No.752670

艦隊 真・恋姫無双 24話目

いたさん

区切りも付いたので……。 今回、残酷な描写もありますので、注意を。

2015-01-20 19:27:00 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1757   閲覧ユーザー数:1527

【 何進の裁き の件 】

 

〖 益州 成都城内 広場 にて 〗

 

何進「どうした? 何時でも掛かってくるがいい。 陛下より……お前達の生死は委ねられている。 来ないのなら……私から行かせて貰うぞ!」

 

劉焉の目には、何進の姿が……数倍大きくなったように見える!

 

武に自信があるからこそ、何進の力と己の力量の差が……はっきりと分かるのだ。 劉焉は、汗ばむ剣の柄を握り締め……対策を練っていた。  

 

 

★……★……★……★……★

 

趙韙「ど、どうしやす? どう……動けば!? 董扶の野郎……剣の扱いは、てんで駄目の筈でしたから!!」

 

劉焉「───仕方あるまい! 足手纏いなど置いて、お前が先に突っ込め! 儂が……一拍してから、お前の後ろに入り込み……奴に斬撃を与えてやる!」

 

趙韙「へいッ!!」

 

★……★……★……★……★

 

 

一応、これでもヒソヒソ話ゆえ、内容は聞かれていない。 

 

趙韙「行くぜぇえええッ! 大将軍何進ッ!!」

 

話が纏まり……趙韙は───何進に向かい剣を振り上げて、突撃を開始!

 

何進の頭上に剣を振り下ろす!! 

 

何進「…………ぬるいな!」ガッ!

 

やはりと云うか……当然と云うか……簡単に片手で遮る。

 

ところが───趙韙の必死な顔が……急に歪んだ!

 

 

趙韙「グッ!? グホォオオオ────ッ!!!?」ブハッ!

 

何進「────────ッ!?」

 

 

口から大量の血を吐き出し、何進の顔──特に目を集中的に掛かるッ!!

 

同時に、趙韙の腹が急激に盛り上がると、そこを突き破り───血だらけの剣先が何進に向かうッ!!

 

 

劉焉「死ねぃい!! 成り上がり者風情がぁああああ──ッ!」

 

理由は、趙韙の背中から剣を突き刺し、貫かせた剣で、更に何進へ刺そうとする──劉焉の醜悪な行動があったからである!!

 

 

────ズブッ! ズブズブッ! 

 

 

 

趙韙「だ、旦那ぁあああッ!! こ、これは……ッ!?」

 

劉焉「ふんっ! お前の如きの臣下は用済みだと……先程、言った筈だが聞こえなかったのか? まぁ……最後に最後で……儂の為に死ねるのだ! 喜んで……あの世で自慢するが……良いぃいいいッッ!!!」グッ! グググッ!

 

 

─────ズブズブ……ズンッ!!

 

何進「─────!!」

 

趙韙「ゴハァアアアッ!! テ、テメエェェェはぁ───!!」ガクッ!

 

 

趙韙は……物凄い怒りの形相をしたまま、劉焉を睨みつけ……首を下に向けた。 趙韙の四肢から力が抜けて、劉焉に重く伸し掛かった!!

 

劉焉「これで……フフフッ! 奴も終わりよ!! 儂は自由に───ッ!!」

 

劉焉は、剣が柄の部分を残し、全部入りきったのを確認して、笑みを浮かべた! 

 

 

───しかしッ!

 

 

『………やれやれ。 年寄りは、結果を早急に出したがっていかんな?』 

 

 

劉焉「─────!?」

 

 

女の声が急に聞こえ、驚いた劉焉が慌て剣を手放す! 

 

剣は……趙韙の遺体共々……地面に落ちたッ!

 

 

『……誰が誰を殺したのだ? おっと、確かに己の臣下を殺したのは、認めてやろう。 ………しかし、私は……御覧の通り……無傷だ!!』

 

劉焉「な、なぁんだとぉ────ッ!?!?」

 

唖然とする劉焉の前には──血が付着した顔を、布で拭く何進の姿が!!

