No.75204

恋姫無双 袁術ルート 第三話 江東の小覇王

こんばんは、ファンネルです。

美羽ルートも第三話目を迎えました。

少し、一刀の知略、政略、軍略が上がってしまったかもしれません。

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2009-05-23 22:15:56 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:37804   閲覧ユーザー数:27746

第三話 江東の小覇王

 

 

真名か・・・初めて聞く言葉だった。

 

俺の名前は、北郷一刀。聖フランチェスカ学園の二年生。ひょんなことからこの世界にきて、天の御使いとして袁術の拾われた者だ。美羽は、俺のことを何の疑いもなく信じ、信頼してくれている。

 

だが、天の御使いだか何だか知らないが、つい最近現れた奴がいきなり王の側近になることは、他の文官、武官にとって面白くなかったらしい。

 

当然と言えば当然だが・・・

 

俺は、とにかくこの世界で生き残れるように知識を蓄えようと考えた。しかし、文字が読めないのでまず文字の読み書きから始めようと思った。

 

(張勲さんはどこかな~?)

 

その辺の文官さんたちに教わろうとしたのだがいつもそっぽ向かれてしまう。だから張勲さんを訪ねようと思い、彼女の政務室を訪ねたのだ。

 

「あら、何か御用ですか?一刀さん。」

「は、張勲さん。実は・・・」

「七乃でいいですよ♪」

「え?」

「私の真名です。呼んでもいいのですよ。」

「いいんですか?大切な名前なのに。」

「もちろんですよ、美羽お嬢さまも真名をお許しになったのですから。だから、私のことも真名で呼んでくださいね。」

「はい、わかりました。じゃあ、七乃さん、俺この世界の文字が読めないのです。だから七乃さんに基本的なことでもいいから教えてもらおうと思いまして。」

「あらあら~、それはとてもちょうどいいですね♪」

「え?」

「そろそろ、時間なので私についてきてくださいね。」

 

 

そう言われて、着いたのが美羽の私室だった。

 

「お嬢さま~、さ、楽しい楽しいお勉強の時間が始まりますよ。」

 

「うぐ!む、胸が苦しい。あ、頭もいたい~!!」

 

そういうと、美羽は、あまりにもわざとらしく苦しみだした。

 

「七乃、妾はもしかしたら病気なのかも知れぬ。勉強が始まるといつもきまって頭が痛くなってくるのじゃ!」

 

ゼッテー病気じゃねー!!

 

「まあ!それは、大変な病気ですね。いけません!今すぐ、お医者さまに診てもらってものすごく苦~いお薬を飲んで早く治しましょうね~」

「く、薬!な、七乃?そんな大げさにせんでもよい!すこしすれば頭痛はなくなるから!」

 

うわぁーーー!わかりやす!

 

「お嬢さま、ばかなことを言ってないで、さっさと始めますよ。だいじょうぶです。今回は一刀さんも一緒にお勉強するのですから。」

「なぬ、一刀もいっしょにべんきょうするのか?」

 

美羽は俺の方を見てきた。

 

「ああ。まだここの文字が読めないから七乃さんに教わろうと思ってな。」

「そ、そうなのか~・・・」

 

俺もすこし、いじわるしてみたくなった。

 

「でも、残念だな。美羽の調子悪くて。おれは、お前とお勉強ができると楽しみのしていたのに。・・・かの有名な袁術さまの教えを請いたいと思っていたのにな~。本当に残念だ。」

 

俺は、本当に残念そうな表情で言った。

 

「ほえ?」

「七乃さん、美羽は本当に調子が悪そうだ。俺の部屋にきて勉強を教えてくれませんか?」

 

七乃さんにウィンクするとどうやら俺の思惑を察したようだ。

 

「そうですね~、わかりました♪一生懸命お勉強したらご褒美に甘~いハチミツ水を御馳走しますね。」

「ありがとうございます。」

 

美羽はバツの悪そうなしかめツラになった。

 

「な、なんと!!だ、だめじゃ!だめじゃだめじゃだめじゃ!!妾もはちみつ水がほしいのじゃ!」

「でも、調子が悪いんだよね。だめだよ、調子が悪い時に甘いものをのんじゃ。」

 

本当は、はちみつはとても体にいいんだけどね。そんなことも知らずに美羽は

 

「もうへいきなのじゃ!さ、七乃。早く妾に勉強をおしえてたも!一刀もこっちに来るのじゃ!」

 

うわああああ///、めちゃくちゃかわいい。七乃さんも顔がなごんでいる。・・・・癖になるな、これは!

