~鞘華視点~
私達は問題も無く、赤壁に到着した
道中、一君が何かしてたようだけど
「間諜とそうじゃない人の選別をしてただけだよ」
嘘では無いけど、何か隠してるわね
静里や氷雨に訊いても
「私達も教えて貰っていません
鞘華さんが知ってると思っていました」
と全く分からない
赤壁に到着すると既に雪蓮や冥琳が待っていた
「よく無事に到着してくれたわね」
雪蓮が蓮華を労う
「襄陽の5万の兵力が無ければ、この戦は困難を極めました」
と冥琳も喜んでいる だが曹操軍の80万と云う数には程遠いんじゃ無いの?
「此方の総兵力はどれだけなの?」
ずばり聞いてみた
「襄陽の兵を加えて15万と云った所だ」
あ~、少しは三国志を知っているから予想はしてたけど、その兵力差で勝てるの?
三国志と違って、劉備軍の助力もないし、当然孔明もいない
どうやって戦うんだろう
「冥琳、二人で話したい事が有る」
一君が冥琳に話しかけた
「分かった、こっちの天幕で聞こう」
そう言って、二人で天幕に入って行った
暫くすると
「ふざけるな!
良くそれで軍師が務まるな!」
一君の怒声が響いた
「貴様に何が解る!
最早、話す事など無い!」
直後に冥琳の声が響いた
程無くして、二人が天幕から出て来た
「軍議を始めよう」
冥琳の言葉で軍議が始まる
曹操軍の道中で、少数の伏兵による弓での攻撃
孫呉得意の水上戦で翻弄して、敵を減らす
確かに効果は期待できるが、とてもそれだけでは足らない
そう思っていたら
「その程度で勝てるなら、苦労は無い」
一君が発言した
「この兵力差はその程度では覆せない
いっそのこと降伏した方が無駄な死者を無くせる
さっき言っただろ」
単純に聞けば降伏論だ
「黙れ!誇り高き孫呉が降伏など出来るか!
そもそも貴様はただの客将にすぎん!
出過ぎた発言をするな!」
「何が出過ぎた発言だ!
お前の様な奴が無意味な犠牲を増やすんだ!
現実を見ろ!」
二人の言い合いは、どんどん熱を帯びて来る
遂には
「最早勘弁ならん!
この場でその首、叩き落としてくれる!」
「剣で脅せば大人しくなると思っているのか!
其方がその気なら相手になるぞ!」
冥琳が剣を抜き、一君も身構える
流石にこれ以上は不味い
「冥琳、辞めなさい」
「一君も落ち着いて」
雪蓮と私で二人を抑える
「雪蓮、北郷の処罰を!
軍師に逆らい、戦わぬうちから降伏を言い出したんだ
それなりの処罰が無ければ示しがつかん!」
冥琳の意見に雪蓮が下した採決は
「北郷一刀は百杖打ち据えとする
そして部隊はこの戦に於いて前線に出る事を禁ずる」
との物だった
百杖打ち据え、日本風に言えば百叩きの刑
とても直視したくなかった
だが一君の覚悟を決めた行動を見届けなければならない
その思いで目を逸らさずにいた
刑が済み、動けなくなった一君に駆け寄り
「大丈夫?」
「これが大丈夫に見えるなら、鞘姉 目を華佗に診てもらったほうがいいよ」
そんな軽口が叩けるなら、問題無いよね
一君を天幕に連れて行き、治療をする
静里や氷雨、蓮華もついて来たそうだったが無視して連れて行く
肩から背中にかけて叩かれ続けて、ぼろぼろになっている
私も詳しくは無いが三国志を知っている
これが何を示しているのかは察しがついた
こんな無茶をして、でもこれは種蒔き
この後にする命懸けの無茶の為の
天幕の外に人の気配は無い
手当てが済み、起き上がった一君に訪ねる
「行くの?」
短く、それでありながら全てが伝わる質問
「ああ」
短く、それでありながら全てが伝わる回答
その答えを聞いた私は一君の首に両手をまわして、唇を重ねる
お互いの気持ちを重ね合った後、唇を離す
「きっと帰って来てね」
「必ず帰って来るさ」
その日、一君は部隊の兵100人を引き連れて軍を脱走した
~あとがき~
黄蓋の代わりを一刀が行います
祭の活躍を期待していた方には申し訳ありません
ご容赦下さい
呉軍の動揺については次話に書きます
どう治めるのか考えてあります
そんな大層な物じゃないですが
更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです
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赤壁の戦い①