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ALO~妖精郷の黄昏~ 第55話 光神VS邪神

本郷 刃さん

第55話になります。
今回はヘイムダルVSロキになりますよ。

どうぞ・・・。

2015-01-04 14:33:56 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:5858   閲覧ユーザー数:5387

第55話 光神VS邪神

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グランド・クエスト[神々の黄昏]

『侵攻側クエスト[黄昏の邪神]:ロキと共にヘイムダルを討て』

『防衛側クエスト[神門の番人]:ヘイムダルと共にロキを討て』

 

 

 

 

 

No Side

 

――アースガルズ・神門

 

エリア『アースガルズ』の最初の見所と言えば、やはり入り口にある『神門』だろう。

外部からの進入を阻む山々による城壁とも言える様、その中で唯一外部から進入できるのが巨人を超える大きさの神門なのだ。

そして、外部からの敵の侵入を防ぐべくそこに立ち塞がるのは、角笛にて世界に神々の黄昏(ラグナロク)を告げた彼だ。

 

「避けられない定めと、抗う意味が無いと理解しながら、何故お前達は抗うのですか? ロキ」

 

Heimdall the Weiß Ass(ヘイムダル・ザ・ヴァイス・アース)〉、アース神族の1柱にして光の神、名にある通り『白いアース』という異名を持つ。

貴族のようにも見える服装に身を包み、死したバルドルやいまも戦場で戦うフレイと同じく最も美しい神と評されている。

右手には翼と蛇が蜷局を巻いたような杖を持ち、

左手には“叫ぶ”や“歌い出す”、“鳴り響く”や“響きわたる”などの意味を持つ角笛の『ギャラルホルン』を握っている。

 

その彼が居るのは神門の上であり、門の外と内に甲冑に身を包んだ『エインフェリア』達が居り、

空中には『ワルキューレ』達が配備され、門の内外からの敵侵攻に備えている。

エインフェリアとワルキューレ、その数にして150だ。

そんな中、ヘイムダルが呟いた言葉の先から彼らがやってきた。

 

「確かに避けられないのかもしれないし、意味が無いのかもしれないね、ヘイムダル。

 でもそれで諦められる程、僕達は諦めが良くない、例えそれが植え付けられたものでもね」

 

Loki the Trickster God(ロキ・ザ・トリックスター・ゴッド)〉、神でありながら巨人の血を引きし者であり、オーディンの義兄弟でもある。

彼もまた美しい容貌を持ち、その身はヘイムダルと似た貴族風の装いをしながらも、魔術師のようなローブを纏っている。

 

宙に浮かびながらローブを広げる彼の背後や目下には、

霜の巨人族〈Jotun(ヨトゥン)〉、炎の巨人族〈Muspell(ムスペル)〉、氷の巨人族〈Hrimthurs(フリームスルス)〉が計50体は居る。

巨人族達の合間には49名で構成されているレイドパーティーが隙間をカバーするかのように飛行している。

 

そしてここにも、レイドに属さず唯1人で巨人達の先頭に立つ青年が居る。

 

「強者と戦えることを目的としていたが、坊や(キリト)からあんな話を聞かされた以上は俺も手を貸さなけりゃいけないよな。

 まぁ坊や(キリト)のことは認めているし、この世界のことも気に入っている。

 だから潰そうとする奴は気に入らねぇし、それが強者だって言うんなら俺が叩き潰してやるよ…」

 

彼の名は『ベリル』、種族はプーカ、黒いシャツに青っぽいジーンズパンツを穿き、藍色のロングコートを纏う。

また、顔にはゴーグルに似た形状の仮面を付け、それによって黒髪が少しばかり映えて見える。

彼の背にある武器は『アニールブレード』に似たものであり、長く細い両刃の両手剣『ギガッシュ』という。

その表情はキリトに似て獰猛かつ好戦的な笑みを浮かべており、

キリトと同じくそこには冷静な面もあり、やはり理性ある獣なのだと窺うことが出来る。

 

「そうですか……それならば、力尽くでも諦めてもらいます!」

「させてみなよ……さぁ、僕達の黄昏を始めよう!」

 

ヘイムダルは右手の杖の先に水の塊を展開し、ロキも右の掌に炎の塊を展開させた。

互いにそれを前に翳しながら空中を駆け抜け、水と炎の塊がぶつかり合うと爆発が起こった。

 