 

「よろしくな、先輩。」

「うむ、わからないことがあたったらあったら何でも聞くが良い。」

 

 

こんな感じの勉強会が何週間か続いた。美羽もあまり字が読めなくて俺と同じような絵本から始まった。

人間とは、不思議なものだ。早く覚えなくては、と危機感を持ちながら覚えるとものすごい集中力がででる。

おかげで、ほんの一カ月くらいで最初の絵本はもちろん、短編小説くらい読めるまでに上達した。今では、美羽に勉強を教えているくらいだ。

 

ここの生活も慣れてきた。前は文官たちにそっぽ向かれていたのに今では仕事を手伝ったり、ともに意見を言い合えるようにもなってきた。

 

しかし、知識を取り込むにつれ、この大陸の情勢がわかってきた。朝廷の衰弱、増税により苦しみ続ける民たち、各諸侯たちによる権力争い、そしてそれらの犠牲になっていく者たち。

 

ここ、南陽の都市でも同じだった。街ゆく人たちには覇気というものが感じられなかった。道行く人たちに聞けば税金が高すぎる、収穫物も献上品として取り上げられる、などと苦情が多かった。中には美羽の悪口を言う人たちもあちこちで見える

美羽は確かにお調子者だし、何事も一番じゃなきゃ気が済まない厄介な性格だ。でも、本当は心優しい女の子だということが俺にはわかる。でなきゃ、見ず知らずの人間を拾って召抱えるなんてありえない。俺が天の御使いだからと言う奴もいよう。だけど美羽は俺を天の御使いとしては扱わず、一人の人間として見ていてくれる。そんな子がこんな暴政をするはずがない。

 

俺は思い切って七乃さんに聞いてみた。下手をしたら反逆罪になるかもしれなかったのだが聞かずにはいられない。

 

「七乃さん、大切な話があります。」

 

 

七乃さんも俺が真剣なのを悟り、いつものお調子風ではなく真剣に向き合ってくれた。

民たちの声を代弁するかのように俺は訴えていた。七乃さんも静かに俺の話を聞いてくれた。

 

「工夫次第では必ず良策になります。どうですか?七乃さん?」

 

・・・・長い沈黙の後、七乃さんの一言

 

「無理ですね。」

 

なぜ?七乃さんならわかってくれるとおもっていたのに!

 

「美羽は、お調子者ですがとても優しい子です。あの子だってきちんと話せばわかってくれますよ!」

 

俺は思わず声を張り上げてしまった。

 

「お嬢さまのことではありません。問題なのは、うちの文官たちなんです~。」

 

・・・・え?

 

「お嬢さまは、意外と貧乏性なんですよ♡ どんなに安い材料で作った料理でも、私の作った料理はおいしそうに食べてくれますし。それに文字の読み書きのできないお人が国政なんてできると思いますか?」

 

「えっと・・・それは美羽はこの国の政策に全く携わっていないということですか?」

 

「はい♡、なんで、あんな小さな子が太守になっているのか考えたことありません?何も知らない無垢な子供の方が御しやすいからなんですよ。文官さんたちは自分たちの利益が上がるためなら何でもしますからね~。たぶん、自分の都合のいいことばかりを教え込んでるんでしょうね~。それにお嬢さまなら、ちょっとその気にさせればどんな政策でも許可してしまうでしょうし。」

 

「・・・七乃さんは全部知っていたのですか?美羽がお飾りな太守だと、この街を暗くした本当の元凶は美羽の我がままでは無くここの文官だと。」

「もちろんですよ~。大体ハチミツくらいで国が傾くと思いますか?」

 

そりゃそうだ。

 

「どうして、あなたが国政を行わないのですか!?あなたなら、もっと効率よく税収と軍備の拡張ができるはずだ!」

「う~ん、しょせん私は武官ですしね~。政策面では文官さんたちに頭が上がらないし。それに~・・・私は美羽さま命ですしね♡。美羽さまがうんと仰ったら私は従うだけです。」

 

 

・・・・・

 

「そんな・・・」

 

俺は、目の前が真っ暗になった。俺は歴史を知っている。袁術は民たちの反乱によってその生涯を終えた。まさに俺の知っている歴史通りになっている。民たちの不満は募る一方だ。何も知らない美羽は、何も知らないまま責任を負わされてしまう。あんなかわいい女の子が・・・・。頼み綱の七乃さんも動けないなんてどうすればいいんだ!・・・。

 

「一刀さん、私は美羽さま命です。だから美羽さま以外の人の命令は絶対に聞きません。逆に美羽さまの命令なら善政だろうと悪政だろうとどんな手を使っても遂行しますけどね♪」

「えっ・・・それってどういう・・・・そうか!!」

 

そうだ!そうだよ!!七乃さんも気づいたようで微笑んでくれた。

 

 

そう・・・俺が美羽を導くんだ!

