No.760926 リリカル龍騎 -深淵と紅狼ー竜神丸さん 2015-02-26 23:30:05 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:2194 閲覧ユーザー数:1675 |
「ガルルルルァッ!!」
「チィ、この犬ッコロが…!!」
オオカミ型モンスター―――ハウルフォレスターの振るう鉤爪をアビスはアビスバイザーで防ぎ、右足で思いきり蹴り飛ばす。ハウルフォレスターは地面を転がった後にすぐ起き上がり、素早い動きでアビスとアリサを撹乱し始める。
「な、何!? 何なの!?」
「バニングス、急いでここから出ろ!! でないとミラーワールドで消滅して死ぬぞ!!」
「はぁ!? ち、ちょっと、どういう事よ!?」
アビスは飛びかかって来るハウルフォレスターを殴り飛ばした後、近くにあるレストランのショーウィンドウに飛び込んでミラーワールドから脱出。アリサは質問を無視された事に苛立ちつつも、アビスに続くべくショーウィンドウに飛び込んで脱出しようとしたが…
-ガシャアァァァンッ!!-
「いったぁ~…!?」
ぶつかった事でショーウィンドウが罅割れ、結果としてアリサは脱出する事が出来なかった。あまりの痛みにアリサは悲鳴にもならない声を上げ、仮面の上からぶつけた顔を押さえ込む。
「~~~~~~……ちょっと二宮、どういう事よ!? 全然出れないじゃない!!」
『お前はここからじゃ無理だ! 最初に来た場所から戻れ!』
「はぁ!? 一番最初にって…」
そこまで言いかけて、アリサはハッと思い出した。ミラーワールドに辿り着いた時、彼女がいたのは月村家の屋敷だった。現在、彼女がいるのはその月村家から離れた位置にある街中の道路。
つまり、急いで月村家まで戻らなければならないのだ。
「ま、またあそこまで戻らなきゃいけないの!? あぁ~もぉ~…!!」
アリサは自分の頭を掻き毟りたくなったが、今は変身している為にそれも出来ない。沸き立つ苛立ちをどうする事も出来ない中、ハウルフォレスターがアリサに向かって飛びかかる。
「グルァッ!!」
「げ、しま―――」
「「シャアッ!!」」
「ガゥッ!?」
その時、真横から飛び出して来たアビスラッシャーとアビスハンマーの二体が、ハウルフォレスターに体当たりを炸裂させた。その拍子にハウルフォレスターは転倒し、二体のモンスターはまるでアリサを守ろうとしているかのようにハウルフォレスターの前に立ち塞がる。
『こっちも出来る限りでサポートしてやる。そこのライドシューターを使え、運転の仕方はバイクとほとんど一緒だ!』
「ラ、ライドシューター? えぇっと……あ、これの事?」
アリサは指示通り、アビスが最初に乗って来たライドシューターまで駆け寄り、その座席に座る。するとアリサの腰部分のⅤバックルに座席シート部分のパーツがセットされ、座席が下がると共にキャノピーも下げられ、ライドシューターの稼働準備が整った。
「と、とにかく今は逃げるが勝ちよ!!」
アリサはハンドルを握り、アクセル全開でライドシューターを走らせる。その後方からハウルフォレスターが後を追いかけようとするが、アビスラッシャーとアビスハンマーがそれを妨害する。
その様子を、とある存在が建物の屋上から見下ろしていた。
『ほぉ…? あの娘にデッキを渡した筈だったが…』
「よし、着いた!」
その後、何とか月村家の屋敷前まで戻って来たアリサ。ライドシューターから降りようとした彼女だったが、その際に自身の右手を見て愕然とする。
「んな!?」
その右手が、シュワシュワ音を立てながら粒子化を始めていた。時間切れが迫っている証だ。
「消滅ってそういう事!? なら早く脱出しないと―――」
「アォォォォォォォォォォォォォンッ!!」
「うげ、もう追いついて来た!?」
アリサの後方から、アビスラッシャー逹を振り払ったハウルフォレスターが遠吠えしながら追いかけて来ていた。その走るスピードが非常に速く、アリサがライドシューターから降りている間にその距離を一気に縮めていく。
