No.76060

真・恋姫†無双~江東の花嫁~(参)

minazukiさん

今回から登場する一刀と雪蓮達のお話です。ここから本格的に本編から変わっていきます?

2009-05-28 20:11:05 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:32418   閲覧ユーザー数:23215

(参)

 

 翌日。

 

 目を覚ました男、北郷一刀は目の前に写る風景に驚いていた。

 

 現代の造りにしてはあまりにも古臭く、何よりも見慣れた電化製品がどこにもない。

 

 天井を見上げても照明がない。

 

 何かのアトラクションなのだろうかと考えていると、入り口の扉が開いた。

 

「目が覚めたようじゃの」

 

 褐色の肌に成熟した体型。

 

 それに口元に一点の痣。

 

 どこか優しげな瞳に一刀は意識を奪われそうになった。

 

「ほれ」

 

 寝台の前までやってきたその女性が差し出したのは饅頭だった。

 

「朝餉としてはちとおかしいかもしれぬが旨いぞ」

 

「はぁ・・・・・・・」

 

 饅頭を受け取ると腹の虫が情けない声を上げた。

 

 一刀は女性から視線を逸らして手に持っている饅頭を一口食べた。

 

「・・・・・・旨い!」

 

「そうか。それは何よりじゃ」

 

 女性は嬉しそうに答える。

 

(それにしても)

 

 饅頭を食べながら一刀は思った。

 

 目の前にいる女性の服装はどう見ても何かのコスプレをしているとしか思えなかった。

 

 何かの体験ツアーにでも紛れ込んでしまったのだろうかと考えたが、どうしてもそれに結びつくような事がなかった。

 

「なんじゃ?」

 

 一刀の視線に気づいたのか女性は顔を近づけてきた。

 

「い、いえ・・・・・・・綺麗だなぁって・・・・・・」

 

「綺麗じゃと?」

 

 女性の表情が硬くなる。

 

 獲物を射るような視線を一刀に向ける。

 

(ま、不味いこと言ったかな・・・・・・)

 

 内心あせっていると、女性は笑い出した。

 

 そして顔を離してなお笑い続けた。

 

「え、えっと・・・・・・」

 

「すまんすまん。ついおかしくなってしもうたわい」

 

 どこが時代劇で聞くような口調で謝ってくる。

 

「儂が綺麗とな。お主、なかなか面白いことを言うの」

 

「す、すいません・・・・・・」

 

「まぁよい。綺麗だと言ってくれた礼に名を教えてやろう。儂は黄蓋というものじゃ」

 

「こう・・・・・・がいさん?」

 

 どこかで聞いたような名前だが一刀は思い出せない。

 

「俺は北郷一刀です」

 

「北郷・・・・・・変わった名じゃの」

 

 そうなのかと一刀は思った。

 

 自分よりも黄蓋という名前の方がよほど珍しい。

「祭~いる?」

 

 開いたままの入り口からもう一人見たことのない女性が顔を覗かせた。

 

「策殿、どうかされたか?」

 

「朝餉の準備が出来たから探していたのよ・・・・・・。あら?」

 

 珍しい物を見つけたかのようにその女性は一刀に近寄っていく。

 

「気が付いたのね」

 

 黄蓋に劣らない、もしくはそれ以上だと一刀は思った。

 

「怪我はしていないみたいね」

 

「ち、ちょっ・・・・・・」

 

 何の断りもなくその女性は一刀の身体を触っては確認していく。

 

「策殿、この者が困っておるぞ?」

 

 助け舟を出す黄蓋に女性は笑みを浮かべて離れる。

 

「私は孫策伯符。貴方は?」

 

「北郷一刀」

 

「ふ~ん、変わった名前ね。さすが天の御遣いかしら?」

 

「天の御遣い?」

 

 何のことを言っているのかさっぱりわからない一刀。

 

「あら知らないの?」

 

 孫策は昨日の怪しげな占い師のことを話した。

 

 それを聞いて一刀は驚きを隠せないばかりか、自分がそんな大層な存在ではないと全力否定をした。

 

「でも空から落ちてきたわよ?」

 

「それは知らないけど、俺はフランチェスカ学園の生徒だ」

 

「ふらん・・・・・・・何?」

 

 孫策は表情を曇らせ隣にいる黄蓋を見るが同じように怪訝そうにしていた。

 

「聖フランチェスカ学園だよ。ここって何かのアトラクションなんだろう?」

 

「せいふらんちぇす・・・・・・・?あとらくしょ・・・・・・?何よ、それ?」

 

「えっ?」

 

 冗談で言っているようではなかった。

 

 それにそれらの発音も微妙に現代離れしている。

 

「もしかして天の国のことかの」

 

