No.761168

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第565話

2015-02-28 00:24:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1933   閲覧ユーザー数:1670

~鳳翼館~

 

「に、兄様……?一体何を……」

リィンの問いかけを聞いたエリスは戸惑い

「ほう?一体どういう事だ?」

セルナート総長は興味ありげな表情で尋ねた。

 

「エイドスさんは先程自分自身の”判断”で”女神として”リベールに協力する事を決めたと仰いました。ならば”七の至宝”を人々に授けた話と矛盾している気がするのですが。」

「あ…………」

「確かに言われてみればそうね。”歴史の流れ”を守るという事を口実にしてリベールに協力する事を”自分自身で判断”しているわね。」

リィンの説明にアリサが呆けている中、サラ教官は口元に笑みを浮かべて頷いた。

 

「へえ?まさか”空の女神”に意見する怖いもの知らずがいるとはねぇ?」

「感心している場合やないやろが……」

「……だけど、リィンさんの言う事が一理あるのも確か。」

「エイドスさ―――いえ、”空の女神”様。御身は先程の彼の発言をどう思われますか?」

口元に笑みを浮かべているワジを見たケビンは疲れた表情で指摘し、リースは複雑そうな表情をし、ルフィナは真剣な表情でエイドスを見つめて尋ねた。

 

「…………フフ、及第点と言った所ですね。ですがそこに気付き、女神である私相手に怯む事無く指摘した事を評して、エレボニアにチャンスを与えるべきですね。」

その時エイドスは微笑みながらリィン達を見つめ

「!!それじゃあ……!」

「メンフィルとクロスベルとの会談に参加し、二国に情状酌量を認めるように意見をして下さるのでしょうか……!?」

エイドスの答えを聞いたリィンとセレーネは明るい表情をした。

 

「いくつか条件があります。」

「え……じょ、条件ですか?」

「一体どのような内容なんだい?」

エイドスの答えを聞いたアルフィン皇女は戸惑い、オリヴァルト皇子は真剣な表情で尋ねた。

 

「まず一つ。私が”ハーメルの悲劇”を自作自演で行ったエレボニア帝国のフォローを一切しない事を受け入れる事です。あの件は一人の人として……そして”空の女神”としても絶対に許せません。当然、情報操作等をして誤魔化す事も許しません。勿論その情報操作の中には皇帝に非はないという情報操作も入っていますよ。」

「それは…………」

「………………」

「ま、それは仕方ないよね。」

エイドスの言葉を聞いたラウラとユーシスは複雑そうな表情をし、フィーは納得した様子で呟き

「まあ、どの道”戦争回避条約”を守る為に世界中に公表しなければならないから別に言われなくてもするんだけど、あの件は一部の人達の暴走と”結社”の”白面”の仕業なんだからちょっとくらい大目に見てボク達エレボニア帝国の事も助けてよ~。」

「ミリアムちゃん……さすがにそれは図々し過ぎですよ。」

「君な……少しは遠慮ってものを覚えたらどうだ?」

不満げな表情で言ったミリアムにクレア大尉は不安そうな表情で指摘し、マキアスは呆れた表情で呟いた。

 

「混乱が訪れてもそれは今まで”ハーメルの悲劇”を隠蔽し続けて来た貴方達エレボニア帝国の自業自得です。その混乱を乗り越える事もリベールとハーメルの人々に対する”償い”にして私―――”空の女神”からの”天罰”だと思って下さい。」

「”ハーメルの悲劇”を公表した時に起こるかもしれないエレボニア帝国内の混乱が”空の女神”である貴女の”天罰”ですか……」

「やれやれ………またエレボニア帝国が乗り越えなければならない問題ができてしまったね。それも内戦や二国との外交問題よりも大きな問題が。」

「うん……でも、それは本来なら12年前に乗り越えるべき問題だったから仕方ないよね。」

エイドスの話を聞いたガイウスは複雑そうな表情をし、疲れた表情で溜息を吐いたアンゼリカの言葉にトワは悲しそうな表情で頷き

「ハア……七耀教会が崇めている空の女神がこう言っているんだからどうせ七耀教会もフォローしてくれないんだろ?」

「当然だ。我ら七耀教会の真の主たる”空の女神”の意向こそが七耀教会(われわれ)にとって何よりも優先すべき事だからな。」

疲れた表情をしたトヴァルに視線を向けられたセルナート総長は静かな表情で答えた。

 

「二つ目は現エレボニア皇帝ユーゲント・ライゼ・アルノールが退位する事です。」

「え……」

「な―――――」

「ユ、ユーゲント陛下が退位って……皇帝の位から退く事じゃないか!?」

「そんな事になったらエレボニア帝国はまた荒れるぞ!?それに何でユーゲント陛下が皇帝の位から退かなければならないんだ!?」

エイドスの口から出た信じられない条件にアルフィン皇女は呆け、オリヴァルト皇子は絶句し、マキアスは表情を青褪めさせ、トヴァルは怒りの表情でエイドスを睨みつけて問いかけた。

 

「”ハーメルの悲劇”を利用した戦争――――”百日戦役”を起こして他国であるリベールに多くの被害をもたらした事に加えて内戦勃発、そして他国であるメンフィルまで巻き込み、その結果メンフィルの逆鱗に触れてしまった事によって自国を滅亡の危機にまで陥らせるという多くの不祥事を起こしてしまった皇帝が全てが解決した後に皇帝の座についている方が国が荒れると思うのですが。それにそれらの責任を全てユーゲント皇帝に押し付けてユーゲント皇帝が責任を取る形で皇位から退けば民達の怒りはある程度収まると思いますよ。」

