「こちらランサー1、ミッションコンプリート RTーーーー」
「”ランサー!!たった今基地へ所属不明機が飛来した
当空軍基地はこの機を敵機と識別。迎撃を開始」
無線から聞こえたAWACSの声に、私は感覚的に何かを悟った
と、同時にAWACSの無線がこちらにも割り込んできた
「貴機の所属は何処だ?その所属次第では我々は貴機を”拘束”しなくてはならない」
「・・・・・名も知らぬAWACSに問います」
「・・・質問をしているのは此方側なのだが」
「・・・・・”私を拘束したがるのですか?
そんなに、私が危険だからですか?”」
一方、イギリス防空基地では~
「対空戦闘用意!!SPYレーダートレース!!」
「目標確認!!戦闘機一機、IFFに応答するも部隊名不明!!」
「敵機、ウエポンベイ解放!!あれは・・・」
"F-45" FACS control open...
FCS. call's program No.3
Atack point. SPY reidar
Aut homing sistem...control "active"
ECM sistem....stand by
F-45の特殊武装格納コンテナのハッチが開く
そこに搭載される武装は、基本的には試作機であるCFA-44と同様
もしくは発展型の専用戦略武装である
そして、この機体に搭載された特殊武装はーーーー
”Weapon name ' Electro Magnetic Launcher'”
炸薬ではなく、雷と同じ電力を用いて弾頭を射出する
超電磁砲ーーーーまたの名を、”レールガン”
「光学映像目視確認中・・・ッ!!敵機!!EMLと思しき砲身を展開!!」
「ターゲットポインター照射を確認!!目標、SPYレーダーシステム」
この時既に電力のチャージングを終えていたその戦闘機は
” sorry...don't get my way ”
制空権を既に握り
同時に、電子戦を開始する
しかしその銃口が意味するその機体の・・・少女の意思は
その照準を向けた彼達には、ほぼ正反対の意味合いで捕えられていた
「迎撃開始!!対空火器、全砲門発射始め!!」
司令室を管理するその軍の幹部の者は、その機体を墜とす選択を取った
火器管制制御画面に表示される全対空防御システム
その表示が、緑色から青色に変わる瞬間だった
ビーーーーーーーッ
その全ての表示が、すべて赤色に切り替わった
”全対空火器使用不可能”
「対空防御システム停止!!バックアップシステムも作動せず!!」
「原因特定!!敵機のECM電子妨害によるものと推測!!」
「コントロールロック、対空管制不可能!!
同時に、基地の管制室が揺れた
だがEMLの弾頭が捉えていたのは、レーダーではなく
エプロンと滑走路を繋ぐ、誘導路だった
立て続けにその連絡路を抉られた航空基地は
既に、航空基地としての機能を失った
「敵機・・・第二滑走路への着陸体勢に入った模様」
「着陸だと?・・・一体何の為に・・・・」
全対空迎撃機能を失ったに等しい基地のCICの司令官は
画面に映し出されている滑走路と、
全ての引金をロックされた、対空機銃やSAMの制御画面を確認
陸上部隊に機体の制圧指示を出そうとした時だった
「レーダーに反応アリ、IFF応答周波数照合・・・
二機の内一機は先程所属不明機の確保に向かった第二IS遊撃小隊一番機、
もう一機は・・・」
「どうした。報告を続けよ」
「もう一機は・・・”IS学園特務戦闘航空機隊一番機”」
CIC管制室内で少しざわめきが起こる
当然である。IS学園はあくまでISの操縦者の学び舎である
ISは既存の兵器の頂点に君臨する最強の刃だ
時代遅れの兵器である戦闘機を保有するメリットが皆無に等しい
それに、IFFが応答する時点で国連所属ではあるだろうが
その情報は現在秘匿されているので、自衛隊ではもちろん、
海外の遠く離れた基地では”素性の知れない部隊”の扱いなのだ
「IS学園特務航空機隊だと?聞いた事がない・・・コールサインは何だ?」
「コールサイン確認、表記・・・ガルム1」
若い管制官はしれっと答えたものの
「ガルム・・・だと・・・?」
その道三十二年のベテラン管制官は、その名前を聞いた瞬間に顔面蒼白となった
「知っているんですか?このコールサイン」
「知っているも何も無い・・・ガルムは・・・」
そう、この司令官は知っていた
奇遇かな、この司令官はその本人と面と面を合わせて話した事もあったのだ
なぜならば・・・
「ガルムは・・・元々俺が勤めていた基地所属の傭兵だ」
「待って下さい・・・ガルム・・・司令官の元々居た基地・・・ヴァレー基地ですか!?
