第四章 15話 官渡の戦い 中編
曹操軍 龐徳の天幕
幽州へ向けて進軍をしているこの軍の中で、幽州の公孫賛が楚と同盟をしたことを知っている者は一人だけいた
その人物の名は龐徳。真名を燦(さん)。元涼州太守馬騰の配下であり、椿(韓遂)の副官をしていた人物である
燦は、曹操軍が涼州に攻めて来た時に曹操軍に下り、今は曹操軍の将という形で過ごしている。しかし、燦にはもう一つの顔がある。それは、楚に居る葵の忠臣という顔である。燦は楚から来る密偵達へ曹操軍の情報を伝えていた。密偵達は燦からの情報をもとに曹操軍に潜入をし、情報の真意を確かめ持ち帰っていたのである
何故、燦はこの様な仕事をしているのかというと話は曹操軍が涼州に攻めてくる少し前に遡る
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涼州
椿「皆、集まった?」
燦「はい。ですが、急に如何したのですか椿さん?」
椿「それはね」
椿は一言呟いて集まっている皆を見回した後、
椿「皆聞いてくれ。昨日、葵、つまり馬騰から手紙が届いた」
おーーーーーーーーー
燦「それは本当ですか?皆無事だったのですか?」
椿「まあ、待て。質問は後で聞くから続きを話すぞ。この届いた手紙には葵達のウザったい自慢話や色恋の話しか書いてない。ただ、手紙はもう一通届いていて・・・・これは、今、葵達が使えている楚王項羽から届いたものだ」
燦「楚王から・・・・それには何が?」
椿「それはだな、涼州の今後の事についてだ。そして、ここにはこう書いてある。『何時になるかは解らないが此処に必ず曹操軍が攻めてくるだろうと。そして、我々はその戦いで勝利するのは難しいだろう』と」
燦「な!!それはどういう事ですか!!我々だけの力では打ち勝てないということですか!?」
椿「そう言うことになるな」
燦「いくら曹操軍が屈強でも・・・・・我々が勝てないと決め付けられるとは何故ですか!!楚王は私達を馬鹿にしているのですか!!」
椿「そうじゃない。楚王は私達にとってこの戦では分が悪いと考えて居るからだろう」
燦「??」
燦以外の将達も椿が言っている意味を理解しきれていなかった
椿「思い出してみろ。葵達がしたことを・・・・あいつ等は連合に着いたのでなく董卓、いや、楚に着いたんだぞ。それを考えると、あたい達涼州軍は逆賊と言われても仕方がないんだ。つまり、曹操軍は大手を振って攻めてこられるが、あたいたちはそうは言っていられないってことだよ」
燦「・・・・・・・・」
椿「それでだ、話を続けるが楚王はこう書いている。『負ける可能性が高いのなら戦が始まってある程度戦ったら、降参か逃走して出来るだけ兵を残すべきだ。そして、その兵を連れて降伏した方は曹操軍に、逃走した方は南下して劉備軍に行って機会が来るまで潜伏していてほしい。ただ、これはあくまでお願いである。自分の好きなように動いてもらってもかまわない』こう書いてある。だから皆を集めた。皆に考える時間を与えるためにだ」
そう言った後、椿は皆を見回した
将「しかし、我々は馬騰様からここを預かった身。その様に捨てるような行動は・・・」
将「そうです!!我々涼州騎馬隊にかかれば曹操軍など敵でないはずです」
将「しかし、その話の通りだと曹操は帝から指令を受けて攻めてくると考えられる。・・・・」
燦「それで、椿さんはどうされるのですか?」
椿「あたいはもう決めている。あたいはずっと葵とやってきた。それは昔も今も変えるつもりはない」
燦「それはつまり・・・・」
椿「ああ、この話に乗ろうと思っている。これはあたいの気持ちであって、お前たちは一人ひとり考えて悔いのない決断をして欲しい。・・・・・まあ、出来る事なら皆同じ気持ちで合ってほしいがな。フフフ」
燦「椿さん・・・・・」
将達「・・・・・・・・・・」
燦達は椿の気持ちを思い、また忠誠を誓った主である葵の事を思い出していた。あの人は少し自由な人であったが曲がったことを絶対にしない人物であった。その主が漢の将であることを辞めるまでして選んだ人物が言うことを信じられないということは絶対にない
