No.75221

天の御遣い帰還する

ぴかさん

真・恋姫無双の蜀エンディングのアフターストーリーです。
前作の真エンディングのようなものが真・恋姫無双でもあればいいなという感じで書きました。
まずは冒頭部分になります。
続きを書くかはまだ未定です。

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2009-05-23 23:12:53 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:23782   閲覧ユーザー数:16753

 

ピチャ。

 

???「うーん。」

 

鼻の頭に落ちる水しぶきで目を覚ました。

と、ここで周りの異様な景色に驚く。

 

目の前に広がるのは緑に染まる木々。

その奥から燦々と照らし出される太陽の光。

それと青い空に白い雲。

ここはまさに屋外であった。

 

???「なんで、こんなところにいるんだ???」

 

体を起き上がらせ、改めて周りを見渡す。

舗装された道路に並木道。

よく見れば、その奥には寮と呼ぶにはあまりにもおんぼろな聖フランチェスカの男子寮。

 

???「そっか・・・、戻って来ちゃったのか・・・。」

 

驚きよりも落胆の方が大きかった。

立ち上がり、服の埃を払いながら昨日の事を思い出していた。

 

昨日は、三国同盟記念の式典があり蜀の首都成都で盛大に行われていた。

一刀ももちろん参加し、蜀を始め魏や呉の武将達とも交流を深めた。

というより、遊ばれていた。

ヘトヘトになり、その夜は自室に戻ってそのままばったり状態だった。

そして、起きてみるとこの状況である。

 

一刀「参ったなぁ・・・。」

 

いつかは戻るという予感は常にあった。

だが、こうも唐突に戻ってくるとは予想外で、結局誰にもお別れを言ってない。

 

一刀「悲しませちゃってるかもなぁ。」

 

自惚れなどではなく、蜀のみんなに好かれていた自信はある。

だからこそ、お別れも言えずにこっちに帰ってきてしまった事に、驚きや悲しみよりも落胆の感情が大きかった。

 

一刀「まあ、こうしていても仕方ないよな。」

 

とりあえず、寮の自分の部屋に向かって歩き始めた。

???「ほぉ、あんまり驚いておらんようじゃな。」

一刀「!?」

 

声のした方向へ向いてみた。

すると、そこにはこぢんまりとした子が立っていた。

身長は朱里や雛里くらいだろうか。

体つきも彼女たちと似たような雰囲気ではあったが、胸元には桃香並みの脂肪分があり、そこだけ別の生き物のように思えた。

一刀の視線も自然とそこに注視してしまう。

 

???「わしも対象にするとは。さすが種馬と呼ばれるだけの事はあるのぉ。」

 

この発言に一刀はあわてて視線を逸らした。

そして、乾いた笑いをこぼす。

 

???「まぁ、気にするな。健全な男なら当然の反応じゃろう。」

一刀「はぁ・・・。」

 

肯定するのも否定するのも何となく気が引け、曖昧な回答をしてしまった。

 

一刀「で、あなたは誰です?」

 

相手は自分の事を知っているようだが、一刀はこの子に見覚えがない。

 

???「おっと、そうじゃった。わしは管輅じゃ。」

一刀「管輅!?」

 

管輅と言えば、あっちの世界で天の御遣いが流星に乗って現れ乱世を収めるという占いをした人物だ。

実際に会ったわけではないが、何となく年老いた老人のイメージがあったがこんな女の子だったとは・・・。

一刀は改めて驚いた。

 

管輅「驚くのは自由じゃがな。あんまり時間がない。」

一刀「時間がない?」

 

何の時間だろう。

 

管輅「そう・・・。わしはそう長くここに居られないのでな。」

一刀「そうなんですか。。。」

管輅「じゃからな、簡単に言う。おぬしも気付いておるとは思うが、ここは元の世界。つまり、元々おぬしが住んでいた世界じゃ。」

一刀「やっぱり・・・。」

 

判ってはいたが、改めて言われると言葉にならない想いが溢れてくる。

 

管輅「じゃがな、ここはおぬしの望んだ世界でもある。」

一刀「望んだ世界?」

管輅「そう。元の世界へ戻ってもなお、おぬしの望む事・・・。」

一刀「俺の望み・・・まさか。」

 

一つの結論に達した。

 

管輅「気付きおったか。本来あり得ない事ではあるが、お主の想いはそこまで強いのだろうな。」

一刀「・・・。」

管輅「これから大変じゃぞ。じゃが、おぬしの事だ。何とでもなろう。」

 

そう言うと管輅は、手を振り歩き始めた。

 

一刀「あの・・・、ありがとう・・・でいいんだよね?」

 

一刀の言葉に無言で手を振り続ける管輅。

だが、その後振り返り

 

管輅「また出会う事もあろう。その時は・・・そうさな、おぬしのハーレムにわしも加えてもらおうかのぉ。」

一刀「えっ!?」

管輅「はははは・・・」

 

