序章 2話 夢と出会い
花果山の麓に飛んできた美猴王は生まれ落ちたときの事を思い出しながら頂上へ登って行った
美猴王「ふん、ここは全く変わり映えしないな。ここに、一体誰と出会うと言うのだ・・・・・ん?」
美猴王は愚痴りながらも登って行き頂上、つまり自分が生まれた場所に着くころ目の前に一人の人物が立っていた
美猴王「・・・・お前が貂蝉の言っていた俺の大切な何かなのか?」
??「いや違う。俺は貂蝉と卑弥呼に頼まれて此処にやってきた」
美猴王「貂蝉と・・・卑弥呼?誰だそれ?」
??「お前にここへ来るよう伝えたやつだ」
美猴王「あいつか。それで、お前は誰で何のためにここに居る」
??「俺の名は白沢。一応妖怪の長をやっている」
美猴王「妖怪だと?妖怪は俺が滅ぼしたと思っていたのだがな・・・・」
白沢「それは間違いだな。現にこうして俺は生きている。まぁ、他はどうかわからないがな。俺はこうして人間に溶け込んでいたから何もなかっただけだしな。それに、俺は妖怪の長だが幻獣の一種でもあるからな、少し特別だ」
美猴王「そうか。幻獣で妖怪の長か・・・・それは、かなり強いんだろうな」
白沢「そうでもないぞ。そうだな・・・・・俺の力を表すとしたら、お前が最後に倒した牛魔王と同じくらいだな。(まあ、その後牛魔王の死体が何処かに行ったみたいだから、まだ生きているのかもしれないけど)」
美猴王「ふん、つまらないな。それでお前は此処に何をしに来たのだ?」
白沢「それは、お前のこれからの世話をするために来た」
美猴王「俺の世話?」
白沢「ああ。お前はこれからここで永い眠りに着く。その間、俺は此処を守るように言われたんだ」
美猴王「何故俺は此処で眠らないといけないのだ?俺は此処で誰かと会うらしいから来たはずだが」
白沢「それは、その会うべき人物がまだ生まれていないからだ。そうだな・・・・・約二千三百年ぐらい後じゃないと現れないんじゃないか」
美猴王「何だと!!二千年だと!!何をふざけたこと言っているんだ!!なぜこの俺様がそんなに待たなくてはいけない!!馬鹿らしい、俺はもう行く」
美猴王はイライラしながら踵を返して、筋斗雲に乗るため飛び跳ねようとすると
白沢「本当にいいのかそれで?お前が求めていた物はそんな簡単に諦めれるものなのか?」
美猴王「あ?何だと?」
美猴王は筋斗雲に飛び乗る動作を止め、もう一度白沢を見つめ返す
白沢「此処で諦めたらお前は後悔し続けるぞ。それでいいのか?それにお前は不老なのだろう?たかが二千と数百年寝て待つぐらいできないのか?」
美猴王「言ってくれるな、白沢。お前の言う通り俺は不老だ。だがな、不死じゃない。この意味が解るのか?お前の様に永遠の様に生きれるわけじゃない。俺には必ず死がついて回っている。それならば、不確定なことより、目の前の快楽を求めた方がましだ」
白沢「お前はその手に入れた快楽と言う物に納得がいかなかったのではないのか?そのために、何かを求めるように貂蝉の家で卑弥呼に会い言われた言葉の通り此処へ来たのだろう?」
美猴王「・・・・・・・・」
白沢「お前が求めた物は目の前にあるのだぞ。お前はそれを容易く諦めてこれから何をすると言うのだ?今までの様に、ただ怒りを積もらせながら誰かにぶつかっていくのか?」
美猴王「・・・・・なら、なら俺は如何すればいいんだよ」
白沢「そのために俺がいる。俺は貂蝉にお前の事を頼まれた。俺がお前の求めるもののため出来る限りの補助をしよう。そのためにまずお前は眠れ」
美猴王「俺が求めている物・・・・俺はそれがいまだに理解してない。だが、それでも俺はそれを手に入れることが出来るのか?」
白沢「そうだろうな。しかし、それにも必ず別れが来るだろう。しかし、お前が望むのなら俺はお前にある施しをしてやれる」
美猴王「別れ?・・・・まあいい、了解した。なら、やってやろうじゃないか。白沢と言ったな。よろしく頼む」
白沢「わかった」
美猴王はその場に座り、座禅をするときの様な形を取って目を瞑った
白沢「では行くぞ。ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
白沢は懐から針を一本取り出して全身の氣を針に集中させていき
白沢「(クワ)俺の針が真っ赤に燃える!!勝利を掴めと轟き叫ぶ!!爆裂!!!ゴットスティンガーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
ピシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
白沢が繰り出した針が光を放ちながら美猴王に刺さり、美猴王を段々と石にしていった
白沢「美猴王、お前が生身に戻るときが、お前が求めている物が手に入る切っ掛けが訪れた時だ。それと、お前はそれまでの眠りで一つの夢を見るだろう。それはお前であって、お前えじゃ無いやつがたどった歴史の物語だ。忘れるな、必ずこれからのお前に重要なものになっていくかなら」
白沢が話終わるころには美猴王の前身は完全に石に変わっていた
白沢「さて、まずは石になったこいつを雨風から守るために屋根でも作るか」
そう言いながら白沢、後の世に名医華佗と呼ばれる者は屋根を作る材料集めに向かった
夢
美猴王「これは・・・・・・・・・・」
美猴王が今目にしているのは一人の人間の青年の物語である。この青年は自分の顔と瓜二つである。この物語は、その少年が流星に乗ってある場所に落ちるところから始まった
落ちた場所で気を失っている青年をいかにも見るからに馬鹿そうな青年と同じくらいの年齢の女と一回りぐらい年上そうな女が拾って行った。
馬鹿そうな女「何だか拾ったら面白そうだから」
等とほざきながら青年を拉致って行った。そして城に連れて帰って青年が起きると何やら黒髪の口が達者な女から尋問を受け始めた
美猴王(何をやっているのだこいつは・・・・・何故ヘラヘラとして居られる。この様に好き勝手言われて何故何も言い返さない。何を考えているのだこいつは・・・)
尋問が終わる頃には日が傾き、話は次の日に回されたようで部屋に押し掛けてきた馬鹿そうな女と口達者な女、それと年寄りの女は部屋を出て行った
青年「此処が本当に後漢末期で三国時代なら・・・・・・・」
青年は何やら思いに更けながら、何かを決心したような顔をして眠りについていった
美猴王(俺は何故この様なものを見ている。白沢が言った俺であって俺じゃない者・・・いったいこれに何があると言うのだ)
美猴王が疑問を、不満を抱きながらも物語は進んでいった
青年は周りの女たちと、兵や民たちと語り合い周りを笑顔にしていった。時には戦に加わり策を出し活躍していった。しかし、青年は戦があるたびに嘔吐や顔を蒼くさせ、死んでいった者達を悲しんでいた
そして、時は移り青年はあの馬鹿そうな女と二人である場所に向かっていた
そこは馬鹿そうな女の母が眠る場所らしい
馬鹿そうな女「ねえ、一刀」
青年「何だ、雪蓮?」
馬鹿そうな女「本当にあなたと出会えてよかったわ。こんなにも早く母様に託された呉を取り戻せた。そして・・・・・・」
青年「何言ってるんだよ、雪蓮。それは俺だけの力でやったわけじゃない。冥琳や祭さん、蓮華、皆が頑張ったからできたんだろ?」
馬鹿そうな女「ううん、それでもこんなに早くできたのはきっと一刀が居てくれたおかげよ。それに、皆一刀の事を好いているから頑張れるのよ」
青年「ハハ、それだと嬉しいな。その中に雪蓮も含まれているのか?」
雪蓮「フフ、それはどうでしょうね?」
二人は笑いながら楽しそうに語り合い、そして
馬鹿そうな女(母様、私はこれからも一刀と一緒だったら何でもできるわ。母様の夢を私なりの形で実現してみるわ。だから天から見守っててね)
馬鹿そうな女が最後に墓に向かって何かを祈っていると、近くの藪から
ピュン
グサ
馬鹿そうな女「ウッ」
青年「雪蓮!!」
馬鹿そうな女はどうやら何処かの兵が放った矢に貫かれたらしい。それを見た青年は女に駆け寄った
女「一刀・・・・ヤバイみたい・・・矢に毒が塗られてたみたいで、体が・・・」
青年「雪蓮、急いで城に戻って医者に見せなきゃ!!」
女「ううん、手遅れよ・・・それより、速く城に戻って・・・曹操を・・・」
青年は女を抱えて全速力で城に戻った
城に戻った女は毒に侵された体を無理に動かしながら、敵の大将へ、そして自分の愛する者達に向かって言葉を投げかけた。それはとても熱く悲しい物だった
そして、この馬鹿そうな女は愛する者と妹、大切な仲間たちの前で命のともしびを消した
美猴王(何だこれは・・・・何故、こいつが死ななくてはならない・・・)
この頃には美猴王も何処か変化が起こり始めていた。自分が求めていた物の片鱗を掴みかけていたのである
物語もさらに続いていった
青年が最も愛した女の夢のため、それを叶えるため青年とその仲間達は進んでいった