「天の国???」

 

 やはり話が噛み合わない。

 

「ふ~ん。天の国か」

 

 その言葉に孫策は興味を持ったようで一刀を見下ろす。

「気に入ったわ」

 

 ひどくおかしそうに笑みを浮かべる孫策。

 

「いい事を思いついたわ。祭、冥琳を連れてきて」

 

「わかった」

 

 黄蓋が部屋を出て行くと、孫策は一刀に近づいてそして、押し倒した。

 

「な、なにを?」

 

「北郷一刀って言ったわよね」

 

「そ、それが?」

 

 まるで自分が獲物になったような感覚に襲われる一刀。

 

「一刀って呼んでいいかしら?」

 

「べ、別にいいけど・・・・・・・」

 

 初対面のそれも美女にいきなり下の名前を呼ばれてドキッとしてしまう一刀。

 

 孫策の瞳が一刀を捉えているように一刀もその瞳に吸い込まれるように視線を外さなかった。

 

「私のことは雪蓮って呼んでいいわ」

 

「し、雪蓮・・・・・・・?」

 

「感謝しなさいね。真名を教えるってことはそれだけの意味があるのだから」

 

「そ、そうなの?」

 

 真名とかどういう意味なのだろうかと思ったが、それよりも間近にある雪蓮のどこか妖艶を感じさせる表情で理性が壊れかけていた。

 

 少し動いただけで唇同士が触れ合う。

 

 そんな距離が続く。

 

 自分の胸には柔らかい感触が溢れんばかりに感じられる。

 

(ま、まずい・・・・・・)

 

 男の本能が暴走を始めてしまいそうになる。

 

 そして限界を超えそうになった時、

 

「し、雪蓮!」

 

 入り口から大声がした。

 

「あら、もう来ちゃったの?」

 

 残念そうに一刀から身体を起こす雪蓮。

 

「あ、あ、貴女は朝から、な、な、何をしてるの?」

 

「何って、天の御遣いの一刀に挨拶よ?」

 

 何処の世界に襲いながら挨拶をするのかと一刀は突っ込みそうになった。

 

 それよりも黒髪の女性が一刀を睨み付けていた。

 

「このような男が天の御遣いであるはずがないでしょう!」

 

「そんなことはないわ」

 

 雪蓮は一刀を横目に黒髪の女性の言葉を止めた。

 

「間違いなく天の御遣いよ」

 

「根拠は?」

 

「根拠?そうね」

 

 わずかな時間考えて、あっさりした口調で雪蓮は言った。

 

「女の勘かしら」

 

「勘?」

 

「そう、勘」

 

 軽そうに聞こえたがそれを受け止めた方は気軽に考えることは出来なかった。

 

 気まずいというよりも居づらい空気に一刀は耐えられなくなった。

 

「あ、あの、雪蓮さん」

 

「は?」

 

「なにかしら?」

 

 黒髪の女性は驚き、雪蓮は普通に聞き返してくる。

「ち、ちょっと雪蓮、どういうことなの?」

 

「なにが?」

 

「この男、今、貴女の真名を呼ばなかった?」

 

「呼んだわよ。それがどうしたの?」

 

 何か悪いことでもしたのかという表情に黒髪の女性は顔を抑えた。

 

「どこの誰だから分からないような者にあれほど真名を教えるのは控えなさいって言わなかったかしら?」

 

「そうだったわね」

 

 まったく気にしていないというよりも人の忠告を聞いていないのかと一刀は思った。

 

 初対面からして今まで一刀が接してきた友人達とはどこか違うものを感じていた。

 

「それでどうしたの、一刀?」

 

「い、いや、俺はどうしたらいいのかなって・・・・・・・」

 

 途中から話に入れなくなった上にどうしたらいいのかも分からない状態。

 

 とにかくも、ここがどこなのか知る必要があったので声をかけた。

 

「そうね。とりあえず、詳しい話は朝餉でも頂きながらでもしましょう」

 

 雪蓮はそう言って部屋を出て行き、それに続いて黒髪の女性が一刀に一瞬、見下して出て行く。

 

「儂らもいこうぞ」

 

 黄蓋に促されて一刀も寝台から出て二人に続いた。

 日本の和食とは違い中華の朝御飯というものに驚きながらも一刀は雪連達に自分の事を話した。

 

 そこで黒髪の女性、周瑜からいくつか質問を受けた一刀は証明するかのように制服のポケットからサイフを出してお金を見せた。

 

「こんな紙切れで物が買えるのか?」

 

 何かの冗談だろうといった感じの周瑜に興味津々に眺める雪連と黄蓋。

 

「それが俺のいる日本という国の通貨だよ」

 

