一刀が桂花の屋敷から発した事は、一刀が送った使者によってすぐさま劉備陣営に知らされる事となった
孔明「桃香さま~呂珂さん達が冀州から出陣したとの書簡が届きました!」
劉備「戦いが…始めるんだね」
士元「やはり…抵抗がありますか?」
黄巾党の中には生きる糧を失った元農民も多数確認されている。民をそこまで追い詰めた各地の太守の統治に問題があるのも事実だろう。それでも盗賊に身を落とさずに踏ん張ってる民もいる。元民とはいえ、窃盗や殺人を行ってしまえば討伐の対象に加えないといけない
劉備「抵抗が無いと言えば嘘になるけど…黄巾党での行いを改める者は、贖罪させた後に一般の民として迎えるって御触れを出してる。この御触れにも響かない人まで手を差し伸べるつもりはないよ」
そう、やむを得ずに黄巾党に入党した人を救うべく、救済の御触れは既に出しているのだ。自らの行いを悔い改め、奉仕活動などの善行を積ませた後に幽州の民として迎え入れているのだ。これだけでも甘いと言う人もいるだろうが、劉備が行える最大限の慈悲だったのだ
孔明「桃香様の言う通り、この御触れを出してからこの城にやって来た人は多数居ました。その人達は韓当さんや程普さんの監視の下、色々な場所で慈善活動を行っております。この人達には慈悲を与えてもいいと思いますが、未だに悪さを働いている者達には厳しく処罰するべきかと」
張飛「お姉ちゃんは色々抱えすぎなのだ、もっと鈴々達を頼ってもいいのだ!」
劉備「今でも充分、鈴々ちゃん達を頼らせてもらってるよ。むしろこれ以上頼っちゃったら私がダメになっちゃいそうだよ」
張飛「お姉ちゃんがダメになったら…ぶくぶくに太って泣きながら体重落とそうとする光景が見えるのだ!」
劉備「うぅ……実際にありそうで否定出来ないよぉ・・・」
少しでも怠けたら義妹である張飛の未来予想図になりそうだと自分でも思ったようで、自分のお腹や二の腕を確認し、大丈夫・・・大丈夫・・・まだぶよぶよしてない・・・と小声で安心?していた
韓当「桃香様、軍の準備完了いたしました。いつでも出陣可能…………桃香様、どうされたのじゃ」
出陣準備が完了した事を報告に来た韓当が目にしたのは、お腹と二の腕に手を当てて安心している表情を浮かべている主の姿だった
劉備「韓当さん!?…………な、なんでもないです!見なかった事にして下さい!」
男である韓当に見られた劉備は慌てて体勢を取り繕う。一方の韓当は太守とはいえ年頃の娘。色々気にする所があるのだろうと先ほどは何も見なかったと、大人の対応を取っている
張飛「おじちゃん、もう戦にいけるのか?」
韓当「うむ、ようやくこちらから攻勢に回れるわい。鈴々が準備忘れなければもっと早かったんじゃがな」
張飛「にゃはは……ごめんなのだ」
韓当が加わる前まではしっかりしていた張飛だが、韓当が実の子のように可愛がり始めてからは歳相応の行動に戻っていた。ポカは多くなったが、いい変化だと劉備は微笑ましそうに見つめている
韓当「ところで、呂珂殿が出陣したと聞いたのじゃが、進軍経路はどうなってるんだ?」
孔明「書簡の内容によりますと、まずは冀州の大都市である鉅鹿、常山、清河、趙などに出没している黄巾党の兵糧庫を叩くそうです」
士元「桃香様、呂珂さん、曹操、袁術と連携して黄巾党と戦う事になりましたが、4軍が集結しても兵力の差は覆す事は出来ません。その為に戦の要である補給路を潰す為に電撃戦を仕掛けるつもりだと思いましゅ」
最後に噛まなければ完璧だったのに…と一同は思いきや、噛んで恥ずかしがった士元を見て和んでいた。孔明と士元の噛み癖は劉備軍の癒しとしてなくてはならないものまでなっている。
韓当「全軍の集結地点は冀州南部の魏郡じゃが、わしらは趙付近で呂珂軍と合流し、合同で補給路を潰すのが良いと考えるが・・・朱里や雛里の考えはどうじゃろうか」