此処まで考えたときには将達皆、決心を固めたのであった
我々は漢の将である前に涼州の狼こと、馬騰の家臣である。主が要るとここそが我々の居場所。どれだけ苦渋を飲まされようとこの気持ちを絶やすことは絶対にない
燦「椿さん。私も・・・・私もこの話受けようと思います」
燦のこの一言から次々に集まっていた将達も自分もと名乗り出していった
椿「そうか、皆ありがとう。・・・・・・あ、お前たちも葵からの手紙読むか?結構面白いこと書いてあるぞ」
そう言って、近くに居た将の一人に手紙を渡して
椿「燦、少しいいか?」
燦「?」
椿は皆が葵の手紙に集っている間に隣の部屋へ燦を連れて行った
燦「如何したのですか?私も葵様の手紙を読みたかったのですが」
椿「それはな、さっきの話の事についてだが、二つに分かれるのは理解していると思う」
燦「はい」
椿「その一つは私が率いるが、もう一つを燦、お前に頼みたい」
燦「私がですか?」
椿「ああ。お願いできるか?」
燦「・・・・・・・・わかりました。私に出来るかわかりませんがやってみます」
椿「よし、ならお前にもあいつに会ってもらわないといけないな。・・・・お~~~い、出てきてくれ」
燦「?いったい誰に言ってるのですか?この部屋には私と椿さんし・・・・・か・・・ヒャ!!」
燦が椿の言動に疑問を浮かべ部屋を見回しながらそう言っていると、目に前に急にさっきまで誰もいなかったところから一人の女性が現れたのである
明命「この方が韓遂さんの言われていた?」
椿「その通りだ。あたいの副官で龐徳だ。こいつにもう一つ隊をの任せることになった」
明命「私は楚の周泰と言います。よろしくお願いします」
燦「・・・・・・・ハッよ、よろしくお願いします」
明命「私は密偵として動いているのでこれから龐徳さんたちと私か他の人が連絡を取り合うと思うのでこれからよろしくお願いします」
燦「はい・・・・・それより、いったい何時ここに入られたのですか?」
明命「へ?最初っから居ましたよ?気づきませんでした?」
椿「え?あたいも見えなかったからてっきり天井に居たと思ったけど・・・・違うのか?」
明命「違いますよ。私はずっと此処に居ましたから。ただ、気配を断って気で存在を薄くしていましたけど」
燦「全然気づきませんでした」
明命「そうなんですか。私のこれは楚ではまだまだの段階で皆にすぐばれてしまうので常に練習をしているのですけど、やっぱりあの方たちがおかしいのでしょうか?」
明命は自分の感覚が少しずれて来ているのに今更ながら気づいた時だった
燦「それで、私達はこれからどうするのですか?」
椿「ああ、それなんだが・・・・何でも劉備の方は少しアレらしいから、まだ聞く限りまともそうな曹操を燦にお願いしたい」
燦「曹操ですか・・・・・・わかりました」
椿「よろしく頼むな」
明命「あの、それでですね、潜伏している間にその各自の軍で情報を集めてほしいんです。その集めた情報から私達が調べて持ち帰りますので」
燦、椿「「わかった」」
明命「ありがとうございます。では私は楚に戻りますので、これからよろしくお願いしますね」
シュタ
そう言った明命はその場から居なくなった
燦「椿さん、・・・・・一つ思ったのですけど楚ではあんなに人間離れしていてもまだ普通なんでしょうか」
椿「そうだろうね~~~」
椿はこれから仲間と言える人たちの異質さに考えるのをやめようと思ったのであった
時は戻り
コクコクコク
燦「おっと、少しうたた寝をしてしまったかしら。・・・・・しかし懐かしい夢を見たわね。あれから数年が経ったけど本当に曹操は攻めて来た時の驚きを超える事は一度も起きなかったわね。自称覇王の曹操がどれだけの人物で驚かしてくれるかと見ていたけどやることは他の諸侯とは違いはあるけど・・・・・・周泰や呂蒙とその部下たちから聞く楚の政策に比べると別段凄いとも思うことは無かったのよね」
等と呟いていると
スッ
亞莎「龐徳さん」
ビク!!
