No.75065

真・恋姫無双~魏・外史伝~6

ふう・・・第三章・後編やっと完成しました。もう、ガッコの勉強がほんとに忙しい。こんな事して場合では無いはずなのに、何故がパソコンの前に座って書いてしまう。そんな今を生きる僕です。
さて、話は変わり、前編の最後に登場した貧ピーコンビの2人が登場し、これからどんな展開が待つのか・・?
今回、小蓮の絵を描いたのですが、どうしても納得のいかない絵だったのでやめました。機会があれば、後で単品で投稿しようと思います。

2009-05-23 03:09:19 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:11443   閲覧ユーザー数:9666

第参章~引き合う運命・後編~

 

 

  場所は変わり、蜀・成都・・・。

  

  朝日が程よく入る廊下、そこに一人の少女が歩いていた。

  「全く・・・、昨日の桃香と雪蓮には参ったわね。」

  どうやら昨日の食事会『立食ぱーてぃ』の事を思い返していたようだ。

 そこで何かあったのか・・・、参加していなかった人でも、今の彼女を見れば大方の予想が

 つくことだろう・・・。

  「それにしても・・・、桃香は何を隠しているのかしら?」

  成都に着いてから、桃香達が妙によそよそしい。私に対しては特にそう・・・。

 ま・・・、あの娘の事だからこの後に何か『さぷらいず(一刀が教えてくれた)』をやろうと

 しているのでしょうね。

  そんな事を頭を抱えながら考えていた・・・、その時。

  「きゃっ!?」

  「きゃう!?」

  廊下の曲がり角で、左から来た者とぶつかり、尻餅をついてしまった。いくら考えごとでうわの空だった

 とはいえ、彼女らしからぬ失敗。彼女は、立ち上がりながら、ぶつかった相手を確認しようと相手を探す。

 だが、辺りはぶつかった際に、散らかってしまった洗濯物が落ちているのみ。だが、よく見ると洗濯物の山が

 もぞもぞと動いているのが分かった。そして、その山の頂点から、顔が出てきた。

  「へう・・・。」

  それは桃香の侍女の・・・確か名前は、『月』。どうやらこちらに気づき、慌てて、私の元に近づく。

  「も、申し訳ありません、曹操様!お怪我はいたしておりませんか?!」

  「ええ、私は大丈夫よ。それより、あなたの方が大変な事になっているよう思えるのだけれど・・・。」

  そういって、散らかってしまった洗濯物達を見る。

  「へう・・・、折角お洗濯してきれいに洗ったばかりなのに・・・。」

  ひどく落ち込む少女。

  「落ち込んでも仕方がないわ。さ、拾いましょう。私も手伝うわ。」

  そう言って、洗濯物を拾い始める。

  「い、いえ・・・、曹操様にそんな事をさせては・・・。」

  「いいのよ、原因は私にもあるのだから。それに何だか、洗濯したい気分なのよ。」

  「へう・・・。」

  へぇ・・・、恥ずかしがっている顔もなかなか可愛いじゃない。後で、桃香に話してみましょうか?

  そんな事を心の中で考えながら、洗濯物を拾い続ける。

  「?」

  ふと彼女の眼がある一点に止まる。

  他の洗濯物に埋もれ、隠れてしまっていたが、彼女はそれを見つけた。他の洗濯物をどかす。

 そして目に止まった『それ』を拾い上げる。

  「?曹操様、いかがなさ・・・あ!!」

  

  月は二つの致命的な失敗を犯してしまった・・・。

  

 一つは、汚れていたので他の洗濯物と一緒に『それ』を洗ってしまった事。

  

 そして二つは、ぶつかった相手が曹操孟徳であった事。

 

  「あ、あの・・・、曹操様・・・そ、それは」

  なんとか言い訳をしようと言葉を探す。だが、もはや目の前の少女の耳には

 届いていなかった。

  「桃香・・・!」

  「あ、お待ち下さい!曹操様ーー!」

  少女は、その場を走って、立ち去ってしまう。手に・・・、『彼の服』を握りしめたまま・・・。

 

