No.74810

真・恋姫†無双 終わらぬループの果てに 第2話

ささっとさん

訳もわからないまま2度目、3度目と世界を繰り返す一刀。
しかし4度目の世界を終えた後、一刀が辿り着いたのは場所は……

2009-05-21 19:40:35 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:43625   閲覧ユーザー数:32624

「ようやく会えたわね、ご主人様ぁん♪」

 

 

なんだろう、だれかがおれのちかくでしゃべってる。

 

 

「さてと、お話できないのは残念だけど早速始めましょうか」

 

 

はじめる? なにをはじめるんだ?

 

 

「終点未到達、および他者の直接的殺害による付加能力の発動条件変更、

 ならびに思考・感情の精神面を部分改変。

 そして北郷 一刀の4周目、および『観測所』においての記憶を抹消する」

 

 

あれ、なんかきゅうに……まっくらに………

 

 

「ゴメンなさい、ご主人様。でも、ご主人様のためには仕方ないのよ。頑張ってね」

 

 

………いったい………なに、が………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、私の美しさに当てられて気を失っちゃうなんて、ご主人様ッたら初心なんだからん♪」

 

 

いや、それだけはぜったいにありえないから

 

 

 

 

恋姫†無双 終わらぬループの果てに

 

 

第2話 5週目~19週目

 

 

5周目の世界で目覚めた俺は、これまでと違った意味で混乱していた。

 

 

「おう兄ちゃん。珍しいモン持ってるじゃねぇか」

 

 

元の世界で剣道を嗜んでいたとはいえ、それでも殴り合いの喧嘩など殆どした事がない。

 

 

「オイ、何とか言ったらどう…ゴハッ?!」」

 

 

もちろんこの世界に来て多少なりとも鍛えはしたが、

それらの成果は次の世界に移行するたびに全てキャンセルされていた。

 

 

「て、テメェ!舐めた真似しや…グゥワフッ!?」

 

 

つまり、ループが始まった時点での俺の強さは元の世界の一般人程度でしかないのである。

 

 

「あ、アニキ…あべしっ!?」

 

 

そのはずなのに、気づけば俺は恒例の3人組を素手で容易く殴り倒していた。

 

 

「………どうなってるんだ?」

 

 

自分でやっておいてアレだが、何故こんなことになっているのか全くわからない。

 

身体的な面での引き継ぎはこれまで一切行われなかった。

 

いや、仮に引き継がれたのだとしてもこの強さはハッキリ言って異常である。

 

 

「いやはや、私の出番はありませんでしたな」

 

 

初めて起こった不可解な現象に内心首をかしげていた俺の前に趙雲さんが姿を現した。

 

………今、一瞬酷く不快な感じがしたのは何故だろう。

 

いや、ともかくこれはチャンスかもしれない。

 

 

「……趙 子龍さん、ですね」

 

「おや、私をご存知なのですか?」

 

「ええ。以前噂を聞きましてね。大陸随一の槍の名手、趙 子龍という者がいると」

 

 

本当は前もって知っているだけだが、これは内緒である。

 

 

「ほほぉ、私も有名になったものですな。

 しかし、何故私がその趙 子龍だとお分かりになったのですか?

 例え名を知っていたとしても、それだけで私がそうだとは言い切れますまい?」

 

「一目見れば解りますよ。

 貴女ほどの武を備えている者は大陸にもそうそういないでしょうから」

 

「一目で………ふふっ、貴方は面白い御方ですな」

 

 

ここでで趙雲さんの俺に対する眼つきが変わった。

 

 

「そう言われる貴方も只者ではありますまい。

 野盗相手とは言えあの身のこなし、並の武人には出来ぬ芸当かとお見受けします」

 

「どうでしょうか、自分では解りませんね……何なら、貴女御自身で試してみます?」

 

「フッ、貴方の方から言ってくれるとはありがたい。

 そうでなければ私の方から申し出ていたところですよ」

 

 

抑えられていた彼女の闘気が開放される。

 

それは豪傑としての名に恥じぬ圧倒的な存在感を誇示していた。

 

しかし真正面からそれに晒されているにもかかわらず、俺は至って冷静なまま。

 

先程の3人組に殴りかかった時と同じように自然と構える。

 

素手での戦い方など殆ど知らないはずなのに、妙にしっくりとくるのは何故なのか。

 

まぁ、今は余計なことを考えるのはやめておこう。

 

 

「闘う前からこれほど心地よい気分になるのは初めてですよ……ん?

