「ハァ────!!」
「まだまだ、甘いよ!」
最近大夫愛紗が復活してきたように思う。
まぁ毎日鍛錬してるみたいだし、今は菖蒲と勝負中。
とはいえまだまだ菖蒲は余裕がありそう。
俺とも今のところ勝負にはなるけど、勝率落ちてきたしなぁ。
なんか悔しいけどまぁこればっかりはしょうが無い。
「一刀も暇なんだねぇ」
「いや、暇じゃないよ? 『今は』暇だけど」
俺はといえば椿花と勝負が終わって、今はすわって見物中。
「椿花って暗器使うけどどこに隠してるの?」
「内緒。探してみる?」
「んー、袖に小刀を隠してるのは知ってるんだけどなぁ」
椿花の腕を握ってみると、やっぱり小刀を仕込んでるらしい。硬い感触がする。
「やぁん、一刀のすけべ」
「一刀様……?」
「ほらほら、よそ見してる暇はないよ!」
椿花の声に愛紗が反応し、菖蒲にツッコミを入れられる。
「そういえば、一刀、武器増えた?」
「ん、一つ増やした」
鍛冶屋に頼んでいた短刀が今朝届いたのだ。
両刃の普通の投擲用の短刀なんだけど、柄の所に鉄輪がついていて、紐が付けれるようになっている。
紐は、例の髪の毛で作った物をつけている。長さは10mほど
「あー、投げた後回収に行かなくてもいいように紐つけたんだ?」
「そうそう、小刀はせいぜい持てて6本ぐらいだからなぁ……。かさばるし」
「私はここにまだ持ってるしー……」
そういってスカートを持ち上げていく。桂花の服とそっくりだけど、ズボンじゃなくて膝丈のスカートなんだよなぁ。
予想はしてたけど、やっぱりそれでスカートなのか。
っていうか目の前でスカートめくるんじゃないよ!?
と、健康的な太腿が俺の前に露わになり、そこにベルトで固定されてる武器がいくつか。
下着がみえそうで見えないのが悩ましい……。
「あー、太腿に針と小刀隠してるのか」
「そそ。……もっとめくってほしー?」
「もちろ……、って何いわすんだよ!」
「あはは、すけべー!」
あ、殺気。
「フン!」
「危ない!? 危ないから!」
振り下ろされた訓練用の偃月刀をどうにか受け止めて。
「白兎、あんまりからかうんじゃないよ、訓練になりゃしない。雲長も気を散らしすぎだよ?」
菖蒲が剣の峰で愛紗の頭をどついた。ゴン、とかって痛そうな音が……。
「し、しかしだな!」
「……、北郷をダシにしてあんたをからかってるのがわからないかねぇ?
ほら、続けるよ、目方を落とすんじゃなかったのかい?」
「そ、それは言わないと!?」
あー、うん。知ってるけど、愛紗が体重落とすのに必死で鍛錬してるのは。
ちなみに鈴々はそんなに鈍ってないし太ってないあたり、ある種理不尽を感じる。……、だから余計に必死なんだろうけど。
「あの脇差しは?」
「椿の事? あれは今部屋においてあるよ。見る?」
「持ってないのか、んー、見たいけど……」
「椿は普段使わないし。こういう言い方は変かもしれないけど、本気で殺しをやる時しか使わないって決めてるの。
椿の花のように首を落とすから椿、っていう銘なんだよ。
見たいなら見せたげるよー、椿花の部屋へご案内~」
せっかくなのでついていく事にした。
椿花の部屋にはいってみると、うん、想像してたのと全然違う部屋だった。
割りと可愛い部屋なのかなーとおもったらそんなことはなく。
テーブルに砥石と小刀がおいてあるし、短弓が壁に立てかけてあるし、武器だらけ……。
椿花は寝台の方に歩いて行き、その枕元に脇差し……椿が置いてあった。
「はい、壊しちゃやだよ?」
「壊さないって……」
それを受け取って、鞘から抜いて刀身を眺める。
刀はあんまり詳しくないけどいい品だと思う。でもどっからどうみてもポン刀だよなぁ……コレ。
右手で握って軽く振ってみるとよく手に馴染む。他人が使い込んだ武器とも思えない。
「ありがと、返すよ」
「所でさー、一刀って」
「ん?」
「男色家?」
「ぶふっ……。いや、それはない、絶対ない、ありえない」
「だってさー、私の部屋に来たらいろいろしたげるーって言ったのに全然こないし、いざ来てみてもそのこと忘れてるみたいだしぃー」
あ、素に忘れてた。
「まぁいいけどさ。でー、部屋に来たわけだけど、色々しちゃう? ほらほら」
そういって、ゆっくりとスカートをめくっていく。
「待った待った!」
「何ー? 自分で脱がせたいの?」
「そうじゃなくて! 俺は礼とか恩とかで抱きたくないの!」
「……、そーなの?」
「ほら、そういうのって好き合ってる同士ですることじゃないか」
んー、と、首をかしげてしばし考えて。
「一刀は勘違いしてるよ。私だって恩だけで体許したりしないよ?
