No.76532

真・恋姫†無双~江東の花嫁~(七)

minazukiさん

今回から三回にわたって孫呉の独立のお話です~。まず一回目は独立前の一コマとなっています~。
さらなるオリジナルが始まります~。

2009-05-31 14:23:13 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:30460   閲覧ユーザー数:21229

(七)

 

 反董卓連合は董卓死すという故意に流した情報によってその役割を終えて各群雄はそれぞれの領地へ戻っていった。

 

 この時、どこからか雪蓮達が玉璽を手に入れたという情報が漏れ、騒がしくなったが一番乗りでしかも功績を立てたために誰も「よこせ」とは言えなかった。

 

 玉璽を手に入れたということはそれだけに大きな意味を持ち、天祐と噂が広がっていき同時に雪連の名が世に広まった。

 

 雪蓮の武、玉璽、そして天の御遣い。

 

 この三つが揃うことにより自然と人材が集まってきて、孫呉独立のための準備があっさりと整った。

 

「やっぱり凄いな、玉璽って」

 

 自分の知っている三国志ですらそれなりに力を持っていた玉璽がこれほどとは一刀も驚きだった。

 

「本当はこれを質にして袁術から兵を借りるつもりだったんだけど、一刀が違う方法を教えてくれたから助かったわ」

 

 雪蓮は心から感謝をしていた。

 

 一刀の施した方法。

 

 それは今の現状をそれとなりに世間に流したことだった。

 

 袁術の我侭により領土内は傾いていたために、その苦しみから解放できるのは雪蓮だけだと触れ回った。

 

 そしてそう思わせた大きな原因が玉璽と一刀の「天の御遣い」としての名だった。

 

 普段は慣れなくて困っていた物だけに有効利用できることが嬉しかった。

 

 いつのまにか揚州全域にその情報が伝わると、各地から極秘に雪連を支持する声が伝えられた。

 

「あのチビの泣き面がもうすぐ拝めるわね」

 

 ひどくおかしく言う雪蓮に一刀はある提案をした。

 

 そしてそれは雪蓮だけではなく冥琳や祭からも反対をされたが説明を何度も聞いてようやく理解を得られた。

 準備の整ったある日、雪蓮に呼ばれた一刀は彼女の部屋に行くと、そこには孫権もいた。

 

「え、えっと……」

 

「あら一刀、何改まってるのよ。いいから入りなさい」

 

「あ、ああ……」

 

 扉を閉めて用意された椅子に座る。

 

「まずはお疲れ様♪一刀のおかげでここまでうまくいくとは思わなかったわ」

 

 すでにいつ反乱を起こしてもおかしくない状態だが、表向きは演習ということで袁術には説明され、彼女の大好物の蜂蜜をこれでもかと献上したため疑われる事はなかった。

 

「初めはどうかと思ったけれど、最近の一刀の活躍は冥琳も喜んでいたわよ」

 

「稀代の名軍師にそう言われるとは嬉しいね」

 

 ただ少しこの時代のことを知っているだけの一刀に対して冥琳は孫呉の為に惜しみなくその才能を使っていた。

 

 正直なところ「天の御遣い」という以外、役に立たないのではないかと一刀は思っていた。

 

 剣道をしてそれなりに武というものがあっても歴戦の将である祭達には勝てるわけもなかった。

 

「それでも凄いわよ。ありがとう、一刀♪」

 

 嬉しそうに言う雪蓮に思わず顔が赤くなる一刀。

 

「そこで頑張ってくれた一刀に御礼としてこの子と今から二人っきりにしてあげる」

 

「へ?」

 

「えっ?」

 

 二人は驚きお互いの顔を見る。

 

 だがすぐに孫権がとんでもないことを言った姉に非難の目を向けた。

 

「お、お姉様、どういうことですか!私は大切な話があるからと言われたから……」

 

「あら大切な話よ。一刀とのね」

 

 悪びれもなく言う雪蓮に孫権は一刀の方を睨みつけた。

 

 さすがに後の呉の英主なだけあってその視線も鋭い。

 

「さ~て私は冥琳に呼ばれているから後は二人で仲良くしてね♪」

 

「ち、ちょっと、雪蓮」

 

 去ろうとする雪蓮を追いかけて腕を掴んだ一刀。

 

