No.75236

真・恋姫†無双~物語は俺が書く~ 第7幕

覇炎さん

この作品の北郷 一刀は性格が全く異なりますのであしからず。
 仲間には優しいですが敵と判断すると最低です。
 主に落とし穴に嵌めたり、縄で逆さ吊りにしたりと…。しかも、いつ仕掛けたのかも解らないほど鮮やかに。
 強さは武将達と渡り合えるくらい。
しかし、武力が全てはない。

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2009-05-24 00:07:43 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:8924   閲覧ユーザー数:6544

真・恋姫†無双~物語は俺が書く~

第7幕「旋律[メロディー]は君の中に(後篇)」

 

 

 

 

 あの後、華琳は野上愛の店……伝卸煌[でんしゃおう]で待っているから二人を迎えに行け、と主から命を受け一刀は渋々迎えに行った。あのまま、あそこに居ても気まずいままなので気分転換には丁度良かった。しかし、華琳を待たせばどんな目に遭うか分かった物じゃないので足早に探していると目標の一人を発見した。

 

 

「……」

 

「……」

 

「………」

 

「………」

 

「沈黙は読者の敵だから…早く決めてくれ」

 

「!?北郷か。脅かすな」

 

「!?(…まるで気配が無かった。この人、相当出来る…!暗殺者の類か?)」

 

 

 

 見つけたのは籠を売っている露店の前で固まっていた秋蘭であり、こちらには気づいた様子が無い為に驚かそうと企て背後にたったは良いが、一向に進まない会話に突っ込まずにはいれず話しかけてしまった。結果的に作戦は成功であったが。

 

 

「何を見て…籠に決まってるか」

 

「あぁ、それより北郷よ、華琳様は如何した?まさか、置き去りにしていた訳じゃ?」

 

「その華琳が秋蘭達を探しに行けって。ほら、合流地点を決めていなかったろ?『伝卸煌』って料亭に居るから先に行っていてくれ。俺は春蘭を」

 

「いや、姉者の事は私が」

 

 

 そこまで言う秋蘭の肩を叩き、首を横に振り華琳のご機嫌斜めの事を伝える、その理由と共に。それを聞き終わった秋蘭は大きく溜息をつき、籠を買って目的地へと向かった。

 

残された一刀はさっきから、自分を睨んでいる少女の方を向く。灰色がかった銀色の長髪を一房にしてキリっとした眼に切傷だらけの肌、上から下まで一通り見た意見は。

 

 

「(筋肉の発達が異常だ。かなり、武術をやりこんでいるな…。しかし、)そんなに警戒しないでくれ。正直へこむ」

 

 

 一刀の視線に邪気でも感じたのか、少女は身を隠すようにたじろいだ。一刀が地面に両腕をついた時には、さずがに吃驚してそれは誤解だと言っていた。

 

 

「その……男性にそんなに見られた事が無くて…それに私の肌は傷が多く、見苦しい物があるだろ?」

 

「そうか?じゃあ試しに訊くがその傷は、なんでついたんだ?」

 

「それは……修行や人を護って…」

 

 

 少女は恥ずかしそうに答えた。正直言えば笑われると、馬鹿にされると思った。女を捨てた愚か者だと…。しかし、男は…一刀は違った、嘲笑う訳ではない笑顔で見ていた。そして、少女の手を掴んだ。その手は暖かく大きかった。

 

 

「見苦しくなんかない。他人を護る事で出来た傷が見苦しいなんてあるか!俺は…俺には“それが”凄い事だと思う。他人の為に自分が傷つく事を厭わない、それはすごい事なんだ。だから、誇っていいんだ。俺には……君が格好良く見えるし……――好きだぞ(人柄的意味で)――君みたいな娘」

 

「……(――好きだぞ(異性として)――君みたいな娘)」

 

 

―――ボンっ!!!

 

 

 言葉とは不便である…。

 

 

〈鈍感……はぁ〉

 

 

 その後、真っ赤になって気絶した彼女を介護していた為に春蘭の回収が遅れた。

 

 

 

 

―――華琳の苛立ち、5割7分[57%]。秋蘭の援護により1割低下後に、野上愛の特製珈琲により2割低下[27%]。野上の弟が帰宅(奇襲)、『オヨヨ~~!!?』による大失敗により珈琲及び炒飯ぶちまけ。被害―華琳の頭上にぶちまけ…弟の命の灯が尽きようとしている。急げ一刀!華琳を止めれるのは君しかいない―――

 

 

「朔、気のせいか?電波が…どっかの予告編風な電波が…」

 

〈気のせいです。それより、そこの服屋に次なるターゲットを発見しましたよ〉

 

 

 頭に変な映像と音声をキャッチした一刀。それを振り払い朔の言う服屋に入る。…そして、出る。

 

 

「一面に広がる服(戦火)。観よ、赤壁は赤く燃えている」

 

〈それはまだ先のネタです。現実逃避したい気持ちは解りますが、今は直視してください〉

 

「字を脳内変換して“直死”していいですか?」

 

〈殺人“貫”になりたいのですか?戦でして下さい。さぁ、シュンランさんを“カプッチュ~”しましょうか?〉

 

「作品違うし、属性(吸血鬼)と声優ネタに走るな」

 

 

 お馴染みのコントを行いながら戦場(服屋)へと入った。

 

 

 そこは、最早店としての機能を失いつつあった。何故なら、

 

 

「これこそが華琳様に相応しい!!」

 

「え~、それもいいけど聞いた特徴ならこれの方がいいの!」

 

 

 春蘭が持っていた服が舞う。

 

 

「それなら…」

 

 

同時におさげの髪に眼鏡をかけた少女も共に舞い互いに次なる武器(服)を向け合う。

 

 

「これでどうだ、なの!?」

 

 

 いい加減に、抽象的な説明が面倒になった一刀は近くに呆けていた亭主がいた為に経緯を尋ねるが、

 

 

「はぁー。亭主、状況を教えてくれ」

 

「…あ、御遣い様。見て下さい、私ノ服ガ蝶ノ如ク舞ッテイマスヨ?」

 

「ダメだ、壊れた人形のようだ。斜め45度で手刀入れれば治るか?」

 

〈やめておいた方が…今のマイスターのお力では一般人が飛びますよ?…主に首が〉

 

 

 

 

放心状態の為、荒治療中…。

 

 

――衝撃のファースト・ブリット!

