No.760040

真・恋姫無双 ~今度こそ君と共に~ 第7話

またこちらの方が更新早くなりました。

では第7話どうぞ。

2015-02-22 12:54:08 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:9134   閲覧ユーザー数:6614

(「太史子義!」)

 

一刀はその名前を聞いて驚きを隠せなかった。

 

なぜなら、正史では黄巾賊の戦いで母親が世話になった孔融を助け、そしてその後劉繇に仕えると、孫策と劉繇との戦いにおいて孫策と一騎打ちなどして互角に戦い、最終的に捕えられた。だがその能力を惜しんだ孫策が、捕えた太史慈の縄を自ら解いて、将として加えた。

 

その後すぐ劉繇が病死した事を知ると、劉繇の残兵を掻き集めると言って孫策に進言したが、孫策の部下の多くは降伏したばかりの太史慈が早速裏切るのではないかと口々に言っていたが、孫策は太史慈を信じていた。そして太史慈は孫策との約束を守り、無事に兵を掻き集めて帰って来て、死ぬまで呉に尽くしたという信義がある勇将が現れたからだ。

 

一刀は驚きを隠しながら

 

「その太史子義さんが勝負ってどういう事かな?」

 

「さっきそこの立て札見て、お金貰えるのは良いけど私が仕えるのに相応しい主かどうか確認したいなと思ってねー♪」

 

一刀が何故太史慈から勝負を挑まれるのか理由を聞いて納得した。それが良い方向に出れば一刀たちに非常にありがたい物になるかもしれないが、ただ横で聞いて無視された形になっていた雪蓮が怒りの声を上げる。

 

「一刀と勝負?十年早いわよ!まずは私を倒してから言いなさいよ!!」

 

「貴女は?」

 

「私の名は孫伯符、ここの筆頭武官よ!」

 

「貴女が噂の『血濡れの孫策』ね、噂は聞いたことがあるわ。貴女なら相手に取って不足は無いわ。それじゃ貴女を倒せば御使い君と勝負できるわけだね」

 

上から目線で太史慈が既に勝利を確信したような言葉を聞いた雪蓮の顔は、怒りのボルテージが上がってくる。

 

「面白い事言うわね、貴女……」

 

「待て雪蓮!ここは天下の往来、勝負をするなら城内で勝負しろ!!」

 

「クッ!」

 

いきなり斬りつけそうな勢いであった雪蓮を冥琳が止める。

 

「太史子義殿、私の名は周公瑾、ここでは文官筆頭をしている。ここでは流石に場所が悪い。城内に勝負の場を作るので、そちらまで来て貰えないだろうか」

 

「確かにその通りね♪じゃあ案内してよ」

 

冥琳の説明を聞くと太史慈も納得して、街中での戦いは回避できた。

 

「では一刀、私は先に戻るから、後で雪蓮を連れて戻ってきてくれ」

 

そして一旦両者を切り離す為、先に冥琳らは城に戻った。冥琳と太史慈が去った後に一刀と雪蓮も城に戻っていたが、雪蓮の怒りがまだ収まらなかった。

 

すると一刀は雪蓮の頭に手をやり、頭を撫でながら

 

「雪蓮、そんなことで頭にこないの」

 

「ち、違うわよ。こ、これは闘争心を高めていただけよ!」

 

雪蓮は一刀に不意に頭を撫でられた恥ずかしさもあって、顔を赤くして否定する。

顔を赤くしている雪蓮を見て一刀は改めて可愛いと感じながら、一刀は

 

「雪蓮、君は強い。王という心の縛りから外れた、今なら呂布と互角に戦えるかもしれない。確かに太史慈さんも強いけど、雪蓮なら必ず勝つよ」

 

「フフフ…一刀からそう言われると負ける気がしないわ。それに…太史慈、それがあの子の名前なの?一刀の知っている知識?」

 

一刀から「勝つよ」と言われて嬉しかったのか、雪蓮は先程よりも落ち着いた表情に変わった。

 

「ああ」

 

「でも、あの子強いわよ」

 

さっき会っただけ既にある程度の力量を見抜いた雪蓮。

 

「勝つ自信ない?」

 

「それこそまさかよ。一刀にここまで言われたら負ける訳にはいかないわ。そうね…私が勝ったら何かご褒美頂戴!」

 

「ご褒美頂戴って…駄賃をせびる子供じゃないんだから」

 

「え~一刀は私が負けてもいいと思っているの~」

 

「そうじゃないけど、う~ん。そうだな……流石に高価な物は買うとかお金の掛かる事は無理だけど、俺に出来る範囲で何でも言うこと聞くというのはどう?」

 

「一刀、言質は取ったわよ。よし、それで決まり!前言撤回は無しだからね!!」

 

流石に試合前に雪蓮のモチベーションを下げる訳にも行かないから、一刀は仕方無しに褒美の約束をすると雪蓮はコロっと機嫌が良くなり、結果的には気分良く戦いに臨む事ができる状況にはなった。

 

そして城に戻り、錬成場に向かうと既に冥琳と太史慈は到着していた。

「遅かったわね、逃げたかと思ったわ」

 