まさかーーー「スコープ貸せ!!」・・・っ!!了解!!」
管制官から双眼鏡をぶんどった司令官は双眼鏡を覗き込んだ
まず双眼鏡を向けたのは着陸した機体に向ける
「塗装パターンとあのカラーリング・・・」
機体を観察していき、キャノピーを見た途端視界が白く輝いた
思わず目を瞑って回復を待ち、もう一度覗き込んだ
再びキャノピーを注視すると・・・そこに誰かが座っていた
「嘘・・・だろ・・・?」
「あんな女の子が操縦を!?」
そこには、頭を垂れているものの
明らかに、パイロットとは思えない服装をした小さな子供が座っていた
それこそ、歳相応の私服に身を包んだただの少女だった
だがーーーそんな事よりも司令官が注目したのは
「(そっくりじゃねぇか・・・まるでアイツをそのまま小さくしたみたいな姿だぞ)」
そしてそのまま二機のISの一機に目を向ける
まず機体状況の確認だ
装甲には亀裂が入ってはいるものの推進系統に異常なし、飛行に問題無し
脚部から腰部にかけて透明なクリスタルのような翼で覆われているが
見た事の無い機体だな。だが所々見える装甲自体は打鉄のものを発展、
もしくは改良したような形状になっている・・・プロトタイプか?
そうして観察していき、最後に頭部のバイザーを捉えた時に
ーーーー疑問が、確信に変わった
「コンタクト、IS学園所属機へ」
「繋ぎます・・・コネクトオンライン」
「もうすぐ基地へ到着します。恐らく所属不明機として扱われるでしょう」
「ええ~面倒だなぁ・・・リフテリアが何とかできないの?」
「その点は問題無いのですが・・・何分あなたの身分上の計らいが難しいですね」
そうだよね・・・今の段階で結構無理言ってるのに
私は何を求めているんだろうか・・・
と、HMDに基地のロックが表示された
どうやら光学望遠視認圏に入ったみたいだ
だが・・・
「滑走路に煙・・・どうやら撃ち落されたみたいね」
既に敵戦闘機は撃墜されたみたいだ
そう思っていると、全方位レーダーに基地が表示された
「んー、ヴァルクド防空監視基地って言うんだーーーー」
と、基地の滑走路上に戦闘機を確認した
停止しているので、多分着陸している
「IFF更新確認、この航空機の表示は・・・誰かの名前かしら?」
「どうかしたの?」
「いえ・・・所属不明機の名称表記が”fia”となっているんです」
ーーーーーーーフィア!?
真っ先に思い浮かんだのは、私の大切な娘の顔だった
そして機体の傍らに降り立った私達は基地の管制塔からの通信を受信した
「こちらヴァルクド防空監視基地管制室、貴機は此方側のIFFに登録されていない機体である
所属国家、及び所属部隊、階級を述べよ」
所属・・・私の所属って結局どうなるんだろう
IS学園?、いや戦闘機を預かったからアメリカ?
・・・今の私はそのどちらなのだろう
・・・でも、どちらでもない回答が一つだけあった
「こちら”ガルム1”ただの傭兵だ」
あ、しまった
つい口調が元の口調に戻っちゃった
「こちら管制室、了解した。ようこそ、ヴァルクド防空基地へ”ガルムの嬢ちゃん”」
と、思わず顔を上げる
するとエプロンの方から歩いてくる人影が一つあった
その人はゆっくり私達に歩み寄り、そして私の前で止まった
髭をのばしたその温厚そうな雰囲気のおじさんは・・・恐らく司令官クラスの階級なんだろうと思う
でも・・・私が知っているこの人はーーー
”行って来い、そしてまた帰って来い!!ガルム!!”
