夜――
あまりに静かなそこは、ほんの数時間前までとはずいぶん雰囲気がちがっていた。
東に流れ落ちた流星。
誰もが期待した
天の御遣いの帰還だと。
【春蘭】「秋蘭・・・・華琳様は・・・」
主のいない玉座を見つめながら、隣にいる妹に話しかける。
【秋蘭】「森のほうへ行くといっていたが・・・・」
【春蘭】「一人でか!?」
【秋蘭】「ああ」
【春蘭】「馬鹿者!華琳様にもしものことがあったらどうする!」
【秋蘭】「落ち着け姉者。今の魏のどこに華琳様を狙う者がいる・・・」
【春蘭】「・・・・そう・・・だったな・・・。だがそれでも一人というのは・・・」
【秋蘭】「今は・・・お一人にしてさしあげろ。」
【春蘭】「・・・・・」
本音を言えば、放っておけるわけがなかった。
自分ですら、その落胆は大きいものだ。
期待が大きいだけ、その失望も激しい。
どれほどの心労をかかえていらっしゃるのか。
――――ギィィィ
入り口の扉が開く音がした。
【華琳】「あら、二人ともまだおきていたのね」
【二人】「華琳様!」
何事もなかったように二人に近づいていく華琳。
【秋蘭】「華琳様・・・もうよろしいのですか?」
【華琳】「ええ。いつまでもふてくされてるわけにも行かないでしょう?」
ふふっと笑いかける華琳に二人は疑問しか浮かばなかった。
明らかに不思議がっている二人を広間に残し、部屋へ向かう。
【稟】「あ、これは華琳様」
【華琳】「あら、稟と風。貴方達もおきてたのね。」
【風】「華琳様をほったらかして寝るような者はここにはいませんよ~」
離れへと続く通路で二人がいた。
【華琳】「ふふ・・・ありがとう。」
【風】「ん?華琳様、何かありましたか?」
【華琳】「そうね・・・あったかもしれないわ」
【稟】「・・・・・?」
やはり、そのまま部屋へ向かう。
二人をやりすごし、部屋の前に立つ。
【華琳】「あいつは・・・まだ帰ってこない」
でも、言った。
―絶対・・・・帰るから―
ならば、それを待つのが私の役目。
扉を開ける―――
あいつがやろうとしている事は・・・わからない。
それでも、何があっても
迎え入れてあげる。
中へ入り、扉を後ろ手で閉める―――
【華琳】「まったく・・・・覇王に待たせるなんて、貴方くらいよ―――かずと。」
森を抜ける。
目の前に一面の荒野が広がる。
【一刀】「・・・ふう」
つい、ため息をつく。
もう一度、あの二人に会わないと。
俺だけじゃ、まだ何をどうしていいのかわからない。
【一刀】「どうすっかなぁ・・・」
連絡手段なんてないし、あの二人が行きそうな場所だって知ってるはずが無い。
そういえば待ち合わせしてるとか言ってたっけ。
ってことはどこかの街にいてるのかな。
とりあえず、歩き出す。
ここから一番ちかいのは許昌
でも、それでも徒歩では少し遠い。
それに―――
【一刀】「今は・・・まずいよな」
下手に騒ぎになれば役目どころではなくなる。
なら、どうするか。
とりあえず、呼んでみるか。
【一刀】「ちょーーせーーん」
・・・・。
なんてな・・・。
こんなんで来る訳・・・・・
――ddddddddddddドドドドドドドドトドドドドドドドドドドドドドドォォォオオオオ
・・・・え?
【貂蝉】「・・・・・しゅじんさまああああああああああ!あ・い・し・て・るぅぅぅぅぅぅううううううう!!!」
【一刀】「うわああああああああああああ!!!」
俺は今もてる全ての力を使ってそのさながらメテオドライヴを回避する。
というか、きりもみ回転しながらいかにもキスを求めてます的な顔はやめろ。
【一刀】「・・・・・はぁ・・・はぁ・・・」
【貂蝉】「んもう、そんなに興奮してるなら、もっと早く呼んでほしかったわん」
【一刀】「疲れてんだよ!」
ほんと・・・疲れる。
・・・・なんで聞こえたんだよ。
【一刀】「まぁ・・・いいや、用があったのは本当だからさ」
【貂蝉】「あらん、ご主人様が私にお願いだなんて。いったいどんな御用かしら」
【一刀】「・・・ああぁ・・・うん。なんていうか・・・さ」
【貂蝉】「告白!?」
【一刀】「違う!!」
ああ・・・ほんとに疲れるな・・・。いいやつなんだけど。
【一刀】「・・・・終端を始めようと思う。」
――――――――――。
【貂蝉】「なら、ほんとにいいのね?」
【一刀】「ああ。覚悟と勇気をもらったからさ・・・大丈夫」
【貂蝉】「そう・・・ちょっと妬けちゃうけど、しょうがないわねん。じゃあ、いきましょうか」
【一刀】「行くって、どこへ?」
【貂蝉】「終端を起こすにはそれなりの場所じゃないとだめなのよん」
そういいつつ、貂蝉さん?何故にこっちへ詰め寄ってきますか?
【一刀】「って、ちょっと待って。これって―――――またああああああああああああああああああああああ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
信じられない・・・。
数時間で許昌近郊から南蛮付近まで移動してしまった・・・・。
【一刀】「・・・ゴホッ・・・飛行機並みのジェットエンジンでも積んでるのか・・・・」
【貂蝉】「いやねぇ、他の人よりちょっとだけ足が速いだけよん」
そう言いながら、先へ進もうとする貂蝉に必死についていく。
山道とも洞窟とも言える様な道を歩いていく。
【貂蝉】「この先にお社があるから、そこではじめましょうか」
【一刀】「・・・あ・・・ああ」
【貂蝉】「先に卑弥呼が来ているはずだけど・・・」
あんた達本当に何者だよ・・・。
先へ進んでいくと同時に気づき始める。
道が、広がってきている。
その質も、野生的なものから、明らかに文明を匂わせる人工的なものになっていた。
【貂蝉】「さ。ついたわよん」
そして、そこはどうみてもこの時代の風景ではなかった。
かなり高度な、それでいて、歴史感あふれる神殿。
【貂蝉】「今日はもう遅いし、今は休んで明日からにしましょうか」
【一刀】「・・・・・寝るときは離れててくれよ?」
【貂蝉】「いやだわ、ご主人様ってば。わたしってばこう見えて純情なんだからん」
どうみたってガチホモじゃないか。
神殿を見上げる。
【一刀】「・・・・」
明日・・・
ここで・・・・
俺は、
全てを忘れるんだ―――。
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真・恋姫無双(魏ED)のアフターです。
前回の挿絵とか描いてたので、時間なくてちょと短めですが、続きです(、、
ここで卑弥呼を呼ばないのは、一刀に対する好感度の差といいますか。
まあ、キャラ的に貂蝉の方がイメージしやすいだけなんですけどね。
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