No.745679

真・恋姫†無双~比翼の契り~ Xmas ver

九条さん

シーズンネタ「恋、音々音との絡み Xmas.ver」

2014-12-25 00:00:03 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1178   閲覧ユーザー数:1102

 皆々知っておいでですかー? 『くりすます』という日が近づいているそうなのです。

 曰く、人生を添い遂げる伴侶と共に過ごす日。

 曰く、その伴侶とその……ま、まぐ、交う日。

 曰く、で~となるものをし、恋人との仲を深める日なのだそうです。

 つまり、恋殿と甘い夜を過ご……共に過ごす絶好の機会なのですぞ!

 最近の恋殿はどこへ行っても隼、隼と、あの男の話ばかりをするのです。

 ここいらで恋殿から隼を引き剥がし、どちらが恋殿に相応しいか魅せつけてやるのです!

 

 

 宿の一室。

 心の中で燃え盛る炎の如く意気軒昂している音々の姿を、部屋の隅に隠れながら眺めている者がいた。

 その者の名は徐庶。真名を莉紗という。

音々と相部屋で宿を借りている、この部屋のもう一人の主だった。

 

 心の中の音々は拳を突き上げ「エイエイオー!」という掛け声までしていたが、現実のねねも無意識に拳を突き上げてしまっていた。抑えられる感情の発露だろうか。

しかも口々に「隼は……」とか「隼を……」など呟いているのだから側から見ていた莉紗が勘違いをしてしまっても仕方がないことだろうと思えた。

 音々の様子を、それはもうニヤニヤとした表情で眺めていた莉紗はあることを思い付く。より一層笑みを深くし、茉莉より会得した足音を消す歩法を用いり部屋を抜け出すと、普段は犬猿の仲の男が使っている部屋に無断で押し入り、何事かと捲し立てようとする男よりも先に先程の光景から得た自身の予測を彼に話し始めた。

 始めこそ普段と違う莉紗の様子に戸惑う男――想愁だったが、計画の全てを聞き終える頃には莉紗と同じニヤニヤとした表情を浮かべていた。どこからどう見ても変態そのものである。

 二人は固い握手の代わりに鋭く目配せをすると迅速に行動を始めた。

 

 隼を発端としたクリスマスの話。彼の話ではその日が訪れるのは今日から十日後。その日に仕事を残らせない為、いつも以上に仕事に精を出す莉紗と想愁……と音々。

 三人の様子にある者は困惑し、ある者は何かを察したのにも関わらず普段通りに過ごし、ある者は馬鹿ばっかりねと嘆いた。

 

 これは音々と恋と隼、さらには想愁と莉紗が絡んだ壮大(?)なクリスマスストーリーである。

 なお、本編とは一切関係がないので悪しからず。

 

 

 

 十日後。

 何か目標がある時、時間などはあっという間に過ぎ去っていくものだ。

 恋の部屋の目の前にいる音々にとってもそうだった。

 十日間ひたすらに貯金をし、恋からの誘惑には僅かに押されながらもなんとか耐え……、直後に悲しそうな表情を浮かべる恋にあっさりと敗北しつつも彼女はやりきった顔をしていた。ドヤ顔などではなく、実に達成感に塗れた表情だったと、後に詠は語っている。

 

 今日、このクリスマスと呼ばれる今日この日。音々は非番を獲得した。恋も非番であることは調査済みである。ちなみにこの事は茉莉が教えてくれた模様。音々は協力を惜しまなかった彼女に、クリスマスを無事終えたら一食ぐらいご飯を奢ってあげるつもりのようだ。……これから為すことで金銭が残ったら、の話になるが。

 まだ日は昇り始めたばかり。非番の日の恋はこの時間、あてがわれている部屋で深い眠りについている。この情報は自身の経験則によるモノと、梟の――愛李の力を使い確認済みである。つまり恋は、昨晩夕食を食べ終え部屋に戻ってきてから一度も部屋を出ることはなく、ぐっすり熟睡中ということだ。

 

 音々はまず第一のミッションとして『恋との添い寝とおはよう』を敢行することにした。朝、熟睡している恋の布団に潜り込み、恋の匂いと体温に包まれながら自身も熟睡し、共に起き、今日最初の『おはよう』をするのだ。そしてそのまま朝ごはんを食べ、非番の二人は一日中一緒に過ごすのだ。

 今日のためにお金も貯めた。十日間冷たく接してしまった(と音々は思っている)代わりに、一日中彼女の望みを満たしてあげたい。部屋から出ずにまったりするも良し、街に出て食べ歩くも良し。一日だけでも恋と一緒に、誰にも邪魔されずに過ごす、それが音々の望みだった。

 その第一歩を彼女は今、踏み出そうとしている。

 

 さぁ! 扉を開けて恋殿の部屋へ、いざ行かん!