「基地から目視で見える距離から行方不明になるわ、二週間後には帰ってくるわ
帰ってくればなんか別人みたいな娘になってたり、また一週間後に行方不明になったり」
「か、カグロスト司令?」
ま、まさか・・・・やばいって、よりにもよって・・・
「自分が食った飯の料金の領収宛を俺にしてたりなぁ?ええ?サイファー」
やっぱりカグロストさんじゃないですかぁ!?
IS展開解除した瞬間に、頬を思いっきり引っ張られた
「ほ、ほひはひふりへふ(お、お久しぶりです)」
「お~ぅ久しぶりだなァサイファァァァ・・・」
痛い!!いたいって!!
ぐにぐにするなあばばばばば!?
「おまけに娘までもうけてるなんてなぁ・・・相手は片羽か?」
ぐるるぅ・・・
思いっきり睨んでやった
「お~お~おっかね~な。でもあの時程覇気が無ぇぞ。よっと」
「あうっ!?」
パッと指をはなされる
まだ若干麻痺してる頬を擦りながら、私はその戦闘機のキャノピーを開いた
そこには、すやすやと寝息を立てる私の娘が居た
なんで・・・どうして・・・
「ここまで追いかけてきたの?」
思わず、聞いてしまった
そして、その質問は返ってきた
「・・・ひとりぼっちは・・・つらいよぉ・・・・」
寝言だった
だけど、それは何よりも深く私に突き刺さった
そして、昔の記憶が頭の奥深くから蘇って来る
その記憶は、お父さんが帰らなくなって二週間程経過した時のものだった
当時の私は基地では浮いた存在だったと思う。私の周りには誰も居なかった
そんな時、一人のパイロットが私に言ってくれた
自分の手で、”空”をとんでみないか?
あの何処までも続く、途切れの無い空を
「・・・うっ・・・」
その先を思い出そうとすれば頭痛が走る
「でもおまえがなぁ・・・しかもアイツとだろ?
ま、おしどりだったのはあの基地に居た人間の誰もが知ってる事だが」
あ~この元整備班長を殴れるものが欲しい
ていうか、おしどりって何?
「しっかしガルーダ。お前も運が無いな
何せ、この御嬢ちゃんはあの”鬼神”なんだぞ?張り合って勝てる人間がいる訳が無ぇ」
「・・・・え?」
・・・・そうだよね
信じられないよね
信じたくは無いよね
「・・・おば・・・フィレイアさんが?ガルム?」
「ん?サイファーお前フィレイアって名前なのか
凄ぇ綺麗な名前してんな。今のお前にはお似合いの名前だ」
「そんな・・・・本当なんですか?」
「あん?さっきから何呻ってるんだガルーダ、いい加減鬱陶しいから落ち着け。
だが、この麗しい嬢ちゃんはお前と同じ場所で戦ってたんだよ。な?サイファー」
「・・・・・」
沈黙が・・・私達の間を流れる
その間の空気の重さを、このバカ元整備兵が理解するのは
私が言った、私自身の”名前”を聞いてからだった
「私の名前は・・・フィレイア・・・・
フィレイア・ヴィリタニィ・リーファフロイス」
「・・・・・・は?」
「・・・・」
少し・・・いや、かなりこの人を混乱させたのかもしれない
私は・・・
この空港のある土地が存在する国家の、頂点に座らなければならなかった存在
「サイファー・・・いや、フィレイア皇女殿下・・・
下手な事をしなくても、その事実はこの国をひっくり返してしまうものです」
「言われなくても判ってる・・・でも、私はもうこの国に戻る気は無いよ」
敬語になって話す航空司令官は、顔を少し曇らせて私を見ていた
「だが、あなたの存在はもう歴史の”鍵”になってしまっています
事によっては、この国だけじゃなく世界の歴史すら塗り替えられるのです」
「なら・・・どうすればいいの?」
この呪から、私はどうやって逃げればいいのだろう?