 今見せているお金は一刀の小遣い。

 

 額にしても野口英世が一枚と百玉円が八枚、あとは十円玉二枚と一円玉が五枚だった。

 

「天の国とやらは珍しいものが多いの」

 

 ボールペンを手にとり何度も机に円を書く黄蓋。

 

 雪連は一刀が持っているフランチェスカ学園の生徒手帳を真剣な表情で見ている。

 

「俺にとってはこっちのほうが驚きだよ」

 

 まさか自分が昔の中国、それも三国志の世界にきているとはまだ信じられないといった感じだった。

 

「まだ完全に納得したわけではないが一応、天の御遣いということにしておくわ」

 

 自分達が見たこともないものが目の前にある以上、一刀がこの時代の人間ではないということは一応の理解を示した周瑜。

 

「それでこれからどうするの?天の御遣い殿」

 

「北郷か一刀でいいよ。何だかそれを聞いていると落ち着かないから」

 

「なら北郷殿」

 

 苗字で呼ばれるだけまだましだと一刀は一息ついた。

 

「どうするもこうするのもないよ。どうやって元の自分の世界に戻れるかわからないしね」

 

「なら私達と一緒にいなさい」

 

「雪蓮?」

 

 生徒手帳を手に持ったまま雪蓮は三人を見る。

 

「確かにそれはいい考えね」

 

「どういうことじゃ?」

 

 黄蓋の質問に一刀も気になった。

 

「天の御遣いという名を使えばいろいろと利点というものが生まれるはず。それはつまり孫家再興という我らの思いも成就しやすくるなるということ」

 

「なるほどの」

 

 周瑜の言葉に黄蓋は頷く。

 

 今の彼女達にとってこれほど便利な物はない。

 

「それに、天の御遣いの血を孫家に混ぜることもできるでしょ?」

 

「なるほど・・・・・・「「え?」」

 

 これには雪蓮を除く三人が同じ驚きを覚えた。

 

「雪蓮・・・・・・今何て言ったのかしら?」

 

「だから天の御遣いの血を孫家に混ぜるの」

 

「それって・・・・・・つまり」

 

 一刀との間に子を授かるということ。

「雪蓮、本気なの?」

 

 いつも以上にとんでもないことを言う盟友に周瑜は驚きと困惑が入り混じった声で確認を問う。

 

「私はいいと思うわよ。そうすることで天下に孫家の名が広がるわ」

 

「それはそうだけど・・・・・・」

 

 あの周瑜がここまで困った顔をすると一刀も予想外だった。

 

「ということは儂もそれに与れるのかの?」

 

「そうよ。祭だって問題ないわ。一刀もいいでしょう?」

 

「え?」

 

 それはどう答えるべきなのか、男として一刀は大変困った。

 

 いきなりここにきて子孫繁栄の話されても困惑するばかりだった。

 

「もちろんいいわよね。だってそうでしょう?公認なのだから」

 

「い、いや、だから・・・・・・」

 

 平然としている雪連に慌てる一刀。

 

「はい、決まりね」

 

「雪蓮!」

 

 これでは選択の余地がないのと同じことではないかと一刀と周瑜は思った。

 

「楽しみだわ」

 

 一人、いや黄蓋もどことなく嬉しそうに朝餉を口にしていく。

 

 そんな中で周瑜は一刀に言った。

 

「北郷殿、あの子は一度言ったら間違いなく実行するから気をつけなさい」

 

「・・・・・・」

 

 男としては嬉しいはずなのに素直に喜べない一刀だった。

(座談)

 

水無月:・・・・・・・。

 

一刀 :・・・・・・・。

 

水無月:始まって早々、たね決定ですか?

 

一刀 :お前のせいだろうが!(泣)

 

水無月:いえいえ。気が付いたらこうなっていましたよ。(ニヤリ)

 

一刀 :悪魔め・・・・・・。

 

雪蓮 :何落ち込んでいるのよ?

 

一刀 :雪蓮・・・・・・。

 

雪蓮 :私は嬉しいわよ。ほら本編って私とのそういうこと 冥琳:「雪蓮!」

 

冥琳 :一応、良識というものを持ちなさいね。

 

雪蓮 :いいじゃない。私だって一刀の子供を産みたいし。

 

一刀 :・・・・・・・(真っ赤)

 

水無月:とりあえずこのままだと惚気が始まりそうなので本日はこれまで。次回はいよいよ黄巾の乱!

 

雪蓮 :ほら一刀行くわよ。

 

一刀 :ち、ちょっと・・・・・・。

 

水&冥:・・・・・・・はぁ。

 

祭  :(酒を飲みながら)儂と一刀の赤子か・・・・・・よいの。


 
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