 そう言えば名前をお伺いしていませんでした。お教え願えますかな」

 

「北郷 一刀です」

 

「…では北郷殿、全力でお相手させていただきます」

 

「こちらこそ望むところです………では、始めましょうか」

 

「「北郷 一刀(趙 子龍)、参るッ!!!」」

 

 

 

 

趙雲さんの闘いでこの身体の状態がハッキリした。

 

信じられない事だが、この身体は単純な武力では趙雲さんと同等レベルのものを備えていた。

 

しかも『身体が勝手に反応する』という半ば無意識の動きに任せた状態での話であり、

 

もし自分自身の思考を巡らせて戦えるようになればさらにもう一段階上を目指せるだろう。

 

つまり、俺は全く意図せずして大陸最強クラスの武を手に入れてしまったと言うことになる。

 

こうなると益々気になるのが『何故急にこんな強さが手に入ったか』だ。

 

可能性としては全く記憶に残っていない4周目で何かが起こった、と言うのが今のところ最有力。

 

しかし現時点ではあまりにも情報がなさ過ぎるため、本当の所は全く解らない。

 

とりあえず今はこの強さが手に入った事を素直に喜んでおくとしよう。

 

ちなみに闘いの結果だが、決着がつく前に華琳達が近づいてきたため中断。

 

趙雲さんとは再戦の約束をして別れた。

 

あれ、そう言えば風や稟と一言も喋ってないけど………まぁ、仕方ないか。

 

 

「さて、そろそろか」

 

 

趙雲さんとの闘いの後、俺は気絶したままの黄巾党3人組とこの場に留まっていた。

 

勿論それは華琳達と出会うためなのだが、ここで俺はこれまでと全く違った選択をする。

 

 

「それじゃあ、俺はこれで失礼させてもらうよ。大事な用事があるんでね」

 

 

そう、俺は今回華琳達と行動を共にしなかった。

 

元々はこの3人組を捕まえるために華琳が俺を同行させるのだが、

今回は既に3人組が俺の手によって御用となっている。

 

情報もこいつらに喋らせればいいので、俺が華琳達と同行する理由がない。

 

……本音は何が何でも華琳と一緒にいたい。

 

現にこの3人を捕まえ、また趙雲さんとの闘いで発していた闘気を感じていたのか、

俺に興味を抱いたらしい華琳から一緒に来ないかと誘われもした。

 

だが俺はその誘いを断り、その場ですぐ華琳達と別れたのだ。

 

その目的はずばり、このループ現象が何なのかを調べることである。

 

おそらくこのまま華琳の傍にいたとしても、結果は何も変わらない。

 

ならば少しでも情報を集め、この現象を終わらせるための努力をすべきだろう。

 

 

「しかし、俺っていつからこんな風に考えられるようになったんだ?」

 

 

突然手に入れた強さばかりに目がいっていたが、俺自身の考え方もかなり変わった気がする。

 

もちろん華琳の事を第一に想っているのは変わらないのだが。

 

これも全く記憶にない4周目が原因なのか、はたまた別の何かがあるのか。

 

ホント、解らない事だらけだ。

 

 

 

 

それからループすること実に14回。

 

19周目の世界における華琳との別れを目前に控えた俺は、

これまで集まった情報を頭の中で整理していた。

 

 

①ループの起点はあの3人組との出会い、終点は三国同盟締結後の華琳との別れである。

 

②いかなる理由があろうとも、途中で華琳と袂を別つ事になれば必ず死ぬ。

 

③蜀、あるいは呉との決戦までに華琳と深い仲にならなければ必ず死ぬ

 

④最初に華琳と行動を共にしない場合、桂花が華琳に仕えるまでの間に必ず死ぬ。

 

⑤ループによって次の世界の自分に加算されるのは記憶と知識のみ。

 

⑥条件を満たした場合次の世界の自分に何らかの能力が追加され、以後は引き継がれる。

 

 

大まかに言えばこの6つだろうか。

 

