No.763046

IS ゲッターを継ぐ者

第一話です。

2015-03-08 14:40:22 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:888   閲覧ユーザー数:865

〜千冬side〜

 

 砂浜で倒れていた少年を学園の医務室に運びこんだ私。

 

 初めに運び込んだとき、何故男がいるのだと騒いだ奴等がうるさかったが、人としての当たり前に男も女もない。倒れていた人を助けるのは常識だ。

 

 そいつらを睨み黙らせ、少年は医務室に運び込まれていった。

 

 幸い医務室の人間は私の知り合い。あいつはサバサバしていて差別などしない人間で助かった。

 

 検査兼治療が済み結果を聞くと、少年の命に別状はない。今はただ意識を失っているだけだという。

 

 まずはホッとしたが、それとは別に気になることを医務室のそいつは言っていた。

 少年の体についてだ。

 

 少年の体の骨の硬さや、筋肉の量は常人を遥かに越していて、そして何より日常生活では有り得ない無数の傷跡のようなものが刻まれていていたそうだ。

 

 私も後でその傷というのを見たのだが、見た瞬間に思わず唖然としてしまった。同時に本能的に感じ取った。この少年は、戦いに身を置いていたのではないかと。

 

 モンド・グロッソで優勝した私も、勿論血の滲む様な鍛練はしたが、あそこまで傷跡が残る程まではやっていない。

 

 そして更に驚くべき事に少年のはめていたガントレット。あれはどうやらISらしい。ただし、どうやっても外れなかったが。

 しかしそれは男がISを持っている。もしかすれば、今の常識がひっくり返るかもしれん事態かもしれない。

 

 砂浜で倒れていた事。凄まじい肉体に傷跡。謎のIS。

 

 だが一番引っかかっているのは、少年の顔を見た時から感じていた事だ。

 

 あの顔……私の中では『あい『』と重なってしょうがない。

 

 まさかとは思う。非現実的だが、それを信じている自分もいるような気がする。

 

 それらの真実を明らかにしたいが、まずは少年が目を覚まさなければならない。

 

 それまで、せいぜいあいつらにこの事を話すか話さないかを考える位で待つしか出来ないのだ。

 

 世間ではブリュンヒルデなどと慕われているこの私……。

 

 もっとも、そんな呼び名など全く意味がないのだがな。

 

 

〜千冬sideout〜

 

 

 

 

 

〜光牙side〜

 

 

「う……ううっ」 

 

 

 重い瞼をゆっくりと持ち上げていく。

 

 意識が覚醒してきて、視界に入って来たのは……

 

 

「知らない天井だ」

 

 

 なんでだかそう呟かないといけない気がした。

 

 体を起こそうとすると、鈍い痛みが走り軽い眩暈がしたけどなんとか起こす。僕の格好は、病院の患者さんが纏う薄青色の服になっていた。ベッドの上に僕はいて、周りはカーテンで遮られている。

 

 カーテンを開けると、薬がたくさん入った棚や隣には自分がいたのと同じベッドがある。薬品の匂いがするし、何処かの施設の医務室らしきだろうか。

 

 

「何処なんだ、ここは……」

 

 

 僕は確かベーオのコクピットで、宇宙空間で戦闘をしていた筈だ。しかしここには重力がある事から、間違いなく地上だ。ベーオも周りにはない。

 

 一体どうなったんだ、號さん達や竜馬さん達、あの戦いは……。

 

 謎が頭に浮かび、左手を顎に当てるとふと違和感を感じた。

 

 何かが左腕にある。

 

 見ると左手首に白、黒、紫のラインがあり、ヒビが入っている腕輪のようなものがあった。

 

 

「うわ、なんだこれ……」

 

 

 思わずちょっと引いた。なんだこの中二病アイテム。中二病だと思われるぞこんなんつけてると……。

 

 いや僕についてるんだけどね。

 

 というかなんで中二腕輪チックなものが? こういうのをつける趣味なんざない。

 

 

「……ゲッター線の仕業か」

 

 

――ギクッ!×3

 

 

 おい擬音発したの誰だ。ゲッター線のせいなの? そうなのか!?

 

 ……とりあえず周りと腕輪を交互に見ながら誰かいないか探す。……誰もいない。

 

 するとプシュッ、と圧縮空気の抜けるような音がして、カツカツ、と誰かが近寄ってくる足音が聞こえてきた。

 

 バサリ、とカーテンが開けらる音がし、振り返ると黒色のスーツをピッチリ着こなした目つきの鋭い黒髪の女性がいた。

 

 この施設の関係者かと僕は思い、声をかけようとしたその時。

 

 女性の方が先に口を開きこう言った。

 

 

「……一夏?」

 

「……………は?」

 

 

 あの、誰ですかそれは。


 
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