 

 

 

 

 

数日後、俺は、美羽を連れて街に出かけた。美羽はいつものドレスではなくそこらにいる町娘のような格好をしていた。しかし、美羽はとても綺麗な容姿をしているからこれでもかなりめだつ。七乃さん意外と街に行くのは初めてらしい。

 

「今日は、いっぱい楽しむのじゃ!」

 

美羽はうきうき気分ではしゃいでいたが俺には別の思惑がった。今の街の現状、君主としての責任、などを実感してほしかった。

俺の思惑は簡単なほど上手くいった。どこに行っても美羽、袁術の影口を叩くやつしかいなかった。もちろん美羽は激昂したが、抑えさせてもらった。

 

「一刀、なぜ止めるのじゃ!あ奴らは妾を馬鹿にしておるのだぞ。何が脳なし君主じゃ!あんな奴ら七乃に言って処刑してくれる!!」

「そんなこと言ったら、南陽に人っ子ひとりいなくなってしまうよ。それに、どうして文句も言われているのか考えてみるのも君主さまの務めだよ。

「そんなこと知らんのじゃ!妾は何もしなくても妾の優秀な文官たちが処理してくれるからいいのじゃ。」

「美羽。さっきの人たちはやれ税金が高い、やれ献上物が多いと愚痴ってなかったか?」

「なんと!!あ奴ら、君主である妾に貢ぐのが不満とは!!ますますもって許せん奴らじゃ!」

 

・・・・・・だめだこいつ、はやく何とかしないと!!

 

俺は、ひとまず人気のいない場所に美羽を連れて行ってなだめてあげた。その上で俺は美羽に単刀直入に言うことにした。

 

「美羽、今からでも遅くないよ。国政を見直すべきだ。」

「そんなことしなくても、文官たち任せておけばよいのじゃ。」

「まだ気付かないのか?その文官たちに任せた結果がこれなんだぞ。お前はていの良いお飾りに仕立て上げられているんだ!」

「なっ!!お飾りじゃと!妾は飾りなんかじゃない!」

「そうだ!おまえはお飾りなんかじゃない!おまえは優しくて、部下思いの優しい女の子だ。俺は知っている。だけどそんなお前が陰口をたたかれているなんて我慢ならない!」

 

俺は、少し興奮気味に言ってしまった。

 

 

「か、一刀・・・」

「なあ、美羽。一緒に証明しないか?おまえは本当は優しい子なんだってことを。大陸中のみんなに教えてやるんだよ。」

「で、でも、いったいどうやるのじゃ?」

「俺に任せてくれ!俺なら君を立派な君主にしてあげられる。影口なんて言わせない。俺を信じてくれ、美羽!」

 

美羽は、少しの間何もしゃべらなかったが俺は答えを待っていた。

 

「うむ!妾は一刀を信じるぞよ!」

「ありがとう、美羽。」

 

 

俺は、まず手始めに悪徳文官たちの粛清を始めた。国庫の裏帳簿を回収し、国の金を横領、着服していたものを会議の中ですべて暴露した。そしてそれに携わっていたすべての文官を免職にした。美羽も自分のお金が知らないうちに盗まれていたと知り激怒する。

 

・・・怒るのはそこじゃない気がするけど・・・

 

多数の文官が免職になり、政務が機能しなくなったがかえってそちらの方がよかったのかもしれない。今まで行っていた悪徳文官たちの政策はすべて廃棄。法律も税収も一からやり直した。

 

まずは税金の見直しから始めることにした。土地の所有者を正確に決め、その土地からとれる収穫量で税の重さを決める。豊作なら重くなるが、不作なら軽くなる。いわゆる太閤検地だ。

 

太閤検地の実施により兵糧を絶やさず、小田原城を20万の兵で囲み北条氏を滅亡させたのはあまりにも有名だ。

 

時間がかかると思っていたが、前の悪徳文官たちが自分たちの横領がばれないようにかなり正確な検地表を持っていた。この点に関してはよくやったと思った。

 

次に、俺は、消費税なる法律を設立した。

物価を高くして高くした分を税金にするということだ。

これにはさすがに反対意見が多かった。しかし、代わりに献上税を廃止した。

 

この時代は、土地でとれる収穫物のほかにその売り上げ料の約2割を徴収してた。もちろん徴収者中にはこれを着服するものも多かった。

 

それら対策のために作ったのだが、一番の目的は『君主さま自ら国のために税金を払っている』というイメージアップのためだ。美羽はただ物価が高くなった程度にしか思っていないだろうけど・・・わかる奴はしっかりわかっているようだ。

