ここは天水の城の中にある庭。
その庭はやや広めにできており、木陰になるところに所々、机といすが置いてあった。
その一つに月とねね、そして華雄が座っていた。
「華雄殿、いくらあなたが頑丈な身体をしているとはいえ、庭の真ん中で寝るのはどうかと思いますぞ。」
華雄は対面に座っているねねに先日の件を持ち出せれて、途端に不機嫌になった。
「やかましい!私とて好きであんなところに倒れてたわけではないわ!」
「ねねちゃん、華雄さんが倒れてたって何かあったの?」
二人の間、つまり上座に座っている月が心配そうに聞いた。
「と、董卓様、本当にたいしたことではないのです。ですから、どうかお気になさらないでください。」
華雄があわてて何でもないことを主張するが、それはかえって月を心配させるだけだった。
「だけど・・・・・・華雄さんにはいつも助けてもらっているから、私こういう時こそ力になりたいんです。」
そう言った月の瞳には強い意志が宿っていた。
「董卓様・・・・・・」
華雄は知らない内に、主君の思わぬ成長ぶりを目の当たりにして思わず感動してしまった。
いつも控えめで、自分の思いを中々口にしようとさえしなかった少女が強くなったものだと華雄は感心する。
しかし、それとこれとは話は別だ。先日の件は華雄にとって恥以外の何者でもないのだから。
月は頑として話そうとしない華雄を見て別の手段に出ることにした。
「ねねちゃん。話してくれるかな?」
「承知いたしましたですぞ。」
「なっ!?陳宮、貴様!」
あの時のことは誰にも話すなときつく言っていたのに!華雄がねねを睨みつけるがねねはどこ吹く風だ。
「主君のご命令であるなら聞かないわけには参りませぬからなぁ。」
ねねはいかにも、仕方がないとばかりに言うが、顔はおかしくてたまらないと笑いをこらえるのに必死だった。
「ぐぬぬぬぬっ!」
「あ、あの、ねねちゃん。駄目だったら別に無理して話してくれなくてもいいですから・・・・・・」
月も場の空気をよんだのかさっきまでの強い意志はどこへやら、途端におどおどとした様子で自分の言葉を撤回する。
「いえ、かまいませぬぞ月殿。実際そんなにたいしたことではありませんから。」
ねねは華雄を見て話し出した。
「実は華雄殿は北郷が城を出る少し前に、北郷に仕合を挑んで負かされてしまったのです。」
「えっ?そうなんですか?」
月は華雄に尋ねるが華雄はなんとも言いがたい顔で黙っていた。
「そのようです。ねねは見ていなかったので詳しくは知りませぬが、どうやら完膚なきまでに負けたようですぞ。」
「・・・・・・・・・」
ねねの話を聞いても華雄が何も言わないということは恐らく本当のことなのだろう。
「霞さんの話は本当だったんですね。」
「そのようでありますな。・・・それで、それからのことなのですが・・・・・・」
そこでねねは話を区切ると華雄を見てニヤニヤ笑い出した。
華雄は憮然としたまま何も言わない。
「華雄殿は北郷に倒された後、そのままずっと放置されていたようなのです。」
「ええっ!?」
月は驚いた。いくらなんでも庭で人が倒れていれば、誰か一人ぐらいは気づいてもよさそうだと思ったからだ。
「誰も華雄さんのこと気づかなかったの?」
「いえ、さすがに見かけた人はおりましたが、華雄殿も一応、猛将で名が通っておりますからな。誰も倒されていたとは思わなかったようです。」
そうなのだ。本人はあまり気づいていないだろうが、その武名はそれなりに広がっているのだ。
だから自然と見たものの反応はこのようになるのである。
『あれ?あそこに誰か倒れてませんか?』
『え?・・・あ、ああ、確かに誰か倒れているな・・・ってあれは華雄将軍じゃねえか!?』
『えっ!?本当ですか!?』
『ああ、間違いない!』
『何かあったのでしょうか?ちょっと見てきます!』
『あっ、馬鹿!やめとけって!この前、華雄将軍を起こそうとして斬られそうになった奴がいたのを忘れたのか!?』
『け、けど、何かがあったのかもしれないじゃないですか?』
