No.763061

IS ゲッターを継ぐ者

第四話です。千冬さんがやらかします。

2015-03-08 15:18:40 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:978   閲覧ユーザー数:958

〜光牙side〜

 

 条件を呑み整備室の許可を貰った僕は、早速次の日から整備室でベーオの修理と改修を開始した。

 

 ISとかいうのになってても、戦いを潜り抜け苦楽を共にした相棒に代わりない。何より壊れたままにするなんて嫌だしな。ゲッターパイロットにとって、ゲッターロボはそれくらいの存在だと僕は思う。

 

 最低限の機材は学園側が提供してくれたので、それを利用してまずは修理を開始。平行して改修も行う。

 

 主な改修点は、欠けたゲッターブレードと両手のスパイクの撤去、使用可能な武装の修理。そうでない武装はブレードとスパイク同様取り払う。

 

 何故かというと、装甲や関節等の機械関係は大丈夫だったけど、炉心だけはゲッター線を用いた施設でなければ完全にかつ安全に修復出来ないからだ。ガタガタの炉心を下手に構ってドワォなんてのは僕だって勘弁だし、この学園に被害をもたらすなんてもってのほか。 最低限に動く位にまで炉心は修理し、そのせいで使えなくなったものもあったが今は諦め、修理できた武装と、学園のISが使用する武器を二つ程装備させてもらい、ベーオはなんとか数日で直った。

 

 ちなみにこれは修理の時に分かったのだけど、ベーオにはISと違う所がまだあった。

 

 まずISの心臓部でありブラックボックスの『コア』が無い。同様に基本機能である『シールドバリア』、エネルギーを大量消費する代わりに操縦者を守る『絶対防御』も存在しない。

 

 操縦方法も、腕や足を動かす場合、ISは手足の中にあるレバーやらスイッチの操作らしいが、ベーオは操縦者の動きに合わせて動く。つまり、僕が手を動かせば纏ったベーオも同じ動きをするダイレクトモーションシステムになっている。

 これを聞いた織斑さん達は目を剥いて驚いていたが、僕としてはなんでレバーやらスイッチがある方が不思議だ。そんなんだと余計に使いづらい気しかしない。

 

 これを尋ねた所、織斑さん曰く「……知らん」だそうだ。

 

 いや知らんって……。それでいいのかIS学園?

 

 まあそこは気にしたら負けな気がするので、話を戻す。

 

 ともかくベーオは直ったので、変な意味ではないが僕はベーオの機体性能を見せるべく、織斑さん達が待つ第八アリーナへと向かうのだった。

 

〜光牙sideout〜

 

 

 

 

〜ナレーションside〜

 

 

『では滝沢。機体を展開しろ』

 

「了解です」

 

 

 スピーカーを通して、第八アリーナのグラウンドに千冬の指示が響き渡る。

 

 グラウンドにはISスーツを着た光牙が立っていて、千冬、真耶、楯無の三人はアリーナの左右端にある待機場所兼カタパルトの『ピット』のモニターより光牙を見ている。

 

 指示を受けた光牙は早速、直った相棒を付けた左手を前に出す。

 

 集中し、ゲッターお決まりの“あの言葉”を叫んだ。

 

 

「チェンジ! ゲッターベーオ!」

 

 

 そう言った瞬間、緑の光が光牙の全身を包み、修理が完了したベーオへと姿を変えた。

 ブレードやスパイクはないものの、装甲のヒビや欠損は全て修復され稼働可能になった光牙のゲッターロボ。

 

 手足や関節が問題なく稼働するのを動かしてみて確認し、準備OKのサインとして光牙はピットの方を向いて手を挙げる。

 

 

『では、これより戦闘訓練を開始する』

 

 

 千冬の声が響くと、グラウンドに丸い形の光る的のようなものが出現した。数は十。

 

 戦闘訓練に関して大体の概要を千冬から伝えられている。

 

 ベーオの武装を使って的を壊せばいいと。

 

 

『行くぜ、ベーオ!』

 

 

 そう言って、早速光牙は武装の一つを呼び出す。勿論、ゲッター特有の方法で。

 

 

『ゲッターマシンガン!』

 

 

 叫ぶと、竜馬がブラックゲッター時に使用していたマシンガンが二丁現れ、光牙否ベーオが両手に持って乱射する。

 

 光る的――ターゲットに弾丸の雨が降り注いで二つを破壊。ベーオは右手のマシンガンを仕舞い、新たな武装を召喚する。

 