 それに対して雪蓮は振り向き、一刀の顔に自分の顔を近づけて耳元でこう囁いた。

 

「きちんと話が出来たらご褒美あげるから」

 

 その声は妖艶さを感じさせたため、一刀は身体を離した。

 

 顔を真っ赤にさせて。

 

「頼んだわよ♪」

 

 そう言い残して部屋を出て行った。

 

 残された一刀は仕方なく椅子に座り孫権のほうを見た。

「「……」」

 

 まったくもって会話が始まらないこと一刻半。

 

 用意された菓子やお茶にすら手をつけずに気まずい空気の中で二人は時折、相手を見てはそれに気づかれると視線を逸らしていた。

 

 まるでこの部屋だけが別世界にあるかのようにただ静寂だけが広がっている。

 

「あ、あのさ……」

 

 我慢できなくなったのは一刀。

 

「なんだ」

 

 それを冷たくあしらう孫権。

 

「……」

 

 そして会話がなくなる。

 

(雪蓮……どこが御礼だよ。これじゃあ生き地獄だぞ……)

 

 心の中で涙を流す一刀。

 

 一方で孫権も実は困っていた。

 

 初めて出会ったときは「天の御遣い」というだけだった一刀がどうしても受け入れられなかった。

 

 鍛錬でもすぐ音を上げ、軍務では自分から意見率先して言わない。

 

 軟弱な奴であり、とても「天の御遣い」とは思えなかった。

 

 そしてその姿を見るたびに言いようのない苛立ちを覚えていた。

 

 だが日々を過ごしていくうちに一刀の軍師としての才覚が現れ始めてからは内心では驚いていた。

 

 冥琳との問答もきちんと答えていた。

 

 祭と鍛錬もそれなりに様になっていった。

 

 そして気づいた。

 

 いつの間にか自分は一刀ばかりを見ていることに。

 

(私は認めない……)

 

 そう思いつつも一刀が穏や亞莎と楽しげに話をしている姿を影から見ていたり、雪蓮と一緒に笑っている姿を見ては身体が熱くなっていることに気づいてしまった。

 

 先日の反董卓連合の時も、董卓達を助けさらに孫呉のためにと華雄や呂布を仲間にしたその知謀に驚かされた。

 

 それと同時に自分の中で一つの疑念が生まれた。

 

(董卓達を助けて、呂布や華雄を配下にして我らに反乱を起こすかもしれない)

 

 注意深く観察を続けること一月。

 

 妖しげな服(メイド服)を着て一刀の侍女として働く月と詠。

 

 その傍らで黙々と食べたり眠ったりする恋。

 

 親衛隊のように彼らを見守る華雄。

 

 平和そうに見えるその風景も孫権からすれば信じられないものだった。

 

 そして観察を続けている事を雪蓮に知られてしまった時の彼女の言葉が重くのしかかっていた。

 

「なんだかんだって蓮華も一刀をきちんと見ているわね」

 

 衝撃だった。

 孫権は自分では気づかないうちに一刀ばかりを気にしていた。

 

 それをよりにもよって姉に指摘された。

 

(私はそんなつもりではない……)

 

 そう言い聞かせても説得力に欠けていた。

 

 落ち着かない日々を送り、こうして一刀と二人だけで話をするとは思いもよらなかった孫権は黙ったまま様子を伺う。

 

「あ、あのさ」

 

 もう一度話しかけたのは一刀だった。

 

「なんだ?」

 

 それをまた冷たくあしらう孫権。

 

「俺って君にとって邪魔な存在なのかな?」

 

「なに?」

 

 こいつは何を言うのだという顔をする。

 

「たしかに邪魔だよね。どこの誰かも分からない奴がこうしているんだから」

 

「……」

 

「しぇ……孫策さんの好意に甘えているだけだって思われても仕方ないよな」

 

 一刀はそれからも自分のことを悪く言う。

 自分のせいで孫権に迷惑をかけているのならば謝らなければならない。

 

 その思いだけが今の一刀にあった。

 

「だからたくさん謝らなければって思っていたんだ。ごめん」

 

 頭を深々と下げる一刀を見て孫権は動揺した。

 

(な、なんなんだ、こいつは……)

 

 普通ならば文句の一つでも言ってくるものだろうが、目の前で頭を上げている男は決して孫権を悪く言わずに自分の非ばかりを詫びていた。

 