『何を言ってるんだ。あの華雄将軍だぜ?そんじょそこらの奴にやられたりするわけがないだろう?』
『・・・・・・それもそうですね。では、あそこで何をやっているのでしょうか?』
『寝てるんじゃないか?この陽気だ。そうしたくなるのも分からんでもない。』
『はぁ、そうでしょうか?』
『恐らくそうだろうさ。それより行くぞ。この書簡を董卓様の所へ持っていかなくてはいけないのだからな。』
『あ、はい。分かりました。』
といった感じになる。
ちなみに、華雄は夕方近くになるまでそのままの状態で放置されていた。
たまたま通りがかったねねが華雄を起こさなければ恐らく夜まであの状態だっただろう。
「そ、それにしても一刀さんって本当にお強いんですね。」
月はこの空気を何とかしようと、露骨に話題を変えた。
ねねもこれ以上言うつもりがないのか、その話に乗ってあげた。
「そのようですな。認めるのはシャクですが確かに恋殿と同等の武を持っておるのやもしれませぬ。」
そうやって二人で一刀のことについて話し合っていると、不意に華雄が月に尋ねた。
「董卓様。一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「・・・?何ですか華雄さん?」
「あの北郷という男、いったい何者なのです?」
「一刀さんのこと?」
「はい。」
華雄は真剣な表情で頷いた
「一刀さんは天の御遣い様ですよ?」
「月殿・・・多分華雄殿はそのようなことを聞いているのではないと思いますぞ・・・」
ねねがやや呆れ顔でそう言うと、月は、えっ?といった顔をした。
「・・・天の御遣い・・・か・・・・・・確かにそうなのかもしれないな・・・」
しかし、華雄がしみじみと、そうつぶやいたのを聞いてねねは仰天した。
「か、華雄殿?いったいどうしたのでありますか!?」
華雄は占いも、信仰も全く信じていないはずだ。そんな彼女にこんなことを言わしめるとは、いったい彼女に何があったのだろうか?
「・・・・・・あれっ?」
そのとき月はさっきから華雄に違和感を感じていた。
実は華雄に出会った時から、 何かが変だ、何かが足りないと思っていた月は、彼女の腰に差してある剣を見てその違和感の正体に気がついた。
「華雄さん。華雄さんがいつも持っていた武器はどうしたんですか?」
「そう言われてみればそうですな。華雄殿、いったいどうしたのですか?」
月とねねは不思議に思った。華雄がいつも愛用して使っている武器『金剛爆斧』が見当たらないのである。
「ああ、それなら前に北郷と仕合をした時に斬られてしまってな。今、鍛冶屋に直させてもらっているところだ。」
「あ、そうなんですか。・・・・・・・・・え?」
今、さらりとすごいこと言わなかった?
「か、華雄殿?ねねの聞き間違いでなければいいのですが、さっき、『斬られた』と言いましたか?『折れた』の間違いではなく?」
「ああ、そうだ。柄の部分と刃の部分をばっさりと斬られたんだ。」
「ど、どうやってですか!?」
ねねは正直信じられなかった。当たり前の話だが、すべからく武器とは鉄でできているのである。しかも、華雄の持つ『金剛爆斧』は戦場で振り回すことが多いので折れたり、曲がったりしないようにより頑丈に作ってあるのだ。
それを斬るなどいったいどんな妖術を使ったのだろう?
しかし、華雄はそれには答えずに、ジッと考えこんでいた。
「・・・・・・?華雄さん?」
月に声をかけられて華雄は気が付いた。
「はっ、申し訳ありませぬ。なにぶん、あまりにも信じられないことでしたので・・・」
そう言いながら華雄は冷静におのれの心境を分析していた。
正直、あの仕合の内容は、かなり不本意だった。さっきねねが言ったように手も足も出なかったのだから。
しかし、そこに後ろ暗い感情は一切混じってなかった。むしろ、清々しくさえ感じる。それは北郷一刀が一片の手加減も容赦もなく本気で相手をしてくれたことがわかったからだ。
大抵、実力が上の者が、下の者を相手に仕合をするとき、上の者は手加減をするか手心を加えてしまうものである。
