「Zzz・・・」
「おきてください。ご主人様。もう皆集まっておいでです。ご主人さまがいないと会議が始まりません。おきてくださいご主人様。」
「ん・・・誰だ。俺の大事な安眠を妨害するのは。ムニャ。」
「ですが今日この刻に会議を始めるというのは昨日から言ってあったじゃありませんか、お願いですからおきてください。」
「んー、頼む。もうちょっと・・・もうちょっとだけ・・・。」
「まったく、どうしたというのだ。いつもはこんなことはなかったのに。ほら、我儘をおっしゃってないでおきてください。それとも、お加減が悪いのですか。それでしたら医者をお呼びしますから」
起こされていくうちに、意識が覚醒してきた。どうやら愛紗が起こしに来てくれたらしい。
でも、またなんで?ん、何かさっき言ってたよな。
「んふ・・・。愛紗さっきなんていった?」
「はぁ?さっき申し上げたではありませんか、会議が始まりますのでおきてください。と」
ああ・・・。そうか会議か・・・会議!?
「ああああああああああああああああああ!?」
「きゃあ!?急に大声を出さらないでください。びっくりするじゃないですか。」
「ごめん、愛紗!すぐに支度するから、ちょっと待ってて!」
「え?あ、はい。なるべく急いでくださいね、皆もう集まっておりますので。」
「ごめん!急ぐから!」
やばいやばい。昨日の夜はちょっとハッスルしすぎちゃったな。朱里の奴め。普段はあんなに大人しいのに布団の中では真逆だからなぁ。普段のしおらしさはどこへやら、時々こっちが主導権を握られそうになる始末。流石は孔明といったところか。
「ご主人様。まだですかー。」
とっとと、イカン、イカン。
「ああ、悪い。今行くよ。」
「それにしても、今朝はどうされたのですかご主人様。」
玉座へ向かう途中、そんなことを愛紗は聞いてきた。
「ご主人様はそこまで寝覚めの悪い方ではなかったと思いますし、それがどうして今日に限って。心労がたまっておいでなのですか?」
すいません。それは昨晩ハッスルしすぎたせいです。心労でもなんでもありません。どっちかというとスッキリ?
「ああ、そうかもなぁ。最近、仕事の量が多かったからねぇ。まぁ、愛紗達に比べたらなんでもないことなんだろうけど。」
もちろん、昨晩のことなんか言えるわけないジャン!?
「いえ、私どものことは良いのです。それよりもご主人様に万が一のことがあってはなりません、もっとお体を御慈愛ください。」
うーん、理由が理由だけに愛紗の気遣いが心に痛い。
「ありがとう。愛紗。でも俺なら大丈夫だからさ。さぁ行こう。皆待ってる。」
ごめんよ愛紗。
「本当ですか?決して無理はしないでくださいね。雑務などは私や朱里、雛里等も頼ってくださいね?」
「わかったよ。無理だと思ったら、遠慮無く甘えさせてもらうことにする。」
寝坊したにも関わらず、自分の体のことを心配してくれる女の子。俺は幸せ者だなぁ・・・。
「ったく遅せぇぞ。ご主人様。」
「鈴々。朝御飯もまだだからお腹がペコペコなのだー。」
玉座の間に着くや否や、翠や鈴々からブーイングの嵐。まぁ、当然といえば当然か。愛紗みたいに心配してくれる娘のほうが稀有だ。
「そういうな。翠、鈴々。ご主人様はどうやら最近お疲れのようだ。」
「え?そうなの?ご主人様?無理だと思ったら言ってね。私でよければ力になるからさ。」
「桃香ちゃんの言う通りですわ、ご主人様に万が一のことがあってはいけませんもの。」
「ふむ、そういうことであれば主、このあいだ市の商人から買った特効薬があります故お使いになってみら
れますか。なんでも、ぱ・な・し・あ、というもので万病に効くとか。」
桃香、紫苑、星が代わる代わる身を案じてくれる。ああ、でも悪い星、その胡散臭いアイテムは却下だ、十中八九、体に害を及ぼすと思うから。
「皆、ありがと。でも大丈夫、大丈夫だから。」
まさか、昨晩のハッスルが原因なんてとても言えはしないしな。
「であればお館様、そのような顔はおやめくだされ。上に立つお方がそのような風貌では下々の者に影響が
出ます。」
「ああ、そうだね。ごめん、気をつけるよ。」
ふむ。いくら昨晩ハッスルしたとはいえ、一応太守という立場だしな。それはそうと、朱里の方はなんと
もなかったんだろうか。
「さて、皆も集まったことだし会議を方を始めたいと思う。まずは軍備についてなのだが、各々、報告を頼
む。宜しいですか。ご主人様。」
「ああ、そのまま続けてくれ。」
愛紗が仕切り役で会議開始、適当に相槌を打ちながら朱里はどこだっと・・・居た居た。雛里と一緒か、
相変わらず仲が良いなぁ。朱里なんて、雛里の肩に頭を置いて寝ちゃってるよ。・・・あれ?