ただ私は、最底辺のはずの私や菖蒲さえ、ゴミじゃなく、人間として対等に扱ってくれる一刀が
その私達を捨て駒とせずに、ちゃんと助けにきてくれた一刀が気に入ってるから、ああいうふうに言ったんだよ。
そりゃ、恩とか礼とかも入ってるけどさ。
私は一刀を慕ってる、コレは嘘じゃないよ。一刀は、私の事嫌い?」
首をゆっくり横に振る。椿花のことは嫌いじゃないし、可愛いと思う。
「じゃあ問題無いんじゃない?」
「んーでも、俺まだ椿花のことよくしらないし」
「一刀も私も将なんだから、明日は無い命かもしれないんだよ?
知るなんて後でいい、少しでも気に入ってるなら抱いてほしいかな。
黒山賊にも他に女の子がいたけど、その子たちもそうだったしね。もしどちらかが死んだら、心残りになっちゃうでしょ?」
確かに、そう言われるとその通りだけど……。
何か椿花は違うな、って思う。桂花達もある意味恋愛関係の思考は現代人に近かったと思うけど、
本当に明日はどちらかが死んでいるかも、という気持ちが強くあるからこうなっちゃうんだろうな。
少しでも気に入ってるなら、か。
「ここまで聞いて断るなら、私の事嫌いだって受け取るからね」
「一つ参考に聞いていいかな?」
「何?」
「逆にさ、俺に抱かれる事で後悔ってしない? ほら、椿花は経験無いっていってたし」
「しない。もし後悔するとしても、やらないで後悔するよりいいと思うよ」
「わかった、ただ、まだ仕事もあるし、今からっていうのは勘弁してほしいんだけど……」
「いーよ、じゃあ今日の夜にもっかい来て。来なかったら……。殺しに行ってやるから」
そういって椿を手に取る。怖い……。目がマジだよ!?
夜になって、ちゃんと行ったよ?
……問答無用でした。
次の日、桂花の服がスカートになってました。
───────────────────────
「ふふふ……。とうとう作ってしまった、悪魔の道具を……」
……、時間は数日前に遡る。
***
「詠、ちょっと相談があるんだけど」
「何?」
「納戸にあるものって勝手に使ってもいいの?」
「納戸ねぇ? あそこにあるものって、ガラクタばかりだから使ってもいいと思うけど。
今度処分して場所をあけようかっていう話しもあるし」
「了解。じゃあ勝手に拝借させてもらうよ」
***
「静里」
「なんですの?」
「暇だったらちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど……」
「構わないですけど、何を手伝うんですの?」
「ちょっと簡単な図面を書いて欲しくてさ」
「じゃあ私の部屋にどうぞですの」
静里の部屋にいって身振り手振りで大きさとか大体説明して……
「それだと大体5尺角ですのね、高さは3尺ぐらいと……」
「そうそう、そんな感じ。ありがと、助かったよ」
「本当に簡単な図面ですのね……」
***
「こんにちは」
「おや、将軍様じゃないですかい、今日は何の御用で?」
この日は街にでて大工屋へやってきていた。
「今度休みの日でいいから大工道具一式貸して欲しいんだけど……。それと、これを作るのに必要な材料を買いたいんだけど」
図面を見せると丁度いい端材があるからと安値で売ってくれた、お世辞にもお金がいっぱいあるとはいえないのでこれはありがたい。
「んー、なんならあっしが行きましょうか?」
「いや、完全に私事で作るから、お金出ないよ?」
「それなら尚更でさ、いつも良くしてもらってるんだからたまにゃあね。
これぐらいのもんなら鼻くそほじりながらでも出来るんで心配いりませんぜ」
「そう? じゃあ、晩御飯を城の食堂でごちそうするってことでお願いしちゃおうかなぁ……。
この手紙見せれば城に入れてくれるから」
で、その翌日、大工頭の人が城にやってきた。
……、職人さん3人を連れて。
「……、お金出ないよ?」
「いいんですよ、こいつらぁ下心全開で勝手にくっついてきたんで」
「下心?」
「糜芳ちゃんに会いたい……」
「司馬懿様を近くでみてみたい」
「荀彧様に罵られたい」
わかりやすいなぁ……。
「まぁ、晩御飯の時にもしかしたら会えるかもね。3人分追加で手配しとかないとな……」
「ほれ、仕事にかかるぞ」
本職4人がかりだと俺の手伝う隙があるわけもなく、結局のんびり横から見てるだけだった。
ちなみに、3人は結局俺と一緒に食事を取ったのだが、それぞれが希望する3人にそれぞれ幸運にも遭遇し、
満足げな表情で帰っていった。ロクに話しもしてなかったけど。
***
てわけで作っちゃいました。掘り炬燵。部屋はそれぞれの管理で改造OKだから勝手に改造しちゃったという……。
いやだって、この時代の暖房器具って火鉢だよ?