 

――――ドッカ反魔ッ!

 

 

呆けている為、荒治療中…。

 

 

――撃滅のセカンド・ブリット!!

 

――――ガルル醒刃ッ!!

 

 

意識が朦朧としている為、荒治療中…。

 

 

――抹殺のラスト・ブリット!!!

 

――――バッシャー魔具南無ッ!!!

 

 

意識を取り戻した……が念の為の荒治療中…。

 

 

――シェル・ブリット!!!!

 

――――やめってキバっと!!!?

 

 

 

 

「―――と、言う訳です…」

 

 

―――ドガバキふぉーむ…バタッ。

 

 

 

 

 あまりの刺激に耐え切れずに、気絶した亭主が言うにはあの二人はただ、華琳の服選びをしているだけらしい。傍迷惑な事に周りにどれだけ被害が出ているかも知らずに…。次は寝間着について、激論をしていた。一刀は肩を落とし、気絶した亭主を起こしある物を持って来る様に言った。

 

 

「ふっふっ、やるな貴様。…しかし、これなら」

 

 

 春蘭が突き出したのは肌が透けて見えるほど薄いネクリジェだった。春蘭は華琳が着た処を想像した……これを着た主人が扇情的な姿で自分の名を呼ぶ、想像しただけで顔が真っ赤になる。少女もある程度想像したのか頬が赤くなるが負けじと突き出したのは…。

 

 

「これが…私の全力全開なの!!」

 

 

 何の変哲もないスポーツブラに似たシャツに簡素なホットパンツ。しかし、それは遥かにネクリジェよりも肌の露出度が高く、健康的だ。互いに甲乙つけ難く悩んでいた、その時であった。人を見下すような笑いが聞こえたのは…。

 

 

 

 

「くっくっくっ…。ちいせぇ…ちいせぇな、おい」

 

「だ、誰だ!?神聖な戦いを汚す輩は!?」

 

「そこの入り口なの!」

 

 

 少女が指差す方向には入口によりかかった、ハo…もとい勝気な笑みをしている一刀がいた。しかし、乗りのいい二人には今の一刀は謎の人物としか映っていなかった。

 

 

「誰だ貴様!?」

 

「俺か?ふっ、通りすがりの……萌えの伝道師さ。覚えておけ!」

 

「萌えの…」

 

「伝道師…」

 

「…ぷっ。―――エンペラ不異羽っ!?」

 

 

 乗りの良い二人と違い、一刀の後ろにいた亭主は噴き出した為に達人でも見切る事が困難な速さのシェル・ブリット・バースト(裏拳)を喰らい、吹き飛ぶ。一刀も、もう用が無い為起こさずに無視した。二人もそんな事を無視して、先の意味を聞く。

 

 

「小さいとは、どういう意味だ!?大きさならこれでいい。私が断言できる!」

 

「その大きさじゃねぇが……体型でみるのも確かに悪くは無いが…服による!それだから貴様は小さいというのだ」

 

「じゃ、じゃあ何の事なの?」

 

「貴様らは…萌えに対する心がちいせぇ…。春蘭!」

 

 

 いきなり、教官口調になった一刀に驚き素直にはいっと答える春蘭と少女。そのまま、一刀のダメ出しが始まった。

 

 

「お前が持っている物…それはネクリジェと言う物なのだがいい選択ではあるが…その薄さはいかん!ネクリジェは見えるか見えないかの境界を楽しむ物である、そこから浮き出る下着の曲線(ライン)を愉しまなければならないのだ!そんな薄く肌が見える物など痴女が着る物だ!!ついでに色も情熱的な紅、青、もしくは黒。落ち着いた色の水色。純白な連想させる白。欲を言えば、着る際にそのネクリジェの反対色の髪飾り(リボン)なら満点だ」

 

 

―――妄想中。『春蘭、どうかしら?』…モモッタロスっ!鼻を押さえながら膝を地面につけた。

 

 

「おさげの少女!その健康的な寝巻き…一言で言うなら“色が地味”だ!」

 

「が~ん、なの」

 

「その組み合わせはいい、実にいいぞ。しかし、灰色に黒では見栄えせん。ここは上を水玉に、下は水を連想させる青!想像しろ……暑い夜に興奮してはしゃぎ、疲れて寝る。寝る前に動いた為に薄っすら浮かぶ汗…、その汗が雫となり玉の肌を滑って行く瞬間!しかし、これに欲情するものは変態だ!!これに萌えを感じてこそ一流だ(なんの?)」

 

 

―――妄想中…。『春蘭…オヤスミ。』……ウラタッロス!!手足が地面に付き、大地(床)を赤く染め上げる。

 

 

「ここで春蘭よ、俺から貴様に一つ贈り物をしよう」

 

「お、贈り物ですか?」

 

 

 最早敬語すら使ってしまうほど、洗脳されている春蘭に一刀は白い男物の服を渡す。不思議そうにみる少女、それは正史でも着こなせる者は少数と言われる品。

 

 

「これは?」

 

「私の世界では着こなせる者が少ないが、華琳なら出来る。王道を歩くあの娘なら…そのYシャツが」

 

「猥社津?で、ですが伝道師さま、これは男物…」

 

「喝ッーーーー!!馬鹿もの!?最初に言ったろう!服によって大きさを変えなければならん!!ちっ、しょうがない。今回最後の指南だ。よいか?妄想せよ」

 

 

 二人は、息を呑み春蘭は華琳を、少女は華琳を知らない為に自分を想像した。そして、今回最後の指南が幕を上げる。

 

 

「それは確かに大きい、だからこそ女が着ればダボダボになり、ゆったり感が生まれ安らぎが生まれる」

 

 

 二人はおぉーと感心の声を上げるが驚くのはまだ早いと告げた。

 

 

「ここからが大事だ。これには絶対に…してはならない事がある。まず、寝間着の下は穿いてはいかん!せっかくのゆったり感を殺す。そして、上の第一第二ボタンは開ける。そこから見えるか見えないかの境界(チラリズム)が大事だ!更に追加として自分より一回り小さいヌイグルミを抱かせて眠る。そして、朝、寝ぼけた彼女の寝巻がきわどく片言で目覚めの挨拶したときにはもう!!」

 

「キャー、かわいいなの!!」

 

 

―――亡き女を想うと書き『妄想』……。『むぅー、シュンラン?オハヨオウ…ムニャ』………クライマックス!!!?

