No.756061

【獣機特警K-9ⅡG】トリッカーズと挑戦状(前編)【交流】

古淵工機さん

たまにはこういう、思い切った「真っ向勝負」というか、
ほこたて的な対決もアリなんじゃないか!?
というわけで今回はどっちかというとコメディです。前後編の予定。

■出演

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2015-02-04 22:54:53 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:760   閲覧ユーザー数:724

その日、ラミナ市内ではあるビルのお披露目が行われていた。

 

『こんにちは。私は今、ウェストラミナ駅前から徒歩10分の場所におります。今日は最新のセキュリティを備えたウェスト・ベア・タワーの完成記念式典が行われております』

女性キャスターが元気よくレポートをしているその背後には、完成したばかりの真新しいビル。

人々の視線はこのビルに釘付けだった。

 

『では、このビルの建設を担当した、クマザキ建設の熊崎熊造(くまざきくまぞう)社長にお話をお伺いします。熊崎さんよろしくお願いします』

『いやぁどうもどうも、作業着のまま来ちゃってすいませんですね』

と、名を呼ばれたホッキョクグマ形ファンガーの男性がやってきた。

その様子を、固唾を呑んで見守っていたのは、カナコのマンションに集まっていたトリッカーズの面々。

「随分ハデなビルじゃねえか」

「なんでも、熊崎さんは建築界にその人ありといわれた人らしいよ」

「元はデザイン畑の出身なんですってね」

「へー…」

 

『いやー、それにしても今回のビルの目玉は最新式のセキュリティシステムとの事ですが』

『それはもう苦労しましたよ。ここのところ窃盗やらテロやらが相次いでますから。ま、このセキュリティシステムはネズミ一匹の進入すら許さないってぐらいの意気込みですがね』

 

得意げに語る熊崎の姿を見て、タカトは飲んでいたコーラの缶を握りつぶす。

 

「あ゛ー!!なんか気にいらねえ!!」

「ちょっとタカト落ち着いて!」

そんなことになっているとは露知らず。画面の中では記者団が熊崎に質問を投げかけていた。

『ところ最近世間を騒がせているトリッカーズですが…どうお考えですか?』

『まさか!ウチは優良企業ですし、社員の給料に関しても高く配分しています。養護施設も充実してますし、狙われる理由なんて』

 

「くそぉぉぉぉ…なんだって引っかかる言い方だなあ」

「でもタカト兄ちゃん、この人から黒い噂は聞かないよ。実際人当たりもいい人みたいだし」

「そうそう、子供好きな一面とかもあるみたい。ブログでも家庭菜園やってるいい人じゃない」

「けどさぁ…ああいう言い方はねえだろ、『狙われる理由がない』って何だってんだよ…」

…しかし、次の一言を聞いた瞬間、状況は一変した。

 

『まあ仮にトリッカーズとやらがやってきたとしても、この最新セキュリティは完全防備。盗めるものなら盗んでみろって感じです』

『え!?い、いいんですかそんなこと言っちゃって…』

『せっかくの完成式典、セキュリティシステムの性能テストもかねてこの際やっちゃいましょう。私が丹精込めて作った木彫りの熊をこの建物のどこかに隠してね』

熊崎はそう言うと、自身の手作りである木彫りの熊を取り出した。普通に売り出せば何十万ホーンはくだらないという出来栄えだ。

聞けば熊崎は一流の彫刻家で、自身の持っている庭から木を切り出しては数多くの彫刻作品を生み出してきたのだとか…。

『もっとも、二重三重の警備体制が敷かれてるんです。絶対にぜーったいに盗めやしませんよ、ワーッハッハッハッハッハ!』

その言葉を聞いたカナコはいきなりリモコンのスイッチを操作してテレビの画面を消した。

 