士元「私達も韓当さんと同じように考えていました。私達の南下、呂珂さん達の北進の中間地点となる趙ならばお互い日数をかけずに到着する事が可能です。ただ、こちらからも使者を送り行動を伝えないと入れ違いになる事態も起こりえますので注意が必要です」
劉備「じゃあ今回来てくれた使者さんに私達の行動予定を記した書簡を届けてもらわないとね」
孔明「あと質問がある方は…………いらっしゃらないようなので桃香様、出陣前に一言お願いします」
劉備「・・・みんなの働きのお陰で幽州に出没する黄巾党は居なくなりました。ですが、根本を叩かないとまた脅威に怯える生活に戻ってしまいます。大陸全土から争いを無くすために・・・みんなの力を貸してください」
出陣前の激は味方の士気向上などの効果を発揮する。
彼女の台詞は他の君主と違って言い回しに威厳が感じられない
しかし、彼女はこれでいいのだ。
乱世に似合わない程”心優しい君主”
そんな君主の陽だまりのような笑顔を護る・・・それが幽州の民や兵士となるのだから
幽州琢郡より……劉備軍出陣
劉備軍が出陣した同時刻、一刀率いる義勇軍は平原を発ち、清河に軍を進めていた。
清河には中規模の補給拠点が確認されており、黄巾党の将・馬元義が約3万の兵で護っていた。
明命「ここが清河に作られた補給拠点になります!」
風「ふむ~この規模の拠点の防備がたった3万とは・・・これは物資を鹵獲してくれと言ってるようなものなのです」
稟「馬元義は武勇に優れ、賊の頭目を張っていた男です。黄巾党の勢いが増すとこれに合流し、黄巾党有数の実力だとか」
真桜「武勇に優れてる言うても……多分、うちや沙和でも勝てる相手やな」
沙和「真桜ちゃん~そこで沙和を引き合いに出すのは納得いかないの!」
真桜の引き合いに出されて沙和は不満顔だが、真桜に周りに居る顔を見てみと言われ、見渡してみると……
沙和「真桜ちゃんの言う事に納得なの!」
不満を引っ込め、真桜の例に同意した。
自分達の周りに控える将・・・一刀、恋、凪、明命が賊の頭目に遅れを取る可能性は無いだろう
凪「大勝して次に弾みをつけたいところですね」
一刀「凪の言う通り初陣だから派手に勝利を得たいが・・・風と稟は何か考えあるか?」
風「そうですねぇ・・・先ほど真桜ちゃんも言いましたが、馬元義が優れた武勇を有していようが、わが軍の敵ではないのです。なので」
稟「なので、ここは出し惜しみせずに、わが軍最強の矛”恋”を投入して圧倒させます」
自分が説明してたのに…と台詞を奪った親友に向かって半目でジトーと抗議するが、稟は一切取り合わず淡々と自分の考えを発言した。親友に無視されて頬をプクーと膨らますが、一刀のご機嫌直しにと頭をナデナデを受けて機嫌が良くなった
一刀「恋の投入に反対はしないが、具体的にどうするつもりだ」
風「まず恋ちゃんが単騎で敵陣前までいってもらってから・・・・Zzzzzzz」
一刀「いい所で寝るな!!」
風「おぉ!?」
一種の伝統となっている風の寝たふりからの突っ込み芸はここでも健在だった。合流してから初めて見る凪達も感慨深そうに風と一刀のやり取りを眺めていた
風「冗談はさておき、この場にいる面子で馬元義如きに負ける事はありませんので、作戦は特にいらないかと。強いて言うなら、恋ちゃんが敵さんをボコボコにするのが作戦ですねぇ~」
一刀「作戦なのか……?ってことなんだけど、恋いけるか?」
一応恋に確認を取るが、恋は心配いらないといわんばかりに自分の胸の前に拳を持ってきて小さくぎゅ!っと結んだ
恋「大丈夫、恋に任せて。予備の槍たくさんもってきて」
真桜「そこの!呂布両軍の命や、予備の槍全部もってき!」
「「「「さーいえっさー!」」」」
真桜「今のも沙和の兵士かい。どんだけ仕込んでるん」
沙和「この軍の大半は既に沙和の可愛い蛆虫共なの!」
