No.76297

真・恋姫無双外伝~覇王の願い~星詠編12

真・恋姫無双(魏ED)AS。
12話まできました。
ここから一気に展開が加速します。

11話⇒http://www.tinami.com/view/76148

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2009-05-30 01:45:00 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:8685   閲覧ユーザー数:7658

 

 

 

 

虚ろになる少女。

 

全てが消えようとしている。

 

その存在。

 

その記憶

 

その事実さえも。

 

 

 

―ねえ・・・―

 

 

―私・・・さ、先生と華琳に会えてよかったよ―

 

 

―私に思い出をくれて・・・・―

 

 

―・・・・ありがとう―

 

 

 

それが、自分の運命だと知っても少女の思いは変わらない。

 

ただ、自分に

 

少しでも、自分だけの思い出をくれたことに感謝する。

 

 

 

 

―でも、もう・・・・いいから―

 

 

―もう、私は十分だから・・・・―

 

 

―だから・・・・二人に―

 

 

―思い出を・・・・返すね・・・・―

 

 

―ありがとう・・・・―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―・・・ありがとう・・・―

 

 

 

 

 

―・・・・・さよ・・・・う・・・・な・・―――――。―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12話『皆の思い出』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【薫】「うあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

 

 

 

 

【一刀】「薫!!!」

 

突然の叫び声。

 

たまたま華琳の部屋に向かう途中だった俺は、あわてて薫の部屋へ向かった。

そして、勢いのまま扉をあける。

 

 

【一刀】「な―――っ」

 

そこに薫はいた。

 

【薫】「・・・・・いや・・・・いや・・・・嫌・・・・・・・・い・・・・・やぁ・・・・・・・・・」

 

床に座り込み、自分を抱きしめるように両腕を抱えて。

そして、それ以上に異様なのは

 

薫の体から青白い気体・・・霧といっていいかもしれない。

それがあふれ出ていた。

まるで薫自身が光を放っているかのように。

 

【華琳】「薫!今の声は――――・・・・・っ!」

 

そこに華琳が来た。

走ってきたのだろう。少し息が切れていた。

そして何事かと問いたかったのだろう。

だが、聞けるはずも無い。

目の前で起きている現象を目の当たりにして。

 

何が起きている。

 

それしか思い浮かべることが出来ない。

この状況を経験したことが無い。

 

【一刀】「・・・薫」

 

 

いや、一度だけ。

見たことがあった。

 

俺の・・・・”最初の記憶”

あの神殿で、俺の記憶を消した、あの光。

 

 

【華琳】「これは・・・どういうこと・・・一刀」

 

【一刀】「華琳・・・・」

 

【華琳】「なぜ薫がこんな事になっているの?・・・・明らかに異常でしょう!!?」

 

ドドドド・・・・

 

扉の向こうであわただしい音がする。

 

【霞】「今の声なんや・・・・・・・!?」

 

【秋蘭】「・・・これは・・・・」

 

【桂花】「な、なにこれ・・・」

 

 

異変に気づき、皆が集まりだす。

皆が思うだろう。

なんだこれは。

何が起きた。

当然だ。

俺だってわからないんだから。

ただ薫からあのときの光があふれている。

 

そのことが、俺に可能性を示している。

だが、それは同時に俺達が薫に対して無力であるという証明。

 

 

【一刀】「皆・・・この光には近づいちゃだめだ」

 

【霞】「・・・え?」

 

【秋蘭】「何かしっているのか、北郷」

 

【華琳】「・・・・・・・・」

 

【一刀】「・・・・・・・・」

 

【桂花】「知ってるなら説明しなさい!」

 

【一刀】「・・・・・・・・・」

 

【霞】「一刀!!!」

 

どう・・・言えっていうんだ。

 

どこから、言えばいいんだ。

 

 

 

 

【貂蝉】「なら・・・・私が話しましょうか?ご主人様」

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い・・・・。

 

 

苦しくて、熱くて

 

 

真っ白になったと思ったら

 

今度は真っ暗。

 

 

暗くて・・・・・怖い。

 

 

どこだろう・・・・・

 

 

・・・・

 

 

あれ・・・・なんだろう・・・・。

 

 

真っ暗な中にひとつだけ、小さくだが光を通していた。

底へ向かって歩こうとする。

だが、自分は立っているのか?