無論、それにはちゃんとした理由がある。手加減をしなければすぐに勝敗が付いてしまい仕合にならないし、相手を大怪我させてしまうこともあるからだ。
しかし、華雄にはそれが我慢ならなかった。恋の時は明らかにやる気のなさそうな顔で負けたのだ。それは自分の武人としての矜持として許されないことだ。
だから華雄はそれを守ろうと我を張り続けた。自分のほうが強いと。自分こそが最強だと。
だが、それすらも北郷一刀によって打ち砕かれた。それこそ容赦なく、完膚なきまでに。
華雄は思わず苦笑を浮かべた。今までの自分はなんと滑稽だったことか。まるで現実を直視しない愚か者ではないか。
一応、あいつに出会えたことを天に感謝するべきだろう。もし、あのまま戦場で自分より強いやつに出会っていたら恐らく自分は死んでいただろうから。
それに、自分は負けたままでいるつもりは微塵もない。
(北郷一刀・・・・・・いつかまた、あいつと手合わせをしたいものだ・・・)
華雄は空を見上げた。その顔はまるで憑き物が落ちたかのように晴ればれとしていた。
「「「・・・・・・え?」」」
男たちはいったい何が起きたのか分からなかった。仲間の一人が剣を振り下ろしたと思ったら、その剣身の半分から先が消えてなくなっていたのだ。
ヒュンヒュンヒュン・・・ドスッ
風切り音と共に何かが地面に突き刺さったので目を向けると、そこにはなくなった剣身の半分が突き刺さっていた。
何が起きたのかと頭の男は聞くが、その男は剣を振り下ろした体勢のままピクリとも動かない。
わけも分からずにいると、遅れて今度は丸い何かが落ちてきた。
地面に落ちて転がるそれに、男たちは一斉に目を向ける。
その視線の先には・・・・・・・・・
人の生首が転がっていた。
「ひぃっ!?」
仲間の一人が突然のことに思わず悲鳴を上げた。
そして、ピクリとも動かなかった男が唐突に倒れた。
改めてそちらに目を向けると、その男は首から上がなくなっていた。
あまりのことに動揺する仲間たちを尻目に頭の男は貴族のような格好をした青年を見る。
その青年の手にはいつの間にか棒のようなものが握られていた。
しかも、その棒は不思議だった。布を巻いてある握りの部分からその先まで、白銀色に輝いているのだ。
時折、そこからこぼれる白銀色が粒子となって宙に舞うさまは一種の幻想的な光景をかもし出していた。
その光景に目を奪われていると、不意にその青年が動き出した。
青年は抱いている子供の亡骸をそっと降ろすと、立ち上がりこっちを見た。
「な、なんだよてめえは・・・・・・」
思わずそんな言葉が出てしまう。他の仲間たちもその青年から発せられる『何か』に呑まれてしまっている。
「・・・・・・俺は北郷一刀。」
青年はそんな彼らを一瞥するとさらに口を開いた。
「貴様等を・・・断罪する者だ!」
「一刀・・・・・・なんか?」
霞は目の前の光景が信じられなかった。
一刀のそばにいた男が剣を振り下ろして、もう駄目だと思った瞬間、一刀が目にも止まらぬ早さで背中の棒を抜き、その勢いで男の持つ剣と一緒に首を斬ったのだ。
自分でも、ぎりぎり見えた程の早さだ。男どもには何が起きたのかすら分からなかっただろう。
しかし、そんなことより霞は一刀の持っている武器に注目した。
行軍中、霞は一刀が華雄と仕合をした話を聞いて、その流れで一刀の武器を見せてもらったことがある。
それを見た霞は、『こんなすぐに折れそうな棒でよく華雄に勝てたなぁ?』と言った。
それを聞いた一刀は笑いをこぼし、『これは俺の知る限り、最強の武器だよ。』と自慢げに言ったのだ。
その時は正直、こんなどこにでもありそうな棒切れが最強の武器だと言う一刀が理解できなかった。
しかし、それを見た瞬間に理解した。白銀色に輝くそれは鉄の剣をいとも簡単に両断し、その先の男の首を切り払ったのだ。
これと同じことが出来るか?と問われれば答えは否だ。どんなに自分が同じことをやっても、せいぜい『折る』だけだ。『斬る』には至らない。
それに、霞はその棒がまとっている白銀色の正体にも見当が付いていた。
(あれは・・・・・・『氣』か?)
