No.745521

命日和4~クリスマス 2014

初音軍さん

とにかく幸せ~な気持ちを詰め込んだ話。誰得? 自分得しかない(´◉◞౪◟◉)ドゥフ!幸せな気持ちが少しでも伝われば幸いです(*´ェ`*) イラストはこちら→http://www.tinami.com/view/745520

2014-12-24 17:24:20 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:355   閲覧ユーザー数:355

命日和4~2014 クリスマス編

 

 恋人が出来て、家族が出来て、そして萌黄との娘が出来てから更に私の世界は

色づいていくように見えてきた。

 

「ねー、ママー。わたしこれほしい」

 

 萌黄と瞳魅さんが仕事で留守、マナカちゃんも娘のみきが産まれてから

色々積極的に行動しているから留守にしていた。

 

 私も前より日数は減ったけれどバイトに復帰していて今日はちょうど休みの日。

みきと一緒に遊んでのんびりしようとしていた。

 

 町を歩いているとお店が並ぶ商店街にはガラスケースに綺麗なものがいっぱい

並んでいて、初めて見るようなきらきらと煌いた目で商品を見ていた。

物心ついた時の遅さと去年に私たちのように引き継いだ力が暴走しかけたから

実際には初めてなのかもしれなかった。

 

「どこみても欲しい欲しいって言うけど、本当に欲しいのはどれ?」

「うーん…」

 

 輝いていた目が少し曇って唸るような声を出しながら地面を軽くこつこつと蹴っている。

色々見ていたけれど、あまりに楽しいという気持ちが強かったせいか欲しかったもの

自体を忘れてしまったかのようだ。

 

「あっ!」

「うん?」

 

「まえにみたケーキたべたい!おっきいの!」

 

 前に見たというのはテレビとかでのことだろうか。確かに少し前からクリスマス用の

ケーキの宣伝は行われていたけれど。既にそれは注文しているのよね…。

 

「他には?」

「うーん・・・わかんない」

 

 私が問うと再び悩ませながら言った後、俯いていた顔を上げた目を私に向けて

きらきらさせながら笑顔でこう返してきた。

 

「ママたちといっしょにケーキたべられればいいや!」

 

 トゥンク!

 

 胸が弾むようにドキっとして一瞬だけ顔をみきから見えないように隠した。

あまりにだらしなくなっていそうな表情を見られたくなかったから。

 

 顔が段々と熱くなっていくのを感じられる。長い時間隠すわけにはいかないから

照れくさくなりながらも普段通りの笑顔を作るとみきは首を傾げて聞いてきた。

 

「ママの顔赤い? お熱?」

 

 みきが可愛すぎるせいなんですけど!!

とか口から出そうになったけどグッと我慢する。道端で言うことでもないだろうから。

 

「ううん、大丈夫。本当にそれでいいの?」

「うん、それがいいの」

 

 改めて聞いておいてなんだけど、随分遠慮がちな子だなぁとか思いながら

必要な買い物を済ませて帰路についていると思い出したかのようにみきが声を出した。

 

「あっ」

「どうしたの?」

 

「もしさ。ほんとうにほしいものができたらママにおねがいしていいかな?」

「うん、私に出来ることならね」

 

「わーい」

 

 みきは無邪気に喜んでいたが言葉のどこかにちょっと重みを感じた気がしたけど

気のせいだろう。まさか5歳のみきにそこまで深いことを考えてるとは思いにくい。

 

 それに単に一つだけに絞ってという意味で言った言葉で考えさせるとは

ちょっと失敗したかな~ってちょっと困った時、ちょうど通りがかりのコンビニに

指を差してみきが「おかし欲しい!」と言い、中へ入って手に取ったのは

ちっちゃい人形が付いた食玩だった。

 

 

**

 

 それから来るクリスマスイブに料理を仕込んでみんなが帰ってくる時間を待つことに。

みきやマナカちゃんと遊んでいるいうちに二人が帰ってきてパーティーを開いた。

リビングを簡単に飾りつけをしてテレビとかで流れている料理とは違うけど

こんな寒い日は特製シチューで体を温めた方がいいかなと思った。

 

 シチューの一部を使ってパスタソースも作ったりしてみんなで手伝いながら

用意して賑やかで楽しい時間を過ごした。

 

 特別何もない日常のひとコマだけれど、この平和な一日がどれだけ貴重なものか。

何度も辛い日々を送ってきた私…いや私達にはわかっていた。

そして娘やみんなの笑顔があればどんなことがあっても乗り越えていけると思えた。

この大切な家族を一人欠けることもなく私はみんなを幸せにしたい…。

 

「はい、命ちゃんも食べて」

「ありがとう、萌黄」

 

 萌黄が買ってきたチキンを受け取って彼女の横顔を見ながら私は笑みを浮かべた。

萌黄の温もりを感じながら一口チキンを齧る。

 

 それから、みんな遊んでいて視線が逸れている中、私はふとある気持ちに押され

萌黄の顔に近づいて空いた手で萌黄の顔を私に向かせて静かに…キスをした。

 

 騒がしい音を背景に私たちは少しの間、キスをしてから口を離すと萌黄は

驚くこともいきなりなことに怒ることもなく静かに赤らめながら優しい眼差しで

私を見つめていた。

 

 テーブルの下に伸ばした手でお互いの手を握って。萌黄の力の強さから

私の気持ちを汲んでくれたみたいに、照れくさそうに笑っていた。

 

 私も改めて辺りを見回しずっと夢としていたこれだけの家族が今目の前にいて、

感無量に心に沁みていくよう。この幸せをずっと抱けるように深く強く心に刻むのだった。

 

お終い


 
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