 

何進「あの状況で……臣下の身体を利用し、目くらましを掛ける機転! そして、忠義の臣の命を塵の如く捨て去る決断! 私の力を『視て』も、臆せず攻撃する度量! ……『人』にして置くのが……正直……惜しい……!」

 

劉焉「ど、どうしてぇえええッ!?」

 

何進は、胸部の鎧部分を指差した。 

 

胸部は……かなり膨らみがあり、何進の胸の存在感を示している。 ………無論、重要な箇所は、そこでは無い! 

 

その下に、僅かながら凹んだ箇所がある。 

 

 

………そう……劉焉の剣先が衝突した跡。 

 

───劉焉の剣は確かに何進を捉えた! その事は、見事としか言いようがなかったのだが……。 肝心な貫く事が───出来なかったのだ!!

 

何進「ふぅ~! たかが罪人如きに……名剣を渡す者など居る訳が無いだろう? 特に剣撃を好む者にはな?」 

 

劉焉「─────!!」ギリィ!

 

何進「お前如き……ナマクラの剣で充分さ! 人を謀る(たばかる)事が好きな奴には、お誂え向き(おあつらえむき)だよ!!」

 

劉焉「し、しかし! わ、儂の鍛えし剣の腕を持ってすれば、その程度の鎧ぐらい、貫いて貴様の息の根を止める事など、充分可能な筈なのにぃ──!?」

 

何進「この鎧の防御力を……些か甘く見ていたようだな!? 形は可笑しいが、この世界より数十世紀先の技術で作られた逸品だ! お前の腕が、如何に良くとも……穴を開ける事さえ無理な話よ!!!」

 

劉焉「グゥ………グググゥ────ッ!!」

 

何進「……さて! これで……終わりだッ!!」シュッン! シュッン!

 

何進の剣が……日の光を浴び……一筋の線となり幾つかの筋を引いた!

 

劉焉「なっ、何をぉおおおッ!? ムゥグゥウウウ──グワァアアアッ!!!」

 

━━━━!

 

━━━━!!

 

ーーーーーーー!!!

 

劉焉の両肩から──腕が落ちた!! 両肩の切断面より……血が吹き出し……辺りを赤く染めた!!

 

何進「お前の両腕を残すと……何をするか分からん! だから……悪さをしないよう切断したのさッ!! それに……直ぐに死刑になるのだ。 治療などもさせん! 己の悪行を悔やみながら……苦しみが良い!!」

 

劉焉「馬鹿なぁああッ!? 儂のような者が死ねば……漢王朝はどうなる? 儂が皇帝になれば───現皇帝より更なる強き国になる筈がぁ!!」

 

何進「………臣下や民を無下にする輩に……国造りなど任せる事、害悪を撒き散らす行為と同じ! 洛陽に帰還し時、陛下へ奏上しよう。 最後に……その事を気付かせてくれた礼だ。 少し早いが、死を賜わせてやろう!!」

 

劉焉「わ、儂の、儂のような英傑がぁ……な、何故、死ななけれぇ──!?」

 

何進「愚痴なら───あの世で言えぇえええッ!!!」

 

何進が、手に持った剣を持ち替え、居合い斬りのようにして───劉焉の首を落としたッ!!

 

 

────────!

 

…………コロコロッ! ゴロッ!!

 

 

益州に君臨し……様々な工作をして、天を目指した劉焉は………漢王朝の臣、何進により粛正され────ここに死した!

