No.76364

真・恋姫†無双~江東の花嫁~(五)

minazukiさん

今回は黄巾党のと戦い後のひと時と宴会のお話です~。すでに原作から離れてしまっていますが、気にしたら負けです!(スイマセン)

2009-05-30 16:34:41 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:30099   閲覧ユーザー数:21502

(五)

 

 ジリッ……

 

 蝋燭の火が朧に天幕内を照らす。

 

「驚いたでしょう?」

 

 雪蓮の言葉が静寂に染まっていく。

 

「血を見すぎるといつもああなるのよ。まぁ病気みたいなものね」

 

 傍にある机に置いてある酒瓶に手を伸ばして杯に注いでいく。

 酒を一刀に勧めるが何も言わなかったので一人で飲み干した。

 

「ごめん」

 

「どうかしたの?」

 

「俺……あの時の雪蓮が怖かった」

 

 赤く染まった雪蓮の姿がまだ一刀の瞼にしっかりと残っていた。

 

 その姿は人ではなく血に飢えた獣。

 

 正直な感想に雪蓮は怒ることもなく一刀を見つめる。

 

「人が死ぬことがこんなにも怖いんだと思った」

 

「誰だってそう思うわ」

 

「男なのに情けないよな」

 

 拳を握る力が強くなる。

 

 その様子を雪蓮は身体を起こして一刀の腕を掴んで自分の方に引き寄せた。

 

 そして両手で逃がさないように抱きしめた。

 

「こうしても一刀は私が怖い?」

 

「……そんなことは」

 

「私は戦に悦びを感じているわ。それはきっと母様の血が流れているからだわ。でも、今はただの女」

 

 孫堅の娘でも孫家の主君でもないただ一人の女性がそこにはいた。

 

 一刀の、天の御遣いの血を孫家に混ぜることを言った。

 

 それは雪蓮も含まれていることになるが、今の一刀は聞くことはなかった。

 

「蓮華とは上手くいきそう?」

 

 話題を変える雪蓮。

 

 そうすることで少しでも一刀の恐怖心を解こうと思ったのか、それとも純粋に妹とのことが気になっていたのかは本人からすれば両方だった。

 

「思いっきり嫌われているかな」

 

 一刀を見る冷たい視線。

 

 それには疑念だけではなく拒絶が含まれていた。

 

「真面目過ぎるのも問題ね。私みたいに気楽に考えればいいのに」

 

「雪蓮はアバウトすぎだ」

 

「あばうと?」

 

「うんっと、大雑把過ぎるって意味かな」

 

「そうかしら?」

 

 一刀を抱きしめたまま彼の髪に指を絡ませていく。

 

 一刀としては雪蓮の首筋に頬を当てているため動くに動けなかった。

 

 恐怖心が和らいでくると次にくるのは恥ずかしいというものだった。

 

「考えるのが嫌いなだけよ。考えてもどうにもならないことだってあるんだし、そういう時は動くに限るわ」

 

「雪蓮らしいかな」

 

「そう?ありがとう」

 一刀の知っている孫策は常に先頭に立っていた。

 

 戦においても何をするにしても、その第一歩には必ず孫策がいた。

 

「ところでそろそろ離してほしいんだけど」

 

「ダメよ。一刀に怖いと思わせたのだから責任は取るわ」

 

「い、いやいいよ。もう大丈夫だから」

 

 離れようとするがそれ以上の力で止められた。

 

 女性でもこの世界では一人の武将。

 

 ほどなくして無意味な抵抗を諦めた一刀。

 

「ねぇ一刀」

 

「な、なに?」

 

「強くなりなさい」

 

 雪蓮の声は優しさを含んでいた。

 

「強くなって呉を……蓮華を支えてあげて」

 

 言っている意味が分からなかった。

 

 今の主君は雪蓮であり孫権ではない。

 

 それなのに自分よりも妹を支えろという意味が一刀には理解できなかった。

 

「どうして孫権さんなんだ?」

 

「そうね。女の勘かしら」

 

「雪蓮……」

 

「だから強くなりなさいね。そして私を安心させてほしいの」

 

 戦場で嘔吐をする天の御遣いでは話にならない。

 

 強くなり誰もがその名を聞くだけで歓喜を上げるような人物になってほしいという雪連の想い。

 

「出来るかどうかは分からないけどやれるだけはやってみるよ」

 

 一刀の答えに満足したのか雪蓮は彼の髪を指で梳いていく。

 事後処理も終えて袁術の元に帰還した雪蓮達。

 

