~一刀視点~
「連合軍がやってきました
距離凡そ5里(約2km)」
斥候の報告を聞いて
「静里、取り敢えずは通常の籠城戦で良いんだよな?」
確認をする
「はい、動きを取るのは霞さんが来てからです」
連合軍が視認できる距離までやって来た
先鋒は劉にハム?いや公か
つまり劉備に公孫瓉が先鋒か
「どちらも勢力としては大きくありません
袁紹に先鋒を押し付けられたのでしょう
先鋒の名誉に目が眩んだ可能性も捨てきれませんが・・・」
静里は軍師なので辛辣な事も”こういう場面では”言う
普段は優しい娘なんだけど・・・
そして劉備の陣営から誰かが出て来る
長い黒髪をやや後ろで結んだ胸の大きな女性だ
年齢は俺と同じ位かな
「汜水関に籠る華雄と北郷に告げる
私は劉玄徳が一の家臣 関雲長
お主達は関に籠るしか能の無い臆病者なのか
そのような臆病者が戦場に出て何の役に立つ
さっさと尻尾を丸めて洛陽に、いや地の果てまで逃げるが良い
負け犬将軍共が」
さんざん挑発をして戻って行った
それにしても、彼女が関羽とは
女性だから美髭でなく美髪なのかね
「おのれ~」
華雄は頭に血が昇っていたが静里が
「作戦は解っていますね
今は鬱憤を溜めていて下さい」
と言って抑えていた
その時、連合軍の後方から喧騒と火の手が上がった
「一刀さん、華雄さん、準備をお願いします!」
俺と華雄は門の所に降りて部隊と共に出撃準備に入る
そして、銅鑼の音が響き門が開くと俺と華雄の両部隊が突撃を掛ける
連合軍先鋒の劉備と公孫瓉の部隊は突如沸き起こった後方での混乱の所為で隊列が崩れている
この連合軍の後方での混乱は霞が連合軍の後方から突撃を仕掛けた為だ
霞の騎馬隊が後方からいきなり突撃を仕掛ければ間違いなく油断していた後方の部隊は大混乱に陥る
その混乱に乗じて霞の部隊は松明を兵糧に投げつける
その後は混乱した敵を薙ぎ払いながら汜水関に入る
俺達は後方の混乱で隊列の崩れた先鋒軍に痛撃を与える
霞が汜水関に到着したら俺達も汜水関に戻る
これが静里が考えた策の全貌だ
「華雄、お前の部隊は公孫瓉に当たれ」
「なんだと!私を侮辱した劉備軍に私は行くぞ!」
華雄は完全に頭に血が昇っている
「怒りで我を忘れるな!
俺の部隊とお前の部隊の配置からしてお前の部隊の正面の公孫瓉に当たるべきだろうが!」
「むっ」
本当は頭に血が昇っている華雄を劉備軍に当てたくなかった
公孫瓉の方がまだ少しは冷静に戦えるだろう
それに三国志演技では”華雄”は”関羽”に倒されている
それを加味すれば華雄を関羽に当てたくなかった
華雄は反論が出来ずに渋々、いや八つ当たり気味に公孫瓉の部隊に突撃した
さて、俺の部隊は劉備の部隊か
混乱した劉備の部隊は俺の部隊の敵では無かった しかし
「てや~!」
気合の掛け声と共に繰り出された攻撃を何とか避ける
「我が名は関羽
この部隊の指揮官だな いざ尋常に勝負!」
戦だから文句は言わないが最初に不意打ちの攻撃をしておいて尋常に勝負も無いもんだ
おそらく、軍師にこの劣勢を覆す為に指揮官を討ち取るように指示されて来たのだろう
「関羽?知らない名だな」
先程の挑発の仕返しに挑発してみる
「そう云えば先程、劉玄徳の家臣とか言ってたがその名も知らん
俺は君主、武将の名には詳しい筈なのだが劉玄徳も関羽も聞いたことが無い
大方、有象無象の君主に仕える愚将だろう
そんな輩が尋常に勝負等と笑わせるな!」
三国志演技の関羽は好きな武将なので心苦しいが此処は我慢
「貴様~!」
結構、沸点が低いんだな
頭に血が昇った攻撃など見切るのは簡単だ
躱して反撃を決めようとしたその時
「うりゃりゃりゃりゃ~!」
と云う掛け声と共に突っ込んで来た者がいた
その攻撃を躱すと攻撃の主は小柄な少女だった
「鈴々の名は張飛なのだ
今度は鈴々が相手なのだ」
この娘が張飛?いくらなんでも・・・いや諦めよう
「鈴々、邪魔をするな!」
「愛紗はさっき鈴々が来なかったら殺られていたのだ
だから今度は鈴々の番なのだ」
兄弟、いや姉妹喧嘩を始めた
~鞘華視点~
「どけっ、どけっ、どっけっ~!」
騎兵が凄まじい勢いで突き進んで行く
誰かは知らないが先頭のさらしを巻いた女性が指揮官なのだろう
騎兵を率いているから張遼かな
その騎兵を見ていた私は
「華琳、ちょっと行ってくるわ」
そう言って張遼(多分)の方へ向かって行く
「鞘華?あの娘そんなに好戦的だったかしら?」
「いえ、むしろ平和な国から来たと言っていましたし、非好戦的かと」
華琳と桂花がなにやら言っているが無視して行く
あの指揮官を捕える事が出来たなら董卓陣営に居る”北郷”の事が解るかもしれない
「ええ~い、雑魚が!