 

剣を一振りして、鞘に収めると……ある方向へ向いて……静かに語る。

 

何進「………お前如きを英傑などと云わんよ。 英傑と云うのなら……私か……『あの者』を差すのだろう。 大陸存亡を賭けて争える者はな?」

 

 

ーーー

 

一刀「──んッ? 此方を振り向いたような?」

 

ーーー

 

 

この……何進の呟きを聞く者は……誰も居なかった。

 

 

 

★☆☆

 

 

何進は……二人の遺体を片付けるように命じた後、董扶の傍に近寄る。

 

董扶は、剣を持ったまま……動かずに立った状態。 しかし、よく見れば……剣先が小刻みに震えている。

 

何進は、董扶の目の前に、剣を収めたままで対峙した。

 

何進「さて、董扶よ! 貴様はどうする? 私に剣を向けなかったのは、自分の力量が分かっていたから……だけでは無いのだろう? どうだ……? どういう訳か……応えてみせてはくれないか?!」

 

董扶「………私は、疲れました。 何もかも……。 劉焉様ならば……成都を益州を……幸せな国に変えてくれると……信じていましたが。 まさか……あのような心根の人物とは……! 我が目も……かなり曇っていたようで!」 

 

何進「……………………」

 

董扶「何進大将軍! ……本来ならば……劉焉様に諫言すべき私が……忠を誤ったのが原因! 劉焉様だけでは無く……私にも死を賜り下さりますよう……お願いしたく……!!」──ガチンッ!!

 

─────ズザッ!!

 

董扶は、手に持った剣を投げ捨てた後、地面に座り込み……細い首を差し出す! 目を瞑り、元々血の気が少なかった顔が、更に青い色に変わる。

 

何進「………死んで……何がしたい?」

 

董扶「……はっ?」 

 

何進「お前は……益州を狂わせたのだろう? 益州の民達を苦しめたのだろう!? そのうちの二人が死に……一人が間違いに気付いた。 ならば、残った者が、心を入れ替え……漢王朝に忠を尽くすのも……道では無いかな?」

 

董扶「………………」

 

何進「死して償うのも分からぬ事は無い! しかし、人材は急に育たぬ! 良き人材を残してから、この世から消えても良いのでは? ……私は、そう思うが如何であろうか? 死ねのは……何時でも出来るのだから!」

 

その言葉を聞いた董扶は、片膝を折り曲げて何進に礼を拝す!

 

董扶「…………私如きにもったい無い御言葉! ならば……その時まで漢王朝に忠を捧げたいと……存じ上げまする!!」

 

何進は、劉焉、趙韙を死罪に追い込み、董扶を改心した事を見極めて、その罪を赦し……更なる働きを期待するに至った。

 

そして────何進の狙いは! 

 

遂に………一刀達に向けられるッ!!

 

 

◆◇◆

 

 

【 何進と一刀 の件 】

 

〖 益州 成都城内 広場 にて 〗

 

劉焉の処罰は、劉焉を含む二人が死罪。 一人残りし董扶は……情状酌量の余地があると云う事で、死罪を免れた。 

 

何進は、跪いた董扶を鬼灯に任せ……一刀達の前へと歩を進める!

 

実は、一刀の周りには……護衛が居ない! 数㍍先に長門や金剛、加賀や赤城が待機していたに過ぎない!!

 

ーーー

 

長門「提督! 下がれぇ! 下がるんだぁあああッ!!」

 

金剛「Cave(逃げてぇ)! 提督ぅ───!」

 

赤城「だ、駄目だわ! 足が──全く動かないッ!!」

 

加賀「────このままでは!!」

 

ーーー

 

艦娘や恋姫達は、一刀を守ろうと必死に身体を動かすが……見えない糸で縛られたのように……身動きができないッ!!

 

本来は護衛として、誰か居なければならない。 

 

先程、劉焉との論争で白熱した結果、劉焉に掴み掛かろうとする者、血が昇って体調が崩れる者達が続出し、その者達を抑えたり、看病したりと動いてしまったのだ!

 

勿論……護衛役が動く理由は無い! だが、一刀が周りの様子を心配して、護衛役を後回しにさせて、救護に向かわせたの運の尽き!

 

艦娘達も……『数㍍の距離なら、何があっても対象できる!』と考えていたので、一刀の許可を得て、一時的に護衛役を離れていたのだ!