 

―――屍のようだ。

 

 

 幸せそうな春蘭を叩き起こす一刀、その際に伝道師は?と聞かれたがスルーした。一通りの悪戯は成功したので、華琳の事を言う前に一つしなければならない事があった。

 

 春蘭達は気づかねばならなかった。どうして、自分たちが知らないネクリジェなどが存在しているのか。

 

 

「そして、話が変わるがこの店な…。結構、俺が贔屓している店でな…ここまで荒らされて何も無かった…事には出来ねぇよな!」

 

 

 その時の一刀は今までに無い邪気を放っていた。二人は互いを護るかの様に抱き合っていたが一刀は右手を出し、

 

 

「…お前達の夜が来る」

 

 

 そこから先の事は誰一人として覚えていない。ただ、“圧倒的な暴力”と書き“教育”と解く。その心は“愛の鞭”。

 

 

 

「…はっ!?ごめんなさい!?」

 

「!?…春蘭、いきなり何を言っているの?」

 

「ごめんなさい、ごめんなさ…華琳様?あれ、ここは北郷?私は何処?」

 

 

 春蘭が目を覚ましたのは点心『伝卸煌』であった。華琳が言うには野上愛の弟、野上良(のがみりょう)が自分の頭に料理などをぶちまかした為に『絶』をチラつかせ、嚇かしていた。勿論、事故と言う事は解っている為に飽くまで嚇し程度であった。

 

その時、丁度気絶しながら痙攣している春蘭を担いで戻って来た一刀。華琳が野上良をを手にかけようとしていると勘違いし、春蘭を“捨て”華琳の腰に抱きつき、彼の“不幸体質”と“実話”を語った。

 

一刀曰く、

『散歩、お使いに行けば1刻、もしくは1日かかる。理由は色々ある。ガラの悪い者、動物に追われる、これには理由は無い』

 

『馬に乗れば移動している途中で投げ出される事などザラである』

 

『知らない内に戦場のど真ん中にいる』

 

『外を歩けば、物に引っ掛かり側溝に落ち空からは“鳥の贈り物[糞]”』『家の手伝いでは…現状。しかし、いくらかはマシ』

 

 と。流石の覇王も同情して特別手当を出そうと心の中で、決めてしまうほどに。

 

 

「なるほど。確かにそれは…ですが」

 

 

 主に無礼を働く者なら、即・斬・首の春蘭姉妹が動かない事から二人も同情してはいるが春蘭の視線は華琳の腰…正確には腰にしがみついている者を睨んでいた。

 

 

「いつまでしがみついているのだ、北郷!!!?」

 

「もしかしたら電○の俳優の子孫かも知れないんだ!○王の俳優はあの人でなければ!!?」

 

「ちょ、一刀!?どさくさに紛れて何処を触って…!ひゃ、こら!いい加減に、離れなさい!別に、い、いやって訳じゃ無く、時と場所を…って、私も何を口走って!!?」

 

「……ずずっ。苦いがコクがあり、匂いもいい。これが珈琲か。愛殿、今度淹れ方を教わっても?」

 

「えぇ、いいですよ」

 

 

 『伝卸煌』はカオスに包まれていた。一刀が半泣きになりながら、華琳の腰にしがみついていたが春蘭が引き離そうとすると、徐々に下にさがり尻の所まで下がっていた。

 

 秋蘭は慣れたのか、平然と椅子に座り野上愛に珈琲の入れ方を尋ね、野上愛も気にしていない。もっとも彼女の場合は天然なだけだが。

 

渾身の力で引き離した春蘭は一刀を投げた。

 

しかし、その方向には。

 

 

「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ!!決してわざとじゃ、って一刀!?こっちに飛んで来ちゃ、オヨヨヨッ~~~!!!?」

 

 

そこ方向には……不幸体質LEVEL.EXの持ち主、野上良がいるとも知らず。

 

 

「あっ」

 

「まぁ、夜ちゃん?」

 

「姉者…方向ぐらいは考えよ」

 

「確かに不幸体質のようね」

 

「「お~よ~よ~っ」」

 

 

 華琳は野上良の不幸体質に納得し、春蘭はやってしまったという顔で秋蘭はその姉に注意をしていた。野上愛は救急箱を準備し、一刀、野上良は互いに頭を打ち気絶していた。

 

 

 

 ひと悶着の後、気を取り直しお互いに自己紹介を行った。

 

 『伝卸煌』店長。性は野上[のがみ]、名は愛[あい]、字は理[ことわり]。真名は光里[ひかり]。

 

 『伝卸煌』従業員。性は野上[のがみ]、名は良[りょう]、字は太郎[たろう]。真名は夜葉[よるは]。

 

 

 この二人は名乗ると同時に、自分の真名まで許した事にはさすがの華琳たちも驚いていたが光里は『一刀くんを見ていれば解るわ。この人たちは真名を許しても良いって』。夜葉も同意見なのか、大きく首を縦に振っていた。その後、華琳たちも光里達に真名を預けてから飯を食い、その場を後にした。

 