そう、一刀はこの大陸でも数少ない氣の使い手なのだ。
そもそも何故、氣の使い手が少ないのか?それは、基本的に氣が一代限りの技だからだ。
もともと、氣は誰もが持っているものだ。だが、それを自由に扱えるかとなると話は別になる。
それは常に先天的な才能がないと扱うことができないのである。
しかも、それは武術のそれよりシビアだ。武術はどんなに才能がなくても、ある程度修練を積めば形にはなるが、氣は使えない者がどんなに頑張っても使えないままだ。
それに、氣が使える=強い、というわけでもないのだ。確かに氣弾などの技が使えれば便利だが、それは戦い方の幅が広がるだけのこと。決してそれで強くなったわけではない。むしろ、手っ取り早く強くなりたいのならば、適当な師を仰ぎ、その者から武術を習うのが一番最良の方法だろう。
以上の理由で、氣は代々伝える、ということが非常に難しいのだ。だから大抵一代限りで潰える。
そのことを知っていた霞は、一刀があれ程の氣を使えていることに驚いた。何度も言うが、武の才と、氣の才は別物だ。それを両方とも最高峰といえるほどのものを持っている一刀は奇跡そのものなのだ。
そんなことを考えていると、男の一人が一刀に向けて言い放った。
「おう、兄ちゃん。今、俺たちを殺すって言ったか?」
一人が言い出したことで、他の者たちも追従する。
「けっ!女の影に隠れてた奴がいきがってんじゃねえよ!」
「どんな妖術を使ったか知らねえがなめんじゃねえ!」
男たちが一刀に向かって行きそうになったので霞は一刀をかばうように立ちはだかるが、
「霞。」
一刀が霞を呼び止めた。
「かまわん、我が相手をする。」
霞はその言葉に従い素直に退いた。何故か、今の一刀の言葉にはそうしてしまうだけの力がこもっているのだ。
一刀は構えもしないで手に持った棒を下げたまま、男どもに向かってゆっくりと歩いていく。
それを見た男どもは互いに目配せをし、剣を持った者、槍を持った者、そして重量のある斧を持った者が三人一組になって一刀に向かって行った。
それは実に基本的な、それでいて効果のある戦い方だ。まず最初に、剣を持った者の攻撃で受けるか避けるかをさせた後、槍で相手の体勢を崩し、最後に重量のある斧を持った者が必殺の一撃を放つのだろう。
それを見た霞は行軍中の詠や一刀の話を思い出す。確かに連中に戦い方を教えた奴がいる。霞はそのことを確信した。
一刀は相手が向かってきても、立ち止まったりはせず、そのままの速度で歩き続けた。
互いの距離が縮まっていき・・・・・・そしてぶつかった。
「死ねぇっ!!」
やはり、最初は剣を持った男からだった。一刀に向かって最上段からの一撃を食らわせようとする。
しかし、一刀はそれが振り下ろされる瞬間に、左前方に足を踏み出した。たったそれだけで、男の攻撃は空振りに終わる。
そして、その男の首にはいつの間にか白銀色の棒が突きつけられていた。一刀はそれを躊躇なく押し込む。
するりと、何の抵抗もなく男の首は両断された。
それを間近で見てしまった槍を持つ男は、恐怖で二の足を踏んでしまう。
もちろん、一刀はそれを見逃さない。返す刀で右に払う。
男はとっさに槍を立てて防ごうとするが、そんなものは無意味だった。白銀は槍と一緒に、そのまま男の胴を両断してしまう。
「う、うわぁぁぁぁぁぁっ!!」
残る一人になってしまった斧を持つ男は、破れかぶれに斧を大きく横に振った。恐らく、一刀を少しでも自分のそばに近寄らせたくなかったのだろう。
しかし、一刀はそれを受け止めるでもなく、さがって避けるでもなく、真上に飛んで避けたのだ。
斧は一刀の足の下を通過し、一刀は落ちる重力に合わせて、白銀を真下に振り下ろした。
頭頂部から股下まで白銀が通過すると、その男は縦に真っ二つにされた。
一刀は斬った者たちには目もくれず、ただゆっくりと前に進んでいく。
他の者たちは仲間のそんな姿を見てしまい、全員が及び腰になっていた。
「な、何ぼけっと突っ立ってやがる。さ、さっさと行きやがれ!」
頭の男に言われて、同じようにまた三人一組になって向かって行くが、結果はさっきと全く変わらなかった。
全ての攻撃がかわされてしまい、そして、全て一太刀で切り伏せられる、それはまさに圧倒的だった。
あっという間に六人が斬り殺されてしまい、すでに彼らは残り三人になっていた。
「ば、化け物だ・・・・・・に、逃げろ!」
その一人がそう叫ぶと武器を捨て、一目散に逃げ出した。
もう一人もそれにつられる形で逃げ出す。
「なっ!?おいっ!!逃げるんじゃねえ!!戻って来い!! 」
一人残された頭の男は彼らに向かって叫ぶが、それはむなしく通りに響き渡るだけだった。
一刀は逃げ出した彼らには目もくれず、ただひたすらに、あの子供を殺したであろう弓を持つ男に向けて歩を進めていた。