 

そんな、様子を……観衆の外より見ていた何進は、この好機を捉え、覇気を向けて邪魔者達を金縛り状態に陥らせる! そして、劉焉達に対峙し、適度の処罰を加えたのである!!

 

─────ガッシン!!

 

 

何進「……待たせたな! 『天の御遣い』殿!」

 

一刀「………………!」

 

 

ーーー

 

天龍「くそぉおおおッ! 何でだよ!? 何で……動かないんだよぉおおおッ!! 提督──ぅ!!!」

 

ーーー

 

朱里「うぅ───んッ! か、身体が動かないですよ!?」

 

雛里「朱里ちゃん! あ、諦めちゃ駄目ッ! 諦めちゃ!!」

 

紫苑「早くぅ!! 早く離れて下さいぃいいいッ!!」

 

桔梗「北郷殿ぉ───おおおッ!!」

 

焔耶「嫌だぁ───あああッ!! 北郷様ぁあああッ!!」

 

ーーー

 

観衆は、自分達が自由に動ける事を不思議に思いながら……事の推移を見守っていた。 

 

覇気を利用した『縛』……一定のレベルに達する者に、強固な金縛りを仕掛けられる『空母水鬼』の技である。 雑魚には使えないが、艦娘達のような集団なら、充分使用可能。 個別での時間制限もあるが……。

 

艦娘達の叫び声は、人目をはばからずに上げられたが……一刀が動く事がなかった! ただ、直立不動のまま立っている状態!!

 

何進は、無造作に一刀に近付き───誰かさんみたいな言葉を語る。

 

 

何進「………フフフッ! 私が怖いか?」

 

一刀「…………………」

 

何進「艦娘達の動きは、私の出す覇気により……既に封じ込めた。 勿論、貴方に対して……忠誠を誓う恋姫達もな! 『天の御遣い』殿も……当然……動けない筈だが。 フフフッ……どうだ……怖いだろう?」

 

何進……いや『空母水鬼』は、嘲笑しながら更に近付いた!

 

一刀「………生憎、俺にとっては……効かないんだよ!」

 

そう云うと……何事もなかったように、手足を動かしたッ!!

 

何進「───!? 私の覇気から……どうして!?!?」

 

一刀「半分は……『貂蝉』と云う者のお陰でね。 …………好きで慣れたくなかったんだけどな……」フゥ…

 

何進「……………?」

 

『……………………』

 

遠い目をして語る一刀に、何進は戸惑い、艦娘達は涙で頬を濡らす。

 

……恋姫達は………『毎度の事』と納得していたらしい。

 

一刀「それに、貴女の覇気。 どこか……懐かしいんだよ? も、もちろん! 覇気を浴びるのが趣味なんかじゃないよ!? 俺には、そんな自虐的趣向はないんだからなーッ!!」

 

何進「──────!?」

 

一刀「………夢の中に出てくる『女の子』を思い出すんだよ。 月光の光に照らされ、哀しげな表情を浮かべ……俺を見送る『寂しがり屋の女の子』の事を……。 でも……貴女とは……全然似ていないのにね?」

 

何進「…………………」

 

一刀は、哀しげな表情を浮かべ……何進の顔をもう一度……覗き込むが……『綺麗な顔だけど……やはり……違う』と感想を述べる。

 

何進「ばぁ───馬鹿ぁあああッ!!」ググウゥゥ──!!

 

白い顔を朱に染めて……両手で一刀を押し返し、怒鳴り散らす何進!!

 

何進「お、女の顔を覗き込みなど……『天の御遣い』のやる事かぁ!? は、はは、恥を知れぇえええッ!! 恥をぉおおおッ!!!」

 

一刀「あぁ──っ! し、失礼!! つい……気になってね? コ、コホンッ! それで……俺達を……どうする気だ?」

 

何進「ひ、人を茶化しておいてぇ! もうぅ~~ッ!!」

 

一刀が急に真面目な話を振ってきたが……さっきから既に、何度も振り回されている何進にとっては、堪ったものではない!