「Let's party time!」

 

ヘイムダルとロキのぶつかり合いを開戦の合図とするように、ベリルが真っ先に敵へ向けて駆け抜けた。

それに続くようにレイドパーティーが、巨人達が進み、迎え撃つべくしてエインフェリアとワルキューレ達も動き出した。

 

 

 

戦いはNPC達のぶつかり合いを中心として始まった。

 

巨体を有する巨人達が地面を動くエインフェリアを踏み潰し、空を舞うワルキューレを払い落すなど、

数で勝るオーディン軍に対して、個々の質量で押している。

その一方、エインフェリアとワルキューレは数で勝ることを利点として、1体の巨人に対して集中攻撃を仕掛けている。

これだけを見れば、例え質量がある巨人といえども3倍の数の敵と戦えば押されてしまうし、

なによりもこの神門への道は一本道であるので後続の巨人は戦うどころか碌な援護も行えない。

開戦直後とはいえ、次第に押されていくかと言われれば、そういうわけでもない。

 

「C隊とD隊は巨人を援護して地上の敵を倒せ! E隊とF隊は魔法攻撃と矢による掩護攻撃を行え!

 G隊は常に回復などのサポートを徹底しろ! A隊とB隊は俺に付いてこい、空中のワルキューレを倒すぞ!

 巨人の攻撃に巻き込まれないように注意して戦えよ!」

「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」

 

レイドリーダーが出した指示に従い、レイドパーティーのプレイヤー達も戦闘を開始した。

 

対エインフェリアの地上攻撃部隊であるC隊とD隊は巨人の間を抜けて敵と武器で直接戦闘を行い、

遠隔攻撃部隊であるE隊とF隊は魔法と弓矢による攻撃で戦闘掩護を開始し、

サポート担当のG隊は回復魔法でHP回復やアイテムによるMP回復の準備を済ませ、

リーダーが含まれているA隊とB隊は対ワルキューレの空中攻撃部隊として戦闘を始める。

各自が巨人の動きに注意しながら戦っていく、彼らはキリトやスプリガン領主のグランディ達によって選抜された精鋭である。

 

なので、容易に巨人の攻撃に巻き込まれることもなく、役割を果たすべく敵を倒していく。

 

「この戦い、俺達の勝利で飾るぞ!」

「「「「「「「「「「おぉ!」」」」」」」」」」

 

彼らもグランド・クエストのクリアを目指し、戦いへの意気込みを強めた。

 

 

 

 

レイドパーティーが本格的に戦闘を始めた中、ベリルは敵陣の中心とも言うべき場所で剣を振るっていた。

 

両手剣のギガッシュ、それを振るいエインフェリアの体を切り刻んでいく。

敵から剣を振るわれても、その剣を数度の反撃で砕いてエインフェリアを斬り捨てる。

槍で突かれても、その槍を真正面から二つに斬り裂きエインフェリアはポリゴン片となる。

空中からワルキューレが3体掛かりで攻撃を仕掛けてくる……が、彼は笑みを浮かべながら、それに応えた。

 

構えた剣が発光していく、ソードスキルの発動だ。

ベリルが発光したギガッシュを振るうとそれは三日月型の衝撃波となってワルキューレ達を薙ぎ払った。

やられなかったとはいえ、ワルキューレ達のHPはかなり削られている。彼のオリジナル・ソードスキル(OSS)《ブラスト》だ。

 

「こんなものか? 折角のパーティなんだ、もっと楽しもうぜ!」

 

《ブラスト》の発動で一定範囲を吹き飛ばしたことで技後硬直による隙も埋めれば、彼は再び剣を振るう。

武器を持って走り寄るエインフェリアを、武器を手に翼をはためかせてくるワルキューレを、近づく敵を全て薙ぎ払う。

四肢と首を飛ばし、胴を斬り裂き、翼を抉り切る、まるで先程のキリトのような動きだと思わせられる。

 

「そろそろお熱いの行ってみようか?」

 

《ブラスト》に極めて似た構え、そこからギガッシュが紅い光を放ち出す。

敵に向けてそれを振り払うと三日月型の炎が駆け抜け、例外なく敵は燃えだした。

《ブラスト》から派生させたOSSの1つ、《ブラスト・プロミネンス》である。

炎の衝撃波により燃えながら吹き飛ばされる敵には同情しか出来ない。

そんな相手に容赦なく、ベリルは追い打ちを仕掛ける。

 