明命「ほんとうに不思議な兵達です。あれも一刀様の知恵なんですか?」
沙和「隊長から教えてもらったアメリカン海兵隊式訓練法なの!」
明命「あめ、あめりかん?」
北郷警備隊直属の部下として付き合いの長かった三羽烏は横文字の発音にも慣れたものだが、初めて言葉を発する明命はやはり言いづらそうに口ごもる
「「「「サー!予備の槍をすべてもってきました!」」」」
恋「そこに全部置いておいて、後で使うから」
兵法では戦では相手より多くの兵を集めるのが基本である
その基本を守れていない現在の状況、少数の数で倍以上の兵力を持つ相手に当たるにはどうすればいいか
数の暴力を覆すだけの暴風が必要となる
軍師である風が選んだ少女の名は呂布奉先、真名は恋
正史では三國志で最強の武を誇り、前漢の李広になぞらえて飛将と呼ばれる。学者やとある作品の中では覇王項羽と共に最強格とされる天下無双の豪傑。
その強さはこの外史でも変わらない。時代最強の武を持つ少女が・・・・数の暴力を覆すべく動き出す為に動き出す
「馬元義様!官軍らしき軍勢が現れました!」
馬元義「ほぅ、俺様の護る拠点に来るとは愚かな奴らだ。それで、相手は幽州の劉備ってやつか?」
「いえ旗印が違います、先鋒には呂の旗を掲げられています」
馬元義「呂?聞いた事の無い旗印だ、大方正義感に駆られた雑魚だろうな。奴らの兵力は解るか」
「報告によると・・・全軍で1万5千程度、先鋒の数は1千程度だと」
馬元義は部下の報告を聞いて姿を現した義勇軍を鼻で笑った
3万で護る拠点にその半分の1万5千で現れ、先鋒がたったの1千。義勇兵を率いる将は能力が無い屑だろうと完全に相手を見下していた
そんな軍が相手ならば様子を伺う必要は無いと判断した馬元義は、自ら先頭に立ち軍を率いて拠点から出陣する。
彼我の兵力差と自らの武勇を過信し、馬元義は自分が負けるなど露にも思っていない。
そんな馬元義の自信はすぐに崩れ落ちる事となる
自分が狩る立場ではなく、狩られる立場なのだと
恋「・・・・来た」
稟「先頭に居るのが恐らく馬元義でしょう。自ら出てきてくれたのは僥倖ですね」
風「あの手の将は自分の力を過信して破滅するのが大半ですからねぇ、こちらとしたら扱いやすく楽でいいのですが」
風と稟が馬元義の評価を下す中、恋は所定の位置に就き、自分の間合いに入ってくるまでじっと息を潜めて待ち受ける
そして・・・・・
ついに天下無双が動き出す
恋「みんな、槍用意」
恋の言葉に従い、兵士達は両手に予備の槍を抱えて恋の傍に控える。何に使うのか気になった沙和がその槍をどうするのかを尋ねる。それに対しての恋の答えは
恋「投げる。射程範囲内・・・逝く!」
真桜「槍投げるんかーい!」
真桜の突っ込みと共に、間合いに入って来た馬元義軍に向かって手当たり次第に槍の投擲を開始する。
「うぎゃああああ!」
「うわーーーー槍が空から降ってくるぞおおおお」
馬元義と共に最前線に居た兵士達は次々と槍の雨に貫かれ、悲鳴をあげつつ1人、また1人と討たれていく。
この時代の飛び道具と言えば弓矢だろう、馬元義は弓矢の対策として官軍から奪った盾を部下達に装備させ備えは万全だった。
しかし、今自分達を貫いているのは”矢”では無く”槍”。しかも飛将が力を込めた投擲だ、並の盾では防ぐどころか砕かれてしまうのだ
馬元義はなんとか動揺する兵士達を落ち着かせようと声を出すが、部下達は未知の脅威に怯え、部下達の悲鳴にかき消されて周囲には聞こえていない。恋は”あえて”馬元義を狙わず、雑兵ばかい狙っているのだ。そんな混乱に達した馬元義軍に2人のワンコが突っ込む
恋「あいつは恋の獲物・・・・あいつを討てば・・・にぃにに褒めてもらえる」
凪「・・・恋には負けん。敵将は私が討つ!隊長に褒めてもらうのは私だ!」
恋「にぃには恋の・・・」
凪「隊長は私のです!」