「あわわ。朱里ちゃん、おきてください。会議が始まってますよ~。」
「はわっ!?ごめん雛里ちゃん。」
「うん、それはいいけど・・・いいなぁ朱里ちゃん。寝不足になるくらいご主人様に愛してもらえて。ご主
人様も寝不足みたいだし。」
「はわわっ!?雛里ちゃんどうしてそれを!?」
「わかるよ~。昨晩は凄く嬉しそうにしてたし、帰ってくるのも遅かった。」
「はう~。」
2人は、何を話してるんだろう。朱里は顔を真っ赤にしてるみたいだし、会議中に話をしていると不味い
んじゃあないか?
「こほんっ。朱里、雛里。今は会議中なのだが、言いたいことがあるのならはっきり言ってもらおうか。」
ほら愛紗に見つかった。2人とも謝ってるみたいだ。あ~あ、もううなだれちゃって
「愛紗。2人とも謝ってるみたいだし、そのへんで、ね。」
「はぁ、ですが。」
「ねぇ~。愛紗~。お兄ちゃんの言う通りなのだー。鈴々は早く朝御飯を食べたいのだー。」
「鈴々。おまえという奴は!」
「愛紗よ。鈴々の言うことはともかく、そのへんにしておけ。ただでさえ会議が遅れているのだ。これ以上
遅れてしまっては軍務が滞ってしまう。」
「む、星。そうだな、その通りだ。会議を再開しよう。」
「どういう意味なのだー。鈴々は朝御飯を食べたいと言っただけなのだー。」
「鈴々!」
「愛紗よ、先ほど言うたばかりであろう。今は会議の方を優先。鈴々の事は後でどうとでもなる。」
「すまん、会議を再開する。鈴々、後で覚悟しておけよ。」
「ひぃ!?何故なのだー。」
うおっ!顔、怖っ。しかしまぁ鈴々・・・合掌。自業自得なのでなんとも言えない。
しかも、愛紗にとってこれは期待の現れでもあるんだよな。
その後は、滞り無く会議が続いた。軍備や治安状況などが各担当の将から報告を受け、次は予算の報告。朱里は大丈夫だろうか。寝不足だったみたいだけど。
「Zzz。」
おおう!朱里さーん!?なんという素晴らしいハーモニーを奏でているのですかー!?
「あわわ!朱里ちゃんおきて!朱里ちゃーん!」
「んー・・・。はわ!はわわはわわはわわ。」
「星、止めてくれるなよ・・・。」
「好きにすればいい。」
あーっと!星までさじを投げたー!これは不味い不味い。このままでは大惨事になってしまうー!
「待て待て。愛紗、落ち着け。落ち着くんだ!」
「こればっかりは、ご主人様の言う事と言えども聞くわけには参りません。先ほど注意したばかりのこの体たらく。いかに軍師といえども許されるものではありません。」
「そうかもしれないけど、とにかく冷静になろう。な。」
「やけに朱里をお庇いになられますね。ご主人様」
「ぶぇ!そそそそんなことはないぞ。」
すいません。朱里の事に関しては半分自分の責任なんですいませ~ん。
大事なことなので2回言いました。・・・心の中で。だって愛紗怖いんだもん。
「はわっ。そうですよ。私とご主人様が何かあるなんてそんなことあるわけないじゃないですか。フフフフ。」
「ははぁ。そういうことですかお館様。ならば、元気がなかった理由も納得でございますな。」
「んふふ~。それにしても朱里ちゃんてばやるわねぇ。ご主人様をあそこまで・・・。妬けちゃうわ♪」
桔梗!?紫苑!?お願いですから愛紗をたきつけるのはやめてー!!!