しかし、死んだ女を青年と同じ、いやそれ以上に愛していた女にある変化が起き始めていた
身体のある場所に病魔が巣くい始めたのである
その口達者な女は誰にも気取られないように警戒をしながら愛した女の夢のため自分の身を犠牲にしながら歩みを進めていった。しかし、青年は口達者な女の僅かな違いに気づき問い詰めたところ
口達者な女「北郷・・・もう私には時間が無い・・・私は雪蓮の想い描いた夢を叶えるため、この命を使いたい。お前にもこの気持ちはわかるだろう?」
青年「冥琳・・・・でも、俺は冥琳に死んでほしくない」
口達者な女「すまない、北郷。私も出来る事なら死なずにお前の子を宿したい・・・しかし私の体はそれを受け入れてくれそうもないのだ・・・・だから北郷・・・私の最後の願いだ。この事は皆には・・・・雪蓮の夢のために・・・」
青年「・・・・・わかった、わかったよ、冥琳。俺も雪蓮が望んだ夢のため、冥琳やみんなのためにやれることは全てやってみせるよ」
女「すまない。それと、ありがとう」
そうして、青年と女は最後の戦いに向かって歩みを進めていった
そして、最後の戦いは無事女の策と皆の力を持って勝利した。それと同時に、女は願いを、思いを次の世代に継がせ、眠るように息を引き取った
女の顔は何かを達成しきったような、いい顔であった
美猴王(死んだのか・・・・俺の、この気持ちは一体何だ・・・・何故涙が出てくる・・・)
美猴王は気づき始めたのである。この気持ちが何なのかに・・・そして・・・・・
花果山
人間は奇妙なことで、時が流れることで美猴王の存在を戦の神や戦闘の神として崇めるようになり、此処、花果山を霊山として扱うようになっていた。そのため白沢は花果山に結界を張り、決まった日以外に人間が入れないようにしていた
ピカーーーーーー
白沢「何!?もう目覚めると言うのか!まだ、後数百年は眠るはずだぞ」
白沢は美猴王が眠っているお堂に向かって走ろうとした時
ガサガサ
白沢「何の音だ?」
白沢が音がした方を見るとひとりの少女が倒れていた
白沢「何故人間が・・・・・まだ、参拝の日では無いはずだが」
白沢は不思議に思いながらも、無視するわけにもいかず少女の元に駆けより少女を抱えてお堂に向かうと
白沢「俺が近づくにつれて光が増している・・・・・いや、俺じゃなくてこの少女か!!この少女はいったい・・・・」
白沢は困惑しながらお堂の中に入ると、そこには完全に生身に戻っている美猴王が居た
美猴王「ここは・・・・」
白沢「如何やら起きてしまったようだな」
美猴王「白沢だったか?それで、ここは?」
白沢「此処は霊山、花果山の頂上にあるお堂の中だ。お前をここで眠らしていた」
美猴王「そうか。それで、俺が起きたということは例の時が来たというわけか?」
白沢「いや、違う。それは後数百年先のはずだ」
美猴王「なら何故、俺は起きたんだ?」
白沢「それは多分この子に原因があると思う」
白沢は抱えていた少女を美猴王に見せた
美猴王「ん?誰だこい・・・・つ・・・」
美猴王は眠っている少女の顔にある女の面影を見たのであった
白沢「ん?どうかしたか?」
美猴王「いや・・・少しな・・・それで、何故そんなガキがこんな所にいる?」
白沢「それは俺にもわからない。石になっているお前が光り出したと思ったら、この少女が倒れていたのだ」
美猴王「そうか。なら、このガキが起きるまで待ってみるか」
少女が眠っている間に、今世界がどうなっているのか美猴王は白沢に聞いてみると
白沢「今は春秋時代と言われているな。お前が寝た時代が今でいう神話時代だから、約千五百年ぐらい眠ったぐらいだな」
美猴王「そうか・・・それで、今の時代は何が起きているんだ?」
白沢「しいて言うなら、人間同士の醜い争いだな。せっかくこの俺があいつらに医療の知識を与えたのに争いなど起こしやがって」
美猴王「そうか・・・人間同士のな・・・(ゴソゴソ)ん?如何やら起きたみたいだな」
白沢「そうみたいだな。おい、君、喋れるか?」
少女は寝ぼけたような顔をしてまだ眠いのか目を擦りながら美猴王を見ると
少女「おとーーーーさん!!」
ギュ
少女は美猴王に抱き付き、「お父さん」宣言をしたのであった
美猴王「は!?お父さんだと?」
白沢「ブフーーー、お、お前がお父さん・・クククク、お父さんだって、はーっはっはっはー」
白沢は腹を抱えて笑い始めた
少女「お父さん、何であの変な格好の小父ちゃんは笑ってるの?」
白沢「おじ!!・・少女よ、俺のどこがおじさん何だい?俺は見るからに若いだろ?」