 

大幅な、政策変更のため最初は混乱したが、優秀な文官さんたちや七乃さんのおかげで結果は大成功だった。半年ほどで景気は嘘のように上がり町にも活気が戻った。

 

 

 

・・・やるな、日本教育。

 

 

それから、数か月がたち、俺たちのもとにものすごい大事件が飛び込んできた。遠征に行っていた孫堅の兵糧が底をつき大苦戦をしている、すぐに兵糧を提供してくれ。という情報だった。

 

「さ~て、どうしましょうか♪美羽さま?」

「ほっとけばよかろう、だいたい妾は孫堅の奴が大っきらいなのじゃ!ちょっと強いからってみんなにチヤホヤされて・・・」

 

うわああ~簡単に言うよ。孫堅って言ったら劉備や曹操に並び立つ英傑中の英傑じゃないか。

 

「でも断ったら、孫堅たちの軍に意趣返しされるぞ。美羽、幸い俺たちは余裕がある。ここでお前の器をみんなに見せてやってもいいんじゃないか?」

「でもの~・・・」

「俺の世界には『敵に塩を送る』という言葉がある。俺の国の武将の上杉というものは敵対する武田軍に対して~~~~~~~~~という話だ。」

 

俺は、自分の国の武将たちの話を聞かせてあげた。

 

「はあ~なかなか出来ることじゃありませんね~」

 

さすが七乃さん。分かってくれるね、このかっこよさが。

 

「どうせ、贈られるならハチミツのほうがよいのじゃ!」

 

そんなのお前くらいだよ、美羽。それと漢字が違うよ。

 

「ま~、一刀が送った方がよいと言うのなら送ってやるのじゃ。さっそく準備するのじゃ。」

「ああ。美羽、立派になったな。かっこいいぞ。」

「ふふーん、当り前じゃ。でももっと褒めてもよいぞ。」

「ああ。あとでゆっくり褒めさせてくれ。じゃ、行くってくるよ。」

 

俺は、兵を従え兵糧を運びこんでいった。しかし、時はすでに遅かった。肝心の孫堅は劉表に打ち取られてしまっていた。軍の大部分は兵糧にありつけなんとか態勢は整ったものの撤退は逃れなかった。

 

俺は、ひとまず美羽たちのもとに戻り、事の報告をした。

 

「なんと!あやつ死んでしもうたのか!?」

「ああ、横から不意打ちを食らったらしい。」

「兵糧の無駄遣いでしたかね~?」

「そうでもないよ、彼らに貸しができたのだから。」

「貸し、ですか?」

「ああ、これで孫呉の軍をうちの陣営に取り込むことができるかもしれない。」

「本当ですか~?」

「なんと!あの孫堅の軍をか?」

「ああ、俺に考えがある、任せてもらえないだろうか。」

「うむうむ、一刀にすべて任せるぞよ。」

「ありがとう、美羽。吉報を待っていてくれ。」

 

俺は、建業へと向かった。正直これは賭けでしかなかった。俺は歴史を知っている。孫堅の子供の孫策は最後に袁術を裏切る。しかし、これから起きるであろう戦乱を生き残るためにはどうしても孫策たちが必要だから。

 

 

 

呉軍、建業

 

 

「雪連、袁術からの使者がきたわ。」

 

「袁術から?あの胸くそ悪いガキがいったい何の用かしら?」

 

「そういうな、雪蓮。彼らのおかげで我らの軍は一命を取り留めたのだから。」

 

「そうなんだけどさ~、どうも好きになれないのよね~。」

 

「使者の前でそんなこと言うなよ。」

 

「わかっているわよ、冥林。で、誰が来たの?あのバカな張勲?」

 

「いいえ、意外というか、今都で噂されている天の御使いらしい。」

 

「へー。袁術にしてはまともな人間を寄こしてきたじゃない。ま、会ってみましょうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく・・・

 

 

あとがき

 

 

こんばんわ、ファンネルです。

 

第三話です。

 

SSを書くのってこんなに面白いんですね。自分の妄想を書いて評価してもらえるなんて。もう手が止まりません。

 

今回の本編はどうでしたか?

 

 

今回は美羽の無能さの理由が文官のせいという設定にしましたけど・・・

 

それに、七乃さんは実は有能さん。一刀は政治面においてはチートクラスの能力を発揮する。

 

うーん・・・まいっか。

 

 

 

前回のアンケートに協力していただいてありがとうございます。

 

見事なほど、バラバラになりましたね。

 

でも参考にはなりました。

 

今度から、少し短くなっていくかもしれません。

 

 

次回もまた見てくださいね。


 
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