 

それでも、彼女は『大将軍 何進』『深海棲艦 空母水鬼』である!

 

何進「か……『艦娘』と『深海棲艦』……対峙すれば争うが宿命ぃ! 今更──何を言い出すつもりだぁ!?」

 

一刀の質問に、何とか応える何進だが……一刀本人は、真面目対応のつもりだあったので、真剣な様子で見つめる!

 

一刀「貴女は……劉焉との会話で『漢王朝大将軍 何進』として、話をしていた。 つまり……多数の民衆が、この状況を見守る中で、貴女は俺達を傷付ける事は出来ない! 『深海棲艦』として、行動が出来ないと見たんだが?」

 

何進「…………あの不愉快な奴らより……聞いてないのか? 私は『時を渡れる能力』をも持ち合わせている! き、貴殿を引きずり込んで、助けも無い場所で殺す事も……簡単に出来るのだぞ!? ─────なっ!?」

 

一刀の回答に……可愛い顔を傾けて、ちょと考えて顔を上げて返答をすると……すぐ目前に……一刀の端正な顔が近付いていた!!  

 

一刀「………管理者達よりは聞いているよ。 だけど……君の目は……そんな濁った目じゃない! 俺の知っている者達と同じ……澄んだ目をしている! だから……卑怯な真似をせずとも、正々堂々と俺の命を狙える筈だ!!」

 

何進「だ、だから───何故、そんなに敵を、簡単に信じようとするんだ!? ……そ、それに……って! 貴様ぁあああッ!! 急に顔を近付けるな!! 私は、偉いんだぞぉ!? ぶ、無礼になるんだぞぉ──ッ!!」

 

一刀「───も、申し訳ない!!」ペコペコッ!

 

何進「全く全く…………まっったくぅうう!!(コッチハ必死ニ、抱キツキタイノヲ我慢シテルノニ!! ────天然女誑シガァ!!!)」

 

何進の……心の声が聞こえる訳もあらず、一刀が暗い表情で、黙々と語る!

 

一刀「………俺は………艦娘の皆に……誰一人……轟沈などして貰いたくないんだ! 話し合いで解決できるのなら……そうしたい! だけど、衝突するのなら、俺が先頭になって戦うよ!! ────皆を守るために!!」

 

何進「……私の記憶している『北郷一刀』と本質は一緒か。 経験も知識も器量も違うのに関わらず。 この何進の恫喝にも動じず、仲間を置いて逃げ出す卑怯者にあらじ。 世界は違えど……貴殿も『北郷一刀』なのだな!?」

 

一刀「───!? 何で……『北郷さん』を知っているッ!?」

 

何進「私には……『記憶』だけ残っているのだよ。 仲間思いで、人々に慕われ……数々の恋姫より愛された……稀代の英傑の名を!」

 

何進の言葉に───嘘は無い。 

 

何進……『空母水鬼』の力の源となる物は、別世界で悲劇的な幕を閉じた少女達の想い。 その中には、『北郷一刀』の思い出も残っていたのだから……。

 

一刀「…………………!」

 

何進「信じるも信じないも……貴殿次第。 だかな……私が興味を持っているのは──貴殿自身なのだよ? ○○鎮守府提督『北郷一刀』!!」

 

一刀「────────!?」

 

驚く一刀を後目に、何進が一歩退き……一刀から距離を開く。

 

何進「……長話が過ぎたな。 私が……この地を訪れたのは、『何進』としての仕事を勤める為だ! 知っての通り……劉焉の始末は済んだ! 残りの『天の御遣い』諸君と随行する仲間達の処分だが───!!」

 

『…………………………!?』

 

何進「───陛下の命を伝えさせて貰う! この地に降りられた《天の御遣い》様を御迎えに上がるようにとな!!」

 

何進が伝える……漢王朝最高権力者からの命令は……『一刀達を、正式に天の御遣いと認めたい!!』と云う……好意的な意見だった!!!