「少なくとも・・・ああ面倒だ。サイファー、お前はあの時俺にこう言ったよな」
「?」
「”お前には守るべき大切なものがある。だからお前と俺は違うんだ”ってな
この言葉、今のお前にそっくりそのまま返す」
「・・・・・・」
「今のお前には、”ガルム”や”サイファー”でもなく、唯の娘っ子だ
それこそ、死亡したって公言されているならば
お前はその名前を語らなくていいんだ。そんな必要ない
そして今のお前には、そんなものよりも”守りたいもの”があるんじゃないか?」
と、カグロイヤさんが私の膝の上で眠っているフィアを見た
・・・そうだ
私には、守らなくちゃならないものがある
大切な・・・大切な人達が居る
「そうですね・・・」
「なら、ここに居るのは”フィリア・フェイリールド”という娘だ
フィレイア?誰だそれ。俺は知らん」
と、そっぽを向くカグロイヤさん・・・ははっ
「相変わらず、優しいですね」
「・・・・・お前程じゃねーよ」
「でも・・・ありがとう」
これで、私は前を向ける・・・歩く事ができる
そうして、私は立ち上がった
「リフテリア、クルクに口止めしといて
”そんな事実を私は知らない
そして、その権利も必要ない
今日を以てリーファフロイスの血筋は完全に途絶えた
そして、英国の由緒ある皇族としてレディバイス家を後継皇族に推薦致します
英国リーファフロイス皇家第一皇女
フィレイア・B・リーファフロイス ”
このデータを丸々クルクに送っておいて」
リフテリア・・・クルクの子供にそれをお願いする
本当は・・・本人に直接言いたいんだけど
本人の所に行けば、私は確実に”消される”から行かない
リフテリアはこのお願いに二つ返事で了承してくれた
「でもたまには連絡下さいね」
「うん、リフテリアは友達だもん」
う~ん・・・リフテリアってクルクとは違うんだよね
いろんな意味で・・・でも、親戚がいるだけで私にとっては結構心強い
「でも・・・これからどうするんですか?」
「どうするもこうするも無いよ。私は私
そして、リフテリアはリフテリアだよ」
それ以上でもそれ以下でもない
だから、私はもうこの国の事は忘れる
二度と、この国の土地を踏まない
二度と・・・二度と・・・
お母さん達に、会う事はできないのだから・・・
「よし、それじゃあねカロウト。酒ばっかり飲んでないで元気にしててよ?」
「そりゃ保障しかねるなぁ・・・ハハハッ!!」
頭をボリボリ掻いて天を仰ぐカロウト
そして
「また会いましょう。フェイリールドさん」
「・・・そうですね。またいつか、今度は静かなお茶の席で」
そうして、私は再び別れる
戦闘機に乗り込み、膝の上にフィアを座らせて
「うっしゃ!!ガルム1離陸を許可する!!」
「じゃあなカロウト!!ガルム1!!テイクオフ!!」
最後に私は昔のようにキャノピーから返事をして、私は滑走路から飛び立った
後部カメラが捉らえるのは、帽子を振る一人の整備兵と
小さく手を振る、一人の未来を戦う親戚だった
「さあ・・・帰ろう」
機首を反転させ、自動操縦に切り替える
”航路認証確認、目標”日本国立高等学校 IS操縦教育研究機関”
巡航速度を高め、
そして、雲の上へと姿を溶け込ませる
場所は変わってーーーーIS学園の織斑一夏部屋では・・・・
「だって、普通考えられないわよ」
「そうだよなぁ・・・あのセシリアがだろ?」
部屋に居る面子は部屋の主である織斑一夏を始め
「そうよ。あのセシリアがよ?
