No.75803 真・恋姫†無双~江東の花嫁~(壱)minazukiさん 2009-05-27 01:11:07 投稿 / 全4ページ 総閲覧数:39492 閲覧ユーザー数:28383 |
(壱)
一人の英傑がこの世を去った。
『江東の虎」と恐れられた孫堅文台その人が乱世の中にあってその命を散らせた。
それは同時に次世代の新しい息吹を吹き込むことになるが今はそうではなかった。
墓前の前で泣きじゃくる少女とその腕に抱かれる赤子。
その横には少女とは対照的に涙一つ流してない成熟した女性。
二人の名前は孫策伯符と孫権仲謀。
そして孫権の腕の中で無邪気に笑っている赤子、孫尚香。
いずれも孫堅が残した遺児達であった。
「策殿」
彼女達の周りには孫堅の家臣達が悲痛な表情を浮かべていた。
「策殿、堅殿は立派な最期じゃったぞ」
「そう」
感情の篭らない声。
孫策にとってそんな言葉はどうでもよかった。
「雪蓮・・・・・・・」
黒髪の女性、周喩は他の誰よりも冷静さを保っていた。
ただし表向きだけだった。
「ねぇ冥琳」
「なに?」
「人ってこんなにも簡単に死んでしまうのね」
生まれてくればいずれ年をとり老いて死んでいく。
ただそれだけなのに自分達の母は老いを感じる前に逝ってしまった。
「ほんとう、あっけないわね」
「雪蓮?」
冥琳には何が言いたいのか分からなかった。
先代の主君が亡くなって誰もが悲しみに沈んでいるのに雪蓮だけは違っていた。
雪蓮にとって母、孫堅は偉大な存在だった。
だからこそこんな中途半端なところで死んだことが悔しかった。
『誰もが幸せに暮らせる世の中を創る』
いつも孫堅の口癖だった。
それを一番共感したのが雪蓮だった。
家族や友人、家臣達に自分達を慕ってくれる民。
誰もが笑顔の絶えることのない幸せな世の中は必ずやって来る。
それを成しえるのは孫家の主君であり自分達の母だと信じていた。
戦になると母と並んで戦う時、自分の身体に流れる血がたぎる。
ただ前を見ていればよかった。
それなのに目の前で馬上から崩れ落ちていく姿を見た瞬間、雪蓮の中で何かが弾けた。
強くて優しかった母の元気な姿は何処にもない。
残されたのは悲しみ。
妹の孫権のように泣くことだってできた。
しかし泣けなかった。
泣いてしまえば何もできなくなってしまう。
自分は強くあらねばならない。
「冥琳、祭」
自分達の方を振り向いた雪蓮の表情に二人は背筋に冷たいものが走った。
そこにいたのは先代と変わらぬ覇気、いやそれ以上を身に纏った女傑がいた。
褐色の肌に鋭い瞳。
これから戦に赴くといった表情だった。
「これから袁術のところに行くわよ」
「「なっ!?」」
予想外なことを言われ二人は驚く。
「今は一刻も早く孫家を立て直す必要があるわ」
「その為に袁術を利用するわけ?」
この国で袁家は名家としてその名を馳せている。
多くの人材、富が集まる。
それを客将、もしくは部下として従うフリをして吸収してこうと考えている雪蓮に二人は賛同した。
「この国は今からもっと荒れるわ。ならその前に少しでも力を取り戻すわ」
母の願いであった『誰もが幸せに暮らせる世の中』を創る。
二人に背を向け墓前にそう誓った雪蓮。
そしてこれが雪蓮と彼女に関わる者達の運命を大きく変えていく出逢いがある。
まだ『天の御遣い』という言葉が広がる前の小さな始まりだった。
(座談)
水無月:はい、とりあえず第壱話をお送りしました。
雪蓮 :あら、ずいぶん早いわね?
水無月:やれば出来る子です。(エッヘン)
雪蓮 :その割にはいきなり母様の死?
水無月:まぁ~これは仕方ないかと・・・・・・。(私も孫堅好きなんですけどね)
祭 :お主、堅殿をないがしろにする気か?
水無月:滅相もございません(ペコペコ)
祭 :まったく、堅殿がどれほど素晴らしいかもっと書くべきじゃろうが(グビグビと酒を流し込んでいく)
冥琳 :祭殿、また飲んでいるのですか!(まったく・・・・・・)
祭 :こやつに説教しておったら喉が渇いてのう(グビグビ)
雪蓮 :祭、私も飲ませて~♪
冥琳 :雪蓮!
祭 :よいではないか(酒の入った入れ物を雪蓮に渡す)
雪蓮 :ゴクゴクゴクゴクっ・・・・・・。ハァ~(満足そうな笑み)
冥琳 :まったく・・・・・・。
水無月:そろそろ時間なので本日はこれまで。次回は一刀出てきてくれるかな・・・・・・・。
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本編開始です。
今回のお話は雪蓮の母、孫堅の死から少ししてからです。