 そして、華琳は春蘭達が来るときには持って無かったはずの籠を持っている事に気づいた。一刀は華琳と行動していた為に理由は知っているが、春蘭達については知らない。尋ねれば、春蘭は季衣への手土産で中には見た事の服ばかりであった。秋蘭は部屋に置いてあった籠が壊れたかららしい。華琳は偶然?っと頭を捻ったがそれしかない為に思考を停止させ、今日の事を纏めて報告書を提出するように言い城に戻る帰路で一刀達は不意に声をかけられた。

 

 

「そこの、若いの………」

 

「……誰?」

 

 

 声のした方を向けば、眼深に布を被った者であった。声は低くしわがれてお婆さん、もしくは若い男が無理に声を作っているようにも聞こえ、顔も布のせいで見えない。

 

 

「何だ?貴様」

 

「占い師か……」

 

「華琳さまは占いなどお信じにならなん。慎め!」

 

 

 春蘭が華琳の前へ出て、主人を護ろうとするが。

 

 

「……春蘭、秋蘭。控えなさい」

 

 

その主は春蘭に下がるように命じた。訝しげに春蘭は後ろへ下がり、秋蘭は後ろで占い師を警戒していた。一刀自身も袖に仕込んだ小刀を手に取る。

 

 

「……私に何か用?」

 

「……お主からは強い相が見える。希に見た事の無い、とても強いそうじゃ」

 

「回りくどいのは嫌いなの。具体的に言えないのかしら?占い師さん」

 

 

 占い師は華琳の提案に頷き、言葉を紡いだ。

 

 

「力のある相が見える。兵を従え、地を尊ぶ。お主が持つのは、この国の器を満たし、繁栄させる事の出来る強い相。この国にとって、希代名臣となる相じゃ……」

 

「ほほう。貴様、良く分かっているではないか」

 

「(この時代の占い師は、すごいな。…朔?)」

 

〈…………〉

 

 

 春蘭は主を褒められ嬉々としており、一刀も曹操の未来をズバリ当てた、この時代の占い師に称賛し朔に同意を求めたが、返答が返ってこなかった。

 

そして、予言は続いた。

 

 

「しかし国にそれだけの器があればの話じゃがな……」

 

「………? それは一体どう言う意味なのだ?」

 

「かの力は、今の弱った国の器には収まり切らぬ。その野心は留まる事を知らず、溢れたそれは国を犯し、野を焼き払う……何れあれこの国の歴史に名を残す程の、類い希なる奸雄となるであろう」

 

 

 未来を知っているさすがの一刀も非汗が出てきた。

 

そして、ある疑問が浮かんだ。

 

―――この占い師も俺と同じ、未来から来ているのでは?

 

“奸雄”という単語に秋蘭がもう抗議をしようとしたが、主である華琳に強く止められ押し黙る。

 

 

「そう。……私は乱世において、奸雄になると……?」

 

「左様。それも、今までに歴史には無い程に……しかし」

 

 

 一刀は布の下の占い師の顔が、歪んだ気がした。そして、一瞬だったが占い師と目が合った。そして、そのまま言葉を紡いだ。

 

 

 

 

「煌めく雷(神鳴[かみなり])には扱いには気をつけなされ。うまく扱えば、お主の国を護る守護神…雷[いかずち]となろう。しかし、一つ間違えば己が国を脅かす悪鬼羅刹になろう…」

 

 

 占い師以外の三人が一刀の方を見る。そして、すぐに占い師の方を向く。その時の視線がこう語っていた。

 

―――まさかな~~と。

 

 一刀自身も、そんな大それた存在じゃないだろと、思っていた為にこればかりは信じなかった。しかし、この後に放った占い師の言葉が耳に残った。

 

 

「もし……お主が最後まで“雷という存在”ではなく、“その者”を信じる事が出来れば、新しき道が開けるかもしれぬ」

 

 

 話を聞き終わったが、皆一言も話さなかったがしばらくして華琳は一刀に、幾ばくかの礼をするように言ってきた。

 

 

「ふっふっ、最後の事は解らないけど乱世の奸雄大いに結構。その程度の覚悟が無いようではこの乱世に覇を唱えることなど出来はしない。そう言う事でしょう?」

 

「くくくっ……ワシの言葉をどう取るかも、お主の自由じゃ」

 

「(全く…この覇王さまは)」

 

 

 内心は毒づきながらも楽しそうに、口元を緩め謝礼金を占い師の台の上に置こうとした一刀の手を、占い師が軽く掴む。殺気も何も無かった為に一刀もあっさり捕まる。そして。

 

 

「……お主、覚悟を決めぬと…………死ぬぞ?」

 

「―――!?」

 

 

 華琳たちに聞こえ無い程、しかし物凄くドスの効いた声に飛びのこうとするが、掴まれた腕がはずれずに暴れる。華琳たちに助けてもらおうと後ろを見るが。

 

 

「……何だ、これ?」

 

 

一刀は自分の目を疑った。

 

華琳たちが……世界が止まっていた。鳥が空中で静止し、こけそうになっている子供、それ以外にも様々な物がテレビを録画した映像を一時停止したような状態で止まっていた。

 

 

そんな一刀を余所に、占い師は今度はしっかりと聞こえる声で続ける。

 

 

「お主は愛した者の為に全身全霊をかけて、この世界を壊す破壊者となろう。それこそ、愛した者と決別し嫌われ孤立したとしても、三国を乱し、それだけの為に傷つく事も厭わぬ屍になろう。そして、最期は愛した者の手にかかるか、若しくはこの世界の管理者によって葬られるか……どちらにしても悲愛となろう。もし、助かりたいのであれば…流れに抗わない事じゃ。そして、人を愛すな」

 

 

 暴れていた一刀が大人しくなる。その眼は占い師を見据え、その耳は一言たりとも聞き逃さないようにしていた。一刀はこの老人が只者では無い事を察する。そして、占い師は顔を近付けてこう言った。

 

 

―――気を付けなさい。“ガーディアン”達はすぐ近くまで来ています。

 