 孫権は相変わらず一刀を拒絶しており、それに付き従う甘寧は殺気をぶつけている。

 

 屋敷の一室でのんびりと時間を過ごしていると、雪蓮と冥琳と祭、それに見たことのない女の子が二人やってきた。

 

「一刀、今日から貴方を軍師に任命するわ」

 

「軍師?」

 

「そう。天の知識を使って戦いを有利に進められると冥琳達とも話したの」

 

 確かに三国志を知っている一刀にとって試験でカンニングをしているようなものだが、今のところその知識を役に立てるものはなかった。

 

「それは別にかまわないけど?」

 

「早速の承諾いたみいる。そこでだ。北郷殿の補佐としてこの者達を付けようと思って連れてまいった」

 

 冥琳に紹介された二人の女の子。

 

 一人はのんびりお姉さんといった感じの陸遜・伯言。

 

 もう一人は昔の映画であった「キョンシー」みたいな衣服を身に着け鋭い視線に片眼鏡を付けている呂蒙・子明。

 

 どちらも呉を支えた名将。

 

「よろしくお願いします~、天の御遣い様~」

 

「お初にお目にかかります、天の御遣い様」

 

「北郷一刀。出来れば北郷か一刀って呼んでもらえるかな?」

 

 未だに慣れない一刀。

 

「では一刀さん~」

 

「……一刀さま」

 

 陸遜は気軽に、呂蒙はやや緊張気味に一刀の名前を呼ぶ。

 

「よろしくね、陸遜さん。呂蒙さん」

 

「私のことは穏と呼んでください~」

 

「亞莎とお呼びください」

 

 いきなり二人の真名を授かることになった一刀は戸惑いつつ、雪蓮達を見る。

 

「いいんじゃあない?本人達が了承しているなら問題はないわよ」

 

 雪蓮以外にも冥琳や祭もそれぞれ真名を授けているため、今更何でもなかった。

 

「そ、それじゃあ、穏、亞莎、よろしくね」

 

「はい~」

 

「はい……」

 

 穏はのんびり口調で、亞莎は少し声を小さく答える。

 

「穏は私の副官でもあるから主に亞莎が副官の任に当たる。分からないことがあれば……いやこれは愚問かしら」

 

冥琳は一刀と何度か話をしているだけに天の知識を持つ彼には余計なことだったと苦笑する。

 

「いや、助かるよ。こっちのことをもっと知りたいからね」

 

「そう。亞莎、北郷殿に学ぶものがあればしっかり学びなさい」

 

「はい……冥琳様」

 

 礼儀正しい女の子だなと一刀は亞莎を見ていると、亞莎はそれに気が付いて視線を逸らし、それを横で見ていた雪蓮と祭は笑みを浮かべていた。

 

「一刀」

 

「なに?」

 

「亞莎と二人っきりなったら襲ったらダメよ?」

 

「なっ!」

 

「し、雪蓮様!」

 

 顔を真っ赤にする二人。

 

 それをまたひどくおかしそうに笑う雪蓮。

 その夜。

 

 一刀の歓迎と称して全員でささやかな宴会が開かれた。

 

 文句を言われることなく酒が呑めるということで雪蓮と祭はいつも以上に、それを呆れた表情で見る冥琳。

 

 何かと天の国の話を一刀から聞いては身体をモゾモゾさせている穏に姿勢を正して聞いている亜莎。

 

 一見賑やかに見えたが一部ではそうではなかった。

 

 孫権と甘寧だった。

 

 孫権は幾度と一刀を睨みつけでは彼が気づくと視線を逸らしての繰り返し。

 

 甘寧はその後ろに控えてまっすぐ一刀を殺気を放っていたため、それをあえて無視して穏と亞莎に話をする一刀。

 

(どうしたものかな)

 

 雪蓮からは仲良くしてほしいと言われても相手にその気がないのではどうすることも出来ない。

 

 何かきっかけがあればいいのだが見渡す限り、何もない。

 

「一刀~。呑んでる?」

 

 上機嫌の雪蓮が酒瓶を持ってやってくる。

 

「雪蓮様~なかなか天の国とは不思議なところですよ~」

 

 なぜか興奮気味の穏。

 

「穏が書物以外でそうなるなんて、天の国とは凄いものね」

 

「いいや、別に凄いわけではないが」

 

 一刀にすれば当たり前の事でも雪蓮達からすれば想像も出来ないものばかり。

 

 しかもどの書物にも載っていないとなると、気になるのは当然のこと。

 

