No.753763

【サイバ】友情が呼ぶ奇跡【交流】

古淵工機さん

2015-01-26 00:25:37 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:928   閲覧ユーザー数:875

晴天おさかなセンター。

この施設の一角にある観光船乗り場に、一隻の船がたたずんでいた。

 

その名も遊覧船スワニー号。遊覧船でありながらマシーナリーという特異な存在だが、

今日はどこか落ち込んだ表情をしていた。

「はぁ…」

彼女が落ち込んでいるのも無理はない。

実は昨日、大嵐に見舞われたせいでスクリューシャフトが折れ、さらにエンジンや電気系統も故障してしまったのである。

幸い沈没は免れたものの、特殊部品を多用しているため修理するとなると時間がかかるだろう。

そうなるとドック入りせねばならず、しばらくの間退屈な日を過ごすことになるのだ。

 

「あーぁ…お客さんとしばらく会えなくなるのかぁ…」

と、スワニー号がため息をついていると、ちょうど昼ごはんを食べに来た高井戸ミミナが声をかけてきた。

 

「どうしたにゅ?なんだか元気ないみたいだけどにゅ」

「あ、ミミナちゃん…。実はね…」

スワニー号は事の経緯をミミナに話した。

「…というわけなの。またドックに入らないといけないから、しばらくみんなに会えなくなっちゃうかも…」

「それは大変だにゅ…スワニー号がいないと寂しいにゅ…」

と、二人そろってため息を付いていたその時、ミミナは突然立ち上がった!

 

「そうだにゅ!ひとつだけいい方法があるにゅ!!」

「いい方法って?」

「ふっふっふ、まぁあたしに任せるにゅw」

そう言うなり、ミミナはどこかへと走っていった。

ドイツ料理店フローエ・ツァイト。ちょうどこの日は六浦真緒がアルバイト中。

「…というわけなんだにゅ」

「なるほど、そんなことがあったのね…」

と、ミミナの話を聞く真緒。

「確かに、修理するとなるとすっごい時間がかかるわね…」

「でも、スワニー号は明日にでも復帰したいって言ってるにゅ」

すると、その会話に入ってきたのが二人。

看板娘のルイーゼ・フライベルクとその娘のアンネ・フライベルクだ。

 

「うーん、そういえば友人に町工場で働いてる子がいるけどその子に頼んでみようかしら?」

と、ルイーゼ。

「でもママ、たしかニコラ姉さんは今…」

と、アンネが口を挟むとルイーゼはとたんに青ざめた。

 

「そうだった!ニコラは今ミュンヘンに里帰りしてるんだったわ!戻ってくるのは来週の水曜…すっかり忘れてたわ!」

「そんな…じゃあどうするんですかルイーゼさん!」

と、あわてる真緒の肩を指でつつくミミナ。

「真緒ちゃん真緒ちゃん、一番大事なこと忘れてないかにゅ?」

「…あっ!?そうだった!!」

と、はっとした真緒はスマホを取り出し、ある人物に連絡を取る。

 

「あー、もしもしマオちゃん?うん、あたし。今ね…、あ、今ヒマなの?うん、それはよかった。悪いんだけどすぐ来てくれないかしら?」

それから数時間後、晴天おさかなセンター。

「じゃーん!腕利きの技術者を連れてきたにゅ!」

と、ミミナが連れて来たのは、六浦真緒の従姉妹に当たるマオ・スペアだ。

「…ちょっと待ってミミナちゃん、その子中学生じゃ…」

と言いかけたスワニー号の言葉を遮ったのは、マオのほうだった。

 

「心配ご無用。このマオ・スペアにまかせてよ!」

「で、でも…私は遊覧船だよ。修理できるの?」

「大丈夫!スペア家に直せないメカなどないんです!」

そう言うなり、マオはスワニー号の船内に乗り込み工具を取り出し始めた。

「じゃぁマオちゃん、あとはよろしく頼むにゅ」

「わかったわ。どうせ明日も休みだし、気合入れちゃうわよー!」

と、張り切るマオの姿に、スワニー号はなぜか安心感を覚えたのだった。

…そして翌日。

晴天おさかなセンターのスワニー号乗り場には、大勢の人が集まっていた。

「もう運航再開ですか、早いですね真砂子さん」

と、しみじみ眺めていたのは風天駅前交番勤務の警察官、ファルシオンⅡ・エッジ。

「正直、あの故障じゃ1ヶ月ぐらいドック入りしててもおかしくないって言われてたのよ」

と、こちらもしみじみとスワニー号を眺めるのは権現さまこと、晴天秋葉社の祭神・秋葉真砂子。

 

「それにしてもよく一日で復活できたよねぇ…ん?」

ふと、真砂子がスワニー号の方に目をやると、群集の目の前にミミナが出てきた。

「ちゅうもーく!スワニー号の運航再開だけど、この子が修理してくれましたにゅ!」

「なんだなんだ?」

「晴天中のミミナちゃんだわ。どうしてこんなところに?」

「ではマオ・スペアちゃん、こちらにどうぞにゅ!」

ミミナが呼ぶと、その声に応じてマオが群衆の前に姿を現した。

「どうも。マオ・スペアです。スワニー号の故障ですが、あたしが修理しちゃいました!」

「でも大変だったでしょ?疲れなかった?」

「大丈夫よ権現さま。あたし機械いじるの大好きだし」

と、マオが話していたとき、頭上から声が聞こえた。

 

「本当に、あの時はもうドックに入らなきゃ駄目かと思ってた。でもマオちゃんが修理してくれたおかげで、私元気になったのよ」

「スワニー号…」

「本当にありがとう。あなたは私の命の恩人よ」

「えへへへ、どういたしましてw」

かくして、一人の少女の手によって、たった一日にして復活を遂げたスワニー号。

彼女はまたいつものように大勢の乗客を乗せ、遊覧航海に向かうのであった。


 
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