 

『──────────!!!!』

 

聞き耳を立てていた観衆は───大喜びッ!!

 

一刀の様子に……一喜一憂していた艦娘、恋姫達も顔を綻ばせた!!

 

ただ一人………一刀だけは、劉焉の言葉が気に掛かり、何進に問いただす!

 

一刀「『天の御遣い』は───邪魔者じゃないのか!?」

 

何進「『野放しにすれば』の話だ。 漢王朝側で管理すれば……自らの地位を高め、補強する事も可能! そして、味方に出来れば……これ以上ない漢王朝への高支持率が期待できよう! そうは……思わないか!?」

 

一刀「………成る程。 それと同時に……俺達の行動を縛る目的もありそうだね? 放し飼いにしておけば……牙を向く事も考えだれるから……!」

 

何進「さっきと違い……えらく慎重だが?」

 

一刀「組織絡みとなると……いい考えはしないんだ。 何かあれば、末端を直ぐに切り離すしか考えないから………」

 

何進は……そんな暗くなる一刀の様子に……少し明るめに話す。 

 

何進「だがな……陛下は《天の御遣い》殿との面会を御希望されている! それと同時に……『《天の御遣い》様に、益州州牧の地位を任せたい』とも仰せなのだ! ………どうだ? 私と共に来て、陛下に拝謁を願いたいのだ!」

 

『─────────!!?』

 

何進「陛下からの詔書も賜っている! これがそうだ……確認して欲しい!」

 

近くで随伴していた鬼灯より、正式な羊皮紙で出来た詔書を渡された!

 

何進「──返事は三日後、私が洛陽に戻るときまでだ!! 私と鬼灯は、成都城の客室に居る事になろう! 劉焉に関する報告の竹簡を仕上げねば成らないのでな! それでは『天の御遣い』殿! ──良き返事を期待しているよ?」

 

一刀「────待ってくれ!!」

 

その場所より、立ち去ろうとする何進を引き止める一刀。 

 

何進はユックリと振り向き……一刀に向き直る。

 

何進「──ん? 何かな『天の御遣い』殿?」

 

一刀「その言い方は止めてくれ! 『北郷』か『一刀』で良いから!!」

 

何進「────!! そ、そうか! な……ならば仕方がないな! 貴殿がそう云うので……あれば! ………か、かかか、一刀と呼ばせて貰おうか?」

 

一刀「あぁ! それでいいよ! それから………ありがとう。 俺達を救ってくれて! あのまま、劉焉に押し込まれいたら……俺達の役割は終わっていた。 その礼を云いたかったんだ! この借りは──必ず返すから!!」

 

何進「ゴホンッ! 今回の件は……『何進』としての勤めだ! 偶々……あの場所に出くわし、一刀達の会話に口出しをして、劉焉の罪を暴露したのみ。 そもそも……我々は敵味方だ! 貸し借りなど……あるはずが無かろう?」

 

一刀「だけど……俺達の言葉が詰まった時、詰問を出してくれたお陰で……成都の民達から後ろ指を刺されず、成都の混乱が起きずに済んだ! 俺達の争いとは別だ! 俺個人で……命に関わらない、簡単な礼ぐらいさせて欲しい!」

 

何進「────そうか? それならばな……この両手を見て貰いたい!」

 

何進は、鬼灯を再度呼び寄せ、自分の手甲を外させる。 そして、白魚のような手を、一刀に合掌するように見せた!

 

一刀「…………? 見ているよ?」

 

何進「─────よしっ!」

 

急に────手が動き、一拍……拍手して大きな音を響かせた!!

 

─────『パンッ!!』

 

一刀「うおっ!? ─────ムグゥ???」

 

一刀は───急な『猫騙し』を喰らい、目を閉じた瞬間───唇に柔らかい物が当たるッ!? 