「熱いのはお嫌いだったかな? なら、今度は冷えてみるかい?」

 

再び《ブラスト》に類似した構えを行い、ギガッシュに青白い光が宿り出した。

剣が振るわれ、そこから三日月型の氷が放出され、冷気と衝撃波によって今度は吹き飛ばされながら氷漬けにされる。

《ブラスト》の派生OSS、《ブラスト・アイシクル》という。

相手が氷漬けとなれば、技後硬直の影響が無くなれば障害などなく、身動きの取れない敵を斬り砕いていく。

 

「お次は水浸しと行こうか!」

 

身近な敵を粗方仕留め、新たな構えを取る。

剣から青い光が溢れ出し、それを振り抜くと水によって形成された三日月型の衝撃波が駆け抜ける。

水による形成は水圧も兼ねているようであり、敵を押し切りながら吹き飛ばした。

同じく《ブラスト》の派生、《ブラスト・カタラクト》だ。

水圧も含まれている為、拡散する衝撃波の中では威力が最も高い。

 

「水浸しの後は痺れるべきだよな?」

 

意地悪そうな笑みのまま剣を構えた。

ギガッシュからは緑の光が放たれ、それが集束したことを悟って斬り払う。

すると、今度は稲妻が三日月型を形成して衝撃波と共に敵へと襲いかかった。

《ブラスト》の雷属性派生、《ブラスト・ライトニング》だ。

雷属性のダメージだけでなく、麻痺(スタン)効果も兼ねている為その有用性は高い。

 

「ここら辺の掃除は大体終わったな……っと、あっちの加勢もしておくか。形勢が有利であることに越したことはないからな」

 

ベリルは自身の周囲に居た敵を倒しつくし、囲まれる前に走りだした。

向かう先はレイドパーティーと巨人達の許であり、巨人達の前衛が倒されている。

ここでプレイヤーが倒されれば戻されるのはヨツンヘイムかスプリガン領、それはいまの時点ではよくない。

そう判断し、ベリルは味方の掩護へと向かった。

 

 

 

――数十分後・午後2時59分

 

神門での戦闘が開始されてから数十分の戦闘、互いに数を減らしながらもロキ軍がやや優勢であった。

巨人達とオーディン軍との戦力差があったものの、ベリルやプレイヤー達の奮闘によって優勢を維持出来た。

しかし、そこで1分が経過したことで、午後3時となる。それはイザヴェル平原での戦闘と同じ事象を指す。

 

「全てに決着をつけましょう、ロキ!」

「上等だよ、ヘイムダル!」

 

光神ヘイムダル、邪神ロキ、両者が再び動き出したのだ。

 

ヘイムダルは杖の先で光弾を生成するとロキに向けて放ち、対するロキも掌に闇弾を生成してからそれをヘイムダルに向けて放った。

互いに放たれた魔法弾はぶつかり合うことで相殺したが、当然ながらそれで終わるはずなどない。

 

ヘイムダルは水を生成するとそれを固めだした。問題はその質量であり、巨人1体分はあると容易に窺える。

アメーバ状のような液体から球体に変化し、最初に形成した水弾とは比べ物にならないサイズだ。

無論、ロキもただ黙って見ているはずがなく、炎を発生させてそれを球体にしていく。

完成した炎の球体は小さな太陽にも見え、こちらも当初の炎弾とは比較する必要もないほどの大きさである。

 

そして、どちらともなくそれを投げ飛ばし、ぶつかり合った2つの魔法弾は大規模な爆発を起こした。

その衝撃波は地上で戦っているエインフェリアや巨人、プレイヤーにも及び、空中のワルキューレ達は吹き飛ばされる。

これによって敵味方問わずにダメージが与えられていき、どちらも陣形が崩れる。

 

「数を減らさせてもらうよ、オォォォォォッ!」

 

そこでロキは敢えてヘイムダルから離れ、エインフェリアの中に着地した。

左手を地面に付ければ、そこを中心にして雄叫びを上げればそこから震動が発生する、地震だ。

北欧神話において、地震が発生させるのは毒液を浴びたロキであるとされる。

それに由来して、このALOでは彼が技として地震を発生させたのだ。

その一撃は衝撃波も発生させ、次々とエインフェリアにダメージを与えては倒していく。

しかし、ヘイムダルも黙ってはいない。

 