  「おじいちゃ~~ん!!」

  「ん、どうした一刀?」

  「ボク、もっとつよくなりたい!」

  「なんだ?藪から棒に・・・いきなり。何で強くなりたいのじゃ?」

  「つよくなりたいから!」

  「だから・・・、何で強くなりたいのかを聞いておるんだが。」

  「ジイちゃんにかちたいから!」

  「な~んだ、そう言う事か?なら、もっと剣の練習をするのだ。」

  「でも、ボク・・・いっぱいれんしゅうしてるのに、ぜんぜんかてない・・・。」

  「それは年の功ってやつだ・・・。」

  「としのこう・・・?なにそれ、おいしいの?」

  「・・・・・・。つまり、わしはお前より長く生きているから強いんだ。」

  「じゃあ、ジイちゃんよりながくいきれば、かてるの?」

  「多分、その頃にはわしは死んでいるな、きっと。」

  「ジイちゃん、しんじゃやだ・・・。」

  「馬鹿モン、もしもの話だ。もしもの。すぐ泣くな!強くなりたいのだろ?ならば、

  まずは泣かない事だ。」

  「・・・うん。」

  「・・・良いか、一刀。『強さ』とは『心』と深く繋がっておる。どんなに強くとも、

  心が弱ければ、人はその強さで自分を殺してしまう。本当に強くなりたいのならば、

  まずは心を磨け。どんな事があっても、決して挫けぬ心に鍛えるのだ。そうすれば、

  お前は必ず強くなれる。」

  「・・・・・・。」

  「まあ・・・、今のお前には少し難しいかのう。」

  「そんなことないよ。つまり、もっとつくなればいんでしょ!」

  「・・・・・・。」

  

  「う・・・ううん・・・。」

 

  瞼が重い・・・。いったいどれぐらい眠っていたんだろう?

  

  体に痛みが無い・・・。

  

  少し、胸が苦しい程度・・・。

  

  少しずつ、目を慣らしていく・・・。

 

  そして、視界がはっきりとしてきた・・・。

 