歩けばいいのか

泳げばいいのか

飛べばいいのか

わからなかった。

 

だから、手をのばした。

 

あがきと見られても、他にそれに近づく方法がわからない。

 

だから、伸ばした。

 

だが、

 

それは予想とは違い、かなり近いところにあった。

 

容易に手で包むことができた。

 

暖かい、光。

 

 

それに触れた。

 

 

キィィィーーン・・・・・・

 

 

え・・・・・

 

 

光が急に膨れ上がる

 

 

 

そして、膨れ上がった光が自分の中へ流れ込む。

 

 

 

そこで感じたのは、熱。

熱いわけじゃない。

冷たかった。

 

 

そして、目の前ではなく、頭の中に広がる感情の波

これは・・・・別れだ。

寂しくて、悲しくて、愛おしい。

一人ではなく・・・多くの人の悲しい感情。

 

 

そして、それはやがて熱を持ち暖かくなる。

今度は出会い。

楽しくて、嬉しくて、やはり愛おしい。

 

 

その人たちは、出会い、戦って、生き抜いて、そして別れて

今、また再び出会った。

ただ、それを知らないだけなんだ。

なんて、変な人たち。

好きなのに、それを覚えていないなんて。

 

こんなに楽しい思い出を忘れているなんて

こんなに悲しい思い出を忘れているなんて

こんなに愛しい思い出を忘れているなんて

 

 

哀しい人達。

 

 

でも、私は知っている。

ああ、そうだ。教えてあげないと・・・・

これは忘れてていい記憶じゃない。

だから、思い出させてあげないと・・・・

 

 

先生に・・・・

 

 

あれ・・・これも?

 

そこにあるのは別の光。

 

それに触れ、感情を受け入れる。

 

・・・・はは・・・多すぎだよ・・・先生。

 

そして、いつの間にか光は無数と呼べる量となっていた

 

 

こんなにたくさん・・・・・どうやって伝えようかなぁ・・・・・

 

 

・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【春蘭】「な・・・・」

 

【秋蘭】「そんなことが・・・・・」

 

【桂花】「ありえないわ・・・・」

 

【春蘭】「そんなばかげた話、信じられるか!」

 

【貂蝉】「でも、これは事実よ。あの光は意志の力を具現化したもの。いうなれば記憶そのものね」

 

【華琳】「それを・・・・信じろと?」

 

【稟】「そうですね・・・通常ならとても信じられるものではない・・・ですが・・・」

 

【風】「実際に事は起きてしまっていますからね~」

 

貂蝉は、薫についての情報を皆にはなした。

あいつが星詠と呼ばれる存在のこと。

その力。

そして今がどういう状況か。

 

星を見ることで、世界で起きた全ての事象を理解する・・・・それがどうして今の状態へ繋がるのか。

全てを理解する―――

しかし、それは現在だけではないのだ。

遠い過去、近い未来。全てを知り、理解し、予測し、それを今起きていることとして限定する。

全ての可能性を、一瞬で理解する。

予知とも言えるかもしれない。

 

だが、それは一度にそれだけの量の情報を記憶し、処理できればの話。

当然人間にそんなことが出来るはずも無い。

 

そして、貂蝉が示した、最悪の可能性。

処理不能なほどの記憶に、自と他の境界をわすれ、自我の崩壊。

そして、正史に近づいたといえるこの世界でも変えられない絶対原則。

ここは・・・・俺が生み出した世界。意思・・・記憶が全てをつなげる世界。

自我が失われ、自らをなくしたものがどういう結果に繋がるのか・・・・・

 

 

 

 

 

【春蘭】「だが、昨日は無事にすんだのではないのか?」

 

【貂蝉】「そうねん、おそらく覚醒が完全じゃなかったからでしょうけど」

 

【一刀】「今回は・・・2度目だ。それに・・・」

 

 

俺は華琳のほうへ目をやる。

 

【華琳】「・・・・・・なにかしら」

 

【一刀】「華琳と、出会ってしまったからな」

 

【華琳】「・・・・どういうこと?」

 

【貂蝉】「仲達ちゃんのその能力の引き金・・・つまりきっかけは、曹操ちゃんなのよねん」

 

【春蘭】「・・・・?華琳様がきっかけ?・・・・・わかるか、秋蘭?」

 

【秋蘭】「いや・・・」

 

 

【一刀】「・・・・・・」

 

 

【貂蝉】「・・・・・・・・・・本来なら、仲達ちゃんはこの世に生まれるはずではなかったのよん」

 

 


 
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