「ならばこちらも対抗させてもらいます!」

 

いままでは右手の杖を使用していたヘイムダルだが、ここで左手に持つ角笛のギャラルホルンを口に添えた。

そこに息を吹き込めば凄まじい音が流れだし、次第に音波と衝撃波となってプレイヤーや巨人達に襲い掛かった。

やはり楽器を持つ神という点を利用して、こういう攻撃を組み込まれているようだ。

広範囲での音と衝撃波の攻撃で巨人は数体が倒れ、プレイヤーも回復の為に後退せざるを得なくなった。

 

2柱の広範囲攻撃などにより、両軍ともにNPCとMobの被害は甚大である。

ロキ軍のプレイヤーもHPが0になった者は居なかったようだが、

ほとんどのプレイヤーがHPをレッドゾーンまで削られてしまい、回復の為に後退する事態となった。

そのような事態であるにも関わらず、いやAI搭載とはいえNPCであるが故に、彼らの戦いは止まらない。

 

「ハァァァァァッ!」

 

ヘイムダルは杖を振るい、光弾と水弾を無数に作り出しては放ち、

ほぼ同時にギャラルホルンを吹いて音波と衝撃波の攻撃も行う。

 

楽器を持つ神として音の攻撃を行うこと、また光の神である為に光の攻撃を行うことも理解できると思う。

ならば、なぜ光の神である彼が水の攻撃を行うのか、それはヘイムダル自身と彼の母に関係する。

ヘイムダルの母親は9人姉妹であり、彼女らは“海の波”とされており、また彼は波の間から昇る暁光とも言われている。

つまり、海=水の属性を持ち、海から立ち上る暁光であるために水の関わりがあるのだ。

 

「オォォォォォッ!」

 

ロキも対抗して両掌に闇弾と炎弾と氷弾を生成して連射し、ヘイムダルの攻撃と相殺させる。

 

北欧神話においてロキは邪悪な面を見せることからサタンの影響を受けているとされ、闇の属性を持つ。

同時に元は火を神格化した存在であるともされている為、火属性も持つのだ。

では氷の攻撃はどうか、それは彼が霜の巨人族であるヨトゥンの血を引いているからである。

邪神としての闇、本来の火、血族としての氷、彼の攻撃における属性の由来はこれらのことがあるからだ。

 

両者の攻撃は苛烈そのものであり、互いに相殺できることもあれば、攻撃を受けてダメージを負うこともある。

しかし、そんなものは気にならないとばかりに戦い続ける2柱。気が付けば、周囲でも戦闘が再び激化し始めていたからだ。

そこで、両手剣を持つ彼がヘイムダルに斬りかかった。

 

「俺も混ぜな、調子に乗った神様もどき」

「私を紛い物と、そう言いますか」

「少なくとも神話の神様に比べたら固いっての、北欧の神様方はフランクなのが多いと聞いているんだけどな。

 ま、なんにしてもそろそろ雑魚には飽きたところでな。あとは連中に任せて、俺も楽しませてもらうぜ」

「キミも曲者みたいだね」

 

ヘイムダルに斬りかかったのはベリルであり、彼は不遜な様子で嫌味に近い言葉を投げる。

そんなベリルの様にロキは笑みを浮かべるなど、何処か共感した様子をみせている。

 

「良いでしょう。貴方もロキ諸共打ち倒してみせます!」

「ふふ、いいね。中々楽しくなってきたよ!」

「Next party time!」

 

三者は同時に動きだし、ぶつかり合った。

 

 

 

 

その攻防の果ての数十分後、この神門での戦いは終局に近づいていた。

 

「巨人の数があと少しな以上、あとは俺達がNPCを相手にするぞ!」

「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」

 

レイドパーティーは精神的に疲労を重ねながらも戦い続けていた。

当然、10人以上のプレイヤーが敗北し、拠点に戻されたのだが、それでも戦線を維持して戦っていた。

味方である巨人達の数も残るは3体であり、その一方で敵の数はようやく40体を切ったところだろう。

やはり、途中でベリルが抜けたことやヘイムダルの攻撃を受けたことが痛手の理由の1つと言える。

だが、もう1体の巨人も倒れてしまった……そこに、彼が戦場を移してきた。

 