燦「ヒッ・・・・ああ、呂蒙さんか。どうしたの?連絡ごとは終わっていたと思ったのだけど」
亞莎「そのことですが、如何やら陳桂がよからぬことを企んでいるようなので一応報告をと思いまして」
燦「そうなんですか、ありがとうございます。でも、次の戦で前話した通りに翠達と合流したらそのまま反転して攻める予定なので大丈夫ですよ」
亞莎「はい。でも念のためにですよ。あなたは、もう私達楚の家族の一員なのですから何か危険があると悲しいので」
燦「家族・・・・・まだほとんどの方と合ってもいないのにですか?」
亞莎「はい。一刀様が仲間と認めた方は誰だろうと家族ですから。それに私は龐徳さんとお話しする機会が多かったので余計に親しみがあるのです」
燦「・・・ありがとうございます。私も周泰や呂蒙と話している時が曹操軍に来てから唯一の楽しみになっていたので・・・・本当にうれしいです」
燦は頬を赤くさ照れながらそう言った
亞莎「龐徳さん、これからは私の事は亞莎と呼んでください」
燦「いいのか?」
亞莎「はい。どちらかというと真名を渡すのが遅すぎたほどですよ。龐徳さんが家族になった時に渡すべきだったのですから。ですが、いつもお話に夢中になって渡すのを忘れてしまっていたんです」
燦「そうなのか。・・・・呂蒙の真名大切に預からせてもらうわ。それと一緒に私の真名、燦を亞莎に預けるわ」
亞莎「燦・・・・確かに預かりました」
二人はお互いの真名を預かると同時にいつの間にか笑顔になっていた
二人「「フフフフフフ」」
燦「亞莎、この戦が終わって私が楚に着いたら街を案内してくれないでしょうか?」
亞莎「はい、勿論いいですよ。その時は、明命、周泰も一緒でいいですか?」
燦「はい。周泰にも私の真名を預けたいと思っていますから」
亞莎「クスクス、明命も毎回楚に戻って来た時、「また龐徳さんに私の真名を預けるの忘れました~~」て言っていましたから、明命も喜ぶと思いますよ」
亞莎はその時の明命の落ち込んでいる姿を思い浮かべて笑いながらそう言った
燦「そうですか。それはよかった、フフフ」
二人は少しの間、戦場に向かっている空気とは違うとても穏やかな心安らぐ空気でその時間を楽しんだ
亞莎「それじゃあ、燦。私はこれで。戦で怪我をしないようにしてくださいね」
燦「ああ、さっきの楚の案内頼みますよ」
亞莎「はい。それでは」
スッ
燦「本当に一瞬で居なくなりますね」
その言葉と同時に
燈「何の事ですか?」
燦「ん?」
燦は入り口を見ると燈が天幕に入ろうとしていた
燦「ああ・・・・陳桂ですか。ゴキブリが居たから殺そうとしたのですが、素早い動きで見失ったんだよ」
燈「そうですか・・・・私はてっきり誰かとお話していたのかと思いましたわ」
燈はにこやかに微笑みながら燦に言ってきた
燦「(亞莎が気づかないはずが在りませんし・・・・・鎌をかけているのでしょうか?)そんなはずないでしょう。陳桂が此処に入ってくるとき、私いかいなかったはずでしょう?誰かいたなら直ぐ解るはずよ」
燈「それもそうですね」
燦「それでどうして此処に?今日の軍議は終わって皆寝始めているはずだけど」
燈「それでしたら、先ほど私と華琳様で公孫賛との戦の事で話していまして・・・そこで、龐徳さんあなたにやって欲しいことが出来ましたのでそれを伝えようと」
燦「やって欲しいこと?」
燈「はい。これを見ていただけますか?」
そう言って燈は地図と駒をだして説明を始めた
燈「私と華琳様の予想でこの部分で戦になるだろと成りました。ここは両脇に少し小さい山があるので公孫賛の軍は此処で奇襲をかけてくる可能性が高いでしょう。なのでこの奇襲部隊に龐徳さんが潰してそのまま裏から公孫賛に当たって欲しいのです。公孫賛の軍は将が少ないためこの奇襲隊には良くて副将ほどの力がある者が指揮をしているだけでしょうから問題はありませんけど、如何でしょうか?」
この、燈が言った場所はねねが策を立てた場所と同じ場所だった
燦「(ふむ・・・・どうやって翠達と接触しようかと考えていましたけど、これは調度いいですね)わかりました。奇襲部隊は私が引き受けます」
燈「ありがとうございます。では、私は華琳様にその報告をしに行ってきます」
そう言って立ち上がった燈は天幕から出て行った
燈「フフ、龐徳さんは了解しましたけど上手くいきますでしょうか・・・・・いかないでしょうね。それに桂花ちゃんが・・・・・・フフフ」
燈は小声で笑いながら華琳の元に歩いて行ったのであった
その頃、桂花は
桂花「くそ!!いったい何なのよ!!燈が軍師として働きだしてから私の意見を華琳様がほとんど聞いてくれないわ!!このままだったら・・・・・・・・どうにかして燈の策を失敗させないと華琳様が私を見てくれないわ。何か手は・・・・手は無いのかしら」
桂花が何か手は無いかと考えていると
兵「荀彧様」