フィリアを強制連行してイギリス本国に行ったって言うのよ」
中国代表候補生である鈴や
「なんからしくないね・・・セシリアにしては慌てたような感じだったし」
フランス代表候補生のシャルロット
「だが妹の故国はイギリスなのだろう?別に問題にはならないではないか」
ドイツの代表候補生であり、特殊部隊の隊長であるラウラ
「しかし・・・妙な胸騒ぎがするぞ」
そして、ISの生みの親である篠ノ乃束の実妹の篠ノ乃箒は
放課後の特訓をさておき、この部屋で会議を開いていた
「そうなのよね・・・何故か知らないけど、風が冷たいし」
「屋上に行ったら、いつもフィリアが寝ている所に鳥達が囲うように集まってるし」
「教官に質問をしたはいいが、少し気になる事を教官は言ったんだ」
と、ラウラがコーヒーをすすりながら発言した瞬間、全員の視線がラウラに集まった
「”お前とフェイリールドは似ている。世界に翻弄され、
そして自分が何者なのかを知らなかった所がな”と」
「・・・それ、どういう意味よ」
「私にも判らん。だが、一つだけ判った事がある」
「「「「?」」」」
首を傾げるラウラ以外の面子
そして、若干それにたじろいだラウラは静かに続けた
「私と妹は・・・似たような場所に居たのかもしれない」
「それってつまり・・・」
「ああ、フィリアは”軍属”だった可能性が高い」
「・・・確かに、軍属だったのならあの異常な戦闘能力に理由が付くわね」
「それに、ポートマス先生とは顔を知った仲って接し方じゃなかったよ
なんとなく、”いつも一緒に居た仲間”っていう感じ・・・なのかな」
そう、薄々専用機持ち達は気付き始めていた
フィリアが普通では無いという事に
普通ではないにしろ、彼女に対する各員の認識はあくまで”仲間で専用機持ち”
自分達と同じだと、”思い込んでいた”のだ
ピピッ
「ふむ、セシリアから通信だ・・・何?どういう事だ?
そんな事ができる訳がないだろう!!お前は自分で何を言っているか判っているのか!?」
と、普段はそこまで慌てることの無いはずのラウラが端末に怒鳴り散らす
「何?・・・だが、それが事実だとすれば
お前は”反逆者”となるのだぞ?そんな話を信じる事はできん」
何やら不穏な言葉を続けて、ラウラは端末を耳元から放した
「・・・・なんだったの?」
シャルロットがラウラに訊ねる
だが、ラウラは少し考えるような顔をして端末をもう一度開く
そして動画検索をかける
「何を探しているの?」
「いや・・・見つけた。シャルロット、これに見覚えは無いか?」
と、ラウラが端末を机の中央に置く
「「「・・・?」」」
そこには、古き軍の正装を身に纏い
長く重い木製のライフルを縦横無尽に空中に放り投げ
円舞のように舞いながら発砲、あるいは銃先端部に付けた銃剣を用いた槍術攻撃の”再現”
「これって・・・儀仗部隊のレプリカライフルスピン?」
「ご名答だ。そして、この動きに見覚えは無いか?」
「う~ん・・・あ、これって・・・」
と、会話を続けるラウラとシャルロットの話についていけない鈴と箒、そして一夏
「なぁ、一体何の話をしているんだ?」
「わからないわよ」
「私にも判らん」
そうしてお茶を啜っていると
「そうだ。フィリアがあの時用いた銃剣術の”劣化版”だ」
「でも、これイギリスの儀仗部隊ではやってるよね?」
「儀仗部隊のライフルスピンはあくまで”魅せる技”だ
その動きには無駄が多くとてもではないが実戦で効果的に用いる事はできない」
「それじゃあ・・・フィリアがやってたのって・・・」
「・・・あれは”魅せる技”ではなく、”殺す業”だ
そして、フェイリールドは個人で銃剣付きのライフルを所有している
リー・エンフィールドという傑作品をな」
「「「リー・フェイリールド?」」」
「お前達は一度イギリスの女王陛下に謝罪しに行って来い」
