No.757802

浅き夢見し月の後先 〜 魔法少女まどか★マギカ新編「叛逆の物語」後日談私家版 〜 最終章及び諸設定

DACAENESISさん

No.757621の続きです。これでおしまい。改めまして、読んでいただいた皆様に感謝申し上げます。

2015-02-11 19:58:54 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:770   閲覧ユーザー数:769

 

22.なべて世は事も無し

 

 「ほむらちゃんって、私が思ってたよりもずっと泣き虫だったんだね。知らなかった」

 後ろから声がした。まどかの声。幻聴だ。あり得ない。後ろを振り向いても誰も居ないんだ。分かってる。でも。

 

 上げた頭の視線の脇から、ひょいっとまどかが飛び込んできた。動けなかった私を回りこんで、軽やかに。これは幻視だ。

 「…どうしたの、ほむらちゃん?」不思議そうなまどかの顔。

 

 感情が爆発した。声にも動きにも理性が働かない。きっと私はなにか叫んだと思う。よく覚えてないが、子供みたいにまどかをポカポカ叩いたかもしれない。痛い痛い、ってまどかが困った声を上げたのを薄っすらと覚えているから。最後は泣きながら抱きついてたと思う。嗚咽を堪えてまどかに話しかけようとするが、言葉にならない。言葉どころか声にすらならない。そもそも感情から言葉を紡ぎだすことが出来ない。

 どのくらい時間が経ったろうか。子供をあやすかのように私の頭を撫でるまどかに抱きついて、しゃくり上げる自分が意識できるようになった。

 「ま、まどが、もういっぢゃったかどおもっだ、どうじて…」 涙声で言葉にならない。まどかがくれたハンカチで涙を拭い、ティッシュで鼻をかんでから改めて訊き直す。「まどか、私、あなたがもう行っちゃったかと思った…どうしてここにいるの?」

 「えっとね、何処から話そうかな。私と私の会話は聞いてたかな」

 「う゛ん」

 「あの後、私、消えそうなほむらちゃんを必死で捕まえたの。で、向こうの私と相談したんだ、これからどうしようかって。午後にお話した通り、私は帰らなきゃいけないと思ってたし、向こうの私も同じ理由で私に戻って欲しがってた。

 「けど、二人で話しているうちに、私は、ほむらちゃんが私をキュゥべえから守ってくれてたこと、見滝原やみんなを守ってくれてたこと、私やさやかちゃんやなぎさちゃんを人に戻してくれたこと、キュゥべえのお目付け役になってくれてたこと、そうやって今まで頑張ってくれたことに対して、何もしてあげられてないって気がついたんだ」

 「そんな! あなたが私を助けてくれたことに比べたら…」

 まどかの指先が、私の口をふさぐ。

 「だから、私は私と改めて相談して、円環の理に支障がでないように、ほむらちゃんが作りなおしてくれたこの世界を維持することにしたの」

 

 私は、見当もつかない話に驚いた。「い、一体どうやって?! だって、だって、あなたが戻ってきちゃったら、円環の理がインキュベーターになっちゃうんでしょ?!」

 まどかの『全身全霊が必要』なら、ここにいることが出来るはずがない。しかし、現に彼女はここにいる。

 「実はね、これもほむらちゃんのおかげなんだ」 微笑むまどか。

 「どういうこと?」

 「さっきね、ほむらちゃんを捕まえたときに、ほむらちゃんが繰り返して頑張ってくれた時間を、改めて見つけたの。ここで私、思いついたんだ。ほむらちゃんが繰り返した時間には、私のそれまでの生活が重複して存在してるって。そこで、私はその繰り返した部分の記憶をより分けて、向こうの私に渡してきたの。うーんと、人としてどう過ごしたか、ってのが重要だから、重複したところを渡してきたって云えばいいのかな。

 「それにね、私が帰ってこないと、ほむらちゃん消えちゃうし」

 「え?!」 凄く驚いた。一体どういうことなんだろう。

 「だってね、ほむらちゃん、ソウルジェム自分で割ったじゃない」

 …ああ、そうか。因果の糸がまどかに巻き取られた今、ダークオーブも存在しない。となると、私の存在は今どこに?