桂花「何!?男が私に話しかけないで!!」
兵「待ってください。陳桂様にかかわる事なのです」
桂花「陳桂ですって・・・・・いいわ。そこから話しなさい」
兵「わかりました。私は陳桂様の兵をしていますが、あの方の人使いの荒さに嫌気がさしたのです。なので、どうにか元の文官になってもらいたく荀彧様に協力をしようと思いここに来ました」
桂花「何で私なの?」
兵「それは、この頃の荀彧様を見ていましたが陳桂様の策が上手くいく度に曹操様が陳桂様を重宝しているようにうかがえて、荀彧様はそれに不満を持っているように思えましたので」
桂花「・・・・・そう。それで、私に伝えたい報告って何?」
兵「はい。それは、先ほどの事なんですが陳桂様が曹操様の天幕に呼ばれたもようで、そこで次の戦の策を練っていたらしいのです」
桂花「ちょっと待って、何であなたがそのことを知っているのかしら?」
兵「それは、私は陳桂様の天幕の見張りをしていますので外に出て行かれる時、私に曹操様の所に行ってくると言われましたので。それと、軍議だから少し時間かかるからとも言われましたので」
桂花「どういう事!?そんなの私聞いていないわよ!!」
兵「やはりそうですか。私も一度ここの前を通りかかった時、荀彧様が居られる様子なので不思議に思っていたのですが・・・・知らされていなかったのですね」
桂花「きーーーーーーーーーー何なのよ、あの女!!絶対蹴落としてやるんだから!!華琳様の御寵愛を受けるのは私一人だけで充分なんだから!!」
兵「その通りです、荀彧様。曹操様に荀彧様が素晴らしいことをもう一度気づかせましょう」
桂花「ええ、あんなおばさんなんかに負けていられないわ!!」
兵「はい、その通りです。次の戦で陳桂様より素晴らし策で公孫賛の軍をあっと言う間に蹴散らせば曹操様もお気づきになるはずですよ」
桂花「そうね。あなた男の割にいいこと言うじゃない。あなたの言う通り私にはこの頭があるわ。あんなおばさんよりもっといい策が必ず浮かぶはずよ。・・・・・・・あっ、でも、実行できなかったら意味が・・・」
兵「そこは独断で動くしかないかと・・・・・誰かに認めてもらうためには実行しない限りはじまりませんので」
桂花「そうね・・・・その通りよ」
そう言った桂花はその場で瞑想しているように静かに策を考え始めたのであった
兵「私はこれで失礼します。また、何かありましたら報告に来ますので」
そう言って兵は出て行った
桂花はそれからずっと策を何十何百と考え続けた。陳桂見返すために、華琳からもう一度信頼を得るために
燈の天幕
兵「失礼します」
この兵は正にさっきまで桂花と話していたその人物である
燈「うまく行ったかしら?」
兵「おそらくは」
燈「ありがとうね。はい、これお礼よ」
ポイ
燈は金の粒が入った巾着を兵に投げ渡した。この金の粒の額は兵士が数十年働いて手に入るお給金と同じぐらいの量であった
兵「へへへ、ありがとうございます。それでは失礼します」
そう言って兵は出て行った
燈「兵の質も下がったわね。私が来たばっかしの頃はまだそうじゃなかったけど、この頃の戦いで兵が減って新しく入った兵士たちは酷いわね。こんなに簡単に買収できるのだから」
兵の質が下がったのは確かな事であった。まだ燈が加入した時は春蘭と秋蘭が鍛えた兵たちが残っていた。その上、合肥の戦いまでは真桜と沙和が新兵の教育をしていたのだが、この頃の続く戦で古参の兵たちは人数を減らしていった。その上、新兵教育の二人がまだちゃんと働くことが出来ない状態なのだ。この状態では兵の質を落とさないということが無理に近いのであった
燈「大体の仕事は完了したといえるわね。でも、本当にあっちで良かったのかしら?あっちもあっちで扱いにくそうだけれど・・・・・まあ、それは上が考えるでしょう。私は喜雨が居て、衣食住が整っていたなら何も言わないしね。それにしても、傀儡ちゃんは最後どう踊ってくれるのか楽しみだわ」
トプトプ
コク
燈は盃に酒を注いで夜空に浮かぶ月を見ながら傀儡の踊りを想像してそれを肴に酒を飲み始めたのであった
その二日後、公孫賛軍と曹操軍は激突したのであった
あとがき??
やっと次回戦いですね・・・・・・官渡の戦い言いながら全然戦闘書いてないのでこの副題でいいのかと疑問に思っているところです
それにしても燈をこれからどうしていこうか迷うな・・・・
後、曹操軍のその後も・・・・・・戦いで誰か死ぬのかな??それとも捕縛?
取りあえず次回は翠の蜻蛉切りが踊りまわります。多分雅のも・・・・・いや、その次かな?
取りあえず待て次回
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主に曹操軍の話です。
というか、一刀この頃出したっけ?
これが今年の最後の投稿です。次回は一月の最初の方にしたいな