と、ムスっと珍しく機嫌が悪くなるラウラ
「あ、ラウラあのライフル好きなんだ・・・てっきりモーゼルかなって」
「あの銃は反動が強すぎる。私の体格では扱いにくいのだ」
「イギリス製ならSA80ライフルとかはどう?」
「あれを使うくらいならまだクロスボウかアーチェリーを使った方がメリットが多いぞ」
「・・・鈍器だもんね」
「ああ、あれは鈍器だ。間違いない」
うんうんと頷く
「話を戻そう・・・これはあくまで仮想の話だ
セシリアが話してきたのは
”フィリアの本名は別にあって
そしてフィリアの出生は、戦火に巻き込まれ行方不明になったイギリスの王室
前女王陛下の一人娘らしい”というものだ」
「「「「・・・・・・・・・はぁ!?」」」」
「確かに私も最初は不自然に思った
だが、問題はそれが事実という事を前提とした場合の英国側の対応だ」
「そりゃあ・・・歓迎するだろ普通」
「国を挙げての祝福よ、だってお姫様が生きてたって事でしょ?」
一夏と鈴が意見を出す
だが、現実は正反対で、そして非情であった
「だが・・・イギリス政府はこの事を隠し、そして
”フィリア・フェイリールドという少女を排除しようとしている”という事だ」
「「「「!?」」」」
その事実に驚愕する一同は、既に迫る嵐の目前に居たのだ
だが、この時にその意味を理解していたのは
ラウラ・ボーデヴィッヒーーーー彼女と同じ場所を戦う為に生み出された存在のみだった
そしてその嵐はーーー
「外洋に出ている全ての国家の護衛艦とレーダーシステムを検索
それの探知範囲、トレースタイミングを考慮した航路を算出」
FACSの画面表記を変更し、かつGPS誘導装置の表示をキャノピーグラスに移動させる
と、不意にレーダーが警告を表示し始める
「”後方6時より機影6、IFF応答・・・イギリス国家特務戦闘機隊ブラックウォード”」
六機・・・
「機銃弾フルパッケージ確認
マスターアームコントロールオン
IFFコード解除、敵機指定確認」
武装を確認した後、私は操縦桿をめいいっぱい引く
ブブブブーーーーブーーーー
Gセンサーが警告音を発する
「ぐぅっ・・・!!」
それは、絶大な負荷が体にかかっている機体からの警鐘だった
でもーーーー関係なく私はスロットルを絞る
「”敵機反転、こちらに向かってくる”」
「”相手は一機、戦闘の意思を確認、交戦を開始する”」
オープンの無線が相手の会話を捕捉する
でも、それはあまり関係ない
なぜならばーーーー
「墜ちて下さい」
”パドルノズルロック解除
戦闘機動もままならないシロウトなんて
所詮、自ら翼を折ってしまうだけだから
「クーバー隊、エンゲージ」
「ガルム1、エンゲージ」
「F-45学園所属機、イギリスの第一防空直轄部隊と交戦する模様」
「IFF応答拒否、兵装選択せず・・・何をする気なの?」
IS学園のコントロールルームでは再び困惑の声が上がっていた
ステルスフィールドを展開しているとはいえ、その状態では機動力が著しく制限を受ける
「人工衛星からの望遠映像通信確認!!出します!!」
コントロールルームのメインスクリーンに大きく中継映像が表示される
そこには、小さいながらも切り取られた空間に白く雲を引くその先端には
灰色の制空迷彩の機体が六機程、そしてその中を掻い潜る一機の蒼
形状は、もはや旧式化した過去の戦闘機ーーーー時代の遺産物
そしてーーー英雄の翼だ
「な、なぜこのような混戦になっているんですか!?」
「更に望遠映像を拡大、民間のものも全て映像に記録しろ」
拡大されたのは、試験的に打ち上げられた海洋観測カメラだった
「え・・・?」
一瞬だった
蒼を追う戦闘機が海に突っ込んだ
「イギリスのAAM-38空対空ロングスピアをかわして海面スレスレで機首上げ
針の穴に糸通すような精密な機体コントロールと相手の動きを完全に把握する目