「…か、カナコお姉ちゃん…?」

ミクが面食らったのも当然。今のカナコからはかなり近づきがたい雰囲気が漂っていた。

「ふっふっふ、完全防備のセキュリティですって?絶対に盗めやしないですってえ~~~~…?」

「ね、ねえどうしたのカナコ…」

近くにいたユキヨまでもがカナコを引きとめようとしたが、次の瞬間カナコはテーブルを叩いて立ち上がった。

「上ッッッ等じゃないのっ!!」

「はい!?」

「みんな聞いて!これはあたしたちトリッカーズに対する挑戦状だわ!」

「でも、あの人は悪いことなんてしてないよ…」

「そんなの問題じゃないわ。けど『絶対に盗めやしない』だなんて、言ってくれるじゃない!」

その言葉に、タカトが同調し始める。

「そうか!さっきからなんかムカつくって思ってたらそういうことかよ!!なあユキヨ!」

「確かにそう言われてみれば…なんか悔しいわね…ねぇミクちゃんもそう思うでしょ!?」

「うーん…なんとなくだけど…盗めないものはない、がモットーのトリッカーズとしては悔しいかも…あー、なんか腹立ってきたよ!!」

「それに関しては私も同意見ね」

「やっぱりセリナもそう思うわよねえ…?じゃあ決まりね!!」

カナコは握り拳を作ると、そのまま他のメンバーのほうに向き直って告げた。

 

「ミクちゃん、予告状の準備を。トリッカーズ出動よ…そのケンカ買ってやろうじゃないの!」

「あの熊野郎、ギャフンといわせてやるぜ!!」

 

ここですっかり失念していた方のために説明しておかねばなるまい。

義賊的な扱いを受けているトリッカーズではあるが、彼らはあくまで自分たちの好きなことをやっているだけに過ぎない。

売られたケンカは買う、それがトリッカーズの流儀なのだ。

…その夜、ウェスト・ベア・タワー前。

「まさか完成したばかりのビルにトリッカーズの予告状が届くとはね…」

ビルの周囲の警護に当たるのは、生活警備課の三人…ミウ、テムナ、アードのトリオだ。

「ミウ、ホンマにアイツら来るんかなぁ」

「予告状を出した標的には必ず来る。ミンスターさんもそう言ってたんだし、間違いないよ」

「しかし最新のセキュリティシステムに挑戦しようだなんて、トリッカーズもムチャするよなぁー…」

「熊崎さんもたいした自信だけどね…」

「でもさあ。そんなにセキュリティシステムが立派ならあたしらの役目ないんじゃないの?」

「アホかアード、もしもの時っちゅうのがあるやろがい」

などと漫才を繰り広げていると、熊崎がやってきた。

 

「これはこれはラミナ警察署の皆さん」

「あ、熊崎さん」

「熊崎さん、どう思います?トリッカーズの犯行予告。あなたが丹精込めて作った木彫りの熊を盗むって」

ミウが尋ねると、熊崎は余裕の笑みを浮かべる。

「ご心配なく。トリッカーズなんかに突破されるようなシステムじゃないですよ。盗めやしません、絶対にね」

「うーん…やっぱりあたしらいらないんじゃ…」

「せやからアード、余計なこと言うなや!」

「はっはっは、仲がいいようでwま、どんな方法であれ盗みなどできないってことを証明してみせましょう。最悪セキュリティにかかって脱出不可能になることでしょうなあ…そうなった暁にはどうぞトリッカーズを逮捕しちゃってください」

「了~解!」

一通りの談笑を終えた後で、熊崎は夜空を見据えると余裕の笑みを浮かべた。

「さぁ来るなら来てみなトリッカーズ。絶対に君らには盗めない。わが社のセキュリティは完璧なんだよ…!」

同じ頃、ビルの裏手。

「こちらバニー、ビルの裏についたよ」

「同じくラピヌ。いつでもOKよ」

「ルプスだ。こっちもいつでも行けるぜ」

「こちらヴィクセン。こちらも準備完了よ。どうぞ」

「OK!じゃあ始めるわよ」

と、一言いったあとに、ディアはビルを見つめながら呟いた。

「ふっふっふ…思い知らせてあげるわ。トリッカーズの前にはどんな警備システムもムダだってことをね!」

ついに始まってしまった、最新鋭警備システム対怪盗集団トリッカーズの戦い。

果たして、勝利の女神はどちらに微笑むのだろうか!?


 
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