ただし①~④、⑤と⑥はそれぞれ関連しているので、実質解ったことは2つか。

 

とりあえず、これらの事柄からこの現象の主目的が華琳の覇道の達成だと推測。

 

そして俺は華琳の味方であり恋人として最初から最後までこの覇道に関わり、

しかも最終的に三国同盟という形で乱世を終わらせる必要があるらしい。

 

それ以外は全て俺が死んでしまうという結末になり、次周へ強制ループだ。

 

もっとも誰が何の目的でこんな事をしているのかは依然として不明であり、

何故俺だけにこんなループ現象が起きるのかも解っていないため、

肝心な部分についての進展はほとんどないと言っていい。

 

またループ現象における俺自身の変化についてだが、

知識や経験と言ったものは完全に引き継がれるものの、身体的な面は初期化される。

 

ただし5周目の世界で備わったと思われる強さはこれまでずっと引き継がれており、

これは⑥に相当する特殊能力であると言える。

 

ちなみに何故⑥の現象に気づいたのかと言えば、

13回目の世界で偶然手にした太平要術の本である。

 

この時の俺は華琳と別行動を取っており、当時の黄巾党の本拠地に潜入していた。

 

そこで偶然にもこの本を見つけて手に取ったのだが、1ページも読む事なく死んでしまった。

 

(ちなみにこの時の死因は突発性の病気か何かだと思うが、正確なところは不明である)

 

ところがこの次の14回目の世界。

 

目を覚ました俺は自分の知識の中に妖術に関連した物が増えている事に気づいたのだ。

 

勿論この妖術、知識だけではなく実際に使用できた。

 

しかも威力がとんでもなく、全力でやれば街の一つや二つ簡単に消し飛ばせてしまう。

 

(実際にこの世界で蜀の首都を吹き飛ばしてしまった)

 

もっとも、妖術という存在そのものに対するこの世界の人達のイメージがかなり悪いため、

あまり規模の大きなものを使用すると敵どころか味方にまで恐怖の対象とされてしまう。

 

そのため実際に使えるのは自分の身体能力を上げるとか地味なものになってしまうが、

それでもその有効性は計り知れないものがあり、

この時点で俺は名実共に呂布すらも凌駕した大陸最強の存在となっていた。

 

まぁ、実際どれだけ強くても主目的から外れた時は死んでしまうのであまり意味はないのだが。

 

これが現時点で判明している全てだ。

 

 

 

 

そして俺の19回目の挑戦もいよいよ終わりを告げようとしていた。

 

 

『さよなら……誇り高き王……』

 

 

何度繰り返しても決して色褪せることのない想いを抱きながら、俺はここに誓う。

 

 

『さよなら……寂しがり屋の女の子』

 

 

どれだけの時を費やしたとしても、必ずこの馬鹿げたループを終わらせる。

 

 

 

『さよなら……愛していたよ、華琳――――――』

 

 

 

その時こそ、君との約束を守ってみせるよ、華琳――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これで開放条件達成ね。次からが本番よ、頑張って、ご主人様ぁん♪』

 

 

意識が闇に落ちる瞬間、そんな渋いオカマ調の声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

あとがき

 

 

どうも、『ささっと』です。

 

今回はかなり説明的な内容になってしまいました。

 

2話目にしていきなり19周目まで一気に飛び、また作者補正、別名チートのかかった一刀君。

 

本文中にもありましたが、ループ中において特定の条件を満たす度にチートが発動。

 

さらに一刀君本人に重大な影響を及ぼすと判断される事象が起こった場合、

次の周回に行く前に『観測所』に飛ばされてチート、さらに色々な改竄が行われます。

 

いきなりこんな俺tueeeeee状態にしてどうするんだ! と思われる方もいらっしゃると思いますが、

本編ではこの状態の一刀君ですら苦戦します。

 

と言っても別に物凄く強いオリジナルの敵が出るわけではなく………これ以上はネタバレですね。

 

とりあえずプロローグは今回で終わりです。

 

次回からはいよいよ本編に突入していきます。

 

 

 

コメント、および支援ありがとうございました。

 

次回もよろしくお願いいたします。

 

 

 

PS:シリアスな物語と思われがちですが、案外そうでもなかったり(本編の内容的な意味で)

 

 


 
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