 

『ゲッタァァァトマホーク!』

 

 

 右肩と頭の間にある突起が飛び出て刃が構成される。初代ゲッターも使用し、形も同じ片刃の斧ゲッタートマホーク。

 

 右手で握り振り上げ、ベーオがターゲット目掛け走っていく。

 

 さながら初代ゲッターのOPである。

 

 

『せいやぁ!!』

 

 

 袈裟斬りにトマホークを振り下ろす。

 

 ターゲットが真っ二つになり消滅。左手のマシンガンを左側に撃ち、浮いていた三つのターゲットを破壊した。

 

 

『もういっちょ! ゲッタートマホーク!』

 

 

 光牙が叫ぶと左側の突起がゲッタートマホークになり、マシンガンを投げ捨てて左手でキャッチ。両手のトマホークで、ベーオ近くのターゲット二つを切り裂く。

 

 残るターゲットは二つ。それはベーオから離れた位置に浮いていて、遠距離武器でないと届かない。

 

 

『トマホークゥ……ブーメランッ!!』

 

 

 それにベーオは、ターゲット目掛け両手のトマホークを投げた。回転しながら飛んで行くトマホークが、二つのターゲットを破壊した。

 

 

『ふぃ。破壊完了』

 

 

 ブーメランの様に戻ってきたトマホークをキャッチし一息つく。 

 

 ターゲットを全て破壊し第一段階が終了。インターバルの間にトマホークや投げ捨てたマシンガンを回収して、次のターゲットを待つ。

 

 

『お、来た来た』

 

 

 上空に第二段階のターゲットが現れた。数は十五個、少し数が多く空中に浮いていて、色も。

 

 ベーオは腕をクロスし振りぬいて叫んだ。

 

 

『ゲッターウイング!』

 

 

 シュバッ! と背面に一対の黒い翼が展開され、ベーオは空中へ飛んだ。

 

 両手にトマホークを装備し飛ぶ。対しターゲットの方は真ん中が光ったかと思うと、ピュイン! と某使徒みたいなエフェクトを発してビームを撃ってきた。

 

 

『ぬぉ!』

 

 

 どうやら棒立ちだった第一段階とは違い、今度のターゲットは攻撃もしてくるようで、飛び交いながらビームを放ってくる。

 

 最初は驚いたが、ベーオはビームの中を駆け巡り、避け、トマホークで弾いたりしながらターゲットを切り裂く。

 

 

『今度は攻撃アリって訳か!』

 

 

 ビームを掻い潜りつつ、トマホークで二つ、トマホークブーメランで一つ。マシンガンで三つを壊し、次のターゲットを壊そうとしたときだった。

 

 

『うぉっ!?』

 

 

 何かが後ろから迫るのを感じ、咄嗟に左横にステップ。すると、直前までいたところをターゲットが高速で通り抜けていった。

 

 他のいくつかも、ベーオ目がけ飛んでくる。体当たりと射撃、二つの武器でターゲットはベーオを狙ってきたのだ。

 

 

『ファンネルかよコイツらは!』

 

 

 確かに射撃と体当たり、ファンネルミサイルとかを思い出しても不思議じゃあない。

 

 

『おもしれー。なら打ち破るっ!』

 

 

 ベーオはそれに対し自ら突撃をかけた。

 

 自分から攻撃範囲に入ったのでビームが、ターゲット四つが殺到する。

 

 ビームをトマホークとマシンガンで弾くと、ベーオは空中で思いっきり体を後ろに倒す!

 

 

『うおおぉぉぉぉ~!!』

 

 

 空中マ〇リックス!!

 

 体の上を通りすぎるターゲット。そのままガコン!と体を起こし、体当たりをなんとか切り抜けたベーオはマシンガンを撃ちまくりながら前方のターゲットへ突撃。

 

 四つをを破壊したとこで、最初から使用していたゲッターマシンガンが弾切れになり、それを捨てて、一個となったターゲットをむんず!と掴み……

 

 

『目指せメジャァァリィーーーーーグ!!』

 

 

 なんか叫びながら後ろへ思いっきりぶん投げた! 