「あっちも楽しかったんだが、さすがにこの状況は見過ごせないな。

 まぁ後は俺でなくてもロキがなんとかするだろう……それが坊や(キリト)シナリオ(・・・・)だからな…」

 

ギガッシュを構えながら口に出すベリル、最後だけは意味深な台詞であるが…。

30を超える敵を前にしても余裕な様な彼だが、実際に余裕なのである。

彼は慢心も油断もしない、ただ楽しむことを信条としており、戦いだろうが謎解きだろうが楽しんでこそなのだ。

故にベリルは楽しめるように心に余裕を持ち、楽しんで戦う。強者が相手なら自身の実力を確かめられるから余計に楽しい。

 

「さぁて、お前らに幕を下ろしてやるよ!」

 

両手剣ギガッシュを振りかざし、OSSの《ブラスト》を放つ。

向かってくる30以上の敵を前に技後硬直が解けた瞬間に突っ込み、剣を振りまわしていく。

エインフェリアもワルキューレも、囲まれようとも斬り裂き、薙ぎ払い、時には蹴り飛ばす。

 

「すげぇ…」

「ブラッキー先生達みたいなのが、まだ居るのかよ…」

「俺達も負けていられねぇぞ! アイツに続け!」

 

リーダーの言葉に気を戻した彼らは武器を執り、ベリルと共に戦うことにした。

魔法や矢の掩護に気付いたベリルは笑みを浮かべ、すぐに剣で敵を倒していく。

そこで巨人が1体倒れ、残りは1体となる。

エインフェリア達とワルキューレ達もプレイヤー達によって次々と倒れ、数を減らしていく。

そして、ついに最後の巨人が破れて消滅し、敵の部隊も一桁となった。

そこでベリルは空中で戦うロキとヘイムダルに眼をやり、決着がつくことを悟る。

同時に何かに気付いた彼は翅を展開して空中に向けて飛翔した。

 

 

 

ヘイムダルとロキの戦いは拮抗していた。互いにHPゲージは1本とほんの僅かという、まったく同じ状況。

魔法弾を放ち、魔法をぶつけ合い、増えていく傷とダメージ。

ヘイムダルは全身に光を、ロキは闇を纏っている、形態変化だ。

その状態で時折体をぶつけ合う攻撃をすることでダメージを与えていることもある。

そこでロキの先手が入り、ヘイムダルのHPゲージが残り2本から1本へと減少した。

 

「ロキ、私はお前を仕留めてみせる!」

「ぐぅっ…!?」

 

突如、ヘイムダルの周囲に無数の魔法弾や武器が生成された。

それらはロキに向かって放たれていき、回避行動を取るもロキはダメージを負う。

他にもあるヘイムダルの神格は“生成”、つまりは生み出す者である。

さらなる形態変化によって形勢がヘイムダルに有利となった……かのように思われたが、

ロキへのダメージがHPを削ってゲージが1本となったことで、彼もまた新たな力を発揮した。

 

「ヘイムダル、僕は“嘘つき”な奴なんだ…。

 シンモラが管理して、スルトが振るう魔剣『レーヴァテイン』、アレが1本しか作れないと誰が言ったかな?」

 

ロキの背後を囲むように紋章が刻まれた魔法陣が浮かび上がる、その数にして24。

彼はそれらが浮かび上がるのを確認すると言葉を発し出した。

 

FEOH(フェオ) UR(ウル) THORN(ソーン) ANSUR(アンスール) RAD(ラド) KEN(ケン)

 GEOFU(ギョーフ) WYN(ウィン) HAGAL(ハガル) NIED(ニイド) IS(イズ) JARA(ヤラ)

 YR(ユル) PEORTH(ペオーズ) EOLH(エオロー) SIGEL(シゲル) TIR(ティール) BEORC(ベオーク)

 EOH(エオー) MANN(マン) LAGU(ラグ) ING(イング) OTHEL(オセル) DAEG(ダエグ)

 24のルーンにより形を成せ、レーヴァテイン!」

 