 

 それと同時に手が離され、一刀は後ろへと転んでしまう。その瞬間、世界に音が取り戻され後ろの華琳から『何をしてんの?』とあきれた声が響く。どうやら世界が動き出したようだ。

 

 一刀はすぐに立つと、服の埃を払い華琳の謝礼と共に自分の予言の分を上乗せして、イラついているかのように台に叩きつけた。華琳は先ほどまでのやり取りを知らないため、何故に一刀の機嫌が悪いのかは解らなかった。そして、占い師との別れ際にこう言って去った。

 

 

「予言の事は感謝する。だが俺はそんなもの信じないんだ。俺の旅の行先は俺だけが決める、そればかりは誰にも決めさせはしない。じゃあな」

 

 

 町の視察が終え、秋蘭が春蘭を褒めていた。“奸雄”ついてだ。だが、

 

 

「なぁ、北郷?奸雄ってなんだ?」

 

「「……はぁ」

 

「…お決まりだな」

 

 

 その後、意味を知った春蘭が暴れた事は言うまでもない。それを針を使い、気絶させた一刀の事も。

 

 

 

―――夜、一刀の部屋―――

 

 

一刀は寝台に入ったものの、予言の事が気になり寝付く事が出来ずにいた。あんな大言ははいたものの、人を愛すなとか、破壊者とか、三国を乱すなどと言われて気に止まないほど一刀も暢気な性格をしてはいなかった。

 

 

「一体、あの占い師は何者だ?英語を使っていたか、間違いなくあっち[正史]側のやつだろうが……あぁ!頭が痛いぜ。……にしても掴まれた時の感触」

 

 

 一刀は占い師に掴まれた手を擦る。あの時、とても懐かしい感じがした。それもごく最近…。だが、思い出す事が出来ず殆ど同じ時を過ごしていた朔に尋ねようと、寝台の横に立てかけていた『朔夜』を手にしようとしたが…手が空を切る。そこには鞘の『望月』しか無かった。

 

 

「……『朔夜』を落とした?いやいや、ここに立てかけた時には確かに有ったって!夢?そう夢だ。俺はもう寝ているんだ。だから」

 

 

 一刀は混乱すると、すぐに夢のせいにする癖があるようで寝なおそうと布団を被ろうとした時、窓の外に人の気配を感じ取った。近くにある『望月』を手に取ろうとしたが、ある人の気配と解った為に止めて窓を開け、

 

 

「…真夜中に散歩か、華琳?……って」

 

「……ちょっと中に入るわよ…」

 

 

 窓から中に侵入してきたのは、我らが主、曹猛徳こと華琳であった。しかし、一刀が驚いたのは真夜中の来客にではなくその恰好であった。華琳は何時ものツインテールを解いて髪をおろしていた。昼間、一刀が春蘭に送ったYシャツを着て。そして、寝台にちょこんと座っている華琳に一言。

 

 

「…王道。それは王が往く道」

 

「何を言ってんの?」

 

「まぁ、気にしなさんな。それよりその服どうしたんだ?」

 

 

 無理やり話題を変え、その服の事を聞いた。

 

簡単に説明すると、春蘭がこの服を持ってきた。

 

萌の伝道師(一刀)の事、指南を言った。

 

近くで書類整理をしていた桂花が妄想を膨らませ鼻血を噴射し、当然春蘭はお仕置き。

 

血で汚れた部屋を掃除させている為、他の寝床を探していた。

 

 

「…で、その恰好をして彷徨っている理由は?」

 

「ぐっ!要らない処で確信ついてくるわね。…私が何を着ていようと勝手でしょ!」

 

「……素直に可愛かったからっていえよ」

 

 

 またしても確信に近い所を突かれ、華琳が唸る。実際には一刀が述べた利点があった為だが、大部分は一刀が選んだという所だ。ここに来たのもその礼の様なものであったが、ここで格下に見られるのも面白くない為に、強がる。

 

 寝台に近づいてきた一刀の手を掴み、組み敷く。一刀自身も何の抵抗もせずに、寝台に組み敷かれその上に華琳が跨いで来る。その頬は赤みが射しており、月の光が白い肌と金色の髪を美しく照らす。その光景に一刀も心が揺らぐ。

 

 そんな一刀を余所に、華琳は聞かせるようにではなく、自身に言い聞かせるように言った。

 

 

「そう。これは罰なの。春蘭に要らない事を植え付け、町では旅芸人を口説き、春蘭たちの話を聞けばカゴ売りの子たちまで……罰が必要よね?えぇ、必要なのよ」

 

 

そう、言うと華琳は一刀の顔へ頭を近づけ、目を瞑る。一刀も最初は、茫然としていたがその場の流れがあったのか、華琳と唇を重ねるかのように頭を上げる。

 

 

 

―――お前みたいな餓鬼に教えてもらう事なんてねぇよ!!師範代なんて止めちまえ!!!

 

―――最期は愛した者の手にかかるか、若しくはこの世界の管理者によって葬られるか……どちらにしても悲愛となろう。もし、助かりたいのであれば…流れに抗わない事じゃ。そして、人を愛すな。

 

「ッ!!!?」

 

 

 しかし、ふと二つの心の突起が引っ掛かり、あと少しというとこで止まってしまう。華琳事態もそこでじっと待つかのように止まっていた。

 

 心の突起。一つは占い師に言われた予言。『人を愛すな』という言葉によるもの。一刀はどれだけ酷い事をしても、故意で人の心に傷を残す事まではする気は毛頭なかった……敵で無ければ。

 

 最後に昔の古傷…親しき者の裏切り。他者への拒絶。その二つの突起が一刀を停止させた。

 

 そして、一刀は華琳と距離を取るかのように愛想笑いを浮かべる。ワザと嫌われるように不気味な笑い声と共に、華琳の肩に触れるが…。

 

 

「…………」

 

「グッフッフッ……華琳さ~ん?何か反応してくれないと本当に私、怪しい人になってしましますよ?」

 

