風天区・天空電鉄本社車庫前。この電停の近くに、一人のドイツ人少女がたたずんでいた。
名をゲルダ・バルヒェット、天空市の南に隣接する「
…彼女の手にはデジタルカメラが握られている。背にはリュックサック、腰にはポーチと重装備。
彼女がシャッターを向けているのはまさしく車庫の引込み線…。
「お、そろそろ出てくるみたいだねー。何がくるかな♪」
すると、車庫から1両の電車が出てくる。まずら出てきたのはオーストリアのウィーンからやってきた400形電車だ。
「んー、大切に使ってもらってるみたいだね。ピッカピカ」
と、ゲルダはシャッターを切る。400形の赤い車体は、朝の日差しを受けてよりいっそう映える。
すると今度は、反対側の線路からデザートベージュとオリーブグリーンのツートンカラーがやってきた。
札幌市電A830形を譲り受けた、2310形電車だ。
「あーあれもねえ。ドイツの影響受けたんだろうね。可愛いw」
2310形がちょうど車庫に入っていくところで、ゲルダはシャッターを切った。
入れ替わりにやってきたのはアイボリーにグリーンのさわやかな塗装を持った、角張った電車だ。
「おーっ!800形だ。角張ったスタイルがなんともいえないねー」
800形はインバータの音を響かせながらゲルダの前を通過していく。
「んー、やっぱりこのロケーションはいろいろな電車が撮れるからいいよね~…ん?」
ふとゲルダが車庫の通用門に目をやると、一人の女性運転士が立っていた。
「なんだろ?呼んでるような?」
手招きされるがままに車庫に向かうゲルダ。
「どうもいらっしゃい。電車の撮影かな?」
「あ…
ドイツ語で挨拶をするゲルダを出迎えたのは、天空電鉄の女性運転士、油木 佑。
「ねえ、外で撮るのもいいけど、たまには車庫の中で撮ってみない?」
「え、でもいいんですか?あたしただの中学生ですよ」
すると佑はにっこり笑って、こう切り返した。
「いいのいいの。この会社はファンサービス旺盛だからw」
「いいんですか、そんなんで…」
苦笑するゲルダは、手を引かれるがままに車庫の近くにある事務所へと案内された。
「じゃあ、車庫の中は電車が動いてるのでくれぐれも気をつけて。それから中にいる間はこの入門許可証とメットをつけててね」
「あ、はーい」
と、事務所で手渡された許可証を首からぶら下げ、頭にはメットをかぶり撮影にいそしむゲルダ。
「うわぁ!これはドルトムントからきた
止まっている電車も、これから運用に入ろうとする電車も、ゲルダにとっては格好の被写体だ。
一枚、また一枚、シャッターを切っていくゲルダ。
すると車庫の奥のほうから、白とブルーに彩られた電車がやってきた。
「おおおおおっ!コンビーノまであるの!?すげー!広島だけかと思ってたっ!」
やってきたのは5000形。ドイツ・シーメンス社で製造され、天空電鉄に輸入されてきた連接電車だ。
あまりの興奮に、いろいろな角度から5000形を撮影するゲルダ。
その後もゲルダは、いろいろな電車を、そして車庫においてあるさまざまな鉄道部品を撮影したのであった。
もちろん、安全に十分配慮し、構内の社員たちには一声挨拶もかけながら取り組んでいたのは言うまでもない。
「今日は本当にありがとうございました!Vielen dank!」
「いえいえ、こちらこそー。気をつけて帰るんだよ」
「はい、それでは」
こうして、撮り鉄ライフを満喫したゲルダは、車庫を後にしたのだった…。
鉄道大好きドイツ娘、ゲルダ・バルヒェット。
次はどこの沿線に現れるのだろうか?
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せっかく鉄な子がいるんだから、絡まない手はないでしょうね。
天空電鉄はあんな風にファンサービス旺盛な会社ですが、
ほとんどの場合、電車の車庫は無断での立ち入りは禁止です。
みなさん、鉄道写真を撮影する際はくれぐれもモラルとマナーを守りましょう!
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