もうちょっと手応えのある奴はおらんのかい!」
そこへ跳躍して斬り込んで行く
キンッ
乾いた音を立てて私の斬撃は防がれたが張遼はその威力で馬から落ちた
と云ってもちゃんと着地したけどね
「へ~結構骨のある奴もおるんやな!」
そう言いながら攻撃を仕掛けて来る
速い!
躱し、逸らすが攻撃が速くて反撃が追いつかない
下手に反撃したらその隙を突かれ、此方が危ない
それならば
横薙ぎの斬撃を屈んで躱しながら回転しての足払いを放つ
張遼はそれを後ろに飛んで躱す
「なんや、その技?」
やはり未知の技には対応が難しいようね
間合いが開いて”間”が出来たので私は示現流の蜻蛉の構えに似た構えをとる
(なんやて、この構えは一刀の・・・)
「はあっ」
私は斬撃を放つ
その斬撃を張遼が躱す
(確かこっから、一刀の攻撃は・・・)
示現流はどうだか知らないが北天一心流はここから切上げに繋がる技が有る これならっ!
だが、私の切上げの斬撃は張遼に防がれた そんな・・初見でこの技を防ぐなんて・・
「あ~、驚いた
なんであんた、一刀と同じ技を使えるんや?」
何ですって!!
一刀?!
一君が董卓軍に居る”北郷”なの?
「ちょっと、どういう・・・」
「張遼様、お急ぎください!」
「ちっ、仕方ないか
嬢ちゃん、勝負は預けるで!」
私の質問に割り込んで来た兵にせかされ、張遼は行ってしまった
一君・・・貴方もこの世界に来てたの?
それも私の敵になってしまったの?
~一刀視点~
姉妹喧嘩に閉口してどうしたものかと思っていたら
「お~い、一刀~」
霞が連合軍を突破してやって来た
「ん?何しとるんや?」
「敵を目の前にして姉妹喧嘩を始めた二人をどうしようか、迷ってた」
霞の質問に正直に答えると
「そんな阿保、ほっといて作戦通りいくで」
「了解」
霞の言う通り、こんな阿呆な事に付き合う義理は無い
俺は馬に跨ると霞に続いて汜水関に向けて駆け出す
「逃げるか!」
「待つのだ~!」
関羽と張飛が後ろで喚いているが、此方を無視して姉妹喧嘩をしてた君達が悪いんだろ?
汜水関に合図を送り、銅鑼を鳴らさせる
”霞と合流したら合図を送るので銅鑼を鳴らしてもらう
銅鑼の音を合図に全軍汜水関に撤退する” 予め、そう打ち合わせてあった
華雄の部隊も汜水関に戻り初日は俺達の勝利と云える結果だった
「はっ、はっ、はっ
連合軍など大した事は無い!」
華雄と兵達は撤退した後、汜水関で上機嫌だ
日が落ちた後、酒盛りをしている者までいる
今日位はいいか・・・
そう思い黙認した
だが、今日の勝利があの事態を引き起こす遠因になるとはこの時思いもしなかった
~あとがき~
静里の策が実行されました
「舞い降りし剣姫」でも使いましたがまた使用です
遂に鞘華が一刀の事に気が付きました
しかし、一刀はまだ気が付いていません
霞が言ってないんです 彼女は良くも悪くも奔放ですから
今日の勝利が引き起こしたあの事態は次回で
更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです
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汜水関の戦い