 

 回転がかかったターゲットは、ガン! ガン! ガン! ガン! とピンボールさながら四つのターゲットにぶつかり合い三つとともに消滅してしまった。

 

 これで残り一つ。

 

 

『ラストォ! ゲッタードリルランサー!』

 

 

 左手に召喚されるのは、ゲッター2のドリルに漢字の『口』の形をした持ち手がついた近接武装『ゲッタードリルランサー』。

 

 両手のトマホーク、ランサーを振りかざし、ベーオはターゲットへ肉薄する。

 

 飛んでくるビームなど火の粉を払うように吹き飛ばし、ドリルを回転させながら一気に接近!

 

 

『ぶち抜け、ドリルランサー!!』

 

 

 高速回転するドリルランサーが、紙屑の様に穿つ。光り、ターゲットが消える。

 

 

『そこまで! 滝沢、戻ってこい』

 

 

 こうして訓練は終了。ベーオはピットへと戻っていくのだった。

 

 

 

 

~ピット~

 

 

「お疲れ様です、滝沢君」

 

「なかなかいい動きだったな。最後の辺りの回避には驚かされたぞ」

 

「あぁ、マトリックスとかですか」

 

「いや伏せましょうよそこは。というかターゲット投げるなんて普通は思い付きませんよ……」

 

「あっはっは、それほどでも」

 

 

 そう笑う光牙。彼の中ではあんなことなど日常茶飯事だったので。

 

 

 

 --ドワォォォォォン!!

 

 

『とうまほァァァァァァッ!?』

 

『光牙--ッ!』

 

『おい敷島のジジイ!! テメエまた何作ってんだ!?』

 

『ぬわははははは! いやーまだこの簡易ワープ装置には改良が必要じゃな』

 

『……ココどこ?』←ワープ装置の暴走で違う世界の日本に吹っ飛んだ光牙。

 

 

 

 

「まあこんなことがあったので」

 

「それは大変だったな……」

 

「いや同情ですか!? ワープ装置とかにつっこむの無しですか織斑先生!?」

 

「何処につっこみどころがある?」

 

 

 ドドン!

 

 言い切りましたこの先生は。「えぇ……」と脱力する真耶をよそに、光牙と話している。

 

 

「修理で武器外しましたから、少しISの武器を見せてもらってもいいですか? 場合によっては借りたいんですけど」

 

「ふむ……わかった。考えておこう」

 

 

 顎に手を当ててから話を通す千冬。

 

 ベーオに新たな武器フラグが立ちましたとさ。

 

 

 

~教員の部屋(予備)~

 

 使われていなかった教員の部屋。そこを部屋にあてがわれた光牙は、机でノートに今日の訓練の事を纏めていた。

 

 当初、異常事態とはいえ男子が部屋を使うことに教師陣の幾人が難色を示していたが、そこは千冬が手を回して今は何も言われなくなっていた。

 

 

「こんなもんですかな」

 

 

 使っていて気付いた事や、改善点を一通りメモして、ノートを閉じる。服や筆記用具といった最低限の生活用品は学園が用意してくれた。

 

 今メモしたことを早速次の機体点検の時に試そうと考えつつ、光牙は壁にかけてあるハンガーに目をやる。

 

 ハンガーには白を基調とした服がかけられている。訓練の後に真耶から受け取った、IS学園の制服だ。下半身はズボン、上半身は男物のブレザーの様になっている。決して面倒くさいから女性ものを改造していざとなったら女子用になる……とかはないのでご安心を。特注で作られた紛れもない男性もののだ。

 

「……学校は嫌いなんだよなぁ」

 

 

 そういってため息一つこぼす光牙。学校と聞いて脳裏に浮かぶ暗い記憶。

 

 思い出しそうになったが、直ぐに頭から追い出す。別に今は関係ない。かけてある白い制服を使用することになるのはもう少し先。

 

 今日は慣れないISとなったベーオを動かし疲れたので、寝ようと思い畳んである布団をしく。

 

 ――グゥゥ〜。

 

 

「……腹減ったな」

 

 

 それでいざ寝ようと思ったら邪魔する腹の虫。

 

 普通なら食堂へ行くなり購買で何か買うなりで解決するが、光牙は入学すらしてない。今いるのは仮の処置で、生徒でない、しかも男性がIS学園にいると知れたら間違いなく騒ぎになる。千冬や真耶、楯無など一部の人間は知っているがそれでもだ。

 

 訓練が終わるなり武器やISについて千冬らに聞き、部屋に戻ってからはシャワーを浴びてノートに書き込んでいた。ベーオの事で頭がいっぱいで、ご飯を忘れていたとは。

 

 

