No.766011

IS ゲッターを継ぐ者

第七話です。

2015-03-21 15:53:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:870   閲覧ユーザー数:857

~光牙side~

 

 

「ちょっとよろしくて?」

 

 

机に突っ伏していた僕。声がして顔を上げると、金髪の女子が立っていた。

 

 

「誰ですか?」

 

「まぁ、なんですのお返事。この私が話しかけているのですよ。それ相応の言葉があるのではなくて?」

 

 

オーバーリアクションでそう言う金髪の女子。……なんだこの人。

 

 

「いや、誰ですかその前に」

 

「私を知らない? イギリスの代表候補生にして、入試首席のこのセシリア・オルコットを!?」

 

「知りませんよそんなもん」

 

 

今日来たばっかなのにんなもん分かるかってんだ。

 

て言うか名前とか代表候補生とか首席とか今知ったよ。

 

代表候補生位とかなら意味は分かる。織斑先生達が基礎的な部分を教えてくれたお陰で。

 

 

「その国の代表。それの候補生で、だから代表候補性。つまり……」

 

「そう! エリートなのですわ」

 

「まだ補欠でしょうに」

 

「んなっ!?」

 

「だって候補生、じゃない。代表じゃない」

 

「こ、これからなるのです!」

 

「ふーん」

 

 

 いやごめんなさい。正直どうでもいいと思っちゃったよ。

 

 ぶっちゃけ興味がないから。

 

 

「なんですの、その態度は。折角自己紹介してあげたのに。全く、これだから男は……」

 

 

目の前の……なんだっけ、オルコット? その人はなんか失望したみたいな眼差しで僕を見てくる。

 

 

「世界初の男性操縦者だと期待しましたけど、とんだ世間知らずですわね」

 

「そんな事言われましても」

 

 

まさか違う世界から来たなんて言える訳ないでしょうに。だがオルコットさんは、そんな事知らずに(知る訳ないので)なんやかんか言ってくる。

 

 

「良いですか? 貴方が代表候補性の私と同じクラスだという事だけでも幸運なのですよ。分かってらっしゃる?」

 

「まあ、一応は」

 

「……バカにしてますの?」

 

「してませんよ」

 

「フン……まあいいですわ。とりあえず、この場にいる以上、ISの評判を落とす様な真似をしないで下さいね」

 

 

それだけ言って、オルコットさんは行ってしまった。

 

 言うだけ言って、って感じだな。

 

……あれ、なんでだろうか。前にこんな事あった気が。

 

そんな事考えてると、

 

 

 ――キーンコーンカーンコーン

 

 

区切りのチャイムが鳴って、織斑さん、いや今は先生か。山田先生と一緒に入ってきた。

 

 

「席に着け。授業を始めるぞ」

 

 

その声で散らばっていた女子達が席に戻っていく。日直が挨拶をして着席すると、織斑先生が言ってきた。

 

 

「えー、まずはこのクラスのクラス代表を決めたいと思う」

 

 

クラス代表? なんだそれ?

 

先生が説明するのを聞いて纏めてみると、こんな感じだ。

 

 

 ・様は委員長の様なもの。

 ・仕事は対抗戦や委員会への出席

・決まったら一年間変更無し

 

 

 という事らしい。うわぁ、面倒臭そうな役割。

 

 やりたくないな……。そう感じていると。

 

 

「はい、滝沢君を推薦します!」

 

「ドワォ!?」

 

 

いきなり推薦されたぁ!?

 

 

「私も!」

 

「私もです」

 

「わ、私も……」

 

 

それから次々と賛成の声が上がる。何故に!?

 

谷本さんまでなんで加わってんのさ!しかもなんか顔赤くして!

 

 

「えっ、ちょっ……」

 

「ちなみに自薦他薦されたら取り消しはないからな」

 

「にゃんですと!?」

 

 

 降りようとした僕を、何気に織斑先生がシャットアウトする。

 

 どういう事だこの状況!? まるで意味が分からんぞ!

 

どうして今日転入したまっさらな僕が! 訳が分からないと混乱していると……

 

 

「待って下さい! そんなもの認められませんわ!」

 

 

バァン! と机を叩きながら甲高い声が聞こえてきた。

 

この声は……。

 

振り返る。やはりオルコットさんだった。その表情は怒りに染まっている。

 

 

「その様な選出は認められません! 男がクラス代表だなんていい恥さらしです。 このセシリア・オルコットに、その様な屈辱を一年も味わえと言うのですか!?」

 

 

……えーっと。もしかして僕バカにされてる? バカにされてるの?

 

 

「ほう。ならオルコット。貴様はどうしたいと言うのだ?」

 

「決まっています。私自身がクラス代表に立候補致しますわ」

 

「分かった。他に自薦他薦はないか? ないなら投票で――」

 

「お待ちください先生!」

 

 

織斑先生が僕かオルコットさんかで投票しようとして、オルコットさんが遮った。

 

なんでだ? 今別にオルコットさんが怒る様な事してないのに。

 

 

「そんなもの必要はありません。代表がどちらかなんて、既に決まっていますわ」

 

「ふむ、どちらだと言うのだ?」

 

「勿論、私ですわ!」

 

 

……うわー、言い切ったよこの人。

 

周囲の人の目線が痛い事になってるぞー。

 

 

「良いですか? 代表候補生で専用機持ちの私と、ド素人のそちらの男。比べる等、火を見るまでもありません」

 

 

ど、ド素人って……。

 

 

「そうか。それが貴様の意見か」

 

「そうですわ。だから、この私が代表に――」

 

「いや、代表はちゃんと決める」

 

「なっ!? 何故ですの!」

 

 

織斑先生の言葉にオルコットんが声を上げた。

 

 

「選出はちゃんと候補者同士で決める。片方を一方的には決められん。それに貴様は滝沢がド素人だと言ったな。それは違う」

 

 

織斑先生はそう言って不適に笑う。

 

……あれ? なんか嫌な予感が……。

 

 

「滝沢も専用機を持っている。しかも、ターゲットブレイカーをクリアしてな。ちなみに設定は代表候補生レベル、ほぼ無傷でな」

 

「なっ、なんですって!?」

 

 

……すみません、織斑先生。何を言ったのか分からないです。

 

なんでセシリアさんはあんぐりと口開けて驚いてるの?