  「・・・ここは?」

  見覚えのない部屋の寝台の上に横たわる俺。とりあえず、上半身を起こす。

  「・・・やっぱり見覚えがないな?」

  確か俺、成都にいて、それで山菜を採りに行って、そんではぐれて、で

 何か・・・中二病みたいな奴に絡まれて、で・・・崖から落ちて・・・、

 その下を流れる川に・・・。

  はっと思い、体を見渡す・・・。これといった怪我が無い。下が川だったからって

 あんな高い所から落ちて無傷は無いだろうと思ったが、やはり怪我はしていない。

  「運が良かったってことか・・・?」

  いや、運がいいわけないだろ・・・。やっと皆に会えると思ったのに、それをあの男に

 邪魔されたんだ。

  「クソッ!?」

  右拳に力を込め、壁に怒りをぶつける。痛かったがそれは大した問題では無かった。

 とにかく、ここはどこか調べなくちゃな・・・。

  そう思っていると、部屋の扉が開いた。

  「あれ、気が付きましたか!」

  「え、と・・・。」

  入って来て早々、はきはきとした態度の少女に押され気味な俺・・・。

  「あ、すいません。申し遅れました、私は『周泰』、字を幼平と言います。」

  周泰ってたしか呉の、孫策さんのところの武将だったはず・・・。

  「周泰・・・ちゃん、か。あ、俺・・・北郷一刀。字は・・・無い。」

  「北郷一刀・・・。ああ、やっぱりそうでしたか!!」

  「何がやっぱりなの?」

  「何処かで見たようなお姿だったので、ひょっとしたらと思っていたのですが、

  天の御遣い様でしたか!?」

  天の御遣いね・・・、久方振りに聞いたなそのフレーズ。

  「悪いけど、その呼び名は止めて欲しいかな。出来れば、名前の方でお願いするよ。」

  「はい、分かりました。北郷殿。」

  彼女の素直さには、感心する・・・。凪とどこか似ているかもな・・・。

  「そうだ、周泰ちゃん。君がいるって事は、ここは呉なのかな?」

  成都とも考えたが、この部屋の構造からして明らかに違うし、以前、建業の城に居た時、

 その部屋とよく似ていた。

  「おお、さすが北郷殿!良くお分かりになりましたね。さすが、天の御遣い様!」

  そんな大したで無い事に、感心する周泰ちゃん。何だかこっちが恥ずかしくなってくる。

  しかし・・・、そうなると俺は蜀から呉までずっと流されて来てしまった事になる。

  「そういえば、俺はどうしてここにいるの?」

  「はい、それはですね・・・」

  今までの経緯を周泰ちゃんが懇切丁寧に説明してくれた。

 どうやら、俺は建業の郊外の森を流れる小川で倒れていたらしい。それを見つけた周泰ちゃん

 と孫尚香ちゃんが、この城まで運んでくれたそうだ。ついでに、俺の事を成都に居る孫策さんに

 早馬を送ってくれた様だ。ちなみにここに連れて来られてから、2日が経っているそうだ。

  「正直、全くの別人さんだったらどうしようかと思いました。」

  「あははは・・・。」

  まぁ、何はともあれ、とりあえずは一安心だ。少し遠回りをしてしまったが・・・。

  「やっほおおおいいぃぃっ♪♪」

  元気な声がまた部屋中に響く。扉の方に目をやると、元気の塊のような女の子が元気よく扉

 を開けた。

  「あ、小蓮様。」

  「あれ、もう起きたんだ♪」

  「はい、先程来たときにはもう♪」

  ・・・駄目だ、起きたての俺にはこの2人のテンションに付いていけてない・・・。

  「ねぇねぇ、一刀♪もう体の方は大丈夫?」

  どうやらいつの間にか周泰ちゃんから、俺の事を聞いたらしい。

  「あ~、うん・・・とりあえずは大丈夫・・かな。自分でも良く分からないけど・・・。」

  全く無傷なのは、今だに分からない・・・。

  「じゃあ、一刀に質問。一刀は何であんな所に倒れてたの?」

  「ああ、それ?実はね・・・」

  俺は二人に話した。この世界にまたやって来た事・・・。そこで、風達に会って一緒に成都に

 行った事・・・。そして崖から落ちた事を・・・。

  「へぇ・・・、いろいろ大変な事があったんだね?」

  ちゃんと分かっているのかどうか、いまいち分かりかねる表情の尚香ちゃん。

  「しかし、よくご無事でしたね。本当に運が良かったです!」

  「うん、自分でもそう思う。君達が見つけてくれて助かったよ。ありがとう。」

  「うんうん、素直でよろしい♪」

  「えへへへ…♪」

  そんな元気な2人の姿を見ていると、こちらも元気なっていく。この2人が見つけてくれて

 良かった、本当に思う俺だった。

  

 

  呉の首都・建業の城下町のとある一角。

  

  そこに一人の男が歩いていた。

  

  ボロボロの布一枚をはおっただけの服装。

  

  まるで薬物中毒に侵されている様な顔に誰も近づこうとはしなかった。

  

  しばらく歩いていると、店の前で倒れる男。

  

  すると、店先から店の主人が出てくる。

  

  「おい、ちょっとあんた。そんなトコに倒れられたらうちの商売の邪魔に

  

  なるんだ。ほら、さっさとどいてくれ!」

  

  そう言って、乱暴にその男を引っ張る。

  

  「全く、しょうがねぇ奴だ・・。」

  

  店主は男を道端に連れて行く。

  

  「ちょっと待ってろ、食い物を分けてやるからよ。」

  

  その気前の良さはまさしく呉に息づく者の心意気。

  

  だが、店主は気付かなかった。その男の異変を。

  

  店主は店内から果物を持ってきた。

  

  「うちの店の果物はここらじゃ一番上手いって評判だ。それをタダで

  

  食わしてやろうってんだ。感謝しろ・・・よ。」

 

  男の方を振り向いた店主は、手から林檎を落とす。

  

  「う、うわああああああっ!!!!」

 

  目の前の光景に、悲鳴を上げる。

 

  北郷一刀が目を覚ました二刻後の出来事であった。

  

