No.761031

熾天使外伝・運命の獅子 番外編・獅子なる守護者

第漆話 獅子と征服王―同盟

2015-02-27 13:01:40 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1557   閲覧ユーザー数:1465

獅子なる守護者 其の漆

 

 

ウルが湯気を立てるカップをウェイバーの前に置く。

面倒くさそうにカップのコーヒーを啜るウェイバーの横では、ライダーがコーヒーを一気飲みしていた。

 

「うむ!苦いが美味いな!この黒い茶は」

「これはコーヒーだよ…。で、ガーディアンとそのマスター…で良いんだな?」

「…ああ、その通りだ。確認させてもらうが、君がライダーのマスターで間違いないんだな?」

 

二人のマスター―雁夜とウェイバーはお互いに認識の齟齬がないかを確認する。

そしてウェイバーは、リビングでテレビを見る二人の少女に目を向ける。

 

「…で、あの二人は?」

「…ショートカットの子が間桐桜、俺の姪だ。そしてポニーテールの子が…」

「咲良・アンク・マクダウェル。僕の妹です」

「…はぁ!?ちょちょ、ちょっと待て、英霊の妹ってことは既に故人だろ!?何でこの場に…」

 

取り乱すウェイバー、そのウェイバーの後頭部をライダーが軽くはたく。

しかし軽く、といってもそれはあくまでもライダーの感覚、ウェイバーは強かにテーブルに顔面を打ちつけた。

 

「落ち着けい坊主」

「へぶぁ!?」

「恐らくガーディアンが召喚系の宝具、スキルを有しておるという事だろう。しかもそれは英霊を召喚できるほどのモノだということだ」

 

そのライダーの発言にウルがぴく、と片眉を上げる。

 

「へぇ、咲良が英霊って分かったんですね。流石は征服王とでも言っておきましょうか」

「余をあまりなめるでないぞガーディアンよ」

 

二体のサーヴァントの圧力にテーブルやカップが震える。

あまりの圧力にウェイバーも雁夜を身を震わせる。

二人の緊張感が限界に達そうとした時―

 

「ウルにーちゃん、顔怖いよー?ほら笑顔ー!にぱーって!」

「…あ、ごめんね咲良。うん、笑顔笑顔」

 

咲良がウルとライダーの間に割って入り、場を和ませる。

彼女の無邪気さにライダーも毒気を抜かれたのか、苦笑しつつ頭を掻く。

 

「まあ、歴戦の英霊とはいえ童には勝てんよな。すまんなガーディアン」

「いえ、僕も挑発が過ぎましたね」

「ほら!おじちゃんも笑顔!」

「お、余か?うむ笑顔だな!がっはっは!」

 

幼さゆえの怖いもの知らずというべきか、咲良はライダーにも臆さず話しかける。

ライダーも持ち前の人当たりのよさで咲良と交友を深めていた。

 

「大丈夫か?ベルベット君」

「だ、大丈夫だ…です。間桐さん」

 

その間に顔を摩りながら復活したウェイバーを雁夜が心配する。

二人のマスターは真剣な顔をしながら話し合いを進める。

 

「…それでベルベット君、同盟の件だが」

「…正直、その提案は魅力的です。僕のライダーも強力なサーヴァントですが、遠坂のアーチャーはそれ以上…。なら二体のサーヴァントで戦うって言うのは戦略的に間違ってないのは分かってます」

「なら…!」

「ですが、アーチャーを打倒したとして、最後にライダーとガーディアンが残ったとしましょう。―ですが」

 

ここでウェイバーは一度言葉を切り、深く呼吸をしてから次の言葉を告げる。

 

「―そちらが裏切らないという保証はどこにもない」

 

雁夜は息を呑む。

確かにそう思うのも無理はない。

自分自身に願いらしき願いはもう無いし、ガーディアン―ウルも願いは無いと言っている。

しかし聖杯は万能の願望機、誰しもが一度は夢想するほどの代物だ。

だが、ここで信用してもらわねば同盟は無いものと思って良いだろう。

 