 

『な───────ッ!!!』

 

急いで目を開ければ……何進が自分の花唇に、そっと指を当て……ニッコリと笑いながら呟いた!!

 

何進「……………フッ! なかなか……美味だな!!」

 

一刀「えっ? えぇぇ───ッ!?!?」

 

何進は、驚く一刀達を後目に………鬼灯を連れて、その場より離れた!!

 

何進「確かに───借りは返して貰った! この私に、散々お預けを食わしたのだ!! これくらい当然さ!! ───先程の件、期待して待たせて貰うよ!? 愛しいの一刀よッ!! ────ハッハッハッハッ!!」

 

一刀「ちょっ────ッ! 何を!? 『ガシィン!』───えっ?」

 

呼び止めようとした一刀を、逆に肩に手が掛けらて……引き止められる!

 

後ろを………恐る恐る振り向くと………涙を浮かべた者、怒りで頬を膨らませた者と……明らかに『嫉妬している』艦娘達が……並んでいる!!

 

金剛「提督ぅ~! 私達の心配を余所にして……flirt with(いちゃつく)ノデスカッ!? バアァァァニングゥウウウッ! ラァアアアブゥウウウ!!」

 

一刀「うわあぁあああ────ッ!!!」

 

金剛が怒りをぶつけて、一刀を天高く投げ飛ばした!!

 

ーーー

 

加賀「まったく………大概にして欲しいものね!!」

 

雷「────ホントよッ! 司令官のばぁか!!」

 

電「………皆さんの気持ちは、分かりますが……。 あの……投げ飛ばされた一刀さん、誰が受け止めるのです?」

 

天龍「───ケッ! 戦艦に投げ飛ばされたなら、長門ぐらいの力がなきゃ、受け止めなるのは無理だろう?」

 

赤城「………で、誰が受け役なんですか? 私はボーキ切れで……動けませんから!! 加賀さんに、全部取られてしまい……ライフは0なんですッ!!」

 

榛名「私もここに……霧島も川内さん達と一緒に片付けに行ってますし!」

 

龍田「えっ? 他の戦艦……全員……居るわよね~?」

 

長門「わ、私の足では………追いつかないからなッ!!」

 

『…………………………………誰も居ない?』

 

ーーー

 

比叡「金剛姉さまッ! 提督を投げた先に、受け止める艦は……誰か居るんですかぁあああ───ッ!?」

 

金剛「───ハッ! だ、誰も居ないデスッ!! 怒りで提督を投げ飛ばしマシタァ───ッ!! What should we do!?!?(どうしまショウ!?!?)」

 

『──────────!!』

 

艦娘達は……顔を真っ青にして……投げ飛ばされた方向に向かった!!

 

 

ーーーー★

ーーー★

ーーーー★

 

 

桔梗「───いやはや、助かりましたぞ? 港湾棲姫殿!」

 

朱里「あ、ありがとうございましゅ!!」

 

雛里「で、でぇぇ………しゅ!!」

 

港湾棲姫「ウゥン! コッチコソ……教エテクレテェ……アリガトウ!! オ陰デ……一刀ヲ助ケレル事ガ……デキタ!!」ニコッ

 

焔耶「ワタシ達に……受け止める力があれば……!!」

 

港湾棲姫「無理シチャ……駄目! 皆ガ怪我スルト……一刀ガ……悲シムカラ! ソレニ……ワタシヲ頼ッテクレテ……嬉シカッタ!!」

 

紫苑「そう言って頂くと……私達も光栄ですわ!」

 

皆が皆で、一刀の様子を確認する。 

 

一刀「……………」

 

港湾棲姫「一刀………良カッタ!」

 

港湾棲姫が、胸の中で眠る一刀を見て微笑み……恋姫達も、ホッと安堵をするのであった。

 

 

☆☆ーー☆☆ーー☆☆ーー☆☆

 

 

話は───少し遡る。

 

一刀が金剛かに投げられる少し前に、恋姫達が動く事が出来た。

 

