PHASE 15 混迷のアスラン
ユニウスセブンの一件で地球には大きな被害が広まった。そしてユニウスセブンの破砕作業をしていたミネルバも地球へと降り、今後の方針を決めかねていた。
-ミネルバ艦内 休憩室-
「これよりミネルバは着水いたします、各員は衝撃に備えるように…繰り返します…」
ミネルバ内にはブリッジからメイリンが艦内放送を用いて着水の事を知らせていた。
「…ミネルバ着水!」
\ザバァーン!!/
外の海の轟音と共に艦内には大きな揺れが襲った。
「…着水完了しました、各員は別命あるまで自由時間とします。繰り返します…」
「…おいルナ、平気か?」
「いつつ…」
「…」
休憩室内にはシン及びにルナマリアとレイがおり、ルナマリアは先程の衝撃に尻餅をついたのであった。
「平気よ…それにしても地球か…」
ルナマリアはシンの手を借りながら立ち上がり、窓から外を見渡していた。
「あれ?雨降ってるの?」
「あっ…本当だな…空は…曇ってるよな…」
「…それはそうとシン、頼まれ事は…?」
「ん…あぁ、実は隊長からお前らあたりに渡しておけって言われてな…」
シンは懐からユニラより渡された紙をルナマリア達に渡した。
「なになに…」
「…成る程な…。」
「何書いてあったんだ?」
「…それじゃレイはこっち?」
「あぁ、先に許可を貰ってくる。」
レイはルナマリアから紙をもらい受けると休憩室から出ていった。
「あっ…おいレイ…!」
「待った待った、シンは着替えて。」
「何に?」
「ジャージとかの…まぁ動きやすいものね、それじゃ第2訓練所に来てね。」
「第2訓練所って…」
「それじゃ、またあとでね♪」
ルナマリアはそう言うとレイと同様に休憩室から出ていった。
「…まぁ、変な事されるよりましか…」
シンはそう呟くと休憩室を後にした。
-ミネルバ艦内 医務室-
「説明しよう!第2訓練所とはMSシミュレーター中心の第1訓練所と異なりスカッシュできたりランニングができたりなどいわば体育館の様なところで端っこに射撃訓練所もあるのだ!」
「ユニラさん、安静にですよ。」
「はーい。」
-ミネルバ艦内 第2訓練所-
「うおおおお!?」
第2訓練所内にはシンの悲鳴とも聞こえる声が響いていた。
「ぐおおおおお!!!」
先程からシンは様々な運動をしていた。
「わぁぁぁああ!?」
内容はランニングやらリフティングやらバスケのスローイングをやっていた。
「ぬわあああ?!」
まぁ…それが後ろから地ならし機が追っかけたり、途中で落としたら爆発したりレイとルナマリアから妨害を受けなければ普通に見えるが。
「どこが普通に見えるんだ!あんたは!?」
「どうしたのーシン、まさかいかれ狂ったんじゃ…」
「そんなわけあるかぁっ!?」
「良かった良かった、それじゃ…ラスト行ってみましょ?」
「うぅ…」
「次は…これね。」
ルナマリアは用具入れから様々な色で4㎝ぐらいのボールとラケット二本とゴーグルを持ってきた。
「はい、これ。」
「ん…あぁ、スカッシュか。それで…何百回を何セット…?」
ルナマリアから手渡されたゴーグルを装着したシンさ虚ろ目でそう呟きながらラケットを手にした。
「そんな事をしたら付き合う相手が可哀想じゃない。」
「俺の心配は…?」
「これは一応罰なのよ?だったら甘んじて受け入れなさい?」
「…まぁそうだけどさ…そういや相手は?ルナがやんのか?」
なおスカッシュは二人一組でやるもので壁に打って返った玉を打ち返し合う競技である。
「そろそろレイが連れて来る筈だけど…」
「そういやさっきからいないな。」
レイは第2訓練所には姿を見せていたが、リフティング当りで姿を消していたのだ。
「…連れて来たぞ。」