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・
・
凪「はぁぁぁぁぁぁぁ!猛虎蹴撃!」
恋「....羽虫は死ね」グサ
凪は一刀に会うために修行を重ね、威力のあがった気弾を連発し敵兵を吹っ飛ばす。槍の雨を降らせていた恋は愛用の武器・方天画戟のリーチを生かし、逃げ惑う敵兵を屠りまくる恋の、一刀に褒めてもらうための・・・一方的な殺戮が始まった。
恋「一人も逃がさない」
凪「貴様ら!逃げるな!私と戦え!」
沙和「真桜ちゃん・・・」
真桜「なにも言わんでええ・・・お前ら!あの二人の討ち漏らしたのだけ狙い!不用意に近づけば死ぬで!」
大好きな兄(隊長)に褒めてもらいたい、理由だけ聞けば可愛い子だといえるが・・・実際の行動は戦闘狂そのもの。
恋と凪の後ろに続く形で戦闘を開始した真桜と沙和は完全にドンビキしていた
馬元義「小娘達め・・・!野郎共引けえ!」
敗戦を悟った馬元義は乱れきった手勢に退却の命を下すが・・・・それを見逃さない新たな人物が馬元義の前に姿を現す
明命「黄巾党の将、馬元義ですね。貴方の命を頂きます」
暗殺者の如く、逃げ出そうとした馬元義の前に姿を現したのは明命だった。
明命も凪達同様に、一刀に褒めてもらうために持ち前の素早さ、隠密の技術を駆使して馬元義の下へたどり着いたのだ
明命「隠密部隊隊長、周幼平参ります!」
馬元義「ほざくな小娘が!貴様を討ち取って逃げ切ってやるわ!」
明命は背中に背負っていた魂切を抜き出す。馬元義も自らの獲物である斧を構える
明命はすぐさま動き、馬元義の首下目掛けて斬りかかる。そんな明命の攻撃を慌てる事なく馬元義は斧で防ぎ、反撃として明命の小さな体を砕こうと力を込めた一撃を繰り出す。明命はその重い攻撃を受け流すが、馬元義が反撃の猶予など与えないと言わんばかりに2撃、3撃と連続で繰り出す。
自分で豪語するだけあって馬元義はなかなかの武勇を有しており、明命は防戦一方。馬元義はこのままいけば勝てる!逃げ切る事が出来る!と戦いの最中だが気を抜いてしまった
明命「戦いの中で気を抜くなど……愚かです!」
その一瞬の隙を明命は見逃さず、馬元義の首を獲らんと一撃を放つ。
刃を向けられている馬元義はしまった、と斧で防ごうと行動するも間に合わず明命に首を落とされ絶命する
明命「ふぅ・・・。敵将馬元義!周泰幼平が討ち取りました!」
馬元義を討ち取り、自軍は波に乗る
はずだったが
明命には強大な”敵”と相対していた
恋「明命・・・恋の手柄横取りした」
凪「隊長には私が褒めてもらう予定だったのに・・・抜け駆けしたな?」
新たな脅威は本来味方であるはずの恋と凪だった。
恋と凪は馬元義を討ち取り、一刀に褒めてもらうために功を競い合っていたが、明命に功を横取りされた。
”私だって一刀様に、褒めてもらいたかったんですもん!”
明命はこう大声で言いたかったが、そんな事を言えば更に顰蹙を買うことになる
明命が取れる最後の行動・・・
それは・・・・
明命「一刀様~~~~お猫様~~~助けてください~~~~~」
恋と凪を止められる唯一の人物である一刀と崇拝するお猫様に助けを求める事だった。
そんな明命の叫びが天に届いたのか、声?が聞こえた
一刀?「ごめん無理!その面子相手じゃ怖すぎる!ってことでサラバ!」
お猫様?「明命よ、精進あるのみじゃ」
期待した自分が馬鹿だった・・・
一刀?とお猫様?に完全に見捨てられてしまった
明命「一刀様とお猫様の薄情者~~~~!!!」
恋・凪「「O☆SI☆O☆KI」」
明命「いっや~~~~~~~~~~~~~~!!!」
戦場に明命の悲鳴が鳴り響くが
呂珂軍からは助太刀に行く勇者はいなかった
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2016/2/28 修正