太史慈は雪蓮を挑発する言葉を投げ掛けるが、

 

「冗談でしょう。何故勝つと分かっている相手から逃げる必要があるのよ、それよりも貴女に勝って一刀との褒美を貰うから♪」

 

雪蓮はもう勝利を確信し、一刀との褒美を貰うと言い切るのを聞いて冥琳は一刀に

 

「一刀、雪蓮の冷静さを取り戻してくれたのは良いが…他に方法は無かったのか?」

 

「直ぐに方法が浮かばなかったからね…まあ雪蓮だから大目に見てやってよ」

 

「ハァ…仕方が無いか」

 

冥琳も一刀の言い分も分かるし、勿論雪蓮の事を色々と分かっていたので、仕方が無いかという表情をしていた。

「ここまで虚仮にされた久しぶりね…手加減しないわよ!」

 

「あら、手加減して私に勝つつもりだったの。それは甘いわよ」

 

逆に雪蓮から眼中に無いと言い方をされた太史慈は先程よりは感情を露わにして、そして雪蓮は不敵な表情をしながらお互いに構える。

 

「お互い無茶な遣り取りは無しで、それでは仕合を開始する!両者構え!…はじめっ!」

 

冥琳の号令で雪蓮と太史慈の仕合が始まった。

 

「はぁあああああ!!」

 

「やぁあああああ!!」

 

お互いの振り下ろした剣が激突すると交互に薙ぎ、斬り上げ、突き等攻撃するがお互いそれを躱す。

 

「やるわね!」

 

「それはこっちの台詞よ!」

 

二人は笑いながら剣を振り合う。それは本気で戦える好敵手が目の前にいる事が嬉しかったのである

 

そして数十合打ち合った後、一旦お互い距離を取った。

 

「……貴女、想像以上に強いわね」

 

「ハァハァ……あんたの強さが半端じゃない事は分かったわよ」

 

二人は応酬を繰り返していたが、徐々ではあるが雪蓮優勢の流れになっていた。本来、太史慈の得手は弓であったが、これまでは自分と比肩する者は一人も存在しなかった為、剣でも無敵を誇っていた。だが今回は雪蓮が相手とあっては、そう簡単に倒せる相手では無く、必然と雪蓮の剣を受ける回数が多くなり、結果的に体力を消耗し始めてきた為、徐々に不利になってきた。

 

だが太史慈の武人としての矜持が、得手が違うとしても負けられない意地があった。

 

バキ!

 

しかし無情にも太史慈の訓練用の剣が雪蓮の攻撃を受けた際に折れてしまい、結果的に雪蓮の勝利が確定した。

 

「勝負あり!」

 

そして審判をしていた冥琳が雪蓮の勝利を告げたのであったが、当の雪蓮は納得した表情では無く……

 

「……こんなの納得できないわ!剣を変えて勝負よ!!」

 

雪蓮はこのような中途半端な勝利が納得できず、引き続き勝負を要請したが

 

「待て雪蓮!お前を満足させる為の勝負じゃない。これ以上の勝負は無用だ!!」

 

「え~~~!」

 

今回、太史慈を採用するか否かの勝負であったので、冥琳はこれ以上の勝負続行を許さなかった。

 

だが太史慈は雪蓮の気風ぶりを気にいったのか

 

「ハハハハハッ、面白いね。あのままやっていれば勝ちが決まっていたのに。ここ気にいったよー。御使い様、一生懸命働くから、ここで務めさせてくれない?」

 

太史慈は一刀に仕官を懇願し、

 

「まぁ、これだけ私と戦えれば問題無いわよ」

 

冥琳から言われ渋々戦いを止めた雪蓮も太鼓判を押したので、一刀は

 

「取り敢えず御使い様というのは勘弁して欲しいな…俺の名前は北郷一刀。姓が北郷、名が一刀なんだけど、異国の出身だから字も真名も無いよ。だから好きに呼んでくれたらいいよ、太史慈さんこれからよろしくね」

 

「私の真名は雪蓮よ。太史子義、貴方強かったわよ。貴女に一刀や私、冥琳の背中を守って欲しいわ。だから私の真名を預けるわよ」

 

「雪蓮とあれだけ遣りあった者は滅多に見た事がない。これなら私も安心して真名を預けてもいいな。私の真名は冥琳だ、よろしく頼む」

 

「じゃ私も改めて――姓は太史、名は慈、字は子義、真名は梨晏(りあん)。私の真名皆に預けるよ。これからよろしくねー」

 

陽気に一刀たちに自己紹介をする梨晏(りあん)であった。

 

すると何か足音がドタバタと聞こえ始めて来て、その音が徐々に近付いてくる。そして皆が足音のする方向に注意を向けたのとほぼ同時に、一人の兵士が姿を現した。

 

そして兵士が一刀の姿を見て、血相を変えて近付き報告する。

 

『街の南、約20里(約10キロ)付近に黄色で統一した賊の軍団を確認!真っ直ぐこちらに進軍中!』

 

また新たな戦いが始まろうとしていたのであった。

 

 


 
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