 

 ……反応なし。揺すってみるが人形のようにピクリともしない。様子がおかしい事に気づき、さらに強く揺すると今度は一刀の方に倒れ掛かってきた。

 

 

「!!?か、華琳さん!?どうしたんですか!?駄目ですよ!?こう言う事は大人になってからで、いえ、華琳が子供だと言いたいのではなく………華琳?」

 

「…………スッ~~……」

 

「酒臭…」

 

 

 華琳の寝息に混じっているお酒の匂いで、テンパっていた頭が覚める。どうやら顔が赤かったのはこれのせいらしい、艶めかしさと大胆な行動は華琳の常の為スル―する。とりあえず、覆いかぶさっていた華琳を起こさぬように寝台に寝かせ、目にかかっている前髪を手で靡かせる。すると、くすぐったそうな、でも心地よさそうな顔になる。

 

 

―――ドキッ。

 

 

「……華琳が好きなのか、俺は?」

 

 

 一刀は自身の心拍数が上昇するのを感じ、ふとそのような事を考えてしまった。

 

 

―――何処が?どうして?何で?

 

 

 目を瞑り、考える。しかし、いくら考えても答えは一向に出て来ない。何気にもう一度華琳の髪を撫でると、やはり心が落ち着く。

 

一刀は華琳の髪を撫でまるで父親が娘を見守るよな優しい笑みを浮かべながら、独り言のようにポツリ・ポツリと語り始めた。

 

 

「俺にはまだ、心の突起も消せなければ、占い師の言葉の意味すら理解できない。ここにいる意味も、華琳に対する思いすらも…。だけど」

 

 

 窓から覘く月を見る。とても大きくて白い満月だ。風が優しく、一刀と華琳の頬を撫でる。そして、意を決したように小さく…だが力強さを感じるような口調で言った。

 

 

「いつかこの答えを出してみせる。それまで、悪いが待っていてくれ。…御休み、タヌキ寝入りの御姫様」

 

「……(気づいてんなら空気ぐらい読みなさいよ。さ、最後までするとか…)」

 

 

 赤味が増す華琳を見て、一刀の悪戯心に火が点いた。そこで止めておけばよいものの。一刀は華琳の耳元に口を近づける。

 

 

「その姿…かわいいよー。ふ~~」

 

「!!!???~~~~~~~」

 

 

 その夜。輝く星空に雷雲が立ち込めた。

 

 

 

 

 

 

―――side out―――

 

 

「全く、あのバカは…。女心というものを理解しておらん」

 

「まるで昔の自分のようですか?」

 

 

一刀が華琳に悪戯して追い回されているのを、城の城壁の上から見守る者がいた。

 

それはあの占い師であった。そして、その後ろには今までいなかった者が声をかける。しかし、占い師は驚いた様子も見せずに振り向く。

 

そこには腰まである青い長髪を靡かせ、端整な顔立ち、アメジスト色の瞳のきりっとした眼つき。白い着物を着ていたが、本来の着物より下が太腿くらいまでしかなく、その大きな胸は隠し切れていない。丁度大事な部分のみを隠している状態の物を着用している女性が立っていた。ハッキリ言って華琳と同じく、百人中百人が美しいと答える美貌を持っていたが占い師は深い溜息をついた。

 

 

「随分大胆な服装だな…?歳を考えろよ、“朔夜”?」

 

「大きなお世話ですよ、許劭(きょしょう)殿…いえ有名な通り名の“許子将”とお呼びしますか?」

 

 

 “朔夜”と呼ばれた女性は、占い師の事を許子将と呼んだ。

 

 許劭(きょしょう)。字は子将で後漢末期の人物批評家であり、その影響力は絶大で彼に称賛された者は出世を、されなければ没落の道をたどったという。

 

 余談として、同郷の袁紹は許劭から批判されるのを怖れて華美な装いを改めたという。

 

 

「まさか、あなたがその“役”になるなんて…貂蝉があんなおっさんと知ったときと同等な脱力感ですよ」

 

「ワシとてやりたくてしているわけじゃねぇ!…全く、折角様子を見に来てみれば…歪な性格の“擬人化した刀”に、優柔不断な“孫”。“朔夜”よ、主に似て可愛げが無いな」

 

 

 “朔夜”が貂蝉から一刀を援護できるように貰った能力の一端…擬人化。一定の時間のみ人として行動ができる。これで消費するのは一刀の氣なのだが…。

 

 そして、許子将が“孫”と発言した時点で朔は確信した。昼間、あったときにまさかとは思った。昔、感じた氣がこんなところで感じるなんてと。

 

 許子将が被っている布を取る。朔は膝待つき、許子将の“役”を被っている者の本当の名を懐かしそうに口ずさんだ。

 

 

―――お久しぶりです。グランドマイスター・北郷 小十郎。

 

 

「…顔を上げろ、朔夜」

 

「はい」

 

 

 朔は心が躍っていた。昔はよく自分を持って沢山の田舎に“死合いの場”赴いてやり合った事を思い出していた。そして顔を上げる。

 

 そして、目を疑った。一刀がいれば『朔の呆けた顔はレアだ!!写真、写真!』と叫ぶほどに。そんな顔にした理由はというと。

 

 

「貴方は誰ですか?いや、答えなくていいですから私を謀った罪はその血で購なってもらえればそれで…。マイスターと同じ顔でも容赦しませんから。というか、その顔を見ているとつい力加減を間違えて殺シマス」

 

「決定文だな、おい…」

 

 

 感じ取った氣は確かに、小十郎のものであった。しかし、布を取った許子将の顔はというと……一刀そっくりであった。違う所と言えば、白い短髪を逆立てワイルドと言っていい程の顔付であった。歳は20~30位であった。だからこそ朔も混乱していた。自分が知っている小十郎は60を超えていたはずだから。

 

 呆けている朔の顔を見て、思わず小十郎もニヤつく。

 

 