 「ほむらちゃんの魂は今、グリーフシードのような感じになってるの。でも、それだと普通の生活は無理だから、私が預かってるんだ。だから、ほら」

 手を上げると、糸のようなものが小指に繋がっているのが分かる。その先を追いかけると、私の小指に繋がる、糸。

 「ほむらちゃんと私は、今、因果の糸で繋がってるんだよ。うーんと、そう、一心同体かな」 照れながらまどかは言い、空を見上げて、続けた。

 「…あのね、ほむらちゃん。最期、私はね、円環の理に戻るんだよ。だから、それまでに、人としていろんな事を経験するようにする。これは、皆のため、私のため、そして、頑張ってくれたほむらちゃんのため」

 空から私に目を移して、まどかは言った。

 「だから、最期までよろしくね、ほむらちゃん」

 「まどか…」

 

 言葉にならないが故に訪れた私のしばらくの沈黙の後、まどかは続けた。

 「…そうそう、あとね、今日ママと風見野にお出かけした時に、買ってきたものがあるんだ」

 「なあに?」

 「これ」

 まどかが差し出したのは、眼鏡。昔、まどかがワルプルギスの夜の前に倒れ、私と約束してから、私がかけることを止めたのとそっくりな眼鏡。

 「あのね、今日、ママの伊達メガネをかけて変装して街に出たんだけど、眼鏡って格好いいじゃない。ほむらちゃんにも似合うかなって、おねだりして2つ買ってもらったんだ」

 これは、予兆だ。私の幸せの。

 「ありがとう、まどか。大切にするわ…」

 

  * * *

 

 「がー! 何で寝坊するんだよ!」

 「あんただって人のこと云えた義理じゃないでしょー!」

 暁美ほむらと対峙したその夜、あたしたちは気がついたら自宅に居た。訳分かんねえ。夜遅かったせいかそのまま二人共寝坊して、このザマだよ。

 「あ、マミさんとなぎさまで!」 二人まで寝坊かよ!

 「おねえちゃんたち、おはようございます!」

 「二人共おはよう! 急ぎましょ!」

 

 教室につくと、いつもの様に鹿目まどかと暁美ほむらは居た。昨日のあの大騒ぎは何だったんだ。

 「あ、さやかちゃん、おはよう!」

 「おはよう、まどか。あのさ…」

 「何?」

 「…いや、何でもない」

 さやかが少し躊躇した後、ほむらの所に行く。

 「先に謝る。昨日はごめん。で、あんたにも謝って欲しいんだけど」

 「不躾ね。でもいいわ。私の我儘で貴方たちにも迷惑をかけたわ。ごめんなさい」

 予想外の素直な反応に、呆気にとられるあたし達。こらえきれずにあたしが訊く。

 「でよ、一体何がどうなったんだ。説明してくれよ」

 「話すと長くなるから、お昼休みに巴マミも交えて説明してあげる。…まあ、一言で言えば、『神、天と地にいまし給いて、なべて世は事も無し』よ」

 

  * * *

 

 時は春、日は朝、

 朝は九時、通学路に走る学生ありて、

 飛行機は雲を引き、小川はせせらぎ、

 神、天と地にいまし給いて、なべて世は事も無し。

 

浅き夢見し月の後先 〜 魔法少女まどか☆マギカ新編「叛逆の物語」後日談私家版 〜 

おしまい

 

 

 

ストーリーの全体的な流れ:

 

 

以下は、作中登場人物諸設定です。

 

まどか:

 なんとなくほむらのことを気にかけてるので、ちょっと変わった子扱いです。ほむらと話しているときは周りには誰も寄って来ません。また、ほむらファンクラブとやりあう程度にはパワフルである、と知る人は知ってます。でも可愛くて愛嬌があるので、皆からは好かれています。勉強の出来は中位ですが、英語は完璧。作中同様落書き好きです。皆からは「ちゃん」付で呼ばれてます。ただ、転校時に言われた「小学生みたい」はちょっと気に入らない御様子。

 此岸に降臨した円環の理としては、存在そのものが力です。目を合わせれば人を支配し、どんな物理攻撃も効きません。究極にして最強。おそらくドラえもんより強い。自覚がない今が一番平和なのかもしれません。

 始まりにして最後に全てを決める、主人公です。あ、そうそう、メガネスキーに目覚めました。

 

ほむら:

 無敵(まどか一家以外には)。円環の理のパワーは、すべての魔法少女の力を悪魔に与えました。悪魔の結界は同じくまどかのパワーを元にしているがゆえに、魔法少女であれば誰でも出入り自由でプライベートに欠けるのが玉に瑕。他にも、後述するインキュベーターの中枢を思い通りに弄くる能力や、他の誰にも見えないものを見る力、などなど、まどか以外の存在とは一線を画する様々な能力を持ちます。なお、織莉子やさやかちゃんが悪魔さんの能力に対して過小評価気味なのは、その能力のケタ違いさ加減に思い至らないせいです。要するに想像できる範囲を越えてます。

 クラス内では敬して遠ざけられていて、目下のところ友人らしい友人は居ません。クラス内での呼び名(≠アダ名)は「お嬢様」。勉強はその力でパーフェクト当たり前ですが、わざと少し間違える程度には世間ずれしてます。根は真面目なので授業をサボったりはしません。PMHQの皆には明言はしませんが親近感は有ります。敬語儀礼などは一般中学生平均。但し、作中のまどママパパに対する呼び方は一貫して「お義母さん、お義父さん」ですw 下級生に幾分過激なファンクラブあり。付きまとわれてちょっと迷惑してます。

 作中最大の難関でした。なんせ強すぎる。何でも出来るようになったこの子をどう追い詰めるかが、この作品のキモでした。

 あと、努力したんですがあんまり悪魔っぽくなりませんでした。頑張ってるほむらはまんまクーほむですね。

 

ドールズ:

 ドールズは普段遊んでいて、ほむらに呼び出されれば仕事するような感じです。大戦争時何人かは深手を負いましたが、所謂現象なので存在そのものは消滅させることは出来ません。明日になればケロッとした顔で遊んでいることでしょう。

 

マミさん:

 後見人は親戚の方で、マミさんはその大学生の息子さんが好きです。でも彼女持ち。彼女さんはいい人で、化粧とかそのへんは彼女さん伝授です。ライバル兼お姉さん的感じ。資産管理などを行う顧問弁護士もいますが、マミさんは幾分苦手です。魔法少女稼業のせいで勉強の出来は中くらい。同学年にもそれなりに友人がおりますが、下級生の教室によく行くのでネタにされてます。あと、作中でも書きましたが下級生のファンクラブが有ります。なぎさちゃんには一目惚れです。

 作中ではほとんど出せませんでしたが、後付俺設定が一般に膾炙してる二次設定と一番かけ離れています。ぼっちキャラ扱いがあんまり好きじゃないのです。あと、後見人とか顧問弁護士とか、マミさんの現実的な身の回りをもうちょっと書きたかったんですが、筋に絡まないのでオミットしました。残念。

 

さやか:

 円環の理に預かっていた記憶を返す前に、ほむらの世界改変に巻き込まれました。両親は共働き設定。

 記憶が徐々に戻る話筋と、キャラ作りのためとはいえ、ちょっとポンコツ気味です。なんとかが死んで治ってきたらまた戻されちゃった感。しかし、「まどマギ界普通の子代表」としてツッコミ役となり作者の代弁をしてくれたので、書いてて楽しかったです。あ、あと、あんまり病気したことないので座薬は初めてでした。

 

杏子:

 さやかの家に居候中設定は「ソウルジェムの中の世界」を引き継ぎます。見ず知らずの子を引き取るとかあんまり無いですから、おそらく、さやかの両親のどちらかが杏子の比較的近い親戚筋に当たるのではないでしょうか。改変後ほむらが従姉妹にしたとかにしておこうかな。

 地頭が良い設定を採用しておりますので、サボり気味ですが成績はいいです。また、世慣れてもおりますので、ここぞという時の敬語は比較的ちゃんと出ます。

 まどマギの良心(?)、安定の杏子ちゃんは二次創作中でも健在です。ロッソ・ファンタズマは言わせたかっただけです。

 

なぎさ:

 叛逆最後のシーンで指輪を嵌めてなかったのを引き継いで、魔法少女でも魔女でもありません。よって、作中でさやかに「お菓子の魔女!」と呼ばれてはいますが、本人は意味を解ってはいません。「ソウルジェムの中の世界」の出来事は夢として記憶しています。さやか同様、円環の理に預かっていた記憶を返す前に、ほむらの世界改変に巻き込まれました。ただ、魔法少女ではないので円環の理のパワーは残っていません。ママはやっぱり病気のままです。治る病気なのかは明言を避けます。

