No.754479

しまのりんち6

初音軍さん

遊園地デート。二人の性格が性格だし滅多に来ないだろうなぁと思いながら書いてみました。二人の関係でこういう場所に行くと気にするのは一皮剥けた志摩子さんより乃梨子のほうが気にしてそうかなって雰囲気を出しました。まぁなんだかんだでイチャイチャするだけの甘々展開なのですがそれでよかったらどうぞです♪

2015-01-29 17:32:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:806   閲覧ユーザー数:806

しまのりんち6

 

 家で過ごすのもいいけれど、外でデートでもしたいなと志摩子さんに提案を

持ちかけてあっさりと了承をもらえた。

 

 高校時代のように一度だけいったテーマパークを思い出して

今度は二人きりで過ごしてみたかった。

 

 寝る時間を削りながらもその日が来るのを楽しみにしながら待っていた。

が、当日。園内に入った後から時期が悪いのかタイミングが悪かったのか

志摩子さんに次々と男たちから声をかけられてくる。

 

「私たちは友達同士遊びに来ているのでそういう話は遠慮願います」

 

 圧倒的美しさと厳しさを兼ねていた志摩子さんが一言断りを入れると

それ以上ナンパしようとする輩はまずいない。それとついでとばかりに

私にも声をかけてくることもあり、魂胆が見え見えでうざいことこの上ない。

 

 そんな私の様子にフフッと可愛らしい笑みを零しながら。

 

「すごいわね、乃梨子。声いっぱいかけられて、モテモテね」

「やめてよ志摩子さん。全然嬉しくないのに」

「それもそうよね、ごめんなさい」

 

 私たちはデートに来ているのだ。ちゃんと、恋人同士として。

なのに友達扱いされるのはどうにも気持ちが悪い。

そんな私の顔を見て苦笑しながら志摩子さんが聞いてきた。

 

「元気ないわね、どうしたの。行く前はあんなに楽しそうだったのに」

「さっきの断るとき・・・友達って」

 

「あぁ、あれは断る時に便利だから使っていたの。

私は最初からデートのつもりでいるわ」

「だったら・・・なんで・・・」

 

 言葉の途中で私の唇に指を当てて止めてくる志摩子さん。

 

「本当のことを言って何か言われたら気分悪いし乃梨子も気にするでしょう?

乃梨子も周囲に敏感な方なのだから言われなくてもわかってると思うけれど」

「うん・・・まぁ・・・」

 

 楽しく来ているのに知らない人間に不必要にカミングアウトして差別的な言葉

浴びせられてそれからまた楽しくできるかと問われるとそれは怪しい。

 

 それはわかっていても感情が複雑な気分になっていて融通が利かなく

なっていた。そんな私に志摩子さんは一つため息を吐いてから

建物の横にある通路に入ると急に力強く私を壁に押し付けるようにして

私の顔の横に手をつけた。

 

 いくら通路の横側にいたからといって人気がないわけではない。

でもそんなことはおかまいなしに志摩子さんは私の顔に近づいてきて

そっとキスをしてきた。

 

 ドクンドクンドクンドクン

 

 周りの音よりも自分の心臓の音しか聞こえないほど頭の中が真っ白になるが

すぐ傍にいる愛する人の匂いを感じていると固まった体がほどよく解れていった。

 

 どれくらいキスをし続けていたかわからない。私には少し長く感じていたけど

周辺の様子の空気は全く変わることはなくみんなそれぞれやりたいことを

やっているように見えた。

 

「乃梨子が思うほど周りは私たちのことなんか気にしないのよ。

乃梨子が望むのなら恋人と一緒に来てるって断ってもいいのよ」

「いえ、志摩子さんの対応で十分です・・・」

 

 そんな細かいことを気にするよりも、キスをじっくり人前でしていたことに

一種の興奮と照れが一気に来て顔がすごく熱くなっていた。

 