「驚くのも無理はないだろう。なんせ、ワシ自身何が起きたのか理解していないし…………しようとも思わん!!!」

 

「この孫ありて、この祖父あり…ですか」

 

 

 ババーンという効果音が点きそうなほど仰け反り返る元主に、本気であきれる朔。しかし、それも一時的なものでありすぐにまじめな顔になり事の本題に入った。

 

 

「……で、本当は何をしにこの地へ赴いたのですか?」

 

「だから、一刀の様子を…分かった、話すから睨むな。可愛い顔が台無しだぞ?」

 

 

 ふざける様な態度に、少々不機嫌そうに朔は睨む小が十郎がその態度を変える事は無かった。そして、朔に背を向け再び一刀に視線を戻す。

 

 いつの間に追いかっけっこが終わっており、寝台で“一緒に”寝ており一刀は幸せそうな寝顔をしていた。その顔を見て小十郎は眼を細め、悲しそうに頭を垂らす。そして、ポツリと語った。

 

 

「どうして、一刀がこのような事に巻き込まれるのだ?」

 

「それも運命…」

 

 

 小十郎の独り言に朔が返答する。

 

 その返答に、悔しそうに城壁に拳を叩きつけ、叩きつけた所が“陥没”した。

 

 

「クソッ!…今は左慈と于吉を優先するとしよう。朔は一刀を二人に引き合わせないようにしてくれ。理由はいいな?」

 

「私の役目はマイスターを補助及び援護、そして成長を促す事。言われずともマイスターは私が護りますよ。グランドマスター」

 

 

 そう言うと朔は軽くお辞儀をする。少しして顔を上げるとそこには小十郎の姿は見えなかった。

 

 

「全く、風来坊な所は成長していませんね」

 

 

 朔は小さく笑うと、城壁に足をかけ空へと舞った。そのまま、一刀の部屋まで飛び起こさぬように『望月』の所まで行く。

 

 

〈(…………小十郎は行ったの?)〉

 

 

 ふと、念話で話しかけてくる者がいた。朔はその相手が分かっている為に驚くは無かった。そして、その相手の方を向き答える。

 

 

 

「(えぇ、何故か若返って居りました。今のマイスターにそっくりでしたよ。……“望月”御姉さま)」

 

 

 朔が話しかけた相手は、寝台の横に置いてある棚に立てかけてある鞘、『望月』であった。

 

『望月』自身は貂蝉により、擬人化・疑似人格など能力を与えられていたが、

 

 

〈(んぅ~~。……また夜か?一刀も就寝中…また一人…しょうがない…起こすわけにはいかないし)〉

 

 

 『望月』自身は、余り喋る事も無く完全夜行性な為に、早寝の一刀とは挨拶する暇が無い。朔も『望月』の事を話していない為、現在『議事人格の望月』という存在を知っているのは朔と貂蝉ぐらいな者であった。

 

 因みに朔が『望月』の事を話していないのは、本人が自分で話したいという進言があった為である。

 

 そのせいで一刀は『望月』の存在を知らない訳なのだが。

 

 「さて、私も寝るとします。マイスターの事をお願いしますね、御姉さま」

 

〈(……うん、…任せて。朔は眠る)〉

 

 

 朔の身体が青白く光り、人から刀へと形を変える。そして、望月に納まる。

 

 そうして、この夜は更けていった。

 

 

 

―――『煌めく雷(神鳴[かみなり])には扱いには気をつけなされ。うまく扱えば、お主の国を護る守護神…雷[いかずち]となろう。しかし、一つ間違えば己が国を脅かす悪鬼羅刹になろう…』とは、いったい何を意味するのか?

 

―――ガーディアンとは?

 

―――許子将―小十郎の目的とは?

 

 これらが何を意味し、何が起こるかは神すら知りえぬ事。唯一つ…全ての鍵は、一刀自身が握っている事だけである。

 

 

「ん~?光里さん、その珈琲は?緑色の珈琲なんて知らないから!……夜葉、飲め~」

 

 

 本人の預かり知らないとこで…だが。

 

 

 

 

 

 

――――  謝 罪  ――――

 

 

 更新が遅れてしまいました。言い訳はしません!ですが、謝罪の意味を込め、

今作の没ネタを幾つか掲載します。本当に済みませんでした。

 

 

 

―――李典×爆発=俺、参上!!―――

 

 

「ちょ、御兄さん!?危なッ!!?」

 

「えっ?」

 

 

―――チュドーンッ!!!

 

 

 街中で爆発し、煙幕が立ち込める…。皆が死んだ!?殺人ッ!?事故と騒ぐ中、不吉な于吉?はこんな事が起きようとはと嬉しそうに嘲笑っていた。

 

 しかし、誰も気づく者が居なかった。爆発が起こる瞬間、光る蹴鞠くらいの球体3つがおりったっていた事を…。

 

 煙が晴れる中で一人の民が、時折赤く光る稲妻が見える為に首を捻った。自分の目がおかしくなったかと最初は思っていたが、そうではない事にこの後気付く。

 

煙が完全に晴れ、一刀と李典の姿が確認できた。……しかし、さっきまでの二人では無い。気配どころか、姿・服装まで違った。

 

一刀は髪を逆立って赤いメッシュが入り、赤いシャツの上に黒い革ジャンとズボン。そして、顔を上げると野性的、若しくは極悪そうな笑いを浮かべ、黒から赤玉に変化した瞳を煌めかせ右親指を立て自分を指し、左腕を後ろへと伸ばす。

 

 

「俺!」

 

 

そのまま、姿勢を低くして右腕を後ろへ。左腕を前へ出し、奇妙な構えを取るそして。

 

 

「参上!!」

 

 

 大声でそう宣告した。

 

 

一方の李典はというと、ボサボサだった髪が二房から一房に変化して金色のメッシュが入っており、瞳も金色に変化していた。服装はこの国では珍しい和服に身を包み、番傘を右肩に担ぎ、左手を顎に添え、首を鳴らす。

 

 

――ゴキッ!!