 

 音々は部屋を飛び出した――瞬間の出来事であった。

 

「あれ? ねねさん。そんなに急いでどうしたんですかぁ(ニヤニヤ)。というか探していたんですよ!」

 

 満面の笑みで戸を開け放った音々。その心の中にいた幸せ絶頂の音々像がガラガラと崩れ落ちた音がした。

 瞬時に沸点を軽く飛び越えた音々。しかし、借宿でしかも大声で怒鳴り散らすわけにもいかず、わずかに残った理性により辛うじてだったが、おそらく今までの音々の人生の中で一番と思えるほどの殺気を伴った視線を声の主――莉紗に向けるだけに留めていた。

 

「朝からそんなに殺気立って、どうしたんですか? それよりもちょっとこっちに来てください!」

 

 所詮子供の恨みがましい視線である。莉紗は特に意に介さず、やや強引に音々の腕を引っ張った。

 

「なにを、するの、です、か! ねねには行かねばならぬ場所が――」

 

「だからこっちでしょう?」

 

 一瞬、腕を引っ張る力が抜け前のめりになる音々。観念したのか……と思う暇などなくいつの間にか背後を取られ、脇に手を差し込まれ、軽々と持ち上げられた。これもまた茉莉仕込みであった。

 

「な、なんですとー!」

 

 小さく驚愕の言葉を発する音々を余所にして、莉紗による音々の拉致は完遂された。

 五分にも満たぬ早業であった。

 

 

 音々が連れて行かれた場所は隼の部屋の前だった。

 扉に手をかけて待っていた想愁もいる。

 

「……何を企んでいるのですか」

 

「別に何も企んでいませんって。とりあえず中に入ってからどうぞ」

 

 訝しげに莉紗を見る音々だが力の差は歴然。その上同じく莉紗の企みを知っているだろう想愁もいるのだから逃げるのは無理だと諦めた。

 なら目的が何かは知らないが、早々にこの茶番を済ませて恋のもとに向かおうと決めた。

 

「……では、失礼するですぞ」

 

 開かれた、部屋の中に入る音々。その姿が完全に部屋の中に収まった時背後の扉は閉められ、外側から二人が抑えているのか開かずの扉となった。

 一瞬慌てる音々だったがこの部屋には窓もある。最悪、恋がいつもしているように窓から出ればいいかと思い直し部屋の主がいるであろうほうへと目を向けた。

 

「……あ」

 

 別段音々達が騒がしくしていたわけではない。彼は常日頃からこれぐらいの時間に起きている。それに、何故か昨晩は仕事も早く終わり少し早めに寝ていたというのもあった。

 部屋に人為的に閉じ込められ、気まずい状況に硬直している音々を余所に部屋の主、隼は目を覚ました。

 もぞもぞと布団の中で動く姿は、普段の彼からは想像出来ないほど緩慢な動作だった。

 そして、そんな隼が何かに気が付き、音々もまたそれに目がいった。と、同時に駆け出していた。

 

「……あれ、また潜り込んでたのか、恋」

 

「……すぅ」

 

 一人分にしてはやけに大きな布団の盛り上がりにいたのは隼だけではなく、音々が敬愛してやまない恋の姿があった。

 もはや条件反射のように駆け出した足を止めるでもなく、音々は最後の一歩を思いっきり踏み込んだ。

 

「ちんきゅーきーーーーーーーっく!」

 

 なぜ三国志の時代に『キック』という言葉が存在しているのか、そんなツッコミはしてはいけない。

 普段よりは助走の距離が少ないが少女とはいえ全体重を乗せた蹴り、その威力は生半可なものではない。

 恋が潜り込んでいたおかげで多少目が覚めていたとはいえ、緩慢な動作に変わりはない隼が避けられるわけなどなく、音々の蹴りは寸分の狙いも違わず――。

 