 今まで見たことのない男にさらに動揺する。

 

「孫策さんに言って君の視界に入らないような場所にいさせてもらえるように頼んでみるよ」

 

 困ったような笑顔を見せる一刀に孫権はなぜか頭にきた。

 

「さっきから聞いておれば……」

 

「そ、孫権さん……?」

 

「自分の事ばかりではないか!そんなものが詫びとでも言うのか!」

 

 おそらく初めて他人に対して大声を上げた孫権。

 

 その表情は怒りと別の何かが入り混じっていた。

 

「私は認めない!たとえお姉様がお前を認めても私は絶対に認めない!」

 

 それだけを言い放つと椅子から立ち上がり部屋を出て行った。

 

 残された一刀は何がどうなったのか分からなかった。

 

 謝ったはずなのに逆に怒らせてしまったことで頭が混乱していく。

 

 孫権も同じだった。

 

 なぜ自分がこれほどまでに激怒したのかわからなかった。

 

(なぜこんなにも落ち着かないのだ)

 

 拳を握り締める孫権は寝台に倒れこんだ。

 

 そして収まる事のない苛立ちを抱えたまま眠りについていた。

「仕方ない子ね」

 

 一通りの事情を一刀から聞いた雪蓮は杯を傾けた。

 

「でもそんなに怒るってことは一刀を気にしているってことね」

 

「そうかな……。今回のことで完全に嫌われたかも」

 

 元気のない一刀は杯を一気に傾けて酒を流し込んでいく。

 

 力なく肩を下げる一刀に雪蓮は苦笑しつつ杯に残った酒を飲み干した。

 

 

「そんなことはないわ。きっとあの子にとっても一刀は必要になるわ」

 

「それも女の勘ってやつ?」

 

「そうね」

 

 杯を机に置いて雪蓮は隣に座っている一刀の肩に頭を乗せた。

 

「し、雪蓮!?」

 

「一刀。これからもあなたの力を貸してもらえる?」

 

「そ、それはもちろんだけど」

 

 それよりもどこか積極的に身体を寄せてくる雪蓮のほうが気になり、男の性が揺らいでいく。

 

 大人の女性としての妖艶。

 

 それが一刀を包み込んでいく。

 

「袁術のチビを倒して私達の宿願の第一歩を踏み出す。その為ならばなんだってするわ。たとえこの身体が拭えぬ血で染まっても」

 

「雪蓮……」

 

 それは黄巾党との戦いで見せたあの殺戮に悦ぶ姿を思い出した一刀は身体を一瞬、振るわせた。

 

 雪蓮は小さく笑い目を閉じた。

 

「その覚悟をするために・・・・・・今だけでいいから……一刀、私に与えてくれるかしら?」

 

 これから先、何があっても前を進む事をやめない力。

 

 その源を一刀からもらう。

 

 雪蓮の言葉に一刀は何も言わず、逆らう事もしなかった。

 

 蝋燭はそんな二人をただ静かに朧に照らしていた。

 

 そしてこの日から雪蓮と一刀、そして孫呉の未来が大きく変わっていくことになる。

(座談)

水無月:休日投下第三弾~。いよいよ孫呉の独立です!そしてなぜかヤンを熱望される蓮華も雪蓮に負けないぐらいに出てきます。

 

蓮華 :わ、私はそんなものにはならないぞ!

 

水無月:でもなぜかそういう風潮がありますよ?

 

蓮華 :なっ・・・・・・。

 

雪蓮 :あら、いいじゃない。何かと「蓮華は俺の嫁!」って呼ばれるぐらいなのだから喜ぶところよ?

 

蓮華 :お、お姉様!(真っ赤)

 

雪蓮 :それにくらべたら私なんてねぇ・・・・・・(遠い目)

 

水無月:とりあえずはこれから蓮華も活躍していくのでヤンになるかどうかは貴女次第ですよ。

 

蓮華 :か、書くのはお前だ!

 

水無月:というわけで次回は孫呉独立 中篇です。

 

雪蓮 :大暴れちゃうわよ~♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小蓮 :シャオの活躍は!一刀ともっとあんなことこんなことしたい!

 

冥琳 :我慢してください・・・・・・(ハァ)


 
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