理由は、何進の覇気が……主に艦娘に向けられていた事。 

 

それと、覇気の技が、元々『○○』からの物だったので、慣れもあり……解く事が比較的容易だった事。

 

そのため、解いた後は、遠くから様子を見守っていたのだ。 

 

何進の対談は、結局……一刀達に好意的な話に終わり、全員……胸をなで下ろした。 

 

しかし、途中から艦娘側の不穏な空気を察知する───恋姫達。

 

どことなく……かの『嫉妬神』を思わせる状況に、心配した朱里と雛里が、港湾棲姫に事情を説明。 

 

港湾棲姫も様子を確認し、金剛が特に気が立っている様子をみて、前に投げ技で大騒ぎになった事を思い出し、万が一に備えて移動したのだ! 

 

後は、予想通り投げ飛ばされたので、紫苑と桔梗が落下場所を割り出し、焔耶に場所を空けさせ、港湾棲姫に受け止めさせたのが……この結果。

 

港湾棲姫の巨大な『クッション』のお陰で、怪我も無く気絶で済んだ。

 

駆けつけた艦娘達は、一刀が無事と分かると……全員がへたり込み、泣きながら恋姫達や港湾棲姫に礼を述べた。

 

金剛が、姉妹達より小言を貰い、加賀や赤城達にも大分絞られたのは……云うまでない話であるが……。

 

 

☆☆ーー☆☆ーー☆☆ーー☆☆

 

ーーーー

ーーーー

ーーーー

 

………こうして、益州の戦いは終わりを告げた。

 

あれほど……激しい戦いを繰り広げたのに関わらず……戦死は無し。

 

この話は、何進の報告で洛陽に。 商人や旅人達等の口伝えにより……遠く幽州、西涼に流れ、陳留、南陽、南皮、建業等にも噂が飛び交う。

 

 

《 益州州牧『劉焉』……悪逆なる心を起こし、漢王朝転覆を図る。 

 

されど、九天より『御遣い』降りし……これを正さんと欲す!

 

州牧、御遣いの人数少なきと侮り、大軍を率いて刃向かいとせん! 

 

されど、天の御遣い、煙霧で惑わし雷斧を振るい、神将を遣わせ人身乱し、神算鬼謀を尽くして……これを見事に撃退す! 

 

州牧……敗れるが、最後まで従う事を潔しとせず抗う! 皇帝陛下、何進大将軍を遣わし、これを討ち取り──漢王朝の矜持を保つ!! 》

 

 

大陸の軍閥中に───『天の御遣い』の話が駆け巡った!

 

★☆☆

 

そんな広場を遠くの城壁より……見守る影が二人。

 

左慈「……………現れたな。 まさか……漢王朝の中枢に潜り込んでいたとは。 嫌な所に居るもんだ!」

 

于吉「全く……盲点を突いてくれますよ!」

 

于吉達が、場所を特定して来てくれば、既に一刀達と事を構えている状態。

 

仕方なく……様子を探るだけにして、止まった二人である。

 

于吉「………ですが、これ以上、艦娘達の力量より離れさせられては、私達でも勝てなくなりますよ? 第二の策に移行する時期かもしれませんね?」

 

左慈「…………そうだな! 可愛い子には……旅をさせろだな!」

 

于吉「おやおや? 艦娘達が気になりますか? ですが───左慈の一番は、この于吉だと……お忘れなきように!」

 

左慈「………ふんッ!!」

 

その後……二人は艦娘達と合流、同じく貂蝉も加わり、その後の展開を話し合うのであった。

 

 

 

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あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

やっと……劉焉に退場して貰い……他の恋姫達の話も書けそうで、ホッとしてます。 後、『義輝記』も……ちょくちょく弄くるのですが……なかなか思った通りに進まず……難航中。

 

別の外伝?練習?の小説を出して、リハビリ兼ねて出したいとも思ってます。

 

 

 


 
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