 

 

「ワイの強さにお前が泣いた…。涙はこれで拭いとき」

 

 

何処からか出てきた紙を目の前の一刀へと突きだすがその手を弾き、睨みつけてくる。

 

 

「何で泣かなきゃいけねぇんだよ、バカ熊!?」

 

「せやかてモモヒキ、これは御約束やからな~」

 

「んな事訊いて…んぅ?待て、この感じは…あいつか!?」

 

 

 一刀は犬のように鼻をひくつかせると、少し離れた店…于吉が隠れている所へと走り出した。于吉もよくは解らないが今、存在がばれるのは不味いのでここは引こうと空へと舞うが、今の一刀はそれすらも許さなかった。

 

 于吉が飛ぶ姿見えると、舌打ちをしながら“偶然『蹴ってください』と言わんばかりの漬物石が落ちていた”ので于吉に向かい蹴りだす。掛け声は勿論。

 

 

「キモロン毛が空を飛ぶな!!!」

 

「キモッ!?失敬な!これは左慈好みの…ってブラッァァァ!!!?」

 

 

 振り返るがその時には眼前まで迫っている漬物石によって、強制的に沈黙させられた。

 

 当たった事に喜びガッツポーズを取る一刀の肩を叩く者がいた。振り返るとそこには我らが覇王、華琳だった…。ただ、ツインテールを解き、青いメッシュが入っており黒淵の伊達眼鏡の向こうに青い瞳を煌めかせいた。服装は……作者の表現不足の為に『仮面ライダーディケイドの夏みかんにウラタロスが憑いた時の服装だと記します』。そして、ため息交じりに一刀を諭す。

 

 

「はぁ~~。先輩、僕たちの目的忘れていないよね?」

 

「目的?あ、あぁ。勿論覚えているとも!御スケベカメ君…」

 

「忘れていたんやろな~~」

 

 

 さてさて、彼らの目的はいったい何なのだろうか?

 

 

 

―――没理由。于吉達の出番がここで潰えるから…。あと、脱線。

 

 

―――主の為に―――

 

 

 『伝卸煌』にて。

 

 

「光里…私はね、不味い珈琲には一銭も…」

 

「アウト!カット!リテイク!!落ちが見えてる!!!」

 

 

 華琳がキザっぽく言っているところに、“あの”オチを予想してしまう一刀。それを何としても阻止しようとしたが、空気の読めない…基、ネタを知らない番犬二人に邪魔をされた。

 

そして、光里が珈琲を出す。それからは……華琳のプライバシーの為にも記す事はしないでおきたい。

 

ただ、一刀は華琳に幻滅し、華琳は本来の売価の50倍払い、番犬たちは夢と思いこもうとしていた。

 

 

―――没理由。…察していただければ幸いです。

 

 

 

―――補足―――

 

 

・曹嵩[そうすう]

 

 今作品での曹嵩は、女性という設定で行かせて頂きました。孫堅も女性でしたので良いかなと。

 私的には華琳と同じく自身家で夫を愛しているのに、素直になれない。そんな感じです。夫もそれ理解して優しいのだろうか?

 

・エンペラ不異羽

 

 意味の理解できた方はいたでしょうか? A:エンペラ〈ふいば〉→フィーバーです。解り難くすみません。

 

 

・許劭(きょしょう)―許子将―:北郷 小十郎[Hongou Kjurou]  Age:67  イメージCV:中○ 譲治―― 一言「さぁ、食事の時間だ」

 

 一刀の祖父であり、天衣無法流の元師範代。

 一刀に師範代を譲ってはいるが、まだまだ現役。一刀以上に“型”を使いこなしその中でも水と氷の型は、群を抜いており強さでは呂布すら軽くあしらえるほどである。

 こう、スパパーンって具合に…。

 この外史においては許子将という“役”を演じており、現段階では行動理由は不明。しかし、朔の“擬人化”に会話機能に驚かない理由から貂蝉側の人物である事は明白。そして何故か若返っているのは何か理由があるのか?全ては謎である。

 

 性格

破天荒で年齢なんか関係無いぜ、ベイベー!な感じです。しかし、確りと場を弁え冷静な判断をし知らないうちに朔を口説く所はさすが一刀の祖父!

追って更新予定。

 

 小十郎の一言「え?一言?……俺に触れると死ぬぞ?」

 

 

・望月  イメージCV:田村ゆ○り――口調「ひぐらし○鳴く頃に」の本性を現した古○ 梨花―― 一言「来なよ、鉈女」

 

 ついに謎のベールを脱ぎだした『望月』。あんまり喋る事も無く、夜行性の為に一刀と話す機会が無い可愛そうな鞘。だが実際は話すのが苦手で未だに、一刀とどう話そうかとか考え中。

 口調は朔とは正反対できつさを感じさせるが同時に慈愛さも兼ね備えている為、相手を不快にさせる事はない。

 

性格

主…一刀大好きっ子で一刀に仇名す者がいれば速攻で、擬人化し殺そうとするが主の成長の為に“不本意”ながらしない。因みに一刀が他の女性から好かれていても、ヤキモチは焼いても『一刀だからしょうがない』と割と大人の威厳と懐の大きさを見せつけてくれる。

しかしながら、朔が一刀を困らせる事をすれば確りと注意し言う事効かないときは、御仕置きをする事もある。その為、朔は半ば望月には逆らう事は無い。

 

 

望月の一言「……一刀をよろしく…しなくてもいいかも?」

 

 

 

おまけ

 

朔さんどうぞ。

 

 朔の一言「腸を~ぶちまけろ~~。声が違えど気にしては負けです♪」

 

 次、一刀さん。因みに貴方のイメージCVは保志 総○郎さんか関 ○彦さんです。

 

「取り敢えず、俺、参上!!…そして、シェル・ブリット・バーストぉぉぉ!!!あと、一言。俺は鬼畜じゃねぇ!!」

 

 

 以上。これからも御贔屓に。

 


 
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