「そ、それは…………」

「………………」

「待ってください!王政の国は”皇”がいないと成り立ちません!」

エイドスの説明に反論できないトワは悲痛そうな表情をし、クレア大尉は辛そうな表情をし、リィンは真剣な表情で反論した。

 

「ユーゲント皇帝の跡継ぎはいないのですか?例えばオリヴァルト皇子。貴方はエレボニア皇家の方なのでしょう?」

「”庶子”である私に皇位継承権はない。皇位継承権があるのはセドリックとアルフィンだ。」

「アルフィン皇女殿下はリィンに降嫁するからアルフィン殿下の皇位継承権は消滅する為、唯一の皇位継承権があるのはセドリック皇太子殿下だけになるが……」

「幾ら何でもセドリック殿下が皇位を継ぐのは早すぎるぞ。」

「下手したら政治能力が未熟である事を弱味に取られて、貴族達に利用されるかもしれないね……」

セドリック皇子が皇帝になるのはまだ早い事を理解していたラウラとユーシス、アンゼリカは重々しい様子を纏って呟いた。

 

「?まだ13歳のレン皇女が領主としての仕事を立派に務めているのですから、レン皇女より年上のセドリック皇子では無理なのですか?確かセドリック皇子はアルフィン皇女の双子の弟ですからレン皇女より年上のはずですよね?」

「レ、レン姫を比較対象にするって……」

「確かにレン姫は13歳という若さでありながら領主としての仕事を務めているが……」

「そもそも比較対象が間違っているし。」

「ハハ、レンちゃんはチートの塊やからなぁ。」

「あのねぇ……正直才能を言い訳にしたくないけど”殲滅天使”は”天才の中の天才”だから、13歳でも領主として務まるのよ。まだ成長しきっていない普通の皇族ならその年齢で領地経営なんて厳しいし、ましてや皇帝として振舞う事なんて不可能よ。」

心底不思議そうな表情をしているエイドスの疑問を聞き、仲間達と共に冷や汗をかいたアリサは表情を引き攣らせ、ガイウスは困った表情をし、ジト目で呟いたフィーの言葉を聞いたケビンは苦笑し、サラ教官は疲れた表情で指摘した。

 

「…………でしたら、セドリック皇子がエレボニア皇帝の跡継ぎとして成長するまでの間だけメンフィル皇家の方々に皇帝の”代理”を務めてもらったらどうですか?確かメンフィル皇家は優秀な皇族がたくさんいるのでしょう?」

「ええっ!?」

「他国の皇家の方に皇帝の代理を務めてもらうなんてことをしてしまえば、様々な問題が浮上してきますわよ……!?」

「というかそれってもう、メンフィルに隷属したも同然じゃん……」

「下手したらそのままエレボニア帝国が乗っ取られるでしょうね。」

「それにメンフィル皇家の方がそのような前代未聞な提案に応じてくれるとはとても思えません……」

エイドスの口から出た信じられない提案にエリオットは驚き、セレーネは信じられない表情で声をあげ、疲れた表情で呟いたミリアムの言葉に続くようにセリーヌは目を細めて答え、エリスは不安そうな表情で推測を口にした。

 

「リィンさんとアルフィン皇女達の重婚によってメンフィル皇家とエレボニア皇家は親戚同士になるのですから、それを理由にセドリック皇子の教育やメンフィル皇族達に荒れたエレボニア帝国の復興や国家経営の助力を頼んではどうですか?そもそも貴方達は重婚によって三国の皇家の縁が結ばれる事を理由にエレボニアが国として存続できるように情状酌量を求めているのですよね?」

「それはそうだけど……」

「例えエイドスさんの提案に応じたメンフィルがセドリック殿下が成長するまでという条件を守ってくれるかも心配になってきますよね……」

エイドスの指摘を聞いたゲルドは複雑そうな表情をし、エマは不安そうな表情で推測した。

「あくまで”提案の一つ”だと思って下さい。それにどの道エレボニア帝国は今回のような事が2度と起こらないように”国自体を改革する必要がある”と私は思っています。そしてその改革をするからには皇家も相応の責任を取る必要がある…………――――違いますか?」

「そ、それは…………」

「……つまりエレボニアの未来の為にも今までの政治体制を敷いていた父上は必要な―――いや、”邪魔な存在”になるからエレボニア帝国の政治から退場するべきだと言いたいのかい?」

エイドスの正論に反論できないアルフィン皇女は辛そうな表情をし、オリヴァルト皇子は真剣な表情で問いかけた。

 

「ありていに言えば。ユーゲント皇帝が皇帝の座から退く事……それは”ハーメルの悲劇”や内戦勃発等を始めとした”空の女神”である私ですらも許し難い様々な愚かな不祥事を起こしたエレボニアの”皇”であるユーゲント皇帝自身に対する私――――”空の女神”の”裁き”だと思って下さい。」

「……………………」

エイドスの話を聞いたその場にいる全員は重々しい様子を纏って黙り込んだ。そしてリィン達を静かに見回したエイドスは次の条件を口にした。

 

 


 
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