「バゥッ!!」
「ちょ、来るな!?」
アリサがハウルフォレスターの爪をかわし、その後ろで月村家の門が真っ二つに切り裂かれる。その切れ味に恐怖するアリサだったが、今は怯えている場合ではない。急いで破壊された門を突破するが、ハウルフォレスターは無慈悲にも再び爪を振るって襲い掛かる。
「も、もう少しで…!!」
「ガルルルルァァァァァァァァッ!!!」
≪SWORD VENT≫
「ギャワンッ!?」
「!」
直後、別方向から一本のアビスセイバーが回転しながら飛来し、ハウルフォレスターの顔に命中。突然の攻撃にハウルフォレスターが転倒する中、アリサはアビスセイバーが飛んで来た方向に振り向く。そこには違う鏡から侵入して来たアビスの姿があった。
「二宮…!」
「早く脱出しろ。でないと消滅するからな」
「わ、分かってるわよ!!」
アリサは屋敷の窓の前まで走り、窓ガラスへと飛びかかる。
「こんちくちょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
結果、アリサは無事に窓ガラス経由での脱出に成功。それを見たアビスは「やれやれ」と溜め息をついた後、グルルルと唸り声を上げるハウルフォレスターの体当たりを回避し、同じように窓ガラスへと侵入するのだった。
その数分後。
現実世界、月村家の中庭にて…
「ほ、本当に大丈夫なの? アリサちゃん」
「だ、大丈夫よぉ~すずかぁ~…」
「まぁ、返事する気力があるなら問題ないだろうよ」
無事にミラーワールドから生還し、ライダーの変身を解除したアリサ。そんな彼女をすずかが膝枕で休ませてあげている一方で、椅子に座っている二宮は膝の上に子猫を乗せたまま、紅茶を飲んで寛いでいる。そしてテーブルの上には、先程までアリサの持っていた無印のカードデッキが置かれていた。
「あ、あのぉ、二宮様。先程のモンスターは…」
「あぁ、ひとまず倒しておいた。だが、まだ問題は残っている」
「良かったです…」
ファリンにディスパイダーを倒した事は知らせたが、二宮はもう一つの問題点を上げるそれは他でもない、ハウルフォレスターの事だ。
「あの狼のモンスター、間違いなく俺かバニングスのどちらかを狙っているだろう。俺はアビスの力があるから対処は可能だが、バニングスの場合だとそうはいかない。モンスターってのは執念深くてな。一度狙った人間は捕食するまでしつこく狙い続ける。たとえ寝ている間もずっとな」
「そ、そんな!! じゃあどうすれば…」
「そこでだ。このカードを持っておけ」
二宮は無印のカードデッキからカードを抜き取り、それをアリサの方に投げつける。アリサは慌ててカードをキャッチし、カードの絵を見る。
「SEAL……封印のカードかしら?」
「そうだ。これを持っている間だけ、モンスターに襲われる事もなくなる。ただし気を付けろ。あくまで襲われなくなるだけで、モンスターがお前を狙わなくなる訳じゃない。お前がそのカードを手離した途端、あのモンスターは即座にお前を捕食しにかかるだろう。仮にモンスターに襲われて逃げ延びたとしても、カードデッキもなしにミラーワールドに引き擦り込まれると…」
「もう助からない。ただ消滅するのを待つだけだ」
「消滅…」
その単語を聞き、アリサだけでなくすずかやファリンも顔が青ざめていく。彼女達が恐怖する中で、二宮は涼しい顔で紅茶を飲み干してからティーカップをテーブルに置く。
「まぁ要するに、そのカードを肌身離さず持ってれば良いだけの話だ。死にたくなければな」
そう言って二宮はクッキーの山が乗った皿から一枚のクッキーを手に取り、歯と歯に挟んでから思いきり噛み砕くのだった。
一方、ミラーワールドでは…
-バキバキバキバキ…-
粉々になっていたディスパイダーの残骸が、一か所に集まり始めていた…
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第6話:逃走