「…なら」

「なんですか?」

自己強制証明書(セルフギアススクロール)はあるか?」

「…一応は」

 

ウェイバーが懐から古ぼけた羊皮紙を取り出す。

 

「契約しようじゃないか。お互い相手を裏切らず、相手に出来る限り助成する。ただし表向きは敵対関係だ。どうかな?」

「…良いでしょう。ギアスを結んでしまえばお互い契約を破ることは出来ませんから」

 

契約条件を書き込み、二人のマスターはそれぞれ自身の血でサインをする。

これで二人のマスターの間にはギアスが成立、お互いがお互いを裏切ることは出来ないことと成った。

 

「じゃ、これで同盟成立。…よろしくなウェイバー君」

「ええ、お願いします。…カリヤさん」

 

二人はお互い手を差し出して硬い握手を交わす。

そしてその後ろでは―

 

「ほーらどうだ童らよ!余の肩の乗り心地は!!」

「たかいたかーい!ウル兄ちゃんよりもたかいよー!」

「…でも、ウルの方が乗り心地が良い…」

「何ぃ!?余が負けるだと!?」

「…そりゃそんな筋肉ゴリゴリだと硬いでしょうよ」

 

ライダーが二人の少女を肩に乗せていた。

咲良は高さにキャーキャー騒いでいるが、桜は座り心地の悪さに辟易しているようだ。

ウルはそんな三人に苦笑しつつ桜を受け取る。

 

マスター達は呆れながら話しかけようとする、が―

 

―――ドォン!!―――

 

身体の奥に響くような爆発を感じ取り、急いで玄関に向かいドアを開ける。

ウルも音を聞き取ったようで真剣な顔をして二人の後を付いてくる。

さらに後ろからきょとんとした顔のライダーと咲良、無表情の桜が付いてきた。

 

「…あれは…?」

「魔力で編んだ煙だな…。冬木教会の方角だ」

 

チカチカと煌く煙は明らかに魔力を混ぜて放たれたものだ。

魔力の花火と言ったところだろうか。

それが教会の方角にあるということは、マスターたちへ何か知らしめるべき事柄が発生したということだろう。

 

「あれは我々に関わりのあることか?」

「そうと言えなくも無いんだが…どうしたものかな」

 

ライダーが問うが、ウェイバーは返答に窮する。

仕方ないだろう、何せ聖杯戦争を主催する『御三家』出身の雁夜ですら戸惑っているのだ。

前例の無い事態、恐らくマスター全員へのルール変更や条件付けの類であろう。

 

「…そうだな…ウル、使い魔を教会へやってくれ。感覚共有も忘れるなよ」

「了解です」

「…それが一番でしょうね。僕も使い魔をやります」

「散歩日和で、しかも童らが暇をしていると言うのに…」

 

ぶつくさ言うライダーを尻目にウルとウェイバーは使い魔を準備する。

冬木教会でどんなことが待っているのか、不安に胸中を混ぜっ返しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ファルコン、ナウ》

「うっわぁ!?ベルトがしゃべった!?」

「あ、これが僕の魔h」

「何だこの枠組み!?あ、自動的に切り離されて組み立てられた!何だこの青い小鳥!?え、これがガーディアンの使い魔!?…そういえば異世界の英霊って言ってたな、これが異世界の魔法なのか?」

「そ、そうですけど…でも全員が使えるってわけじゃないですよ、僕は体内にファントムって怪物を飼っていて…」

「怪物!?」

「自身の内に化け物を飼い、尚且つそ奴の力を使いこなすとは…ますます臣下に欲しい逸材だなぁガーディアンよ!」

「…教会は良いのか?」

「みんなたのしそーだね、さっちゃん!」

「…私は、そうは見えないよ…咲良ちゃん…」

 

とても賑やかなライダー&ガーディアン陣営。

この雰囲気が良い影響をもたらすのか、それとも災いを呼ぶのか。

それは未来が見えるものにしか分からないだろう―

大学始まるまでにある程度投稿しておきたい…!!


 
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