「ふぎゃ!」

 

 目を瞑ったまま、おそらく寝ているだろう恋によって足首を掴まれ、そのまま叩き伏せられていた。もちろんそこには布団などない硬い絨毯があるのみである。

 

 強かに打ち付けた鼻を擦りながら音々が起き上がる。

 その目は直接の原因である恋、ではなく隼に向いていた。理不尽極まりない気がするものだ。

 隼のほうも何度も見た光景か、苦笑するだけである。

 ひとまず放置しておくわけにもいかないということで、手を差し伸べる隼。

 

「お前さえいなければ……」

 

 小さくブツブツと言った声は聞こえていただろうが、手を取った音々を布団の上に持ち上げ恋の隣に座らせる。

 いつもと同じ休日が始まった。

 

 

 結局、この日は一日中三人で過ごしていた。

 恋が起きるまでは二人で他愛もないことを話し、恋が起きてからは朝食を取り街で散策。

 昼を過ぎてからはセキトも連れて森へ散歩。さすがに時期が時期なので川には近寄らずであったが。

 いらぬ男もいたとはいえ音々にとっては総じて楽しかったようで、森から帰る頃には恋の背中で静かに寝息を立てていた。

 恋の背で眠る姿は純真無垢。齢に相応しい顔をしていた。

 その中で恋は一つ隼に質問した。

 

「……今日は、くりすます?」

 

 普段見られない音々の素顔を眺めていた隼は、恋の問いに戸惑ったように答えた。

 

「なんで恋がその言葉を知ってるのか知らないけど、今日はクリスマスの前日。つまり、クリスマスイブだな」

 

「くりすます、いぶ?」

 

 聞きなれない単語に恋が首を傾げる。

 

「そう、クリスマスイブ。明日は一日中忙しく動くから、楽しみにしてていいぞ」

 

「ご馳走も、でる?」

 

 本来のクリスマスとは楽しみ方が違うだろうが。それもまた恋らしさなのだろうか。

 花より団子。色気より食い気。

 それもまたクリスマスという楽しみ方か。

 

「もちろん」

 

「……楽しみ」

 

 あまり表に表情を出さない恋がわずかに微笑んだ。

 その表情に満足しながら、三人は帰路に着く。

 

 

 

 翌日深夜。音々の寝室に二つの人影が訪れた。

 一人は手に持っていた人形を枕の側に、もう一人はそのまま布団の中に潜り込んだ。

 夜が明けて、音々の寝室からは驚愕の声が鳴り響いた。

 その日から彼女の傍らには常にある人形が置かれることになる。

 彼女が最も敬愛する人を模した人形。

 少し歪な人形。

 翌年も、その翌年も。

 毎年この時期になると音々の枕元にはこの人形が置かれるのだ。

 彼女の知らぬ間に。前年に比べるといくらか進歩した人形が。

 

 音々にとって初めてのクリスマス。

 この日から彼女は積極的に隼の仕事を手伝うことになるのだが、それはまた別の話。

 

 これは一つの、数ある外史の一つである。

 

 

 

【あとがき】

 1週間ぶりです。

 九条です。

 

 皆様、アンケートのご参加ありがとうございました。

 4人だけしか投票されなかったとか気にしたら負けですね、うん。

 

 恋、というよりも音々に重きを置いていましたが如何でしたでしょうか。

 実は音々の口調の「なのです」とか「なのですぞ」とかあまり多用したくなかったり。

 某艦娘をこれくしょんするゲームで本気を魅せていらっしゃる方と被るんですよね。

 SSだと声が無い分余計に。

 個人的には「あら、あらあら~」が好きです。4人目がカンストしました。

 これで改造前と改造後2人ずつカンストです。まだ102と98がいるぞ……。

 

 一昨日からPC版PSO2を一からやり始めまして、今回の話もなんとかギリギリ間に合った具合です。

 アンケートを投稿した時には半分以上書けていたんですけどねぇ……慢心、ダメ絶対。

 ゲームはちょっとハマると危ないですね。ある意味中毒性がある気がします。

 やめる気は今のところないっていうのが一番怖い。

 

 せめて次回の話は年内に更新できるようにしたいところ。

 それを2014年最後の更新にしたいので、最後の挨拶はその時に。

 

 それでは次回で!

 (#゚Д゚)ノ[再見!]


 
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