「……見つかったらゲームオーバーだよな」

 

 

 部屋からにゅっと顔を出し辺りを伺う光牙。廊下に誰もいないが、食堂など空腹を満たしてくれる場所には人がいる筈。

 

 忘れていたのだから仕方ない、と光牙はへこむ腹をに言い聞かせた。

 

 

「ま、一回くらい食べなくたって人間死にはしないか」

 

 

 腹は減っているが気持ち切り替えも早いこの光牙。味気ない栄養バーやゲテモノや何日も食わなかった事もあるので、さー寝ようと頭を引っ込め布団へダイブしようとした時だった。

 

 

「滝沢、入るぞ」

 

「ふぁ?」

 

 

 

 

 

 

「いっただきまーす!」

 

 

 大声で宣言し、おにぎりにかぶりつく光牙。さっきは死にはせんとか言ってたが、やっぱりお腹は空いてた訳で。

 

 海苔に巻かれたおにぎりにかぶりつく。パック詰めの唐揚げを口に放り込む。プラスチックのカップに入ったサラダをかきこみ、ペットボトルのお茶で喉を潤すとまたおにぎりや唐揚げを食べていく。

 

 

「相当腹が減っていたのだな……」

 

 

 それを見て驚いている千冬。まだ自由に行動できない光牙が腹を空かしていると思い、購買でおにぎりとかを買って持ってきたのだ。

 

 大人一人前分くらいを買ったのだが、光牙はそれらをみるみる内に腹へしまっていき、おにぎり二つと唐揚げ八つ、サラダ一杯を食べるとお茶を飲み干して手をパンっ!と合わせた。

 

 

「ごっつぉさまでした!」

 

「あ、あぁ。それは何よりだ」

 

 

 豪快な食いっぷりだったので、ごちそうさまを言われた千冬は素直に頷く。

 

 

「いやー、織斑さん助かりました。飯食いに行こうにも行けなくて」

 

「まだお前は入学前だからな。そこら辺は私が考えてやるから、ちゃんと聞いておけよ?」

 

「了解です。にしても、この世界のご飯は旨いですね〜」

 

「購買で買ってきたやつだが、そんなにか?」

 

「そりゃあもう」

 

 

 満面の笑みで光牙は頷いてみせた。戦ってた中では今の食事も絶対に食べられないからだ。

 

 

「にしても、よく僕が腹減ってたの分かりましたね」

 

「ん……なんとなくそんな気がしてな」

 

 

 包装や空のパックといったゴミをまとめ片付ける光牙と千冬。

 

 ……その際、光牙の横顔を見て千冬はジッと見つめていた。何故か、髪の毛の中の一本がぴょんぴょんしながら。

 

 

「……一夏」

 

「はい?」

 

「いや、なんでもない。なんでないぞ」

 

「はぁ(一夏って、確か……)」

 

 

 千冬の呟きは光牙に聞こえていた。

 

 行方不明となった千冬の弟。光牙に似ているらしい。

 

 家族の事を忘れたくないのだろう。たった一人の家族だったと言うのだから。

 

 とりあえず片付けを終え千冬はまた仕事に戻るとの事。

 

 

「じゃ織斑さん、ありがとうございました」

 

「あまり夜更かしはするなよ。ではな」

 

 

 千冬が立ち去り一人になる部屋。布団の上にて胡座をかく光牙は、千冬の呟きを思い出す。

 

 

「一夏さん、ねぇ」

 

 

 当然光牙は知らない。会った事もない。

 

 けど、どうしてだか。分からないのに、何か引っ掛かる様な。一夏、と聞く度に何か反応するみたいな感じがしてならなかった。

 

 

「まいいか。寝よ」

 

 

 しかし自由人光牙。分かんないんだから気になるけど腹も膨れたしいいや、と布団に入り眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 ――……ルト……。

 

 

「………………」

 

 

 

 

 ――ハルト……。

 

 

「……んん」

 

 

 

 

――ハルトォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!

 

 

「ッ!?」

 

 

 すっごい叫び声が聞こえた気がして、バッ!と身を起こす光牙。

 

 冷や汗がダラダラつたっている。なんか一夏が気になっていたら、聞こえてきたのだ。

 

 

「……違う、よね。今の」

 

 

 なんか顔芸全開の男も見えたので、どうか今の叫び声が一夏と関係ありませんように、と祈りつつ光牙は目を閉じるのだった。

 


 
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