まぁそうしているとレイが第2訓練所の出入口から…
「あっ…!」
出てくるその後にアスランが出てきたのであった。
「艦内にこんな設備が…」
「ここは隊長が皆の退屈まぎらわしの為に強く推して、しかも設計とかも担当したんです。」
「…まぁ、相変わらずだな…うん。」
「アスラン・ザラ…!」
「おっ、相手はあのアスランさんか。」
レイからの説明を受けて少し呆れながら辺りを見回すアスランはシン達へと近づいていった。
「それで…ユニラの頼みって聞いてやって来たが…肝心のユニラは…?」
「…!」
「あぁ、隊長なら怪我していて医務室です。」
「…そうか、後で見舞いに行かないとな…」
「それでこれを。」
ルナマリアは懐からユニラが書いた紙をアスランへと手渡した。
「これは…?」
「一応シンへの罰のメモなんですが最後の行の暗号は私にも分からなくて…」
「…これか…………あぁ…そうか…分かった。」
アスランは渡された紙をクシャクシャに丸めて投げ飛ばすと、シン同様にゴーグルとラケットを持ち出して赤いボールを手に取った。
「行くぞっ!」
\パコンッ!/
「へっ!?」
シンはアスランからの玉に反応出来ずに顔に直撃し…
「ふべっ!?」
玉は赤い液体を散らしながら弾けたのだ。
「何だよこれ…って!辛っ!?!」
赤い液体を受けたシンは顔を紅潮させると床へのたうち回った。
「なっ…何!?」
「説明も無しに打つか!?」
「さぁー次だ…」
アスランは今度は薄い赤色の玉を手に取ったのだ。
-ミネルバ艦内 医務室-
「説明しよう!アスランに頼んだのはあの時に一緒に遊んだ二人で遊ぶスカッシュの進化態…名はまだ無いが、壁に当てずに弾き返し合う競技!」
「ユニラさん…安静に…」
「えぇい!まだだ!ルールとして相手がコート内にいれば倒れていようがのたうち回っていようが打ってもよし!さらに今回は罰と言う名目でアスランに二回連続で当てないといけないが、使用ボールは何と当たったら大変なデンジャーボールを…」
「静かに眠りなさい…」
\トンッ…/
女医はユニラの背後にスライドすると首筋に手刀をかました。
「ぐぅ…?!」
-ミネルバ艦内 第2訓練所-
「次っ!」 「痛い!?」
「次ぃ!」 「生卵!?」
「次々!」 「中から鉄球!?」
「さらにもう一発!」 「燃える!?」
第2訓練所のテニスコート上にはスカッシュの格好をしつつアスランがラケットでシンへとボールを当てている図が広がっていた。
「これでっ!」 「ぐわぁぁ!?」
そしてシンは訓練所の壁へと飛ばされた。
「シン…」
「何だか…見ていて可哀想…」
レイとルナマリアは隅の方でその様子をただただ見守っていた。
「さぁ、早くコート内に戻るんだ。でないと打てないだろ?」
アスランはボールをラケットの上で転がしてシンの復帰を待っていた。
「ぐぅ…まだまだ…!」
シンは身体中をカラフルに汚しており、ラケットを握り直してコート内へと戻った。
「よしっ、それじゃ…続行!」
「くっぅ!?」
コート内に戻ったシンは何とかアスランの放った玉を返したのだ。
「これで三回目、だがそれじゃまだ返せる確率は25%!」
「まだだっ!!」
だがその玉もアスランは難なく返し、返ってきた玉をシンは何とか気合いで返せた。
「二ラリーはこれで16%!」
「くぅぅ…!」
だがその気合い玉もアスランは難なく返し、シンへとボールは向かっていった。
「…!」
「これは返せないぞ!」
「シン!?」 「シン!」
「(俺…こんな所で終わるのか…?まだ何も出来ていないで…?)」
シンは近づいて来る玉に対して唖然として突っ立っていた。
「(俺は…俺は…!)うぉぉおおおお!!!」
突然シンは叫び声と共に姿勢を低くしてボールをかわした。