「ぶぅ。朱里ちゃんずる~い。」
「そうだー!朱里はずるいのだー。これは許されないことなのだー!」
「本当だぜ。あたしら姉妹の所なんて最後に来たのいつだ?私だってその朱里に比べたら可愛げがあるわけじゃないけど、少しは魅力だってそのゴニョゴニョ。」
「お姉ちゃん・・・ウブなお姉ちゃんにここまで言わせるなんてご主人様罪深ぁい。」
「おやおや。これは面白いことになってきましたな、主。」
ゲェ。何が何だがわからんことになってきた。不満たらたらの桃香に蒲公英、暴走気味の翠。鈴々はどさくさにまぎれて自分の罪を誤魔化そうとしてるし。星に至っては完全に傍観者側にまわったようだ、くそう。
「えぇい!黙らんか、おのれらー!」
愛紗の一喝によって静まり返る面々。
「えーと、その愛紗・・・・さん?」
「いえ、ご主人様。大丈夫ですよ。怒ってなんかいませんから。」
そっか、流石愛紗。皆と違って心が広いな。うん、本当に優しい娘だよ。涙出そう。
「それよりも、すいませんでしたご主人様。朱里とお楽しみの後を貴重な睡眠時間を妨害をこんな無駄な会議なんか潰してしまいまして。えーえー。その上、体調が悪いなどと要らぬ気を利かせて心労を煩ってしまい誠に不徳の極みです。おふたりには申し訳ないがこの無駄な時間にお付き合いくださいますと助かります。」
前言撤回。・・・怖い!涙出そう!
「はわわわわわわわわわ。」
朱里なんて恐怖のあまり硬直しちゃったよ。皆も似たような様だ。例外なのは、星、紫苑、桔梗ぐらいのものか。その後、異を唱える愚者などいるはずもなく会議は終了した。
「「愛紗(ちゃん)!」」
「あの、愛紗さっきのことなんだけど・・・。」
「ご主人様、朱里。さっきのことは怒ってないと申し上げたはずです。私はこれから鈴々を説教しなければなりませんので失礼します。行くぞ。鈴々。今日という今日は許さんからな!」
「はにゃっ!愛紗!本当にごめんなのだ!もう言わないのだ!だから許してって・・・。い、痛い!耳をひっぱるななのだぁ~ぁ~ぁ~~~。」
嗚呼、鈴々が愛紗に引っ張られて消えていく、断末魔だけ玉座に遺して。
「・・・・・・ご主人様。」
「朱里、今はそっとしておこう。後でまた謝りに行こう。今は様子見、な。」
「そうですね。でも、ご主人様。謝りに行くときは別々のほうが良いと思うんです。」
「え。どうして?」
「主・・・。それは本気で言っておられるのですか。」
か、かわいそうなものを見るような目はやめて!それほどおかしな事をいっただろうか。
「ご主人様。なんで愛紗ちゃんが怒ったんだと思う?」
「桃香、いくらなんでもわかるぞ。それは、会議がはじまるというのに寝坊してきたのと会議中に朱里が寝てたからだろう?」
「ん~半分正解ってところかな。」
「残りの半分は?」
「一言でいうなら嫉妬?」
嫉妬?愛紗が?俺に?なんでまた?
「何故不思議そうな顔をなさるのですか主よ、我等からしてみればあれだけ尽くしておいてもらっておきながら気づかないほうが不思議なのですから。」
「どういうこと?」
「これだけ言ってもわかんねぇって・・・。ご主人様の朴念仁ぶりは筋金入りだな。」
「翠にまで言われた!?翠にはどういうことかわかってるのかよ。」
「教えてなんかやんねーよ!それぐらい自分で考えな、そうでなきゃ愛紗が可哀想だ。」
「うむ。翠の言う通りですな。今ここで我々が主に対し助言したとしても、それは御自身の想いではなく我等の想いをなぞっただけ、そんなものを愛紗が喜ぶとでもお考えか?」
そうか、そうだよな。自分のことなのに考えもせず他人に意見を求めるなんて最低だよな。何言ってんだろ。
「星・・・。うん、全くその通りだな。俺が間違ってた。もっとよく考えて愛紗と話し合ってくるよ。すまないけど部屋に戻るよ。ゆっくり考えたいんだ。」
部屋に戻ってさっきのことを反芻してみる。愛紗に対しての俺の想いか、想い?
何が、ゆっくり考えたいだ。俺に愛紗の何がわかっていた?おまえは甲斐甲斐しく自分に尽くしてくれる愛紗に甘えるだけで何も考えてなかったじゃないか。まるで母親に甘える子供そのものじゃないか。情けない。
「えぇい。くそっ!」
悪態をつきながら布団に横たわると寝不足も手伝ってすぐに睡魔が襲ってきた。
愛紗・・・、美しい黒髪の少女のことを思い浮かべながら、俺は意識を手放した。
Tweet |
|
|
73
|
6
|
追加するフォルダを選択
どもども~。初投稿でーす。
魏や呉、その他勢力が人気ですねー。
蜀メインであげていこうと思ってる私は
続きを表示