「穏さま、少し落ち着いてください」

 

 一見、冷静な亞莎。

 

 だが一刀の話を片時も離れず聞いていたのもまた彼女だった。

 

「二人とも一刀ともっと話したい?」

 

「それももちろんですよ~」

 

「・……はい」

 

 どうやら相当、一刀がお気に入りのようだ。

 

(よしよし。まずはこの二人は問題ないわね。問題なのはむしろあっちね)

 

 自分の妹ながらあそこまで拒絶態度をとるとは思わなかった雪蓮は何かいい考えを思いついた。

「祭、あの子、もう戻ったかしら?」

 

「尚香様かの?そういえばそろそろ戻られるはずだが」

 

「尚香って?」

 

「私の末の妹よ」

 

 そういえば大変気性の激しいお姫様だったと思い返している一刀。

 

 そこへ。

「た~だいま~。今帰ったよ~」

 

 勢いよく部屋の扉を開けたのは元気が有り余ってる小さな女の子だった。

 

「あら、ちょうどいいところに戻ったわね」

 

 雪蓮の表情が妖しく笑みを浮かべる。

 

「あれ~?何かの宴会なの?」

 

「そうよ。ここにいる北郷一刀、天の御遣い様の歓迎宴よ」

 

「天の御遣い様???」

 

 姉の言葉に孫尚香は?マークをいくつも浮かべなら、その姉の近くで穏と亜莎に挟まれている見慣れる男、一刀を見つけた。

 

「へぇ~あなたが天の御遣いなの?」

 

 興味津々に一刀の前に来て、珍しい物を眺めるかのように何度も見回す。

 

「どう、小蓮?」

 

 その横でまだ妖しい笑みを浮かべている雪蓮に、満面の笑みを見せる孫尚香。

 

「よかったわね、一刀」

 

 極上の妖しい笑みを浮かべて一刀を見る雪蓮にとてつもなく嫌な予感を覚える一刀。

 

「へぇ~一刀って言うんだ。私のことは小蓮。シャオってよんでね」

 

 後ろに回りこんでいき、いきなり飛び込むようにして抱きつく小蓮。

 

「うわっ」

 

 それを受けきれなく椅子ごと倒れる一刀にじゃれる小蓮。

 

「お姉様、一刀のお嫁さんになってもいい?」

 

 とんでもない爆弾発言をサラッと言う小蓮に姉は反対する気はさらさらなかった。

 

 そればかりか応援する態度をとる。

 

 もちろんそれは計算してのことだということを雪蓮以外でこの場にいる者の中で分かっているのはその様子を眺めて大きなため息を漏らした盟友の冥琳だけだった。

 

「よろしくね~一刀」

 

 遠慮なんてものはなく積極的に身体を密着させていく小蓮に真っ赤になりながら慌てる一刀。

 

 穏はなにやら想像したらしく頬に手をあて、亜莎は真っ赤になって止めるべきかどうかオロオロとしていた。

 

 そしてその様子を一番苦々しく見ていた孫権は席を立ち出て行ってしまい、その後を追うように甘寧も出て行った。

 

(面白くなりそうね)

 

 一人ご満悦の雪蓮は杯を傾けた。

(座談)

 

水無月:真・恋姫無双の小悪魔登場です。

 

小蓮 :これからジャンジャン一刀を誘惑するもんね~♪

 

水無月:そういえば史実の孫尚香って物凄く気性の激しい女性だけど、それが小悪魔でしかも積極的になったんですね。

 

雪蓮 :元気なのは変わらないわね。まぁ一刀は女性の好みなんて幅広いから問題ないわね(クスッ)

 

一刀 :言い返せない自分が・・・・・・。

 

水無月:一刀~、それが悲しい男の性ってものですよ。

 

雪蓮 :あら、いいのよ。私達三人姉妹に手を出そうが私は別に気にしていないから。

 

水無月:雪蓮のような懐の大きな女性が現代社会にどれだけいるのか調べてみたいですね。

 

雪蓮 :でも裏切ったりなんかしたら容赦しないわよ?(クスッ)

 

水&一:・・・・・・(ガクガクブルブル)

 

冥琳 :ほら次回はどうなるの?

 

水無月:あ、そうでした。次回はちょっと飛ばして反董卓連合のお話です~。あまりゆっくりと書いていると書きたいところが何時までたってもかけませんから。

 

冥琳 :という事らしいから次回もよろしく頼むわね。

 

水無月:了解です!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蓮華 :・・・・・・(ふんっ)


 
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