 戦闘に絡ませることが出来ないので、最後の方の出番が殆ど無くなってしまいました。すごく残念。

 

織莉子&キリカ他ゲストキャラ:

 作中では皆さん円環済みです。正直言って経緯はよく分かりませんが、兎も角そういう状態になってます。

 織莉子は、円環の理たるまどかを自らの手で殺めたことにひどく慙愧の念を抱いています。今回の計画の立案者であり、その推進役を自ら買って出たのはそんな理由から。キリカはいつも通りです。あの子の喋りは再現しづれえ。他の子はちょい役です。円環の理が帰ってきた織莉子キリカを慰労するシーンも入れたかったんですけど、最後はまどほむ中心でやりたかったのでオミット。円環の理の前に涙ぐみながら戻ってきて、よしよし頑張ったねって慰めてもらったりしてる感じです。現実はともかく、創作の世界の中くらいは、やっぱり神様たるもの努力した子に報いてやらないとね。

 織莉子は、最初は8話のゲストキャラとして登場させるだけのつもりだったのに、プロットを再構成している内にあれよあれよと黒幕になってしまいました。白いけどな。まどマギ名物白い奴の御託の開陳は今回この子がやりました。白いしな。おりマギは本編以外未読のため、諸設定に幾分違いがあるかもしれませんがご容赦の程を。あと、キリカってまろん=まかろんに似てるよね。

 

QB:

 作中でまどかが語ったように、この作中ではQBは高次元の存在に創造された人工知能のようなものということになっています。端末たるQBは彼らの言うとおり感情はありませんが、それを統括する人工知能的な中核は、長い年月の果てに擬似的な感情のようなものを獲得しています。QBは端末にして中核の分け御霊のようなもので、QBがたまーに感情表現っぽいものを表出するのは、中核が過去に学習した反応です。

 QBシステムは、創造主によってエントロピーの増大を防ぐ術の探索と対処の実行が、本能のごとくプログラミングされています。ところが、悪魔ほむらはこの中核をいじくり、自分の命令を無理やり実行させています。それが故に、本来の意識と違った方向性のことをさせられるQBシステムは謂わばストレスが溜まっており、それが12章のQBのあの懇願と、19章の裏切りに繋がっていきます。

 前記同様、作中でまどかが説明しましたが、このシステムを作った高次元の存在は、エントロピーの増大は不可避と見て、既に別の宇宙に移ってしまいました。QBシステムは、今も、主の居なくなった世界で、かつて彼らにプログラミングされた使命を遂行しようと日々奮闘しているのです。そう考えるとちょっと不憫…でもないか。そもそも叛逆後の世界では、QBが女の子を魔法少女にするのかどうかいまいち良く分かんないですね。

 叛逆でコテンパンにやられてしまったので、今回は黒幕の座からも脱落しました。この話の後にほむらに酷くお仕置きされたと思います。ざまぁ。

 

まどママ・パパ:

 なれ初めは大学サークルでの意気投合。和子先生はその頃には既に友人です。そのまま勢いで学生結婚してしまいました。そこから考えるに、まどかのジジババx2は裕福且つおおらかなようです。最初はパパもお仕事してましたが、ママが有能すぎるので専業主夫化。タツヤが手がかからなくなったら、ママの伝手で再就職を考えており、お荷物にならないように難易度の高い資格を取得するべく勉強中です。比較的お金持ちで、美容室とかでもかなりいい扱いです。

 原作中のまどかがママのあの幾分ガラの悪い喋りを真似してないのは不思議だったので、ママの喋りは少しマイルドにしました。学生結婚設定はまどかの年齢からの逆算です。パパはとにかく新しい台詞を喋らせたかったんです。あと、下世話ながら夜の生活はパパリードです。

 

仁美及び他生徒:

 すいません、仁美の存在を忘れてました。可愛いのに。しかし書き直す必要までは感じないのでそのままです。今回被害者必要ないしね。モブの喋りが軽いのに意味はありません。ミヤちゃんという子は天帝の同名キャラを意識してますがどうでもいいですね。中沢くんは出しそびれました。恭介? 誰それ?

 

以上。

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択