大きな笑いと共に管輅の姿が小さくなり、一陣の風が吹いたかと思うと急に居なくなってしまった。

 

一刀(ありがとう・・・)

 

急にいなくなって驚いたが、心の中で改めてお礼の言葉を言った。

 

管輅が居なくなった方向をしばらく眺めていると

 

???「「ご主人様ーー!!」」

???「お兄ちゃーん!!」

 

反対側から声がした。

 

一刀が振り返ると・・・

 

一刀「桃香!!愛紗!!鈴々!!」

 

桃園で誓い合った3人が自分へ走ってきていた。

しばらくして桃香が一刀に抱きつく。

愛紗は、その横で涙を流し、鈴々も笑顔だったがその目には涙がたまっていた。

しばらく抱き合っていた2人だったが・・・

 

愛紗「こほんっ!!いつまで抱き合っているおつもりですか?」

一刀・桃香「あっ!!」

 

途端に離れる2人。

照れる一刀と桃香。

その横でふくれっ面の愛紗。

そして、笑顔の鈴々。

よく見慣れているが、なんだか懐かしい光景がそこには広がっていた。

 

一刀「桃香達はどうしてここに?」

 

管輅が言っていた自分が望んだ世界とはこういう事なんだろうと判ってはいたが、あえて聞いてみた。

 

桃香「よく判らないの。気が付くとあの先で眠っていて。」

愛紗「その隣に私と。」

鈴々「鈴々がいたのだ。」

一刀「そっか・・・。他のみんなは?」

 

自分が望んだ世界ならみんなも居るはずだ。

 

桃香「・・・ごめんなさい。私のそばには愛紗ちゃんと鈴々ちゃんしか居なかったから、他のみんなは判らないの。」

 

悲しそうに言う桃香の肩に手を置き

 

一刀「そうなんだ。でも、きっと大丈夫さ。」

 

満面の笑顔で励ます一刀。

 

桃香「うん。そうだよね。」

 

一刀の励ましに笑顔になる桃香。

 

愛紗「ところで、ご主人様。ここは一体どこなのですか?」

鈴々「そうなのだ。木がこんな風に並んでいる所、鈴々知らないのだ。」

桃香「うん。ご主人様は知ってるの?」

一刀「ああ、ここは俺が元々居た世界だよ。」

桃香・愛紗・鈴々「えー!?」

 

三者三様の驚きっぷりに思わず笑ってしまう一刀。

 

桃香「って事は、ここは天の世界って事?すっごーい!!」

 

愛紗の手を掴みはしゃぐ桃香。

愛紗も満更ではないようだがすぐに険しい顔になった。

 

愛紗「天の世界なのはいいのですが、私達はこれからどうすればいいのでしょうか?」

 

愛紗の疑問はもっともだった。

だが、その回答は意外な所から出された。

 

鈴々「大丈夫なのだ。」

愛紗「大丈夫って・・・。鈴々、判っているのか?」

鈴々「判っているのだ。お兄ちゃんが全て解決してくれるのだ!!」

一刀「俺?」

 

突然振られ驚いたが、よく考えたら一刀しかこの世界の事は判らない。

ここはリーダーシップを発揮しなければならないだろう。

 

一刀「そうだな。この世界の事は俺にしか判らないし・・・。」

桃香「そうそう。ご主人様さえいれば何とかなるって。」

愛紗「桃香様まで・・・。ですが・・・。」

桃香「だって、ご主人様が居たおかげで大陸が平和になったんだもん。今回だって何とかなるって。」

 

愛紗の心配性と桃香の楽観論。

このバランスが蜀のいい点なのかもしれない。

だが、あんまり心配させておくのも悪い。

一刀は、愛紗の肩に手を置いた。

 

一刀「大丈夫だよ、愛紗。俺に任せて。」

 

そして、愛紗をぐっを抱きしめる。

 

愛紗「ご主人様・・・」

 

頬を赤くして呆けてしまう愛紗。

 

鈴々「むー!!愛紗ばっかりずるいのだ!!」

一刀「ごめんな。」

 

鈴々も抱きしめ頭を撫でた。

 

鈴々「えへへ・・・。」

桃香「ご主人様は相変わらずだなぁ。」

 

桃香の発言に体を離す一刀。

その途端にその場に笑いが溢れた。

 

しばらくして、改めて一刀が話し出した。

 

一刀「これからどうするかは考えなきゃいけないけど、まずは他のみんなを捜そう。多分、みんなもこっちの世界に来ているはずだ。」

桃香「そうだね。またみんなで楽しくやりたいもんね。」

愛紗「はい。」

鈴々「鈴々も頑張って捜すのだ!!」

 

手がかりも根拠もない。

ただ、勘で歩き始める一刀。

それを追いかけるように歩き始めた桃香、愛紗、鈴々の3人。

 

4人はこれからどんな物語を紡いでいくのだろう。

それは誰にも判らない。

その物語は、いつか語られるのであろう。

それがいつになるか・・・それこそ誰にも判らないのである。

 

 
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