 大胆に行動をする志摩子さんにびっくりだけどこれまで自身を表に

出せなかったのかもしれないと思うと少しは納得がいく。

 

 今まで人形のように綺麗だとか、マリア様のようだとか言われていたのは

自分を閉じ込めておいたから。それを私が中から連れ出せたのかと思うと

誇らしく感じられる。

 

「よし、志摩子さん今日は思い切り楽しんじゃおう。

今度は私がリードする番だからね」

「えぇ、楽しみにしているわ」

 

 人がいっぱいいるはずなのにまったく目に入らなくて軽く吹く風に

そのふわふわの髪の毛をなびかせながら微笑んでいる表情はとても

美しくて目を奪われてしまいそうになる。

 

 この人が私の恋人なんだと思うとすごく自慢したくなるし何よりも

大切にしたくなる愛おしくなるって心の底から思える。

 

 その脆くも儚そうに見えた手をしっかりと握って力強く引く。

今ではその手はしっかりと繋がっていて私を不安にさせなくなった。

 

「まずはあそこ行こう」

 

 羽目を一度外した志摩子さんは一気に年相応の人っぽくなって

私と並んで歩けるようになった。

最初はびっくりしたけれど今の志摩子さんの方が私にはより

魅力的な女性に見えるようになった。

 

 そんなことを頭の隅で考えながら、いくつかの乗り物に乗ったり

お店で食事をしたりして楽しい時間を過ごした。

 

 日も傾き場の空気も少しずつ変わっていった。

明るいうちは家族連れが目立っていたけれど、この時間になってくると

カップルの姿が視界の中に入ってくるようになっていった。

 

 ほとんどのカップルが恋人繋ぎをしているのを見ていたら

私も志摩子さんとしたいなぁって思っていると思わずごくりっと

喉を鳴らせてしまう。

 

「乃梨子?」

「志摩子さん・・・繋ご?」

 

 雰囲気で気付かなかったから志摩子さんの裾をちょいちょいと引っ張ると

私に気付いたから聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟くと

志摩子さんは軽く笑って私の手を握ってきた。

 

 周りがしているような繋ぎ方で。

 

「ふふっ、今日の乃梨子は甘えんぼさんね?」

「うぅ…今日の志摩子さんはちょっといじわるかも」

 

「ごめんね、あまりに乃梨子が可愛すぎて」

 

 志摩子さんの頬がうっすらと火照ってるように見える。

それはちょっと照れからくるものなのか、鮮やかな夕焼けの光が照らしているからか。

 

 私は繋いだまま最後の乗り物。定番の観覧車の中へと入ると

わずかな時間だが二人きりの密室となる。

 

 家に帰ればいつでも二人きりの時間は取れるけどそれとは違う独特な雰囲気を

楽しみたかった。さもすれば角度によっては前後の人たちから覗かれるかもしれない

という背徳感も味わえるから。

 

 そんな私の不純な気持ちも全部、志摩子さんには伝わってることだろう。

人には見せない私の子供っぽさも志摩子さんの少し変な所も全部ひっくるめて

愛おしくてたまらないのだから。

 

「志摩子さん…」

「乃梨子…」

 

 ちょうど私達がいる場所が一番高い所まで上がったであろう瞬間に

私は志摩子さんとキスをした。いつもと同じ感覚なのにいつもより濃く感じる

この特別に甘美な時間は…しばらくは頭から離れないだろう。

 

 降りてから帰る間でも二人でちょっとボーっとしていたりして

帰ってきてからは熱がそのまま残っていて再度二人でイチャついたりして

スッキリしたデートはできなかったけれど、長く残る好きの気持ちが心地良かった。

だからこの遊園地デートはすごく良くって、またいつか二人で行ってみたいなって

布団の中で思い傍で寝てる志摩子さんを抱きしめながら私も眠りに就いた。

 

 今日の出来事を今度は夢で見られるようにって願いながら…。

 

お終い。

 


 
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