白沢は自分の年齢の事を棚に上げて自分の見た目から、まだ若いと言い張ろうとしていた。どこの時代もある程度生きた者は歳を考えるようになるのであった
美猴王「ガキ、俺はお前の親父じゃない。それに、俺はお前と初めて会ったはずだが?」
少女「お父さん・・私のこと忘れちゃったの・・・グス・・・お父さん・・・グス・・うぇええええええええええええええん」
少女は子供とは思えない声量で泣き出し始めた
白沢「おい、美猴王。その子を泣き止ませろ!!これじゃあ、まともに話もできん」
美猴王「チッ・・・おいガキ、わかった。俺が悪かった、だから泣き止め」
言葉は悪いが美猴王は少女の頭を撫でてやり落ち着かせていった
少女「グス・・・お父さん・・・グス・・・だよね?」
美猴王「わかった、わかった。そうだよ、お父さんだよ」
美猴王は半ば自棄になりながらそう言った
少女「わーーーい、やっぱりお父さんだーーー♪お父さんだーーーい好き」
少女は美猴王の胸に飛び込み顔を擦り付けたりした
美猴王「は~~、どっと疲れた・・・・」
白沢「それで、その少女はどうするんだ?」
美猴王「さあな・・・おい、お前名前は何っていうんだ?」
少女「も~~、お父さん忘れたの?私の名前は孫 呉、字が武だよ。真名はまだお父さんからもらってないから無いよ」
美猴王「孫ね・・・・もしかして、いや、まさかな・・・・それより、呉。お前はどうして此処に来た。いや、来られた?」
美猴王の質問で、呉は顔を俯かせて何かを思い出して泣きながら説明を始めた
呉「グス・・・みんなで、グス・・逃げてて、お父さんと逸れて・・・・私とお母さん二人になって・・・グス・・・途中でお母さんが私をかばって死んじゃって・・・・私、私・・・頑張って逃げたんだよ、お父さん。グス・・・それで、森で迷って・・・気づいたら、お父さんが居たの」
白沢「迷いながら頂上に来たと言うわけか・・・しかし、普通なら麓の入り口に行くようになっているのだが、この子は何か特別なものでも持っているのか?」
美猴王「そうか、親とな・・・・・・」
美猴王は眠っている間見ていた夢のせいもあって、曲がりなりにも家族の温かさを知ってしまっていた。それを、この少女はこの幼さで全てを失ったのだろうと思うと何か胸が苦しくなっていた
美猴王「・・・・・白沢」
白沢「どうした?」
美猴王「こいつを・・・呉を面倒見ることは出来ないか?」
白沢「お前が決めろ。俺は、お前を支えるだけだ」
美猴王「そうか・・・・なら、呉」
呉「???」
美猴王「これから俺の娘として生きていくか?」
呉「?うん。私はずっとお父さんの子供だよ?」
美猴王「そう言えば、真名と言ってたけど、その真名ていったい何だ?」
白沢「それは、真実の名前と言う意味で人間が使っている物だ」
美猴王「そうか・・・・なら、ちゃんとつけてやるべきだな」
美猴王は呉をじっと見つめ、呉の瞳の中に燃える炎が見えたように感じた
美猴王「よし、お前の真名は紅(くれない)だ」
紅「やった~~真名だ~~。ありがとうお父さん」
白沢「それで、この子を育てるなら美猴王も人間の様な名を持たなくてはいけないだろうが、如何するんだ?」
美猴王「そうだな・・・孫・・孫 空だな。字は適当に後でつけよう」
白沢「真名はどうする?」
美猴王「それは・・・・・そうだな、一刀とでもするか。夢の中のアイツはそう呼ばれていたしな」
白沢「そうか、ならこれからは一刀と呼ぶか」
一刀「お前はどうする?」
白沢「おれは、前から使っている華佗にさせてもらう。俺がこの形を取っているときはそう名乗っていたからな。真名はそうだな・・・・鷹にでもするか」
紅「おとーーさん、お腹すいたよ」
一刀「そうだな、鷹用意できるか?」
鷹「少し待ってろ、すぐ準備する」
そう言って鷹はお堂を出ていった
一刀(俺が求めた物・・・・それが何かこれでわかるかもしれないな。それに、あの夢、そして紅・・・何か繋がりがありそうだな)
あとがき??
新作の二話目でした
如何でしたでしょうか?
この作品も項羽伝ともども愛読してくれると嬉しいです
次回は紅が成長して色々する感じで行きたいと思います。裏で、一刀と鷹が動くかも
項羽伝の方もできるだけ早く投稿しますのでお楽しみに
では待て次回
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孫三姉妹の先祖の少女と会います