 

 

「先生。そのターゲットなんちゃらって、何ですか?」

 

「途中から動きはファンネルになってお前がマトリックスしてピンボールになったのやつだ」

 

 あれですか。でも説明がざっくりし過ぎですよ先生……。

 

擬音で会話成立しちゃってるし……。僕と先生だけで。他の生徒はまるで意味が分からん顔してるよ。

 

 そりゃ確かにあの丸いのはヒュンヒュン動いてて凄かったけど……。

 

 はっきり言って、インベーダーやメタルビースト、竜馬さんや隼人さんの地獄に比べればあんなのメチャクチャ良い方だ。

 

 取り込まれないし、死なないし。

 

 

「そんな……貴方、そんな実力がありますの!?」

 

「え、えーと……」

 

「ある」

 

「ドワォッ!?」

 

 

なんで代わりに答えちゃうのよ先生!?

 

そんな事言ったら火に油注ぐのと同じッスよ!

 

 

「そんなもの、私は認めません! ならばその実力、私が見極めますわ!」

 

 

案の定というか。オルコットさんが僕を指差しながら言ってきた。

 

 見極める……実力を?

 

 

「男がそんな強い訳がありません。男なんて、卑屈で卑怯で逃げてばかりの存在、それが強いなど、ありえませんわ!」

 

 

……おいちょっと待て。

 

男が逃げてばかり? 卑怯? 卑屈? 強いのが有り得ないだと?

 

そればかりは聞き逃せないな……!

 

 

「ちょっと待ってくれませんか」

 

「な、なんですの」

 

 

急に立ち上がった僕……いや俺に戸惑うオルコットさん……いやオルコット。

 

ちょっとキレちまったよ。

 

 

「男が逃げてばかりとか、強いのが有り得ない。それは訂正してくれないか」

 

「ふん、本当の事を言って何が悪いんですの?」

 

「目に見えるものだけが真実だなんて限らねえんだよ。なんにだって例外はある。現に俺がそうだ」

 

「……良いでしょう。そこまで言うのならば決闘ですわ!」

 

「良いぜ、売られたケンカは買ってやる。俺が勝ったら、さっきの言葉を取り消して貰うからな」

 

「なら私が勝てば、貴方を奴隷にしますからね!」

 

「奴隷だ? 今はそんな階級ないぜ。頭大丈夫か?」

 

 

 言い返すとこちらを睨んでくるオルコットだが、全然怖くないね。

 

 睨み合いが続く。

 

 

「そこまでにしろ。ならば来週の月曜の放課後。第三アリーナでオルコット対滝沢の模擬戦を行い、勝者をクラス代表とする。良いな?」

 

「構いませんわ」

 

「良いぜ」

 

「よし。では、授業に入る」

 

 

織斑先生がそう纏め、俺は……僕は座り授業の準備に入るのだった。

 

 

~光牙sideout~

 

 

 

 

~ナレーションside~

 

 

「目に見えるものだけが真実だなんて限らねえんだよ。なんにだって例外はある。現に俺がそうだ」

 

「……良いでしょう。ならば決闘ですわ!」

 

「良いぜ、売られたケンカは買ってやる。俺が勝ったら、さっきの言葉を取り消して貰うからな」

 

「なら私が勝てば、貴方を奴隷にしますからね!」

 

「………………」

 

 

セシリアと光牙が口論をしている中まで時は遡る。

 

千冬は立ち上がりオルコットに言い返す俺口調の光牙を見つめていて……。

 

 

「(こ、光牙!? 何故に俺などと言っているのだ!? ……いや、そんなお前の姿も良いな。カッコいいし、そんな口調でもし私に言われたら…………あぁ~)」

 

 

 頬を赤らめて鼻の下を伸ばし、完全に妄想にふけってなんかクネクネしていた。

 

 

「お、織斑先生……?」

 

「ち、千冬様……」

 

 

 それを見ていた山田先生や生徒の何名かが、それにドン引きしていたが……大丈夫だろう。うん。

 

 

 

 

 

職員室~

 

 

「先生……やめてくださいよ。あんな挑発みたいなの」

 

「? なんのことだ」

 

「オルコットさんへの言い方ですよ……」

 

 

 昼休みの職員室。織斑先生へと僕は文句を言っていた。いや言わせてくれ。

 

 あんな言い方じゃ挑発としかとられない。

 

 

「滝沢はド素人ではないと証明したかったのだ」

 

「せやかてあんな言い方は……」

 

「だが私は謝らん」

 

「うっわ返してきたこの人!」

 

 

 まさかの謝らない返し。光牙のツッコミが響く職員室にはビミョ~な空気が訪れてしまう。

 

 

「とはいえ、代表候補性と戦えるのは悪い事ではない。試合に備えておけよ。ただ何かあったら相談しにこい」

 

「自分で仕組んで何言ってんだこの人は……」

 

 

 ドヤッ、と言ってのける千冬。

 

 それから一週間。試合までの間、光牙に千冬はISの基本的な事を教えてくれたりと、自分から光牙の方に来たので相談もへったくれもなかったのを記しておく。

 


 
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