「かわした!?」
「でも返さないと!?」
なおこのスカッシュもどきは来た玉を打ち返さないと後に二つボールを体に受けなければならないルールがあったのだ。
「まだだ!!」
シンは姿勢が低いままボールを追いかけコートの端へと立った。
「これで!どうだっ!」
そしてシンはラケットを両手持ちに切り替え、ボールをアスランへと素早く打ち返したのであった。
「何!?んぉっ!?」
だがアスランはその玉に対応できずにボールは顔面に直撃し、黄色い液体を散らしながら弾けた。
「アスランは…!」
「まだコート内よ!」
「まだ行ける!」
シンは素早く自分のコート脇のボールが山積みの段ボールから何の色か形容しがたい色のボールを取り出した。
「これでっ!終わりだぁ!」
そしてそれをアスランの顔面めがけて打ち、見事によく分からない色の液体を撒き散らした。
「はぁ…!はぁ…」
そしてシンは力を出し尽くしたのか膝をついてその場に座り込んだ。
「凄いじゃない、仮にもあのアスランを倒すなんて…!」
「…それより、アスランはあれで大丈夫なのか…?」
「…」 「…」 「…」
三人の視線の先は大の字で倒れたアスランが横たわり、しかも口元を中心に色んな色の液体が撒き散らされているので何かと生々しいというか殺伐としていた。
「…どうしよ?」
「俺に聞くな。」
「…でもこのまま放っておくわけにはな…タオルとかでちゃんと拭いとこう。」
「…それから回りのものと足元もね…」
そしてシン達はアスランに付着した汚れと訓練所全体を掃除した。
「ふぃ~、終わった終わった…」
「…何で俺達も掃除手伝っているんだ?」
「…まぁそうだけど、いいじゃない。」
「…そういうものか?」
「そういうこと、早いところ隊長のところに報告しに行こうぜ?」
「…(ムクッ…)」
「そうね、データも提出しないとね。」
「データ?何のだ?」
「さっきの罰の達成時間とか…最高連続回数とか…色々ね。」
「…そんなの測っていたのかよ…」
「…?」
話し合いながら出入口へと向かうシンとルナマリアであったが、突然レイはその場で立ち止まった。
「…なんだ?」
そして振り返るとそこには…
「うわっ!?」
「何っ!?」
「レイ?!」
出入口付近まで進んでいたシンとルナマリアは声をたてたレイの元へと駆け寄った。
「どうしたんだよ、キャラに無いような声を上げて…」
「…!シ…シン…!?」
「…げぇ!?アスラン!?」
三人の前には手を前にだらんと伸ばしこちらを睨んでるように見ているアスランがかいた。
「…まさか…あのボールがゾンビになる玉だったり…!」
「あっ…あり得ないと言いたいけど…あの隊長が多分作った物だったらあり得る…!?」
「…くっ…来るぞ?!」
三人は半歩退くとそれぞれ構えたのであった。
「………………。」
「「「…!」」」
「…おはによう」
………。
「…。」 「…。」 「…。」
………。
「……へっ?」
-ミネルバ艦内 医務室-
「ん~……これは…」
「…。」
医務室内は包帯を頭部に巻き付けてベッドに腰掛けているユニラとその隣の椅子に座るアスランにすぐ側にいるシンとルナマリアがおり、ユニラはアスランマスクを付けさせていた。
「確かさ…黄色いボールと何色か形容しがたい色のボールを当てたんだよな…?」「はい、確かに…」
「ふぅん…だったら片方は…あれだな、カットスターだな多分。」
「カットスター?」
「そうだ、カットスターはある意味一種の麻痺薬なんだ…」
「でも麻痺というか…普通におかしくなっていますが…?」
「あー、それなんだけどな…」
「?」「?」
「まぁつまるところ、アスランが言いたいことがきれぼしっておかしくなるのよ。」
