないだろうか?」
リウイの後に答えたヴァイスは静かな表情でアルフィンを見つめて尋ねた。
「なんでしょうか。」
「先程リィンの事を”我が夫”と言っていたが、あれはどういう意味だ?」
「そのままの意味ですわ。わたくしは”既にリィンさんと結婚しています”。勿論”救済条約”の通り、シュバルツァー家の跡継ぎであるリィンさんに降嫁していますので、まだ正式な手続きはしていませんが今のわたくしは厳密に言えばエレボニア皇女ではなく、リィン・シュバルツァーの妻――――”アルフィン・シュバルツァー”ですわ。」
「なお、お二人の簡易的な結婚式を行ったユミルの領主であるシュバルツァー男爵家にはお二人が夫婦の関係である事を示す戸籍も既に登録してありますし、二人が夫婦の関係である事を証明する戸籍証明書もこの場に持ってきてあります。」
「ええっ!?」
「なっ!?」
「なぬっ!?」
「………………」
「!!!!!???」
アルフィンとクレア大尉の口から出た驚愕の事実にクローディア姫とアルバート大公、そしてリフィアは驚きのあまり声をあげ、アリシア女王は呆けた表情でアルフィンを見つめ、エリゼは目を見開いて混乱した様子でリィンとアルフィンを見つめ
「ええええええええええええっ!?」
「あ、あんですってー!?」
ミントとエステルも驚いているクローディア姫達に続くように驚きの表情で声をあげ
「二人とも。気持ちはわかるけど声を上げないでよ……」
「会議の邪魔をしてしまい申し訳ありません。私達の事は気にせず、続けてください。」
ヨシュアは呆れた表情で二人に指摘し、フェミリンスは頭を下げてアリシア女王達に謝罪した。
~待機室~
「ついに”切り札”を出したわね……!」
「ここが正念場だな……」
一方待機室に設置されてある映像端末で会議の様子を見守っていたサラ教官とユーシスは真剣な表情をし
「ゴクリ……!」
「女神様……何とかエレボニア帝国を助けてください……!」
「フフ、その女神自身が会議に参加しているが……」
マキアスは思わず息を呑んで端末に集中し、強く祈っているエリオットの言葉を聞いたガイウスは苦笑した。
「…………」
「エリス、どうしたの?」
端末を見ずに考え込んでいるエリスに気付いたアリサは尋ねた。
「あ、はい……実はひめ―――いえ、アルフィン義姉様が今回の会議の数日前に私に1度目のユミル襲撃が起こる前にアルフィン義姉様を含めた三国の姫君と兄様の婚約が既に成立し、更にメンフィルとクロスベルの皇族の方達もその時点で三国の姫君と兄様の婚約がされている事を黙認しているという気付き、それを理由にすれば情状酌量を認めてもらえる可能性は高くなると仰っていたのです。」
「ええっ!?1度目のユミル襲撃が起こる前という事はエリスお姉様達が誘拐される前の時点という事ですよね!?」
「あの事件が起こる前に既に婚約がされているとは一体どういう事なのだ?」
エリスの話を聞いたセレーネは驚き、ラウラは不思議そうな表情で尋ねた。
「わかりません……”秘策中の秘策なので当日までの秘密”と仰って教えてくれませんでしたし……」
「アンタなら何か知っているのじゃないかしら?アンタは会議の結果も知っているんでしょう?」
「そ、そう言えばゲルドさんには予知能力があるのでしたね……」
セリーヌの話を聞き、ゲルドの能力を思い出したエマはゲルドを見つめたが
「フフ、すぐにわかるわよ。それに当人のアルフィンが黙っているのだから、私が言う訳にはいかないわ。」
「え~、そんな言われ方をしたら余計気になるよ~!」
「ゲルドだけわかっているなんてなんかズルい。」
ゲルドは答えを誤魔化し、ミリアムとフィーは不満そうな表情でゲルドを見つめていた。
「……………………」
「リ、リィンさんとアルフィン皇女が”既に結婚している”って…………」
「あ、ありえねえ……」
「フフ、まさかここであの件を持ち出してくるとはね♪」
同じ頃別の待機室で映像端末を見ていたロイドは口をパクパクさせ、エリィとランディは信じられない表情をし、ワジはからかいの表情をし
「というか、お二人の年齢で結婚はできるんですか?」