それらを全てつむぎ合わせて相手を落とす業ーーーマニューバ・キル」
横でポートマスがそんな事を言っているが、むしろ私が絶句したのは
「・・・ポートマス」
「なんだ?」
「今の機体・・・パイロットは脱出したか?」
「できる訳がねーだろ。そういう技で、あいつは理解した上でそれを行った」
「・・・・・」
「理解しろ。理解できなければあいつから離れろ。”表の世界最強”」
そう言って、ポートマスは部屋を出て管制塔に上がっていった
そう、間接的ではあるが・・・私は一人のパイロットの死を見てしまったのだ
そしてその要員を作っていたのは、私の教え子であり・・・いや
私とは違うーーー”裏の世界最強”
その言葉は、どこまでも純粋に表現している
あの少女の風貌と雰囲気が、あまりにもその”裏”であると理解する事を阻害させる
だが、今目の前で起きているそれが答えだった
水面に六つの波紋ができており
巡航状態に戻っている機体が振り向かずに去っていく
そして、不思議な事象を目撃する事となる
突然、蒼の機体が霞んでいく
「GPS追従システム不安定化、目視による望遠追従も困難です」
そして、突然マップの反応が消失した
「F-45、反応ロスト」
その言葉を監視員が呟いた瞬間だった
キィィィィィィィィン
管制室の中に、ジェット機のタービン音が小さく聞こえた
モニター員全員が上の階にある管制塔に集まる
「そんな・・・だって今まで大西洋に・・・」
そう、先程地球の反対側で戦闘を行っていたはずの戦闘機が
既に、IS学園の上空で弧を描くように飛んでいるのだ
「じ・・・GPS反応確認・・・IS学園上空に間違いありません」
「F-45、当学園への着陸態勢に入った模様」
「パイロット、応答願う」
「・・・・・・・・」
だが、パイロットからの返答が無い
「聞こえないか?パイロット、応答願う」
「・・・・・・・・」
様子がおかしい・・・何か変だ
「F-15の推力低下!!ヒューエル残量僅か!!緊急着陸用意!!」
「機体のコントロールを管制側に強制切り替え!!最短ルートで基地へのランディング!!」
「パイロットバイタルシグナル、思考、意識共にブラック!!」
その時だった
ボボッ・・・フィィィィン・・・
機体のエンジンの回転数が下がり、機体が失速する
「クソが!!ルーキーみたいな初歩的ミスをしやがって!!」
ポートマスがISを展開、瞬時加速を用いてパイロットの回収を行う
既に自由落下に入っている機体のキャノピーグラスをマニピュレーターで引き剥がす
そして、中に居る二人の少女を回収する
「・・・戻ってきたって事は、向こう側にお前の居場所は無かったって事か」
静かに呟く
学園の滑走路に、羽ばたきを止めた鳥が墜ちた
鋼の翼をもつ機体は、搭乗者を帰る場所に運びーーーそして、託し・・・果てた
この事態を知るのは、その現状に居た教員のみで
引火する燃料もなくなった機体は、滑走路に進入・・・地面に激突し、大破
言うまでも無く、二度と飛べなくなる程の傷を負い
・・・FACSユニットを残し、機体は破棄された
そんでもって報告です
今年4月より執筆できるかどうかが怪しくなります
ラリー「また仕事か、多忙だな雪下よぉ?」
作者 「多忙なのは否定しねーけどよ、とりあえず再就職先が再就職先だからな」
ラリー「今度はクビになったか・・・哀れ作者よ」
作者 「と、言う訳で・・・航空自衛隊行きます!!」
ラリー「・・・・は?」
そんな感じです。はい(淡白
意見感想募集中
宜しくお願いします
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あけましておめでとうございます、雪下です
書く暇もくれねーのかウチの職場は・・・こんな職場やめてやる
ってな訳で、今年もよろしくお願い致します
急ぎ足ですがドゾー