頭の男は盛大な舌打ちをすると、矢筒から矢を取り出し、弓につがえた。
「く、来るんじゃねえ!来たら射るぞ!」
男は警告をするが、一刀は意に介さず、そのまま歩みを続ける。
「来るんじゃねえって言ってんだろが!!」
男がそう叫ぶと、一刀に目掛けて弓を発射した。
しかし、それが当たることはなかった。一刀は自分の眉間に目掛けて飛んできた矢を素手でつかんでしまったのだ。
あまりのことに男は呆然とするが、我に返った瞬間、男もわき目も振らず逃げ出した。
だが、一刀は逃がすつもりはなかった。手に持った矢を男に目掛けて投げつけた。
「ぐあっ!?」
矢は男のふくらはぎに突き刺さった。男はそれで体勢を崩し転んでしまう。
男はそれでも地面に這って逃げ出そうとする。少しでも、少しでもと必死に。
その時、男の眼前に立ちはだかる者が現れた。
そこには庶人の服を着た少女がいた。しかし、その面立ちはまるで人形のように整っていて、その瞳にはまるで瑠璃をそのままはめ込んだかのようなきれいな青色をしている。髪は肩のあたりで簡単に整えてあるだけだが、少女の持つ神秘的な雰囲気も合わせてとてもよく似合っていた。
男は少女を見ると、途端に安堵した顔を浮かべた。
「あ、あんたか・・・ちょうど良かった、急いで仲間を呼んできてくれ!そして、こいつらを何とかする策を教えてくれ!」
どうやら少女は奴らの仲間であるらしかった。しかし、少女は一瞬、悲しそうな顔をすると首を横に振った。
「・・・無理です。彼らはここに来ている領主の軍勢に全員捕らえられてしまいました。」
「なっ!?どうして領主の軍勢がここに来てやがるんだ!?誰一人として出していないはずだぞ!?」
「私が呼びました。」
少女は淡々と事実を述べていく。男は少女のもたらされた言葉により、顔が憤怒に染まった。
「てめぇ!俺たちを裏切りやがったのか!?」
「・・・私たちは道を踏み外してしまったのです。その報いは受けなければいけません。」
男はさらに何か言おうとするが、背後に迫ってきた一刀の存在に気づきあわてて振り向いた。
「・・・・・・・・・・・・」
「た、助けてくれ!ど、どうか命だけは・・・!」
男はさっきまでの威勢はどこへやら、途端に命乞いをしだした。
一刀は黙ってそれを聞いた後、男に言い放つ。
「そう言った村人たちに貴様は何をした?」
「ひっ!!」
それは死の宣告だった。一刀は怯える男の心臓に手に持った白銀を突き立てた。
「ぐっ・・・がはっ・・・・・・」
「あの子たちの痛みを万分の一でも感じながら・・・死ぬがいい。」
そう言って一刀は突き立てた白銀を引き抜く。そこから血が勢いよくあふれ出した。男は痛みにのたうち回り、そして・・・・・・死んだ。
あたりに静寂が訪れた。不意に一刀の持つ白銀色の棒が輝きを失っていき、ただの木の棒に変わった。
すると、一刀の体が傾きだし、そして倒れてしまった。
「一刀!」
霞があわてて一刀のもとに駆け出し、一刀の容態を調べる・・・・・・・・・どうやら気を失っただけのようだ。
霞はひとまず安心し、そして目の前の少女に目を向けた。
「・・・・・・あんたが商人に手紙を持たせた奴なんやな?」
「・・・はい、その通りです。」
少女がうなずいた。
「うちは一刀を本陣まで連れてかなあかん。あんたもついてきて事情を説明してもらおか?」
「分かりました。」
「ほな、行くで。えーっと・・・・・・」
「徐庶です。」
霞が言いあぐねていると、それを見越した少女が名乗りだした。
「私の名は徐庶、字は元直です。」
紹介ページ
『神木刀・聖天』
北郷家に代々伝わってきた家宝で一刀の武器。
由来は北郷の祖にあたる者が修行のためにとある樹海をさまよっていると、そこで樹齢何百年はあろうかという見事な大木を発見した。その者はその木に感動し、枝を持ち帰り削りだして出来たものだといわれている。
聖天は一見ただの木の棒だが、それに氣をこめることにより、すさまじい硬度と切れ味を生み出すことが可能だ。
しかし、常に氣をこめ続けなければならないため長時間の使用は難しいうえ、硬度と切れ味もこめた氣の量に比例するため扱いの難しい武器になっている。
一刀はこの武器を使いこなしており、歴代でも数少ない継承者に選ばれている。
本編ではまだ書かれてないが、聖天は先端に氣を集中することで槍のように扱うこともできるし、全体の切れ味を鈍らせて棍のようにして戦うこともできる。他にも様々な用途があるが、それは追々明かしていくとしよう。
Tweet |
|
|
219
|
36
|
追加するフォルダを選択
突然ですが、私はガ〇ダムが好きです。
そして、ライフルでバンバン撃つよりも、サーベルでズバズバ切り込む方に魅力を感じます。
『突然何を言ってるんだ?』とおっしゃるかと思いますが、この作品を読んでくだされば分かるかと思います。
続きを表示