「えっと……確か七耀教会が定めている結婚の最低年齢は16歳からのはずだ。」
目を丸くして映像を見ていたティオの疑問を聞いたロイドは考え込みながら答えた。
「リィンさんは17歳でアルフィン皇女は15歳のはずだから、まだ結婚はできないはずだけど…………―――あ。まさか……!」
「七耀教会の規則を簡単に変える事ができる上、”特例”として認めるように七耀教会に直接命令できる超反則的な存在である自称”ただの新妻”さんの仕業ですか?」
「フフ、その通り♪さすがに”空の女神”直々の”勅命”を守らない訳にはいからないからねぇ?」
考え込んでいたエリィはある事に気付いて目を見開き、ティオは疲れた表情でワジに尋ね、尋ねられたワジは笑顔で答えた後口元をニヤニヤさせながら端末を見つめていた。
~紋章の間~
「その……随分と思い切った事をされたのですね。一体いつ籍を入れられたのですか?」
一方目を丸くしてアルフィンを見つめていたイリーナは戸惑いの表情で尋ねた。
「わたくしがリィンさんと籍を入れたのは去年の12月31日の………いえ、今年の元旦ですわ。なおリィンさんと籍を入れる際、”偶然にも”ユミルに滞在していたエイドス様のご厚意により、エイドス様自らにわたくしとリィンさんの結婚を祝福して頂きました。」
「え……め、女神様直々にですか!?」
「今の話は本当なのでしょうか?」
アルフィンの説明を聞いたユーディットは信じられない表情でエイドスを見つめ、驚きの表情で話を聞いていたエルミナは気を取り直してエイドスを見つめて尋ねた。
「ええ。ユミルやシュバルツァー家の方々にはお世話になりましたからね。せめてもの恩返しに私自らがお二人の結婚を祝福しました。」
「確か七耀教会の規定では結婚は16歳からだと記憶しているが……その点については七耀教会はどう考えている。17歳のリィン・シュバルツァーはいいとしても、15歳のアルフィン皇女はまだ七耀教会が定めた結婚の最低年齢に達していないぞ。」
エイドスの答えを聞いたリウイは静かな表情でセルナート総長に意見を求めた。
「我々七耀教会が崇めている”空の女神”より規定年齢に達していないお二人の結婚を認めるように”勅命”をされていまして。その為アルフィン皇女は規定年齢に足りていませんが”特例”という形でお二人の結婚は正式に認定されています。」
「なるほど……確かに”空の女神”の”勅命”ならば”空の女神”を崇めている七耀教会が二人の結婚を認めない方がありえないな。」
「……アルフィン皇女殿下。何故そんなにも早く兄さ―――いえ、リィン様に降嫁したのでしょうか?」
セルナート総長の説明にヴァイスが納得している中、混乱から立ち直ったエリゼがアルフィンを見つめて尋ねた。
「それは勿論”戦争回避条約”や”救済条約”を提案して頂いたメンフィル帝国にエレボニア帝国の”誠意”を示す為とエレボニア帝国は本気でメンフィル帝国に”償い”をしたいという気持ちを伝える為ですわ。”救済条約”を提案してくださったエリゼさんには今でも感謝しています。」
「い、いえ。私の事はお気になさならないで下さい。」
アルフィンに頭を下げられたエリゼは戸惑いの表情で答え
「まさか”救済条約”を逆手に取ってくるとは……―――考えたな。」
「フフ、さすがの私達もお二人が既に結婚しているとは想像していませんでしたね。」
「ぬう………まさかこんな不意打ちをしてくるとはな。」
アルフィンの説明を聞いたリウイは真剣な表情でオリヴァルト皇子達を見つめ、イリーナは苦笑し、唸り声を上げたリフィアは疲れた表情で呟いた。
「―――それと。”救済条約”の件とは別になりますが、1度目のユミル襲撃の事件が起きる前の時点でわたくしを含めた三国の姫君とリィンさんの婚約がされ、またそれぞれの国の皇族の方々も実質わたくし達の婚約を認めているも同然の状況でした。なのでどうかその点も踏まえて考慮をお願いしますわ。」
するとその時アルフィンがオリヴァルト皇子達すらも予想していなかった言葉を口にした。
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第590話