寒いんだよ……。あんまりでっかい火鉢は邪魔になるし燃費悪いし。
納戸から持ってきた四角いテーブルの足を切っていい高さにしたのを、床に開けた穴に乗せてと。
ここは前の部屋と違って板張りなのが助かった。
布団は同じく納戸にあった薄めのボロい布団をつなぎあわせてこたつ布団にしたのでコレをかぶせて天板乗せて。
余った布団で座布団も作ったし、あとは底に火鉢をおけば完成。まだ火鉢支給されてないけど。
支給される暖房用の火鉢のサイズは予めはかっといたからこれでちょうどいいはずだし。
きっとこれで仕事が捗るはず……!
まぁまだ使うのはもう少し先になるだろうし、今は板をかぶせて元通りに戻しておこう。
───────────────────────
と、思ってたんだけど、その翌週当たりから一気に冷え込んできたんで、城は防寒対策に大わらわ。
火鉢も当然倉庫から引っ張りだしてきたんだけど、一番小さいのでいいっていったら、心配されて2つ支給された。
ま、いいんだけどさ。本気で寒くなったら外で一つ炊けばいいんだし……。
まぁそんなこんなで、炭ももらったことだし、こたつを出して、火をつけて。
うん、あったかい。やはり悪魔の道具だコレは……。さて、暖をとれるようになったし、仕事仕事と……。
「一刀さんいらっしゃいますの?」
「開いてるよ」
「ちょっと相談が……、何してるんですの? というかその妙な机はなんですの?」
はいってきたのは静里。まぁ、確かに見慣れないと奇妙な机なんだろうなぁ……。
「何してるって普通に仕事……。この机は静里に図面書いてもらったやつだよ。
相談があるなら座ったら? この机がどういうものかは座れば分かるだろうし」
おれがそういって促せば、こたつに足を突っ込んで。
「……すごく暖かいですの」
「やけどしないようにだけ気をつけてよ? それで、相談っていうのは?」
「えっとですね、街の区画整理の予算と、施設の割り振りについて一刀さんの意見が聞きたいですの」
「俺の意見としてはやっぱり市場を優先したいかなぁ、お金が回ればそれだけ税が入ってくるし、まず地盤をしっかりしないとね」
「では次に……」
次々に相談事が出てくるが、ふっと言葉に詰まってちょっと困った顔。
静里、君も悪魔の罠にハマったか……。やっぱり出たくなくなるよなぁ、こたつ……。
「この机、こたつっていう俺のいた所の暖房器具なんだけど、どう?」
「うぅ、暖かくて心地よくて、足が出たくないといってますの……」
「ははは、まぁゆっくりしてくといいよ。静里は今日の仕事は終わってたハズでしょ。」
「じゃあお言葉に甘えさせていただきますの」
───────────────────────
あとがき
どうも黒天です。
作品説明にも書いた通り、今回はボツネタです。
諸事情で本編に入れれなかった話です。
こたつで仕事は絵面がシュールなのでボツネタになったという……。
実際こういうシーンがあってもおかしくは無いので
本編であったと考えてもらっても問題無いかもしれません
さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。
また次回にお会いしましょう。
Tweet |
|
|
27
|
2
|
追加するフォルダを選択
今回は入るはずだったけど入れられなかった話とか、
思いついたのがあとになったとかそういう理由でボツネタになったお話です。
袁紹戦前に入る予定でした。