  同時刻、建業の先程の場所から少し離れた一角。

  「ねぇ、尚香ちゃん・・・。」

  「シャオ!」

  「・・・。」

  「私の事は『シャオ』って言うようにって、いったじゃない!」

  そう言いながら、頬を膨らませる尚香ちゃん。そんな彼女に右腕を掴まれている俺。

 こんな所、華琳達には絶対見られたくない。これは、仕方なくやっているんだ。

 尚香ちゃんにせがまれて仕方なくやっているんだ。そんな、あまりにも男らしくない

 言い訳を心の中で叫ぶ。

  「尚香ちゃん・・・、さっきも言ったよね。女性を真名で呼ぶのは魏の人だけって

  決めているって。」

  その理由は、後で面倒を起こさないようにするための事前対策。仮にも魏の種馬なんて

 いう、実に不名誉な二つ名を持つ俺が出来る唯一の方法。華琳もああ見えてすぐヤキモチ

 を妬くしね。

  「ぶ~ぶ~。一刀の意地悪~、甲斐性なし~!」

  「甲斐性なしね・・・、前はありすぎたからこれからは少し自重した方がいいと

  考えているのさ。」

  「ふ~ん、大人だね~?」

  「何、その人を小馬鹿にしたようなその顔?」

  「男は甲斐性があった方が良いって、母様が言っていたよ♪その方が自分の子孫を

  多くの残せるからって。」

  「何と言うか・・・、偉く逞しい人だったね。孫堅さんは?」

  「あれ、一刀?母様の事を知っているの?」

  「俺が居た世界じゃね。」

  「へぇ・・・、一刀が居た世界かぁ。行ってみたいなぁ♪」

  「もし、それが実現した時は、俺が案内してあげるよ。今日、君が俺にしてくれた様にね。」

  「あはっ♪一刀ったら~、素直じゃないんだ・か・ら!」

  そう言いながら、尚香ちゃんは俺の鼻先をデコピンする。機嫌を直すのも一苦労だな。

 ただ、運動がてらに街を見て回るだけのはずだったのに・・・。

  「素直じゃないって?一体俺のどこがそうだっていうのかな?」

  「一刀は、私にメロメロなのにそれを必死に隠すと・こ・ろ♪」

  「・・・・・・。」

  すごく直球ど真ん中なです、ありがとうございます。

  「あは♪やっぱり、図星なんだ~。」

  「いや、それは違・・・」

  

  ドクン・・・!!

  

  「ッ!?!?」

  胸に激痛が走る。その痛みに、一刀はその場でしゃがみ込んでしまった。

  「・・・う、ぐ・・・。」

  「ちょっと、一刀!どうしたの?!」

  「む、胸が・・・し、締め付け・・・てる・・・、くる・・・しい・・・!」

  「一刀・・・、一刀!!誰か、早くを医者を連れて来て!!早く!」

  

  ズドーーーーンッッッ!!!

  

  地震の様な、大きな揺れが街全体を襲う。店先に並ぶ果物、陶器は棚から落ち、地面に

 落ちる。

  「な、何?!今度は何よ・・・?」

  「小蓮様!!」

  後ろを振り向くと、明命が部下数名を連れて近づいてくる。

  「明命、大変なの。一刀が急に苦しみ出して・・・。」

  「北郷様がですか?分かりました、私の部下に介抱させましょう。」

  明命はすぐさま後ろにいる部下に指示をする。そして部下の1人が一刀の側に行き、彼の

 肩を持つ。

  「さぁ、急ぎましょう!ここに居ては危険です!!」

  「どういう事・・・、一体何があったの?」

  「詳細は後で報告します。まずは、城に・・・っ!?」

  

  バコーーーンッッ!!!!

  

 

 耳に痛いほどに響く爆発音、その音源の先を見る。

 

  通りを挟んだ反対側の店の壁が、無残にも破壊されていた。

 

  しかし、それ以上に彼女たちを驚かせたのは別にあった。

 

  その壁の向こうにいる何とも形容し難い・・・物体。

 

  人間・・・にしてはそれはあまりにも大きく、熊や虎にしては二本足で立ち、

 

  毛で覆われてはいない。しかし、それは確かに生物体で、その眼がこちらを見つめ、

 

  逸らさない・・・。この時、おぼろげながら一刀は祖父の言葉を思い出す。

 

  『本当に強くなりたいのならば、まずは心を磨け。どんな事があっても、

  決して挫けぬ心に鍛えるのだ。そうすれば、必ず強くなれる。』


 
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