「…?」 「…?」
「…まぁ、つまりはだな…おかしくなるし自律的なことも出来なくなっちゃうってこと。」
「いや…見ればわかりますって…」
「というか…直せないんですか…?」
「……」
「…?」 「…?」
「…あるよ?」
「何で疑問形?」
「それにさっきの一間は…?」
「…ロード時間だよ、さてと…(ゴソゴソ…)これだな…よっと…」
ユニラは自分の寝ていたベッドの中からやたらデカイハンマーを取り出した。
「なっ…何ですか…そのハンマー…?」
「ん?ショック療法ってやつだこれは効くぞ~」
「何だか隊長楽しんでいない…?」 「ていうか止めないと…!あんなのを受けたら…!」
「おっとそうはいかん崎っと。」
ユニラは懐からチェスの駒ようなスイッチを押すとシンとルナマリアの足元から拘束具のような輪が2人を捕えた。
「わぁ!?」 「きゃっ!?」
「大人しくしてろって、俺も病み上がりだからこうしないと…ついでに眠らせておくか…?」
「何を…!…スゥ…」 「…zzz…」
そしてユニラはスイッチの底を開いてシンとルナマリアにそこから出てきた煙で眠ってしまった。
「…さてとアスラン、痛いけどお前の為なんだ…許せよっ!」
ユニラはハンマーを振りかぶって横に振り、それを受けたアスランは吹き飛んで壁に突き刺さった。
\バゴォォン!/
「ぬぉっ!?」
「…ふむぅ…やりすぎか…?」
「…。(ムクッ…)」
壁から抜け落ちたアスランは少しうずくまってから、ユラリと立ち上がった。
「おっ?気分は如何かなアスラン?」
「…。(カツ…カツ…)」
「…ぇ?」
アスランはユラユラと歩きながらユニラの目の前に立った。
「…アスラン?」
「如何かな…って…イタイワッァァァ!!」
叫び声と共にアスランは跳躍、そして体を回してユニラへと回し蹴りを食らわせた。
「ふごっ!?」
そして食らったユニラは吹き飛んでアスランが埋まった壁の反対側へと突き刺さった。
「ハァ…ハァ…オッ…オレヴァ…」
そして着地したアスランはそのまま膝から崩れ落ちた。
-ミネルバ艦内 休憩所-
「んで…結局は…?」
休憩所にはソファーに腰かけてコーヒーやストレートティーを飲んでいるレイとシンがいた。
「あぁ…隊長は」
「喋れなくなった…」
「そうか…」
「まぁ、あれで隊長も少し反省してくれれば…」
「いや、それはない。」
「…だよなー、はぁ…」
「それで、アスランは?」
「ん?あぁ、あっちは何か前よりかはましにおかしくなったな。」
「…?」
「…行ってみれば分かるって。」
「そうか、なら行ってくる。」
レイは立ち上がって空缶をくず籠に入れると入口に向かった。
「……レイ…!」
「…なんだ?」
「ミネルバどこに向かうんだ?これから?」
「それならアスハ代表を送る為にオーブへと…」
「…そうか…」
「……シン…」
「…いいよ、気にしてないしな…」
「…分かった、それじゃ行ってくる…」
レイは今度こそ休憩所から出て行った。
そしてシンは空缶をくず籠に投げ入れると腰掛け体勢から寝転がり体勢へと姿を変えた。
「…オーブか…」
そしてミネルバは曇天の空を見上げてオーブへと進んでいた。
-次回予告-
ルナマリア「空からの破片で地上は混迷していた、その最中ミネルバはオーブへと寄航した。でもシンは見当たらないし隊長はメイリンとどっか行っちゃうし、レイは平常運転の一人訓練…私はどうすりゃいいのよ!? 次回Gundam SEED another Destiny PHASE 16 ジャンクション シンが戻って来たら女装させて遊ぼうかな?」
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