詠唱を唱え終えると24のルーンが刻まれた魔法陣が全て重なり、魔法陣の中央から剣の柄がゆっくりと現れる。

ロキはそれを引き抜き、炎を纏った剣が現れた。

大きさこそ異なるものの、形状はスルトが持つものと同じであり、紛れもなくレーヴァテインである。

 

「焼き尽くせ!」

 

ロキがそれを振るうと炎が駆け抜け、ヘイムダルが生成した魔法弾や武器が焼き尽くされた。

だがヘイムダルは再びそれらを再形成し、ロキに投げかける。

彼はレーヴァテインでそれらを焼き飛ばし、ヘイムダルに魔法弾を投げつける。

互いにダメージを負っていき、HPゲージがレッドゾーンに到達、あと一撃というところまで減少した。

 

そして、ヘイムダルとロキが接近していく。その時、ヘイムダルは10発の魔法弾を投げつけた。

これでは先にロキのHPが0になってしまい、彼の敗北が決定してしまう。しかし、そこに1人の妖精が駆け抜けた。

 

「光の神様もどき、その攻撃は野暮ってもんだぜ。男なら男らしくぶつかって逝きな! 《センチュリオン》!

 

ベリルだった、彼は最速のOSSである《センチュリオン》を放った。

このスキルは最速であり、あまりの速さに連続で行われる突きが剣の束に見えるほどで、その連撃数は10だ。

10連撃のこのOSSにより、魔法弾は全て撃墜された。

 

「あとはアンタが決めな、ロキ……good luck(幸運を祈る)

「ありがとう、妖精君」

 

ベリルはロキと交錯した瞬間に激励を掛け、彼はそれに応えるとヘイムダルに肉薄した。

 

「「オォォォォォッ!」」

 

相手を仕留めるべく、ヘイムダルはギャラルホルンを吹き、ロキはレーヴァテインを振るう。

ヘイムダルはレーヴァテインの炎と刃に斬り裂かれ、ロキはギャラルホルンの音波と衝撃波に吹き飛ばされた。

そのまま2柱のHPゲージは減少していき、互いに0となった。

 

「これで、良い……誰も、黄昏からは…逃れ、られない…」

「さぁて、それはどうかな? あんまり人間を舐めるな……あばよ、神様もどき」

 

ヘイムダルの遺した言葉にベリルは応えながら《ブラスト》を放ち、ポリゴン片ごと吹き飛ばした。

一方、地上では既に全てのエインフェリアとワルキューレが討伐され、巨人族達も居なくなった。

神門の傍にはロキが倒れており、ポリゴン片へと変化している。

 

「後のことは、任せたよ、キリト………今日は、死ぬには…良い日、だ…」

 

ロキもまたそう言葉を遺し、空を見上げて微笑みながら消滅していった。

 

「あとは坊やに…いや、キリトや俺達に任せておきな。良い夢を、悪戯好きな神様(ロキ)

 

ベリルはロキのポリゴン片を見送り、空を見上げて言った。

これによりオーディン軍は神門の門番であるヘイムダルが倒れ、同時にロキ軍も総大将であるロキが倒れることになった。

奇しくも両軍の総大将が倒れ、未だ倒れていない魔獣が居りながらも、神々の黄昏(ラグナロク)は脚本通りに進んでいた。

 

『侵攻側クエスト[黄昏の邪神]:ロキと共にヘイムダルを討て』クエスト・クリア

『防衛側クエスト[神門の番人]:ヘイムダルと共にロキを討て』クエスト・フェイリュア

 

No Side Out

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

あとがき

 

みなさま、あけましておめでとうございます! 本年もよろしくお願いします!

 

はい、新年早々最新話を投稿しましたぜ、今回はアバターが大活躍で性能はキリトさんレベルw

 

教えていただいた設定以外にもOSSは自分が独自の判断で付け加えたことだけ、お詫び申し上げます。

 

また、前回とは違いヘイムダルだけではなくロキも敗北しました、これも脚本通りですよ(黒笑)

 

先に言わせてもらいますがキリトさんが別に何にも思っていないわけでない、色々と考えていますよ。

 

とにかく、これでオーディンとロキという両軍の総大将が破れました、ここからは各地の戦いになります。

 

次回はアルン高原の四方のどれか、またはウンディーネ領での戦いになる予定です。

 

それではまた~・・・。

 

 

 

 


 
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